秋からの緑肥栽培基本のき
長期間、同じ土で作物を作り続けると、土の中のいろいろなバランスが崩れてきます。土壌中には多種多様な生物が生きていますが、例えば、農薬を使用し続けることで、よい働きをしてくれる微生物がいなくなってしまうこともあります。また、チッソやカリウムなどの特定の栄養分が過多になったり、センチュウなどの土壌中の害虫が増えてしまうことも。このように「疲れきった」土を、薬剤や科学的な物をできるだけ使わずに、植物の力を借りて復活させる、環境や人体にもやさしい「緑肥栽培」という方法をご紹介します。
緑肥作物とは?
栽培した作物を収穫せず、そのまま耕して土にすき込むと土が元気になるといわれています。この、栽培してすき込む植物のことを「緑肥作物」といいます。
土壌バランスが崩れたり病害虫が増加してしまった土壌で、緑肥作物を栽培して土の中にすき込むことで、植物体(有機物)が分解されて、「腐植」という非常によい土壌に変わってきます。その結果、全体のバランスが整って土に元気が戻ってくるのです。
4つの効用
緑肥栽培には、以下の4つの効用があります。
- ❶有害センチュウが少なくなり、土壌全体の微生物バランスがよ くなることで病害が少なくなる。
- ❷かたくなっていた土がほこほこになって(団粒化)、通気がよくなり水も染み込みやすくなる。
- ❸土にたまりすぎた肥料成分がほどよく抜けて、逆に作物の肥料の吸収がよくなる。
- ❹1~3の地力増進のほかに、緑肥作物の選択によって、雑草抑制や防風など、さまざまな利用方法が工夫できる。
緑肥作物のタネまき
耕起・整地
土を深さ15cmほど耕起し、ならしてなるべく平らにします。
播種
手まきの場合は、ムラにならないよう複数回まきます。
覆土・鎮圧
レーキで土壌を浅く切削した後、鎮圧すれば覆土となります。覆土厚は1~2cmまでとします。
土壌の団粒化を促進し、肥料や水もちのよい土にする「超極早生らい麦・ライ太郎」。
各種ネコブセンチュウの密度抑制におすすめの「クロタラリア・ネコブキラー」。
「ヘアリーベッチ」なら除草剤を使わずに雑草を抑制できて景観的にもよい。
栽培の注意点
- ●緑肥作物のすき込み後、畑作物の初期生育が阻害される場合があります。これは、有機物分解の際に生じる酸素不足や、ピシウム菌の増殖などが原因といわれていますが、深くすき込んだり、すき込みから後作までの期間を3~4週間あけることによって回避することができます。
- ●緑肥栽培は、自然の力を借りて地力をつけることが基本なので、速効性に乏しい場合も多いですが、肥料や、時には薬剤も併用しながら上手に利用するとより効果的です。
収穫をしない作物を作るのは無駄だと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、土が元気になると肥料や農薬の節約にもなります。エコな野菜作りにもなりますので、ぜひチャレンジしてみてください。
緑肥作物の選び方
より効果的な緑肥栽培をするには、目的にあった緑肥作物を選ぶ必要があります。
ここでは8月以降、秋栽培の緑肥作物を用途別にご紹介します。
キタネグサレセンチュウやキスジ対策に!
キタネグサレセンチュウに汚染された畑や、キスジノミノハムシの多い畑に。
アウェナストリゴサ・ネグサレタイジ
ダイコンの前作に栽培することで、キスジノミノハムシ被害を軽減したり、連作障害などで発生するキタネグサレセンチュウの密度を抑制する。
※センチュウには種類があり、どの緑肥作物を選択するかで効果は大きく異なります。下の表をご参照ください。
低温でも発芽・生育する超極早生!
密な繊維根により、土壌の団粒化を促進する。
超極早生らい麦・ライ太郎
発芽が早く、初期生育が非常に旺盛なので、短期間の緑肥に最適。密な繊維根による土壌の団粒化で、水や肥料の浸透性がよくなる。
景観用や生物くん蒸にも!
生物くん蒸に利用で、トマト青枯病、ホウレンソウ萎凋病の抑制に効果!
緑肥用からしな・黄花のちから
初期生育が早く短期間で高収量が得られる。開花期の草丈は1m以上で倒伏にも強い。生物くん蒸作物として利用する場合、トマト青枯病やホウレンソウ萎凋病の抑制効果がみられる。
果樹園・乾燥畑の雑草抑制!
アレロパシー作用で雑草の発生を抑制するので、果樹園の下草に最適。
ヘアリーベッチ・ナモイ
日陰でも生育良好で、排水がよければ土をほとんど選ばない。チッソを固定するので化成肥料の節約も期待できる。