マメ(豆)の栽培方法・育て方を種類別に解説!
たんぱく質や炭水化物、ビタミンなどの栄養素がたっぷり含まれるマメ類。種類も豊富で、育てやすい品種が多く揃うのも魅力です。今回は、人気のある5種類のマメの育て方を紹介。この春から、ぜひ育ててみませんか。
成松次郎
神奈川県農業技術センターなどで野菜の研究と技術指導に従事後、(一社)日本施設園芸協会で野菜の流通振興に携わる。現在、園芸研究家、野菜ソムリエ。
根粒菌がチッソを固定
マメ科野菜の根には「根粒菌」(写真1)が共生し、空気中のチッソを固定し植物にとって必要な栄養分をつくり出し供給するため、チッソの少ない土壌でも生育できます。チッソが多すぎると「木ぼけ」し、実のつきが悪くなります。ただし、インゲンは根粒菌がつきにくいので、ほかの野菜並みのチッソを与えます。また、マメ科を栽培していない畑や造成地では根粒菌が少ないので、チッソを施します。
【写真1】エダマメの根についた根粒菌。
鳥も大好きなタネ
たんぱく質を多く含むダイズは「畑の肉」といわれ、栄養が豊富。鳥にとってもおいしいのか、ハトが芽生えを食べたり、カラスに引き抜かれたりする被害があるため、直まきでは本葉が開くまでは不織布などで覆うことが必要です。ポット育苗は、鳥害を避ける有効な方法です。
さまざまなマメがある
野菜として利用されるマメ類には、未熟な莢を利用するエンドウ、インゲン、ササゲ、フジマメなど、若い未熟種子を利用するソラマメ、エンドウ、エダマメなどがあります。そのほか、もやしに利用されるリョクトウなどもあります(表1)。
(注)(公財)豆類協会のホームページを参考に作成。
マメ科植物の中で、食用として重要なものは70~80種類あるといわれています。このうち、わが国で流通している主な種類を分類すると表1の通りです。
インゲン
つるあり種とつるなし種があり、それぞれに丸莢と平莢があります。つるありでは、丸莢の「ケンタッキー101」、平莢の「モロッコ」、つるなしでは、丸莢の「さつきみどり2号」、平莢の「つるなしモロッコ」が代表品種です。
POINT!
つるあり種に比べ、つるなし種の収穫期間は2週間程度と短い。収穫を長く楽しみたい場合は、ずらしまきをするとよい。
1土づくりと畝立て
連作障害が出やすいので、同じ畑では3~4年間、ほかの野菜を作ります。酸性土を嫌うため、タネまき2週間前に1㎡当たり苦土石灰100を畑全体に散布しよく耕して、土壌改良をしておきます。タネまき1週間前に1㎡当たり化成肥料(チッソ、リン酸、カリの各成分8%)100と堆肥1kgを施し、土とよく混ぜ込みます。つるあり種はベッド幅約90cm、つるなし種は約75cm、高さはそれぞれ約5cmの畝を立てます。地温を上げ、雑草の発生を抑えるためマルチを張ります。
2タネまき
直まきでは5月が適期ですが、つるなし種は7月まで順次まけば、長い間収穫を楽しむことができます。2条植えでは条間約60cm、株間約30cmとし、1カ所に3~4粒まきます(図1)。発芽後、初生葉が展開した時に間引いて2本立ちにします。
【図1】
3支柱立て・追肥
つるあり種は長い竹など2m以上の支柱を合掌式に立てます(写真2)。つるなし種では1m程度の棒を立てて倒伏を防ぎます。追肥は、草丈約20cmのころ1㎡当たり化成肥料50を施用。株元に土寄せし、さらに収穫最盛期に同量の追肥をします。
【写真2】つるあり種の栽培例。
4病害虫の防除
アブラムシとハダニは葉ばかりでなく莢にも寄生するので、虫を見つけたら早めに「粘着くん液剤」などの登録農薬を散布して対処しましょう。
5収穫
開花後10~15日で、子実の膨らみが目立つ前(写真3)に若い莢を収穫します。とり遅れると莢がかたくなり、食味も落ちるので、早めの収穫を心掛けましょう。
【写真3】収穫適期のインゲン。
ラッカセイ
開花後、花の付け根にある子房柄が地中に入り、地中で実ができます。草姿がやや立ち性の中生品種「落花生」、早生品種の「郷の香(さとのか)」、中生品種の「ナカテユタカ」、晩生品種の「千葉半立ち」などもおすすめ。
POINT!
