昔は薬だったコーヒーが世界中で愛される飲み物に
もともとコーヒーは、実を煎じたり煮たりして薬として用いられていたようですが、一般的な飲み物として親しまれるようになったのは15世紀のころ。トルコのコンスタンチノープルに開店した世界最古といわれるコーヒーハウスでは、人々がコーヒーを飲みながら議論を交わしたといわれています。
17世紀になると、コーヒーはヨーロッパに伝わり、瞬く間に庶民の間に普及しました。それに伴い、コーヒーの飲み方や栽培方法などの知識も向上し、17世紀後半には、インドやインド諸島で栽培がスタート。その後、アジアやアメリカにも伝わり、世界各地でコーヒーを飲む習慣が広まりました。
栽培地域も拡大し、1727年には世界最大の生産国となるブラジルで栽培が始まり、主要な産物として世界的なビジネスに成長しました。
熱帯地域で栽培される「コーヒーノキ」とは?
コーヒー豆の原料となるコーヒーノキは、エチオピア原産のアカネ科コーヒー属の常緑樹で、原産地では高木になります。赤道を中心とした南北回帰線の間の熱帯地域が主な栽培地域となっており、世界約60カ国で栽培されています。
コーヒーノキの果実に入っている2つの種子がコーヒーの生豆です。今までにアフリカや中東地域で産出されたキリマンジャロやモカ、カリブ海地域のブルーマウンテン、南米のブルボンサントスなど、有名な銘柄が次々と生み出されてきました。
日本国内でも沖縄や小笠原諸島で小規模栽培されていますが、最近では通信販売などでコーヒーノキの苗木を入手し、一般の方が楽しみながら育てるケースも増えつつあるようです。手塩にかけて育てた豆で煎れるコーヒーは、きっと格別の味わいとなることでしょう。
鉢植えでも栽培できる手軽さが魅力
コーヒーの味と香りの特徴はマメ(種子)が実る木の種類によって決まります。コーヒーノキは、野生種を含めて30種類ほどありますが、主にコーヒーの原料として栽培されているのは、アラビカ種とロブスタ種の2つ。アラビカ種はロブスタ種に比べて香りがよく、キレとコクがあり、カフェインが少ないのが特長です。高品質とされるコーヒー生産量の7~8割を、アラビカ種が占めています。
アラビカ種の中でもコンパクトな樹形に育つ「リサ アラビカ」は、鉢植えで育てられる手軽さが人気を集めています。日常の管理さえしっかりしていれば、比較的栽培は容易なので、初めてコーヒーノキを育てる方にもぴったりの品種です。葉は鮮やかな緑色で光沢があり、冬でも色あせないので、室内を彩る観葉植物としても楽しめます。
上手に育てれば、3~5年で結実し、春先にチェリーと呼ばれる完熟した赤い実を収穫できます。この実の中に入っている2つの種子が、おいしいコーヒーの豆となるのです。甘みとコクに加え、かすかに酸味のあるすっきりした飲み口が魅力です。
科学的に解明されたコーヒーの活用
古くからその薬効が知られるコーヒーは、科学的解明が進むにつれ、改めてその健康効果に注目が集まっています。
コーヒーの成分として最も知られているのがカフェイン。眠気覚まし効果や利尿作用があるほか、集中力や運動能力を高めたり、時差ボケ時に身体のリズムを元に戻す効果があるとされています。
さらに、最近注目を集めているのが、コーヒーに含まれるコーヒーポリフェノール(クロロゲン酸)。クロロゲン酸は特有の苦みや香りの元となっている成分で、抗酸化作用があることがわかり、がんや生活習慣病の予防に役立つという研究結果が報告されています。
千年以上も語り継がれるヤギ飼いカルディの伝説
花が咲いた様子。
開花期間は2~3日ほどで、かすかにジャスミンに似た香りがする。
果実が熟すのは3~4月。
青い果実が赤く色づき、濃い赤色になったら収穫適期。
コーヒーがいつ、誰によって発見されたかははっきりとはしていませんが、有名な伝説の一つに「ヤギ飼いカルディの伝説」があります。
舞台は13世紀のエチオピア。ヤギの世話をしていた少年カルディは、ある日、ヤギたちが赤い木の実を食べて走り回り、夜になっても興奮がおさまらない様子を目にしました。不思議に思い、近くの修道院の僧の元へこの実を持ち込んで一緒に食べてみることに。すると、疲れが消え、元気がみなぎるのを感じました。この魔法の実こそ、コーヒーの実だったといわれています。
その後、修道院の僧たちは、眠気覚ましにこぞってこの実を用い、修行に励んだとされています。こうした古い逸話からも、コーヒーと人との深いかかわりがうかがわれます。