宿根草(多年草)のおすすめ特集
株が何年も生きて、毎年花を咲かせるのが宿根草です。一口に宿根草といっても、日なたから日陰まで、好む環境や開花期はさまざまです。春から夏に開花したアスチルベ、カンパニュラ類、ベロニカなどや、カラーリーフが魅力のホスタ類も晩秋には葉が枯れて休眠に入ります。キクの仲間や宿根サルビアの秋咲き種は開花の盛りを迎え、クリスマスローズのように秋から生長が始まるものもあり、それぞれの性質にあった手入れや作業をすることが大切です。
植物が休眠している間に行いたいのが、まず、株分けです。年数が経った宿根草は株が大きくなり、茎が密集して日光が当たりにくい部分がでてきます。そのため1本1本の力が弱まって花が咲きにくくなります。また、地中では古い根が密集して新しい根が育つ余地がなくなることも。それを解消するために行うのが株分けです。休眠中に行うことで株への負担を軽減できるので、特に春咲きの宿根草は10〜11月に株分けしておくとよいでしょう。
初夏に咲く宿根草も10〜11月に行います。翌年3月には芽や根の生長が始まるので、株分けが必要なものは早めに行うようにします。ただし、常緑種やロゼットなど、地上部があるものは3月以降に行うこともできます。ロゼットとは地表につくくらい葉をぺたっと広げ、寒風などを受けずに冬越しする形のことをいいます。
晩秋には葉が枯れて休眠に入り、地上部はほとんどなくなります。植え放しで手が掛からず、年々大株に育つのも魅力ですが、葉が込みあってきたり、生育の勢いが悪くなったら、株分けして植え直しを行います。10〜11月、または早春の芽吹きのころが適期です。植え場所を移動する場合も、休眠期に行うと株への負担を軽減できます。親株の周囲に新しい芽を作って塊状に殖えるので、適当なサイズに切り分けて植え付けし直します。 |
春のシバザクラから夏のパニキュラータ(オイランソウ)までさまざまな種類が庭で活躍しますが、いずれも冬の低温期を経て、春から生長開花します。秋のうちにしっかりと株作りをしておくことが大切。据え置きの株は、株元によく日光が当たるようにして、追肥も与えます。株分けや植え付けは10月ごろが適期です。 |
セージの仲間で種類が多く、10月にはレウカンサなど秋咲き種が開花します。花が終わったら切り戻しを行い、株元のマルチングや土寄せで冬に備えます。四季咲き性のラベンダーセージなども同様です。春から夏に開花したネモローサなどは秋は株の充実期なので、日光によく当て、追肥を与えて株元の芽を太らせておきます。 |
多種多様な品種があり、春から初夏に咲く種類が多いのですが、「ロザンネイ」などは秋遅くまで咲き続けます。常緑種、落葉種ともに、株元までよく日光が当たるようにしておき、株の周りに追肥を与えておきます。株分け、植え付けなどの作業も10月ごろが適期です。数年間は植え放しで手が掛かりませんが、鉢植えのものは根づまりしやすいので、1〜2年ごとに植え直しを行った方がよいでしょう。 |
開花期間が長く、11月いっぱいくらいまで次々と咲き続けます。花の終わった枝や伸びすぎて倒れる枝は、側枝を残して順次切り詰めておきます。白花、桃花、高性種、矮性種と品種も多く、場所や好みで使い分けできます。品種によって耐寒性に差があり、特に桃花系の場合、寒冷地では防寒対策が必要です。 |
夏の花が終わり、地下茎が生長する時期です。開花後は早めに半分くらいに切り詰めておき、日当たり、風通しをよくしておきます。追肥を与えて地下茎の生長を促すと翌年の花も多くなります。込みすぎた株は、株分けして広げておきます。特に鉢植えでは、根づまりや芽の込みすぎで花が咲きにくくなってしまいます。 |
夏の終わりから生長が始まります。枯れ葉を取り除き、株元に日光がよく当たるようにして、10月から11月に肥料を与えて球根(根茎)を太らせます。新しい根がしっかりと伸び、葉が大きく茂ることで翌年の花つきもよくなります。 |
