- 苗が届いたら
- 3号〜4号鉢に1株を目安とし、水はけのよい土に植えます。鹿沼土や赤玉土を主体に軽石やヤシがらチップなどを混ぜ込み、元肥を少量施して植え付けます。元肥は、大粒の固形化成肥料を1〜2粒、さらに液肥を追加するのもよいでしょう。初心者の方は市販の山野草の用土などを使用するのもおすすめです。
雪割草(ユキワリソウ)の育て方・栽培方法や魅力を解説!
ユキワリソウは高山植物や山野草ではなく、里山や田んぼの畦道などに咲く平地の植物。だから、かわいくて丈夫なのです。膨大なバリエーションの中からお気に入りを見つけて、春が来るまでの季節に庭で咲かせてみましょう。
- 花の少ない春先に咲く
- ユキワリソウの正式な和名は、「オオミスミソウ」といい、日本海側の特に新潟県に多く自生する植物です。
冬の間、雪に閉ざされた新潟の里山でじっくりと春を待ち、やがて気温が上がり、暖かい日差しを浴びるようになると、雪解けを待ちきれずに、そっと蕾をのぞかせます。そして、春の到来が確実に感じられるころには、小さな色とりどりの花を咲かせて、里の人の目を楽しませてくれるのです。
雪解けとともに咲き上がってくるこの可憐な花は、昔からユキワリソウと呼ばれ親しまれてきました。今ではその呼び名もすっかり定着し、昔と変わらず春の先触れとして、まだ寒さの残る花の少ない季節を彩るのです。
- さまざまな花色と咲き方
- ユキワリソウの花の基本色は白ですが、そのほかに赤、桃、紫などさまざまな花色があり、中には非常に鮮やかな色も見られます。また、色だけでなく咲き方も多種多様。「変化咲き」と呼ばれる変わった咲き方をする花がたくさんあります。現在では、人工的な交配も盛んに行われるようになり、変化の幅はさらに広がっています。
この花色と咲き方の組み合わせからなる膨大なバリエーションが、ユキワリソウの一つの特徴です。変化の幅広さにおいては、ほかに勝る花がないといっても過言ではないでしょう。またコンパクトに楽しめる、比較的小ぶりで可憐な草姿も魅力的。なおかつ栽培が比較的容易なところもユキワリソウの魅力でしょう。
- 暑さにも寒さにも強い
- よく勘違いされる方がいらっしゃいますが、ユキワリソウは高山植物ではありません。海岸沿いの山の麓や、田んぼの畦道近くにも自生している平地の植物です。そのため、暑さ寒さに強く、近年の夏の猛暑でも、適切に管理すれば、暑さをしのげるたくましさをもっています。
これまでに栽培を断念したり、失敗したという方は、大事な栽培ポイントの見落としや、作業のし忘れなどがあったのではないでしょうか。そういった点を改善すれば、とたんにうまく育てられるようになるかもしれません。
雪割草コレクション
膨大なバリエーションの中から選んだ花を、咲き方別にご紹介しましょう。
標準花
6枚前後の外弁と、雄しべ、雌しべで構成される、ごく普通のユキワリソウの花。しかし、標準的な花形であっても、一花一花が千変万化の表情を見せてくれるのがユキワリソウです。単純だからこそ花の個性、深さがよく分かり、逆に近年人気を増してきたようです。
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- 白色の標準花‘
素心 ’
- 白色の標準花‘
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- 濃赤の標準花
二段咲き
雌しべはそのまま残り、雄しべだけが花弁化した花です。標準花と変化咲きの中間的な咲き方で、標準花のシンプルな味わいと変化咲きの複雑さを併せもち、端整な花が揃っています。
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- 古典的な美を宿す花‘
初鏡 ’ - 端整な花形に、古典的な赤色と白色の対比が美しい、二段咲きの代表格。ほかの秀花の源流となった名花で、多くの愛好家によって愛培されている。
- 古典的な美を宿す花‘
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- 力強く潔い美花‘
源氏蛍 ’ - 色のコントラストが潔く、力強い二段弁がしっかりまとまったバランスのよい花形。まだ数多く出回っていない名品。
- 力強く潔い美花‘
三段咲き
雄しべ、雌しべがその特徴を残しながら花弁化したもので、花が三段に盛り上がっているように見えます。花弁の形が一様ではなく、花の色も変化する複雑な花芸を見せるものが多く、変化咲きの中でも人気の高い種類です。
