ウッドデッキと庭を花木で仕切ると、庭から家の中が丸見えにならず、また、庭のアクセントとしても効果的。常緑タイプのフェアリーマグノリアʻブラッシュʼなど、葉が密に茂る樹種なら、花を楽しみつつ、目隠し効果もねらえる。
仕切りや目隠しに利用したいおしゃれな樹種
枝や葉が密につき、刈り込みに強い樹種は垣根によく使われますが、垣根の利用だけではもったいない!
ほかにも空間を仕切ったり、目隠しをしたい場所はありませんか?
花が楽しめたり、葉色が美しかったり、そんな魅力的な樹種で、視線を優しく仕切るフェンスに仕立ててみましょう。
大きな花が美しいマグノリアをデッキと庭の仕切りに
フェアリーマグノリアʻブラッシュʼ
樹高の低いアベリアで駐車場と庭を優しく仕切る
垣根というと、目隠し効果も考えて人の身長より高くするのが一般的だが、低木を利用した低めのものは、視線を遮らずに空間を緩やかに仕切れる。葉が密につくアベリアの中でも花が大きくかわいらしいʻピンキーベルズʼなら、軽やかで美しい仕切りに。
アベリアʻピンキーベルズʼ
花も果実も楽しめるフェイジョアで
常緑中木のフェイジョアは、花も葉色もきれい。果実も収穫できるフェンスで楽しさ倍増!
吉野ツツジなら花期はこんなに華やか!
3〜5月には木全体が華やかなピンクに染まるほど花つきがよいので、フェンス仕立てにして庭の仕切りにぜひ利用したい。
グミʻギルトエッジʼなら輝くように明るい仕切りに!
半日陰の環境でも美しい斑入り葉が楽しめるので、シェードガーデンの仕切りにおすすめ。
枝も葉も密に茂る中木や低木をフェンス仕立てにして仕切りに
日本では昔から家と外周りを仕切るのに垣根がよく利用されてきました。
マサキやヒイラギ、シラカシ、サザンカなどは古くから生け垣として垣根に利用されている樹種です。
欧米では垣根のことをヘッジと呼びますが、ヘッジは外との仕切りだけではなく、庭や家周りのさまざまな場所で、空間を仕切るために利用されてきました。
庭と小径の境界を低い垣根、ローヘッジで仕切ったり、駐車場とエントランス、または仕切りにヘッジを利用したり。
ヨーロッパではボックスウッド(セイヨウツゲ)のローヘッジが定番で、アメリカではよくコニファー類が使われます。
家屋が洋風になった現代、昔ながらの樹種ではなく比較的新しめの樹種で、家の雰囲気に合う木をフェンス仕立てにして、空間の仕切りに利用してみてはいかがでしょう。
さて、フェンス仕立てに適した樹種の条件は、まず、枝や葉が密に茂ること。
すき間の多いものでは仕切り効果が低くなってしまいます。
また、一度仕立てたら長くキープしたいので、丈夫な性質で管理の手間が掛からない樹種を選ぶことも大切です。
樹高が高くなる木だと、フェンスとして欲しい高さを維持するために何度も剪定を重ねなくてはいけないので、中木くらいの樹高を選ぶのがおすすめです。
ローヘッジには種類豊富に出回る低木を使うとよいでしょう。
目隠しが目的の場合は常緑タイプを、空間を優しく仕切るだけでよいなら、花期に美しさを満喫できる落葉タイプでもよいと思います。
樹形がコンパクトな新品種に注目
香りがあればさらに魅力的
最近の庭づくりで求められることの一つに、小さなスペースでも育てられる、というのがあります。
高く幅も大きくなる樹種はスペースもとるし、剪定などの管理の手間も掛かりますから。
そんなニーズに応え、最近ではコンパクトな樹形の矮性品種がたくさん育種され人気を集めています。
例えばモクレンやコブシは高木で垣根には向きませんが、ニュージーランドで育種されたフェアリーマグノリアシリーズなら、樹高は2〜3.5mの中木。
しかも常緑タイプで葉が密に茂るので、フェンス仕立てにもってこいの花木です。
