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小さくて優雅なユリの世界 矮性ユリを楽しもう

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ユリは草丈1m程度のものがよく知られていますが、矮性ユリは遺伝的に草丈30〜40p程度と小ぶりで、花もちがよく、長く花を楽しめることから人気が高まっています。作りやすくて花つきがよく生育も早いため、ユリを初めて栽培するという方にもおすすめです。

花は大きく株姿はコンパクトで鉢植え、庭植えともに映える

矮性ユリは大きく分けて二つのタイプがあります。スカシユリ系とオリエンタル(オリエンタルハイブリッド)系です。スカシユリ系は花色が豊富な'タイニー'シリーズとして紹介されています。このシリーズは草丈が伸びすぎないので鉢植えでコンパクトにでき、風などの影響を比較的受けないため倒れにくいです。非常に花つきがよく多くの花を咲かせて長い期間、花を観賞できます。中でも特に珍しい八重咲きの'タイニーダブルユー'は発色、ボリュームともにすばらしいパフォーマンスで魅了してくれることでしょう。
オリエンタル系は'サニー'シリーズをご紹介します。白、桃、濃桃と色彩は少ないものの非常に丈夫で作りやすく、しっかりした茎と花は「凛とした小さな巨人」を彷彿させます。
いずれも草丈の割に花が大きく華やかです。鉢植えでも庭植えでも栽培できるので、ぜひ挑戦してみてください。ただし、庭植えの場合はほかの植物に隠れてしまわないよう、花壇では前の方に植えるなどコンビネーションに気をつけましょう。花壇の主役としてはもちろん、周りの植物と調和するナチュラルなイメージで楽しめるのも、矮性ユリの魅力といえるでしょう。

鉢植えの矮性オリエンタルゆり'サニーボネール'(写真奥)。 花つき、花もちよく切り花で飾るのも美しい。

鉢植えの矮性オリエンタルゆり'サニーボネール'(写真奥)。 花つき、花もちよく切り花で飾るのも美しい。

栽培管理のポイント

適する環境

基本的には古くから親しまれているスカシユリ系、オリエンタル系と同じで、風通しがよく明るい場所を好みます。夏の暑さには少し弱いので、夏は半日陰になる場所で管理すると開花後の生育が順調になるでしょう。

植え付け

秋植え球根なので10〜12月が植え付け適期です。寒冷地では10月中に行います。用土は特に選ばず水はけのよい土が向きます。市販の球根用土も利用可能です。球根の高さの2個分の深さになるよう植え付けます。ユリには球根の下から出る下根と、球根の上の茎に生える上根があります。下根は球根を支え、上根は水分や養分を吸収します。上根は非常に重要なのでよく張るよう、ある程度の深さが必要です。1球植えの鉢植えは5号前後の鉢がよいでしょう。庭植えは球根2〜3個分の株間をあけて植えます。

水やりと肥料

鉢植えでは、植え付け後に鉢底から水が流れるくらいにたっぷりと水をやった後は、土の表面が乾いてからたっぷり水をやります。庭植えでは、植え付けの時に地面に染み込むようたっぷりと水をやり、その後は日照りが特に続くなど土の表面が乾いた時に水を与えるようにしましょう。肥料は、植え付ける時に土の表面に緩効性肥料を少量施し、その後、蕾が見え始めるころに化成肥料を少量与えます。

病害虫防除

アブラムシがつきやすく、生育中に何度か殺虫剤での予防が必要です。アブラムシはユリに大敵のウイルス病を媒介するので気をつけましょう。ウイルス病にかかると翌年に葉が萎縮したり花が咲かなくなったりします。ユリは灰色かび病に比較的かかりやすく、アブラムシ対策と同様に、殺菌剤も併用して予防しましょう。

咲かせてみたい!おすすめ品種

美しい花色とバランスのよい株姿を生かし、さまざまなシーンで活用できる品種をご紹介します。

サニーバハマ

サニーバハマ

純白の花は夏の暑さを忘れるようなさわやかさで、グリーンとの対比が鮮やか。蕾も真っ白で美しい。'サニー'シリーズの品種で草丈約40p、花径約15p。花期7〜8月。

タイニーゴースト

タイニーゴースト

深く暖かみのある赤い花は絶妙な色合いで、庭の主役にふさわしい存在感を誇る。花が多くつくので長く楽しめる。'タイニー'シリーズの品種で草丈30〜35p、花径約12p。花期6月ごろ。

サニーボネール

サニーボネール

桜の花をイメージさせるような優しく淡い花色と、フリルがかった花弁が魅力的。数輪が咲くとボリューム感がある。'サニー'シリーズの品種で草丈約40p、花径約15p。花期7〜8月。

タイニーダブルユー

タイニーダブルユー

珍しい鮮やかなオレンジの八重咲き。花は小ぶりながらもゴージャス。蕾から咲き終わるまで表情豊かで美しい。'タイニー'シリーズの品種で草丈30〜35p、花径約12p。花期6月ごろ。

花を長く楽しむコツ

今回ご紹介する'タイニー'シリーズ(スカシユリ系)'サニー'シリーズ(オリエンタル系)は、どちらも花の数が多く、1番花が咲き始めてから頂点花が咲くまでの開花期間が長いのが特徴です。より長く楽しむには、咲き終わった花を花茎の付け根から摘み取ります。そうすることで病気の発生とタネができるのを防ぎ、球根が充実します。
開花が始まったら半日陰の所に移動すると、より長く観賞できます。ただし、スカシユリ系は日照が不足すると蕾が落ちたり、花が咲かなくなることもあるので気をつけましょう。

片岡 信義 (かたおか のぶよし)

片岡 信義 (かたおか のぶよし)

新潟県の園芸会社鞄園代表取締役。小学生のころからチューリップの花摘みの手伝いを通じて球根の魅力にひかれる。約30年前に本格的なユリのブームが始まってからは、毎年オランダを訪れて新品種などの導入に奔走している。