野菜の防寒対策に必要な防寒資材をご紹介!畑の霜よけにもおすすめ!
寒さに比較的強い野菜でも、凍るような寒さのもとでは生育がとどこおり、葉が傷んだり、枯れたりします。また、冬越しするエンドウやソラマメなども、霜に当たると株が傷みやすくなります。そこで活躍するのが防寒資材です。
露地で用いる防寒資材には、ビニールやポリエチレンフィルム、不織布などがあります。寒冷紗(かんれいしゃ)も霜よけとして使用できます。
防寒資材を使うと、冬の時期に、ホウレンソウやシュンギク、コマツナ、レタスなどの葉菜類や、ダイコン、カブ、ニンジンなどの根菜類の栽培ができます。また、一般的な栽培時期よりも早く栽培したり、遅く栽培したりすることも可能です。
ただし、防寒資材での保温にも限度があります。ビニールトンネルなどでは昼間の温度は高くなりますが、夜間は外気温と同じくらい低くなるので注意が必要です。
畑の地面を覆うことを「マルチング」といいます。
マルチ資材にはいろいろな種類がありますが、寒い時期には地温を上げる効果があるポリ(ポリエチレンフィルム)を使用します。ポリには透明や緑色、黒、黒に銀線入り、白と黒のリバーシブル、シルバーなどがありますが、冬季は、地温が上がりやすく、雑草の発生を抑える効果のある黒マルチが適しています。ホウレンソウやタマネギなどの葉菜類の畑には、あらかじめ穴のあいた「穴あきマルチ」が便利です。
透明 | 地温が上昇しやすい反面、光を通すので雑草が出やすい。 |
---|---|
緑色 | 地温上昇は透明と黒色の中間。雑草は出にくい。 |
黒色 | 透明、緑色フィルムに次ぐ地温上昇率。光を通さないので雑草抑制効果が高い。 |
銀線入り黒色 | 黒色と同様の効果。銀線は光を反射するので、光るものを嫌うアブラムシよけの効果がある。 |
白黒 (リバーシブル) | 目的により表裏を使い分けられる。 白を上にすると地温上昇を抑制する。 |
シルバー | 地温上昇を抑制する。アブラムシよけの効果がある。 |
栽培する作物や気温などにあわせて、使用する資材を選びます。
保温シート類に比べて効果は劣りますが、不織布や寒冷紗も防寒に使用します。
例えばレタス、コマツナ、ホウレンソウなどの寒さに強い葉菜は不織布や穴あきの保温シートを、エンドウ、ソラマメなどの寒さに強い果菜は霜よけ用に寒冷紗を使用します。ダイコン、カブ、ニンジンなどの低温に感応して花芽ができる野菜は、保温性の高い穴なしの保温シートを使用するのが一般的です。
不織布はポリプロピレンの繊維を織らずに圧縮してシート状にしたもの。保温効果や霜よけ効果があり、透光性も高いので、冬季は葉菜や根菜栽培などのベタかけやうきがけ、トンネルがけなどに使用されます。軽く扱いやすい反面、風で飛ばされやすいので、マルチ押さえや土などで地面にしっかり固定します。
寒冷紗は遮光や防寒、防虫などに使われる網目状の布のこと。いろいろな目合い(目の大きさ)のものがあり、細かい方が防寒効果は高い反面、通風や透光性が悪くなります。寒冷紗より防寒効果は低いものの、防虫ネットも霜よけとして使用できます。
保温シートにはビニール、農PO(のうピーオー)、農酢(のうさく)ビなどがあり、主に畝の上にかぶせたり、トンネルがけしたりして使用します。 トンネル内が高温・多湿になりすぎないように、無数の小さな穴をあけたものや、直径5cmほどの穴を一定間隔にあけたものなどもあり、春先に気温が上がった際に、換気の手間が省けるなどのメリットがあります。
ビニール (塩化ビニール・塩ビ) | 保温効果が高いので厳寒期の栽培や寒さに弱い野菜に向く。低温でかたくなり、やや扱いにくい。 |
---|---|
農PO (ピーオー:ポリオレフィン系特 殊フィルム) | 低温でもかたくならない、べとつかない、軽いなどの特長がある。穴あきタイプもある。耐用年数はビニールより長い。 |
農酢ビ (農酢ビニール) | 光線透過は優れているが、保温性がビニールや農POより劣る。安価で汚れにくい。 |
農ポリ (農業用ポリエチレンフィルム) | べとつかない。汚れにくい。軽く、薄い。安価。穴あきもある。霜に対しての効果はほとんどない。 |
トンネル用支柱を畝をまたぐように刺し、不織布や寒冷紗、保温シートなどで作物を覆うことを「トンネルがけ」といいます。
畝をまたぐように、トンネル用支柱を50cm間隔に刺していく。
トンネル用被覆資材の片方の端を固定する。
もう一方を引っ張ってピンと張り、同様に固定する。
被覆資材が風で飛ばないように、
上からひもやトンネルバンドなどを渡して補強する。
保温効果をさらに高めたい時は、
被覆資材のすその部分を土で埋める。
支柱を使わず野菜に直接不織布などをかけることを「ベタかけ」といいます。ベタかけは霜よけや保温・保水効果のほか、防風効果もあります。
タネまき(植え付け)後、または生育中に、
畝全体を覆うように被覆資材をかぶせる。風で飛ばされないように、
周囲を留め具などで留めるか、土をかぶせて固定する。
トンネル用支柱を使い、野菜と被覆物の間に余裕をもたせる「うきがけ」という方法もあります。
不織布を使ったうきがけ。ある程度草丈が伸びてきても
生育をじゃましないのがメリット。
1.2月ごろ、1m²当たり完熟堆肥(たいひ)2kg、有機入り化成肥料(チッソ、リン酸、カリの比率が各8%)を150gまいて土づくりをし、畝を立てる。
2.黒マルチを張り、10〜15cm間隔に穴をあけ、1カ所に3〜4粒ずつタネをまく。
3.覆土(ふくど)後はたっぷり水やりし、保温シートをかけて密閉する。
4.発芽後、本葉5〜6枚までに数回間引いて1本立ちにする。日中、トンネル内の温度が30Cを超すようになったら、保温シートに直径5cmほどの穴をあける。初めは少なめに、温度の上がり具合を見ながら徐々に多くする。
5.最終間引き時に1m²当たり50gの有機入り化成肥料を追肥する。3月下旬から収穫がスタート。根の直径がミニニンジンは2〜3cm、小カブは5〜6cmになったら引き抜いて収穫する。
千葉大学園芸学部卒業後、農業高校で園芸や生物工学などを指導する。退職後は、書籍の執筆や監修などをするかたわら、家庭菜園を楽しむ。生け花や絵画、写真など多彩な趣味をもつ。著書に「だれでもできる ベランダで野菜づくり」(家の光協会)などがある。
ブログ(ポタジェ)http://potager.jp/