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完熟のおいしさを味わいたい!ブルーベリーの品種を上手に使い分けよう!

いまやブルーベリーは、手軽に栽培できる人気の果樹。でも、豊富な品種の中からどれを選んだらいいか迷ってしまうことも…。そこでここでは、上手な品種の使い分けを詳しくご紹介します。

豊富な品種の中から、栽培条件に合うものを選ぶことが大切

青紫色に次々と熟す小さな果実が、初夏から夏にかけて清涼感をもたらしてくれるブルーベリー。よく熟した実は甘くおいしく、ジャムやソースにしたり、お菓子作りの材料としても、すっかりおなじみの果物です。ブルーベリーは小果樹ではありますが、次にあげるような家庭果樹として優れたすばらしい特長を持っています。

① 地域適応性が高く、全国で栽培可能。
地域によって適する系統・品種が異なるので、下記の「条件1」を参考に品種を選びましょう。
② 栽培しやすく早期結実性である。
北アメリカの野生種から多くの品種が作出されており、野生種を改良してまだ間もないので強く、病害虫がほとんどつきません。そのため無農薬栽培も可能であり、安心して果皮ごと食べられる果物といえます。また、苗を植え付けて3年目には収穫できるのも魅力です。
③ 機能性食品として優れている。
目によいという以外に、強力な抗酸化作用があることにも注目されています。ガンや、高血圧など生活習慣病に予防効果があるといわれています。
④ ガーデニング素材としても優れる。
小果樹の仲間ですから、狭いスペースでも利用でき、半日陰程度なら十分に生育可能です。また、春にはドウダンツツジに似たかわいい小花が咲き、秋は紅葉の美しさも楽しめます。

ブルーベリーは多くの品種がありますが、気候によって、また地植えか鉢で育てるかなどの栽培条件によって、適した品種を選ぶことが大切です。さらに生食するか、ジャムなどに加工するかでも、より適した品種を選べばおいしさもアップ。苗を購入する前に、まず栽培の条件や目的に合った品種選びから始めましょう。

【条件1】栽培地域の気候に適した品種はどれ?

現在、主に栽培されているブルーベリーは、ノーザンハイブッシュ系、サザンハイブッシュ系、ラビットアイ系です。栽培方法は基本的に同じですが、栽培に適する条件はそれぞれ異なります。次のことを踏まえて、それぞれの地域にあった系統・品種を選ぶことが大切です。

ノーザンハイブッシュ系

アメリカ北東部を中心に分布する野生種を改良したもので、根が浅く広がるため高温や乾燥に弱い半面、冬の低温には強く、関東以北から東北地方に適していますが、北海道南部以南~中部地方まで栽培できます。

おすすめ品種
最大級の粒の大きさ「チャンドラ」は甘酸のバランスがよい。また風味品質が極上の「ブルーレイ」は樹勢が強く農産性が高い品種です。

サザンハイブッシュ系

ノーザンハイブッシュ系を改良した暖地向きの品種です。果実の性質はハイブッシュ系ですが、栽培地はラビットアイ系と同じか、より温暖な地域に適しています。東北南部~沖縄で栽培可能です。

おすすめ品種
豊産性で収穫量が多い「ミスティー」は食味も良好。また、樹形がコンパクトにまとまる「サンシャインブルー」も食味は良好で、収穫量も安定しています。

ラビットアイ系

栽培適地は関東以南で、砂質土から粘質土まで、土壌適応性が広く、生育はノーザンハイブッシュ系およびサザンハイブッシュ系より盛んで収穫量も多いです。

おすすめ品種
豊産性の「クライマックス」は果実の日もちがよいのも魅力です。また「フェスティバル」は樹勢が旺盛で収穫量が多く、生食にも加工にも適しています。

【条件2】庭に植える?それとも鉢で育てる?

一般にラビットアイ系はノーザンハイブッシュ系、サザンハイブッシュ系よりも樹高が高くなるので、スペースの広い場所に植えるのがおすすめです。また、各系統の中でも枝の広がりによって株全体が直立性の品種から開張性の品種まであるので、栽培場所の広さに応じて適した品種を選ぶようにしましょう。

広いスペースに植えるなら?
ラビットアイ系では「クライマックス」、ノーザンハイブッシュ系の「ジャジー」、サザンハイブッシュ系の「サンシャインブルー」「アイブルー」などがおすすめです。
鉢植えに最適なのは?
どの品種も鉢植えで育てることができますが、特に樹のまとまりがよい「サンシャインブルー」(サザンハイブッシュ系)は、ベランダ栽培にもおすすめです。

【条件3】収穫を長く楽しみたいなら…

いずれの系統も2品種以上を植えると収穫量が多くなり、果実も大きくおいしくなります(ラビットアイ系は必ず2品種以上混植を要します)。さらに、早生~晩生品種までを上手に組み合わせれば、長期間収穫を楽しめます。ただし、組み合わせは同じ系統同士にするよう気をつけてください。

【条件4】そのまま食べる?ジャムにする?