タネまき後、釣り糸を畝の上に張ると、羽が糸に触れることを嫌うため、カラスの飛来を防ぐことができる。
1土づくり
1㎡当たり苦土石灰150を畑全体に散布して耕しておきます。深さ約30cmの溝を70~80cm間隔で掘り、溝1m当たり化成肥料100と堆肥2kgを施し、土とよく混ぜ込み(図2)、溝を埋め戻します。
【図2】
2タネまき
土を掘り上げてベッド幅約30cmの畝を立て、20~25cm程度の間隔で2~3粒のタネをまきます(図3)。鳥よけの方法は、畝の上部に釣り糸などを張るほか、トンネル状にネットをかけるか、不織布でベタかけをするのもよいでしょう。
【図3】
3水やり
発芽までは十分与え、その後はやや乾かしぎみにしますが、夏の乾燥は実の太りに影響するので水やりするとよいでしょう。
4土寄せ
開花後に株元に土寄せをします。この土寄せは子房柄が地中に入りやすくする(写真4)ためです。
【写真4】開花後、子房柄が土に入り、莢をつける。
5病害虫の防除
コガネムシ類の幼虫が、豆莢を食害することがあります。掘りとった時に幼虫が見つかったら、必ず捕殺します。次年度以降は、土づくりの時に「フォース粒剤」などの登録農薬を混和し、防除対策をとります。
6収穫
葉が黄変し、莢が膨らみ、網目がはっきりと見えたころが収穫の適期。中のマメの皮は茶色に着色しています。初めにできた莢が収穫期でも、後から開花したものはまだ未熟。収穫が遅れると、引き抜く時に熟した莢の柄が切れてしまうので、大きい粒が多い初期のものを基準に掘り時期を決めます。ゆでマメにする場合は早生品種を使うことが多く、莢が完熟する20日くらい前に収穫します(写真5)。
【写真5】収穫したラッカセイ。
エダマメ
たんぱく質、ビタミンA、Cを多量に含み、夏の栄養補給に最適。早生品種では「あじみのり」「ビアフレンド」などがあります。風味のよい茶マメ、黒マメも人気で、茶マメでは「福成」、黒マメでは「濃姫」などがあります。
POINT!
収穫適期は3~5日と短いため、同じ品種なら時期をずらして2~3回に分けてタネまきすると、長期間おいしいエダマメが楽しめる。
1土づくりと畝立て
タネまき2週間前に1㎡当たり苦土石灰100を畑全体に散布し、よく耕しておきます。タネまき1週間前に1㎡当たり化成肥料100と堆肥1~2kgを施し、よく混ぜ込みます。その後、ベッド幅約70cm、高さ5cm程度の畝を立て、黒マルチを張ります。
2タネまき・間引き
地温が15℃以上になったらタネまきの適期。中間地では4月下旬~5月が適期で、6月以降では害虫の被害が大きくなります。条間約45cmで2条植え、株間約30cmでマルチにまき穴をあけ、1カ所に3~4粒まきます(図4)。鳥よけの方法は、トンネル状にネットをかけるか、不織布でベタかけをする(写真6)のもよいでしょう。本葉2枚のころ、生育の劣る株をハサミで根元から切りとり、2本立ちにします(写真7)。
【図4】
【写真6】不織布のベタかけ。
【写真7】2本立ちしたエダマメ。
3病害虫の防除
高温期にはカメムシ類が発生し、莢につくと落果します。マメにはマメシンクイガの幼虫が入り込むことがあります。収穫14日前までに、「トレボン乳剤」などの登録農薬で防除します。カメムシには「ベニカ水溶剤」も有効です。
4収穫
莢が膨らんで、指で押さえるとはぜるようになれば収穫期(写真8)。目安は開花から30~35日後。根ごと株を引き抜いて収穫します。
【写真8】収穫適期のエダマメ。
ダイズ
利用目的により品種の選択がされています。家庭菜園では煮豆用として、黄ダイズの「鶴の子大豆」、黒ダイズでは「丹波黒大粒大豆」が適しています。
1土づくりと畝立て
タネまきの2週間前に1㎡当たり苦土石灰100を畑全体に散布し、よく耕しておきます。タネまき1週間前に深さ約30cmの溝を70~80cm間隔で掘り、溝1m当たり化成肥料50と堆肥1kgを施し、よく混ぜ込んでベッド幅約30cmの畝を立てます(図5)。
【図5】
2タネまき
地温が15℃以上になったころからがタネまきの適期で、中間地では6月~7月上旬が適期です。株間約20cmでまき穴をあけ、1カ所に3~4粒まきます。本葉2枚のころ、生育の劣る株をハサミで根元から切りとり、2本立ちにします。
3土寄せ
土寄せは新しい根の発生を促し、株が倒れることを防ぐ効果があります。開花期までに2~3回の土寄せをします(図6)。
【図6】
4収穫
葉が黄色になって落ちるころは莢の水分が十分少なくなっており、さらに茎が変色するころが収穫適期です(写真9)。根ごと株を抜きとるか、株元で刈りとってかけ干しし、乾燥させます。十分乾燥させて脱粒し、害虫の被害粒などをとり除きます。
【写真9】
シカクマメ
草丈が2m以上に伸びるつる性の大型野菜。この名は、莢が角張っていて、断面が四角に見えることに由来しています。沖縄では「ウリズン」とも呼ばれます。
1土づくりと畝立て
タネまき(または植え付け)2週間前に1㎡当たり苦土石灰200を畑全体にまいてよく耕します。タネまき1週間前に化成肥料100と堆肥2kgを施し、よく混ぜ込んでベッド幅約90cmの畝を立てます。
2タネまき
発芽適温は25~30℃なので、直まきの場合は、中間地では5月中旬ごろからが適期。条間約60cmの2条、株間約50cmとし、1カ所3~4粒まきにします(図7)。黒マルチをすれば雑草防止にも効果的です。
【図7】
3支柱立て・整枝
つるありインゲンのように2m以上の支柱を合掌式に立てて(図8)、誘引します。キュウリネットを使うとつるの誘引に便利。
【図8】
4追肥
2週間に1回の割合で、1株当たり化成肥料10程度を与えます。追肥後は株元に土寄せをしておきましょう。マルチ栽培ではマルチの際の部分に施肥します。
5収穫
開花から20日前後、莢長が15cm程度のものがやわらかく、食べ頃(写真10)。莢の生長が早いので、とり遅れに注意。
【写真10】
マメのタネの販売