ピーマンの上手な栽培方法・育て方
ピーマンの基本情報
- 学名
- Capsicum annuum L.
- 和名
- ピーマン
- 英名
- Sweet Pepper
- 原産地
- 中央アメリカから南アメリカの熱帯地方
- 分類
- ナス科トウガラシ属
- 上陸時期
- 本格的に栽培されたのは明治以降
ピーマンの住みやすい環境
ナス科野菜の中でも高温要求性が強く、熱帯地域では多年草で潅木状になりますが、日本では1年草になります。
- 発芽適温
- 発芽には高温を要し、適温は20~30℃です。
- 生育適温
- 20~30℃で、15℃以下では生育が鈍ります。
- 光飽和点
- 3万ルクスといわれています。しかし光量が低下すると収量が減少しますから、日照不足は禁物です。逆に光が強すぎる場合は、果実の日焼けを引き起こすことがあるので注意します。ピーマンは嫌光性種子のため、発芽時の光は不要です。
ピーマンとは
(ピーマンってどんな野菜?)
油との相性が抜群
ピーマンはナスの仲間で、語源はフランス語でトウガラシをあらわす「ピマン」です。種類は、欧米で好まれる肉厚があって甘味の強いものから、小さくて辛いものまでさまざま。日本で一般的に食べられているのはその中間にあたり、実が薄く、少し苦味のある種類です。中華の青椒肉絲やひき肉詰め、揚げものといろいろな料理に使われます。油との相性が抜群にいいので、炒めものには最適です。
ビタミンの優れた供給源
ピーマンは、トマトの約5倍のビタミンCを含んでいます。他の野菜のビタミンCと違って、加熱してもあまり失われません。また、豊富なカロテンは体内でビタミンAに変わり、油と一緒に食べることでさらに吸収されやすくなります。味だけでなく、栄養の面でも油とピーマンの相性はいいので、生で食べるより調理に向く野菜です。
調理のポイント
味噌をからめると青臭みをとってくれるので、風味がぐっとよくなります。
栽培手順 各ポイント
菜園向け
ピーマン栽培カレンダー
育苗管理
鉢上げ
販売されている苗は、9cmポット(本葉8~9枚)の若苗が多いので、12~15cmポットに鉢上げして1番花が開花する前まで育苗するとよいでしょう。鉢上げの培養土は「タキイ育苗培土」を利用するとよいでしょう。
定植適期苗
1番花の開花3~4日前が定植の適期です。蕾が見えないような若苗は過繁茂になりやすく、1番果が着果しているような老化苗では活着不良になりやすく、初期生育は順調に進みません。
定植
- ■生育適温
- 25~30℃
ピーマンはナスよりも高温性で、ナス科の中では一番温度が必要です。定植時期の目安は、晩霜の心配がなく最低気温10℃以上、最低地温15℃以上になったころです。一般地の露地栽培では5月中旬ごろ、トンネル栽培では4月中下旬ごろになります。
老化苗定植や植え傷みで活着不良になった場合は、薄めの液肥を数回あたえ、1~2番果を摘果することで草勢の回復を図ります。
- ■施肥量
- 元肥の量は目安として10㎡当たり成分量で、チッソ200~250g、リン酸250~300g、カリ200~250gを施用します。ピーマンは長く栽培するので、有機態チッソが入った肥料を施用すると品質のよい果実がたくさん収穫できます。
定植のポイント
活着の良否がその後の生育に大きな影響を及ぼすので、定植は晴天の午前中に行います。あらかじめ鉢に十分潅水しておき、植え穴にもあらかじめたっぷりと潅水しておきます。水分と地温を確保するためにマルチを利用すると効果が高くなります。マルチングは植え付け7~10日前までに行って、十分に地温を確保しておくと定植後、苗の根の伸張がよくなります。ピーマンは初期生育が遅いので、ウイルス病を伝染するアプラムシなどに注意して、早めに防除しましょう。
誘引の例
4本整枝の場合、主枝4本をひもを使い誘引します。ひもを支える針金は重さがかかるのでしっかりと支柱にくくりつけておきます。
誘引の手間を省くため、フラワーネットなどを2~3段に張り、枝が垂れないようにする方法も便利です。
仕立て方(4本整枝)
追肥
[追肥]
追肥は1番果の収穫始めのころから行います。化成肥料の場合、目安として10㎡当たりチッソ成分量で30gを10~14日間隔で、液肥の場合は、10~15gを5~7日間隔で施します。根傷みして肥料が効きにくい時には、葉面散布を行うと効果的です。
[追肥の間隔]