春には淡いライラック色の大きな花が楽しめ、空間を仕切りながら庭のアクセントとしても効果を発揮します。
また、一般的なクチナシよりも樹高が低くコンパクトな樹形のʻクラウンジュエルʼなら、ローヘッジとしても利用できます。
矮性品種は新しい使い方が楽しめるので、ぜひフェンスの樹種として注目してください。
さらに楽しめる要素を増やすなら、エレガントな香りをもつ樹種を選ぶのもおすすめです。
フェアリーマグノリアもクチナシʻクラウンジュエルʼも芳香があります。
さらに昔から垣根によく利用されていたヒイラギにもʻ香姫ʼという、かぐわしい香りをもつ品種が登場しています。
ʻ香姫ʼは花の少ない秋から冬に清楚な白花をたくさん咲かせるのも魅力です。
花色が濃くて鮮やかなキンモクセイのʻタンケイʼも秋に甘い香りが堪能できます。
もっと楽しめる要素が多いのが果樹を利用すること。
沖縄では柑橘のシークワーサーを利用することもあるそうです。
中間地の環境で育てるなら、フェイジョアがおすすめです。
花が個性的、葉色がきれい、そしておいしい果実まで収穫できます。
お子様と一緒に栽培して、家族で楽しむのもよいでしょう。
庭の仕切りといっても、おしゃれに美しく仕立てた方が楽しみも増えます。
今回はおすすめの樹種をご紹介しますので、お気に入りを見つけ、ぜひ庭の仕切りに利用してみてください。
コンパクトな樹形で愛らしい花が咲くフェアリーマグノリアʻブラッシュʼ
葉が密に茂るのでフェンス仕立てにすると目隠しの効果もある。
淡いライラック色がとても上品。
- ●属科/モクレン科
- ●花期/3〜5月
常緑タイプのマグノリアで、コンパクトなブッシュ樹形になる。
葉が密に茂り、花後に樹形を整えることができるので、フェンス仕立てにも向く。
直径6〜7cmの愛らしい花がよく咲き、従来のマグノリアより花期が長い。上品な香りも楽しめる。
東北以南で栽培可能で、厳しい寒さのもとでは落葉することもある。
従来種より濃く鮮やかな花色赤花キンモクセイʻタンケイʼ
鮮やかな濃オレンジ色の花が枝にびっしり咲く。
従来種のキンモクセイの垣根仕立て。ʻタンケイʼを利用するともっと鮮やかな垣根になる。
- ●属科/モクセイ科
- ●花期/9〜10月
香りのよさが魅力のキンモクセイ。
本種は中国原産で、少し赤みを帯びた鮮やかな花色が魅力。
多花性で枝にびっしり花がつき、見応えのある姿が楽しめる。
秋の開花期にはキンモクセイの優雅な香りを楽しめるので、3〜4本を並べて小さなフェンス仕立てで楽しむのもおすすめ。
花も実も楽しめ、葉色も美しいフェイジョア
- ●属科/フトモモ科
- ●花期/5〜6月
果樹として人気のフェイジョアは、常緑で裏白の葉が軽やかできれいなことから垣根にも使われ、さらに丈夫な性質なので街路樹などにもよく利用される。
初夏に咲くトロピカルな花も観賞価値が高く、秋にはゼリー質で香りのよい実が収穫できるなど、四季折々の魅力が楽しめる。
1本でも結実するが複数あった方が実つきがよくなるので、3〜4本で小さなフェンスに仕立てるのもおすすめ。
トロピカルで個性的な花も魅力。両性花で、春に発生する新梢の基部に着生する。
ʻスイベル ユニークʼは結実が早い豊産種。コンパクトな中型樹形でフェンスにも仕立てやすい。
ʻニキタʼは直立性の矮性品種なので、数本を並べて手軽にフェンス仕立てにできる。大実で甘く、果肉の食感がよい実が収穫できる。
秋から冬に香りのよい白花が楽しめるヒイラギʻ香姫ʼ
冬に咲く白花は雪のようで清楚な印象。
- ●属科/モクセイ科
- ●花期/10〜12月
コンパクトな樹形で、葉が小さく、愛らしい印象のヒイラギ。庭に花が少なくなる秋から年末にかけて、白い小花をたくさん咲かせる。花がかわいいだけでなく、かぐわしい香りが楽しめるのも魅力。とてもゆっくり生長するので、鉢植えでも栽培でき、ベランダに数株を並べて目隠しに利用することもできる。