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- 渋い花色に引きこまれる‘
黒牡丹 ’ - 緑色というより黒色に近い独特な花色が目を引く三段咲き。こうした渋い味わいの花が楽しめるのもユキワリソウの魅力。
- 渋い花色に引きこまれる‘
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- 華やかな赤と緑の対比‘
花神 ’ - 縁取りの赤色と、中心部の緑色の対比がきれいな三段咲きの秀花。外側の花弁に玉斑と呼ばれる白い模様が入ることがあり、そうなると一層華やかに見える。
- 華やかな赤と緑の対比‘
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- 大輪で豪華な有名品種‘
赤鬼 ’ - 愛好家で知らない人はいない有名品種。大輪で豪華な花は、後のさまざまなユキワリソウの目標となった名花。
- 大輪で豪華な有名品種‘
唐子 咲き
唐子咲きは千重咲きとよく似ていますが、雄しべと雌しべは完全に弁化しないのが特徴です。雌しべが残りやすく、また花弁が波打って迫力のある姿になることも多いタイプです。
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- 咲き分け品種の名花‘
谷間鶴 ’ - 珍しい種類の花で、一つの株から唐子咲きになる花と標準花と、どちらのタイプの花も咲く「咲き分け」の品種。シンプルな色ながらさまざまに咲き分ける様子が華やか。
- 咲き分け品種の名花‘
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- 気品ある色と量感‘
紫雲嶺 ’ - 大輪で、中心部が盛り上がるボリュームのある花は気品のある豪華さ。紫色と白色のコントラストが美しい。
- 気品ある色と量感‘
千重咲き
雄しべと雌しべの区別なく、すべて花弁化したものが千重咲きです。一見して豪華な花で、見た目も美しく、初心者から愛好家まで多くの人に愛される咲き方です。
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- 絶妙なバランスの複色花‘
千佳 ’ - 濃い紅色と、緑色が内側にリング状に入り、色のバランスが絶妙。このような一花で異なる色の層をもつ花は「複色花」と呼ばれ、人気の高い花が多い。‘千佳’はそうした花の中でも代表格の名花。
- 絶妙なバランスの複色花‘
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- 花色が変化するかわいい花‘
茜鶴 ’ - 淡紅色の外弁に中心が白くなる優しい色合いで、昔から人気の高い名品。白い部分に時に緑色が入ることもあり、若干の花色の変化も楽しめる。
- 花色が変化するかわいい花‘
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- 淡く優しい花色が人気‘
紅流恋 ’ - 淡い色彩の花の中に美しい花があるのもユキワリソウの魅力。そんな優しい花色の中でも特に注目を集める品種で、展示会では常に上位の人気。
- 淡く優しい花色が人気‘
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- 超濃色が美しい逸品‘
黒真珠 ’ - 数少ない濃色の花の中でも一際目立つ超濃色で、しかも千重咲きという逸品。最良の状態で咲いた年にはほれぼれする美しさを見せる。
- 超濃色が美しい逸品‘
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- 宝石のように美しい‘
紅 おけさ’ - 赤一色の千重咲き。シンプルな濃い赤色に豪華な咲き方で、宝石のような美しさ。長く根強い人気を誇る。
- 宝石のように美しい‘
斑 入り・葉変わり
斑入りや変わった葉の形になる品種は珍重されます。最近は、斑入りで花も美しいというものも登場し、魅力が高まっています。1年を通じて葉芸を楽しめるのも常緑のユキワリソウならでは。
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- 斑入りや葉変わりをもつ数種のユキワリソウ
栽培管理のポイント
- ①日よけが大切!日焼けは禁物!