草勢が落ち着いて花数が増えてくれば、その後に着果負荷がかかってくるので、草勢を見ながら追肥の間隔(日数)を短くして施します。追肥が遅れると草勢が低下し、側枝の伸びや果実の肥大が鈍くなって、収量が低下するので注意します。
[尻腐れ果対策]
梅雨明け以降は、高温乾燥により尻腐れ果が発生しやすくなるので、土が乾いたらしっかりと潅水を行い、定期的に葉面散布剤を施用するとよいでしょう。
草勢を判断する方法
①成長点付近で判断
・成長点近くで開花
(下図の3より上位で開花)→草勢低下
・成長点のかなり下で開花
(下図の3より下位)→徒長気味
②花器(めしべの長さ)で判断
短花柱花
めしべが短く受粉が正常に行えない
→草勢低下すぐに追肥(液肥、葉面散布)
中花柱花
やや草勢が弱くなっている
→速効性の肥料を追肥する
長花柱花
めしべが長く正常
カラーピーマンの栽培
1~2番花は樹づくりのため摘みとります。3番果も草勢が弱いようなら緑果のうちに摘果します。その後も、着果した果実をすべて肥大させると草勢が維持できなくなるので、変形果や障害果は早めに摘果して草勢維持に努めます。
パプリカは普通のピーマンと違い、開花して50~60日程度で着色・完熟するため、長い期間がかかります。着果過多により草勢が弱まってきた場合は、緑色の幼果で収穫します。
病害や生理障害
<病気>
総監修・イラスト原図 : 駒田旦・本文監修 : 大阪府立環境農林水産総合研究所 草刈眞一・写真提供 : 岡田清嗣(KO)、駒田旦(HK)、田中寛(YT)
<害虫>
総監修 : 大阪府立環境農林水産総合研究所 田中寛 監修 : 草刈眞一、柴尾学・写真提供 : 田中寛(YT)、木村裕(YK)、柴尾学(MS)、池田二三高(FI)
<生理障害>
監修・写真提供 : 渡辺和彦、牧浩之・写真提供 : 福元康文(YF)
おすすめ商品
ナスを使った料理紹介
Q&A
- パプリカの色づきが悪いです。どうしてでしょうか。
-
パプリカの果実は、一般に大果型で1果重が170g くらいあります。未熟果を収穫するピーマンに比べ、成熟果を収穫するパプリカでは、株に対する負担が大きくなります。
そこで株の仕立て方はピーマンと異なり、1番果から3番果までは摘果し、主枝を3~4本仕立てにします。1果重が重いため主枝2本とし、茎が裂けやすいので早めに誘引ひもを主枝に巻きつけてつり下げてやります。内側に密生する枝は早めに除き、通風と採光を図ります。そのうえで着果負担が大きくならないように、主枝にだけ着果させます。
パプリカの果実は成熟時には赤、黄、オレンジ色ですが、若い段階では黄橙系色素(カロチノイド)よりも葉緑素が多いため緑色をしています。開花後50~55日目くらいから葉緑素の分解が始まって黄や赤系の色素だけが残り、さらに5~7日後には品種本来の果色になります。これらの色素は同化物質からつくられるため、根や茎葉の生育が旺盛でなければ、色づきは悪くなります。
そのため草勢を維持し、着果負担をかけないことが重要なポイントとなります。
- ピーマンの咲いた花がポロポロと落ちてしまいます。どうしてでしょうか。
-
ピーマンやトウガラシ類は枝が分かれる所すべてに花をつけ、実をつける楽しい野菜です。水分や肥料を上手に管理すると、おもしろいほどたくさん収穫できます。 しかし残念なことは、お尋ねのように花や幼果が落ちることや、着果しても正常な果実に生長しない時があることです。花や幼果が落ちる原因には次のことが考えられます。
①肥料不足や乾燥による草勢の低下:対策としては、追肥をこまめに行い、敷きわらをして潅水することです。
②過湿で根腐れを起こしたことによる草勢の低下:畑全体の排水をよくし、畝の中まで空気が入りやすいように改善させます。もともと排水がよくない畑では、最初から少し高畝にして植えるとよいでしょう。
③ウイルス病:ウイルス病の特徴として、生長点の葉が黄化したり、葉色がまだら模様になったり、茎や葉が萎縮します。それにより落花が起こりますが、病状を回復させることはできません。ウイルス病は、最初はアブラムシによって伝染することが多いので、定植時からの防除が大切です。
ほかには、収穫が遅れると株への負担が大きくなり、次の花を落とすので、早めの収穫が必要です。また長雨により、花が濡れたために着果できないこともありますが、これは晴天を待つしかないでしょう。