輝くような黄色の葉が美しい黄金マサキ
フェンス仕立てにしても軽やかな印象。
もっと刈り込んで整形してもよい。
- ●属科/ニシキギ科
- ●観賞期/春〜秋
春の萌芽から秋口までは葉色が鮮やかな黄色になり、フェンスに利用すると明るく軽やかな印象になる。刈り込みに耐える強健種で、刈り込むほどに枝が密になるので整形タイプのフェンス仕立てに最適。葉は秋以降は緑色になるが、落葉しないので目隠しに利用できる。
ラベンダーピンクの大きな花がよく咲くアベリアʻピンキーベルズʼ
小さな葉が密に茂るので刈り込んで整形してもよい。
涼しげなラベンダーピンクの花は大きく存在感がある。
- ●属科/スイカズラ科
- ●花期/7〜10月
寒さに強く、丈夫な性質で道路沿いの植栽にもよく利用される。本種は一般的なアベリアに比べ、直径3〜3.5cmと花が2倍ほど大きいのが魅力。四季咲き性があり、長く花が楽しめる。生長後も樹高は90cmほどの矮性品種なので、低めの仕切りに最適。湿り気を好むので、乾燥しすぎないように気をつける。
香りのよい二重の花が咲く矮性品種クチナシʻクラウンジュエルʼ
最終樹高は60〜80cm。伸びるのも1年に10cmほどと生長がゆっくりで、低いフェンス仕立てに最適。
真っ白な花は華麗でボリューム感たっぷり。
- ●属科/アカネ科
- ●花期/6月
アメリカで育成された品種で、二重咲きの花がたくさん咲く。やわらかな質感の花には優雅な香りがあり、その強さは従来品種の倍ほど。次々花をつけるので香りも長く楽しめる。
矮性で少し這うような樹形になり、生長がゆっくりなのでフェンス仕立てにも最適。開花後に軽く刈り込むとさらに花つきがよくなる。
鮮やかなピンクに染まる花期の美しさは圧巻吉野ツツジ
鮮やかなピンクが華やかでインパクトのあるフェンスになる。
- ●属科/ツツジ科
- ●花期/3〜5月
ツツジとシャクナゲの交配種で、鮮やかなピンクの花が木全体を覆い尽くすほどにたくさん咲く。
しかも早くから開花し、花期が長い。
樹高は1mほどで、低いフェンス仕立てにすると庭のアクセントにもなる。
半落葉樹だが、花が咲く時期の存在感が大きいので、ぜひ庭の仕切りに利用してほしい。
濃いピンクの蕾が愛らしいユキヤナギʻフジノピンキーʼ
濃いピンクの蕾と白花が咲き交じる時期は、全体が淡いピンク色に見える。
従来のユキヤナギ。ʻフジノピンキーʼも樹形は同様で枝垂れる枝の流れが美しい。
- ●属科/バラ科
- ●花期/3〜4月
蕾が濃いピンクで、開花すると白花になる品種。
濃いピンクと白の咲き交じる様子がとてもキュートで、従来の白花のみのユキヤナギより華やかな印象になる。
やわらかに枝垂れる枝を埋め尽くすほど小花が密にたくさん咲く。
生育旺盛で剪定に強いので、フェンスにも仕立てやすく管理の手間も少ない。
落葉樹だが、花が咲くのを待つ楽しみは大きい。
くっきり入る黄斑が目に鮮やかグミʻギルトエッジʼ
自然樹形のフェンス仕立て、刈り込んで整形してもおしゃれ。
くっきり鮮やかな黄色の外斑がきれい。
- ●属科/グミ科
- ●観賞期/周年
秋から冬にかけて黄色の外斑がより鮮やかになり、緑の部分とのコントラストが強まる。
生育旺盛なので生け垣にもよく利用されるが、明るく軽やかな印象はぜひ低めの仕切りとして利用したい。
半日陰でも元気に育つ。
グミには落葉品種もあるが、これは常緑タイプ。
初冬には白い小花が咲く。
- 小林 隆行
- 埼玉県生まれ。
アメリカのネブラスカ州立大学園芸学科を卒業後、家業の植木生産業を継ぎ、2008年に社長就任後は、国内外の植物に対する知識と海外経験を生かし、新しい植物を海外から導入し、広めている。