- 何といっても日よけが大切。5月ごろからは直射日光を一切避けること。これが最大のポイントです。西日はもちろん朝日もいりません。10月ごろまでは直射日光の当たらない場所に置きましょう。
- ②水やりは「乾いたらたっぷり」
- 日陰に置けば、自然と乾燥は抑えられます。夏は、水をやりすぎないように注意しましょう。
- ③冬は風に当てない!
- 本来、冬は雪の下で保護されている植物です。マイナス5℃くらいは平気ですが、風が強い地域では、直接風が当たらないように保護しましょう。
年間の管理方法
- 11〜12月
- 春までじっくり休ませる期間で、管理は比較的楽な時期です。0℃〜マイナス5℃くらいであれば越冬できるので、暖房の入っていない屋内では問題なく管理できます。ただし屋内でも凍りつくような場所に置くのは避けましょう。また、屋外では極端な寒風や低温に注意し、軒下に置いたり、落ち葉をかけたりして冷害を防ぎます。
- 1〜2月
- すでに花芽はついているので、咲くのを待つだけです。乾きすぎに気をつけ水やりを忘れずに。屋外では極端な気候の変化に注意しましょう。急に低温にあうと、花芽や葉を傷めます。
- 3月
- 徐々に花が咲き始める時期です。花期は比較的長いのですが、咲き終わった花は花茎ごと根元からつまんで取り除きましょう。また、散った花弁は、株元に残らないよう、こまめに取り除きます。終わった花にかびがつき、それが本体につくと、株ごと傷むことがあります。そうならないよう、花がらは早めに取り除きましょう。特にハウスや屋内で育てている場合は注意が必要です。
- 4月
- 花が終わったら、古い葉も茎ごとつまんで取り除きます。花後に新しい葉が展開してきます。古い葉をあらかじめ取り除いておくと、新葉が邪魔されることなくきれいに展開できます。またこの時期に春の肥料として緩効性の肥料を与えます。化成肥料、有機肥料どちらでも大丈夫です。この時期までは水を切らさないよう、乾いたらたっぷり与えます。
- 5月
- 新葉が展開して軸がしっかりしてきたら、直射日光から保護する時期です。具体的にはサクラが咲き終わるころ、5月上旬が目安です。ユキワリソウを育てるコツは、この日よけにあります。ユキワリソウの自生地は、この時期ほかの下草の陰になり、まったく日が当たらなくなります。ですから、明るい半日陰や午前中日が当たる場所などではなく、直射日光の当たらない完全な日陰に置くことが大切です。朝日や西日もなるべく避け、とにかく直射日光を避けましょう。
- 6月
- 梅雨時は高温多湿になりがちなので、なるべく雨の当たらない場所に置いて、根の傷みを防ぎます。乾いたらたっぷりやる、という水やりの基本を守るように心掛けましょう。
- 7〜8月
- 猛暑を乗り切るため、なるべく温度が下がるように夕方に水やりをし、また風通しもよくしましょう。この時期は乾燥するとハダニが出やすい時期です。ハダニは葉の裏につくので、できれば時々葉裏にも霧吹きで水をかけるようにします。それでも発生したら、早めに殺虫剤で駆除します。
- 9〜10月
- 植え替えを始める時期です。土が古くなった鉢は新しい用土で植え替えると、新根の発根もよくなり、見た目も清潔になります。夏場に傷んでしまった葉や古い真っ黒な根は取り除きましょう。ユキワリソウは芽だけになっても大抵はきちんと花を咲かせてくれるものです。
暑さも盛りを過ぎ、日差しが和らいできたら、日よけを外して日光に当ててもよいころです。地域にもよりますが、9月下旬〜10月上旬になったら、再び日光に当て始めましょう。また、この時期に秋の肥料をやると、花芽の充実に効果的です。基本的には春と同じ肥料で大丈夫ですが、リン酸、カリの成分が多めの肥料に切り替えてもよいです。植え替えと同時に与えるとよいでしょう。
- 土岐 浩樹
- 1978年青森県生まれ。青森の冷涼な気候を生かして、国内外の山野草・宿根草の生産を手掛ける。