椿の育て方・栽培方法を解説!耐寒性についても紹介

  • 特選販売
  • 椿を育てる

佐藤椿園 園主 佐藤 晴美

愛知県在住。ツバキ作家(園芸家)。名古屋圏を中心に、ツバキ展の開催や園芸教室の講師などを行っている。中部地方各地に点在する、ツバキ公園のデザイン・植栽を手掛けており、古典ツバキの魅力を伝えるとともに、新花作出にも積極的に取り組む。

銘花 椿を育てる 〜あらためて見直す日本の風情〜

日本でこの花を知らないという人は、おそらくいないのではないでしょうか。一般家庭の庭で、侘び寂びの世界で、時に野趣あふれる姿を、時にしっとりと伝統的なたたずまいを見せる、ツバキ。
今回はその魅力あふれる花木の育て方を、ツバキ育種のプロフェッショナルにご紹介いただきます。日本の銘花をぜひご家庭で。

ツバキ(ツバキ科ツバキ属)学名:Camellia japonica

木偏に春と書く「椿(ツバキ)」は、まさに春の訪れを告げる日本の代表的な常緑花木です。
現在では世界の多くの国々で栽培されていますが、その歴史は古く、日本原産のツバキは1624年に始まる寛永年間より多くの園芸品種が作り出されてきました。
本州・四国・九州など、暖流沿いに野生するヤブツバキを元に、各地で独特の園芸品種が生み出され、現在では日本種で2000種以上、世界のツバキを合わせると6000種以上にもなろうとしています。また、それまで日本にはなかった中国原産の黄花ツバキ‘金花茶’の登場により、日本のツバキの世界は新しい時代を迎えたといってよいでしょう。
ツバキは品種によって咲く時期が大きく異なります。9月から10月にかけて咲き始める早秋咲き品種から、4月から5月まで咲いている晩春咲き品種を合わせると、ほぼ四季を通して楽しめる花木といえます。
日なたから日陰まで幅広い場所に適応し生長するツバキは、庭木・鉢植えとしてはもちろん、その趣き深い花姿は切り花や茶席でも楽しまれ、愛されています。

ツバキの育て方

植え付け

◎苗木の植え付け時期は秋〜春(10月〜翌4月)が適期です。

一般には秋口から苗が流通しますので、まずはお気に入りの花を見つけてください。希少流通品種などは、通信販売などで購入するとよいでしょう。
中国やベトナム原産のツバキは5℃以下になると枯れるおそれがありますが、そのほかは一般的に耐寒性が強く、マイナス5℃ほどまでは耐えることができます。

鉢植えの場合
1) 6〜8号鉢で管理するのが適当です。
2) 用土は、赤玉土:鹿沼土:腐葉土または市販の培養土を6:2:2程度の比率を目安にした混合用土を用います。鉢底土には鹿沼土大粒等を用いて、水はけをよくします。
3) ポットから苗を取り出し、根鉢を崩さないように鉢中央に置き、苗の傾きを確認しながら土を入れていきますが、この時深植えにならないように注意します。
4) 鉢底から水が流れるまで潅水し、緩効性肥料を置いて植え付け完了です。
庭植えの場合
1) 根鉢の2倍ほどの大きさの穴を掘ります。深さは根鉢と同程度でよいでしょう。
2) 掘り起こした土と穴の底に、完熟堆肥と腐葉土、または市販の元肥入りの培養土を2割ほどすき込んで土壌改良を図ります。
3) ポットから苗を取り出し、根鉢を崩さないように穴の中央へ置きます。
苗の傾きを確認しながら土をかぶせますが、この時に深植えにならないよう注意します。
4) 植え付けた苗がぐらつかないように根鉢を囲む土をしっかり押さえます。
根が活着するまでの間は、風などで転倒する恐れがあるので支柱を添え、ビニールバンドなどで数カ所を固定します。
5) 根鉢部分に水をたっぷりとやり、緩効性肥料を施して植え付け完了です。
〈庭植えの手順〉 1)根鉢の2倍ほどの穴を掘る。 2)傾きを確認、深植えしない。 3)傾きを確認、深植えしない。

良質な苗の特徴

1) 品種名のラベルがついている。
2) 苗木全体が黄色っぽくなく(肥料が切れていない)、極端に蕾の多い状態でない(株が弱っていない)。

挿し木苗と接ぎ木苗の違い

3年生苗の比較。左が挿し木、右が接ぎ木。
●挿し木苗
一般に市販されていますが、接ぎ木苗に比べると、後の生長にも差が出るという点があります。
●接ぎ木苗
挿し木苗と比べると生長が早く、鉢植え、露地植えのどちらにも向きます。台木(サザンカ)が非常に丈夫で土質を選ばないため、移植にも耐えやすいという長所もあります。
品種により違いはありますが、接ぎ木苗の1年は挿し木の2〜3年分の生長になります。

水やり

◎鉢植え

用土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでやります。

◎庭植え

雨の少ない夏場以外は、特にやらなくてかまいません。

肥料の施し方

◎庭植え、鉢植えともに年2回が基本です。

花が終わる3〜4月に施す「お礼肥」と、冬に向けて体力を蓄える9〜10月の「秋肥」があります。どちらの時期も、効力の長い緩効性肥料をおすすめします。特に、次のシーズンに向けた準備が始まる春のお礼肥は重要で、その後の新芽伸長や花つきにも大きく影響します。

施肥の目安 (例)12cmポット苗で化成肥料の玉肥を施す。
鉢植え→3〜5粒 地植え→10粒

害虫と病気の管理

◎害虫で特に気をつけたいのは「チャドクガ」です。

4月下旬〜5月中旬と7月下旬〜8月上旬の年2回発生します。葉の裏に群生し、整列して行動するので別名「兵隊虫」とも呼ばれます。幼虫〜成虫の体を覆う毒毛に触れるとかぶれるので注意してください。
幼虫が食べた葉は透けていたり、一部が茶色になっていたりします。もし見つけたら、虫には絶対触れずに捕殺するか、殺虫剤を散布します。スプレー式の殺虫剤を準備しておくのもよいでしょう。

◎病気は予防が大切です。

病気が発生しやすいのは、新芽時の5月以降と高温多湿になる6〜7月ですが、発生時期前に殺菌剤を予防散布するとよいでしょう。
ツバキは病気に強い植物です。もし発生しても被害葉を切り取り、焼却もしくは廃棄すれば、それほど大きな被害は出にくいといえます。
害虫と病気を同時防除という意味で、チャドクガ発生期に殺菌・殺虫を同時に行うのも1つの手段です。同時に展着剤を用いることにより、雨天や水やりによる散布薬剤の流出防止もできます。薬剤散布時は葉の裏や幹にもしっかり散布することが重要です。

不要枝の剪定

◎剪定は花が終わる3〜5月に行うとよいでしょう。

木の幹が透けて見えるような剪定を行い、自然樹形を維持するように心掛けます。接ぎ木の成木(1.8m以上)で、肥料が適切に施されていれば太い枝で切り戻す強剪定も可能です。

不要枝の剪定

栽培管理カレンダー ※中部地方基準

栽培管理カレンダー

TOPへ もどる

2010/09/01