ブルーベリーの利用は、新鮮な果実をそのまま食べる生食が基本ですが、加工用としても、その利用法はバラエティに富んでいます。例えば、ジャムやデザートソース、ジュース、果実酒、その他パイやケーキなどの製菓材料、さらに肉や魚介料理のソースなどに利用できます。生果でおいしく、また、加工適性がこのように広くある果物はなかなかありません。生食なら大粒で甘い品種、加工するなら収穫量を重視して品種を選ぶとよいでしょう。

おすすめ品種
大果の「チャンドラ」「シャープブルー」など、ハイブッシュ系の品種の多くは生食に適します。また、ラビットアイ系の品種も「クライマックス」「ブルーシャワー」などの大粒種は生食に適しますが、ハイブッシュ系に比べると小粒品種が多く、収穫量が多い点で加工に適します。特に「フェスティバル」はジャム作りにおすすめです。

手前はブルーベリージャムと相性のよいクリームチーズをはさんだベーグル。奥はブルーベリージャムを加えたヨーグルトドリンク。手作りジャムでおいしく召し上がれ!

ブルーベリーの栽培ポイント

苗の植え付け

関東地方では落葉してから3月上旬までの間に、関東以西の温暖な地域では11~12月の秋植え、寒冷地では4月以降の春植えにします。
用土は、ハイブッシュ系は酸性土壌を好むので、掘り上げた庭土に赤玉土中粒とピートモスを混ぜて植え付けます。ラビットアイ系は土壌酸性度の適応性が広いので、ピートモスの代わりに腐葉土を用いても十分生育します。ブルーベリーの根は深く張らず横へ広がるため、夏の高温乾燥に弱いです。庭植えの場合、株元を中心に腐葉土や稲わらなどで土の表面を覆って土壌の乾燥を防ぐようにしましょう。

苗の植え付け

水やり

「ブルーベリーは水で育てる」といわれるくらい、生育には土壌の保水性のよさが必要です。鉢植えやコンテナ栽培でも、夏の高温乾燥時には鉢土の表面にマルチングし、冬でも適度に土の表面が湿る程度の水やりをしてやることが必要です。特に鉢植えの場合、実がなっている木を乾燥させると、果実がしぼんで落ちてしまうので、夏場は朝と夕の2回水やりしてください。

施肥

ブルーベリーを通常の化成肥料だけで、それも硝酸態チッソのみを含むもので育てていると、最初は生育がよいものの、長年にわたって与え続けると、やがて枝の伸びや新しい枝の発生が少なくなり、株そのものが大きくなりません。これは、ブルーベリーが特にアンモニア態チッソを好むためです。年間の施肥量(3年生の木でチッソ10g-リン酸10g-カリ10g必要)のうち、チッソ成分としてアンモニア態チッソ[硫安]を2分の1~3分の1の量で与えることが重要なポイントとなります。また、植え付けて6週間後から、月に1回の割合で硫安を1株に5~6g与えると生育旺盛になります。

受粉

同系統内の他品種との受粉で果実は大きくなり収穫量も増えます。都市部では訪花昆虫が少ない場合もあるので、図のような方法で人工受粉を行うと結実が安定します。

人工受粉の方法

摘芯

6月にはハイブッシュ系の早生品種の収穫が始まります。この時期は果実の発育が盛んになりますが、新梢の先端を切り戻す摘芯という作業によって、樹形を整える時期でもあります。樹冠内の枝のうち30cm以上の新梢や株元から伸びた長く太い新梢(60~100cm)の先端を、それぞれ伸びた長さの4分の1~3分の1を切りとります。摘芯で枝分かれをさせて横に広がるコンパクトな樹形をつくります。

摘芯の方法

おいしいジャムを作ろう!

少しゆるめに作ったジャムは、ソースとしても利用できてとても便利。電子レンジで作れる手軽な方法をご紹介します。少しずつ収穫した実は、冷凍保存して、ある程度たまってからジャムに加工しましょう。

  1. 1

    よく水洗いしたブルーベリーを耐熱ボウルに入れ、砂糖とレモン汁を加え、ラップをかけて電子レンジ(500Wの場合)で約3分加熱する。

  2. 2

    ボウルを取り出し、スプーンの背で果実をつぶす。

  3. 3

    再度ラップをかけ、電子レンジに入れて約3分加熱する。

  4. 4

    あら熱が取れたら、煮沸消毒した密閉容器に移し、冷蔵庫で保存する。

500mlのカップ1杯で約300g

少量でも電子レンジなら簡単!

小林 幹夫

小林こばやし 幹夫みきお
恵泉女学園大学
人間環境学科 准教授
神奈川県横浜市生まれ。東京農工大学大学院農学研究科修了。果樹園芸学が専門で、特にブルーベリー、ラズベリーなどベリー類に造詣が深い。著書に「家庭で楽しむ果樹栽培」(共著)、「初めての果樹ガーデニング」(監修)、「失敗しない果樹の育て方」(監修)などがある。

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