毎回季節の草花をピックアップ。その特性を生かしたガーデンでの使い方を、相性の良い植物とあわせてご紹介していきます。通常友の会会員様しか読めない、月刊誌「はなとやさい」に掲載の記事となりますが、特別公開しますので、ぜひご覧ください。
クレマチスClematis spp.
キンポウゲ科センニンソウ属
クレマチスといえば、これまでテッセンに代表される大輪の花を咲かせる品種を中心に、主に鉢花として栽培されてきました。そして、ここ数年来の英国庭園ブームにより、庭で咲く魅力的な姿が紹介され、ガーデンプラントとして再び脚光を浴びるようになりました。
クレマチスの仲間は、世界中に300種近くが分布しており、日本には約20種が山野に自生しています。美しい花を咲かせるものが多く、日本でも、江戸時代に自生のカザグルマから園芸品種が作られるなど、古くから人々に愛されていました。また、安土桃山時代の蒔絵には、中国原産のテッセンが描かれており、当時すでに日本に入って栽培されていたことが想像されます。今日、膨大な数の園芸品種が作出されていますが、本格的な育種の始まりは、19世紀にシーボルトらが日本や中国など東アジアに自生する種を持ち帰ったことによります。
ひと口にクレマチスといっても、その姿、性質はさまざまです。直径20cmもある大輪の花からわずか数cmの小さな釣鐘状の可憐な花まであり、また花色も純粋な青色を除けばほとんどの色が揃います。最も華やかなのは春から初夏にかけての季節ですが、真夏に咲く品種、秋から開花を始める品種、真冬に開花する品種などがあり、組み合わせ次第で、1年中クレマチスを楽しむガーデンづくりも可能です。
主な園芸品種
クレマチスの品種は、いくつもの系統に分けられていて、それぞれの生育サイクルや剪定などの管理方法も異なります。クレマチスの生態を理解するには、まず、どの系統に属する品種なのかを確認することから始まります。
ビチセラ系
四季咲き性、新枝咲き。耐暑性があり、1番花が終わった後、地際から数節残して強く切り戻すと、2番花も楽しめる。冬に充実した芽の所まで切り戻す。
‘ボナンザ’‘Bonanza’
パステル調の青紫色の花は、バラなどと組み合わせやすい。
‘エトワールローズ’ ‘E’toile Rose’
上品な桃色に、濃桃色の筋が入る。剛健で長期間花を楽しめる。
インテグリフォリア系
四季咲き性、新枝咲き。耐暑性があり、花期が長いものが多い。冬に数節残して切り戻す。
‘篭口’(ロウグチ)‘Rohguchi’
小さな紫色の半鐘形の花を多数咲かせる。暑さに強く花期が長い。
モンタナ系
一季咲き性、旧枝咲き。春に愛らしい桃色の花を多数咲かせる人気のグループ。少し暑さに弱いので、暖地では東に面した場所に植え付けるのがよい。剪定は、枝を整理する程度にとどめる。
モンタナ・ルーベンス C. montana var. rubens
紫桃色の花には甘い香りがある。次第に色が淡くなり、その濃淡が美しい。
パテンス系
一季咲き性、旧枝咲き。日本自生の、「カザグルマ」の血を引いた系統。大輪の花を咲かせる品種が多い。品種によっては、1番花の後、弱く切り戻すと再び開花する。冬の剪定はしない。
‘藤の川’‘Fujinokawa’
鮮やかな紫色の大輪花を咲かせる。ライム色の葉をもつ植物と美しいコントラストをつくる。
‘プロテウス’ ‘Proteus’
淡い桃紫色の優しい質感の花を咲かせる。後半に咲かせる花は一重咲きになる。
シルホサ系
一季咲き性、新旧両枝咲き。ほかのクレマチスと生育パターンが異なり、夏に落葉して休眠し、秋から生長を始める。水はけのよい場所を好む。剪定は、枝を整える程度にとどめる。
‘日枝’ ‘Hie’
花弁外側の乳白色と、内側の濃赤紫の斑のコントラストが美しい。
ジャックマニー系
四季咲き性、新枝咲き。1番花の後、数節残して切り戻すと、2番花が楽しめる。冬に充実した芽の所まで切り戻す。バラとの組み合わせにおすすめの系統。
‘ニオベ’‘Niobe’
咲き始めは、黒に見えるほど濃い赤色の花を咲かせ、次第に淡くなる。
‘ロマンティカ’‘Romantika’
深い紫色の花を多数咲かせる。淡い桃色のバラと組み合わせると美しい。
フロリダ系
四季咲き性、新旧両枝咲き。テッセンが含まれる。1番花後、軽く切り戻すと、2番花が楽しめる。冬は枝を整える程度にとどめる。
白万重C.florida var.flore-pleno
しべが白色に弁花している。暑さに強く、長期間花を楽しめる。
テキセンシス系
四季咲き性、新枝咲き。花が少なくなったころに強剪定を繰り返すと、長期間花を楽しめる。冬は地際で切り戻す。
‘プリンセス・ダイアナ’‘Princess Diana’
濃桃色で、小さなチューリップのような花を多数咲かせる。暑さに強く丈夫。