一重から八重咲き、高性種から矮性種まで品種が多く、開花期も幅があるので、8月から11月ごろまで花が楽しめます。花後にできる綿のような実の状態もおもしろいものです。観賞期が過ぎたら刈り込んでおきます。 |
秋は多くの宿根草の植え付け適期でもあります。今年の花壇を顧みて、足りなかった花色や草丈の高低などを新しい宿根草を加えて捕植するとよいでしょう。また、来年の花壇のイメージを新鮮にしてくれるような新しい宿根草を加えてみるのもおすすめです。
秋に植え付けても、地上部は枯れ始めるものもありますが、地中の芽は来春に向けて準備を始めています。来年、さらにその翌年と美しく花を咲かせるためには、しっかりと冬までに根づかせておくことが大切です。
宿根草の植え付けと同時に、早春の彩りとして秋植えの球根を間に植えておくのもおすすめです。花後に球根類が休眠するころには宿根草が大きく育って開花するので、限られたスペースを有効に活用できます。1年草やカラーリーフプランツを組みあわせるのもよい方法です。年間の生育サイクルをよくつかんでおくと、花が途切れることなく、次々と入れ替わって季節を彩る、そんな花の庭をつくることも夢ではありません。
植物が健やかに生長するためには、まず土壌をよくしておく必要があります。花壇の一角に植え付ける場合も、空いているスペースに腐葉土などをすき込み、元肥として緩効性肥料を施しておくとよいでしょう。なお、施肥の量はチッソ、リン酸、カリのバランスが8:8:8のものを1u当たり100gをめどとします。
株間とは複数の株を植え付ける際の間隔のこと。あまり密に植え付けてしまうと十分に生長できず、花つきにも影響が出ます。その宿根草が成株になった時の株張りを想像し、適切な株間をとって植え付けることが大切です。
また、植え付けの深さは植物によって異なります。冬の間、常緑であるもの、またロゼットで冬越しするタイプは、地表すれすれの浅植えにします。地下で芽が冬越しするタイプは、芽が十分隠れる深さに植えないと、寒さで芽が生長できなくなることもあります。根茎が地表面のすぐ下を這うようなタイプは、芽を埋めずに植え付けるようにします。品種による違いや栽培環境によって変わる場合もありますが、目安として下の表に代表的な宿根草をあげてみました。
ジギタリス、リクニス、コレオプシス、テマリソウ、イチゴ、エリンジューム、クリスマスローズなど
デルフィニウム、カリガネソウ、トリフォリウム ルーベンス、ケマンソウ、アルストロメリアなど
カンパニュラ(種類によっては異なる)、ゲラニューム、ジャーマンアイリスなど
フウリンソウ(メディウム)の仲間でバラエティー豊富。冬の寒さにあうことで、春から生長開花するものが多く、秋のうちにしっかりと根づかせておきます。ホタルブクロ(プンクタータ)など、地下茎で広がるものは株分けや植え直しを行います。 |
雄大な花穂とすらりとした立ち姿が魅力。冬を越した株は特に見事です。秋のうちにしっかりと根を張らせることがポイント。腐葉土などを混ぜて深く耕し、水はけをよくして植え付けます。 |
フランネルソウやカッコウセンノウなど、花壇、コンテナで利用が多く、親しみのある花です。八重咲きの「ガーデナーズワールド」や「ジェニー」は、秋に植え付けて大株にすると見応えがあります。日当たり、水はけのよい場所に株間を広くとって植えるようにします。 |
愛嬌のある袋状の花が連なって咲き、花壇のアクセントに最適です。高性の大型種から小型種まであり、ハイブリッドの「イルミネーション」シリーズも加わりさらに華やか。10〜11月は植え付けの適期なので、開花時を予想して、スペースを十分にとるように気をつけましょう。 |
コレオプシスは暑さ寒さに強く、丈夫で育てやすい宿根草です。すっきりとした草姿でバランスがよく、ほかの草花ともあわせやすく、次々と長い間咲き続けます。本種は夏まではクリーム色の花で、涼しくなってくると紫色の覆輪が現れ、別の品種のように見えるのが魅力。咲きながら草丈も伸びていくので、株の様子を見て半分くらいに切り戻すと、わき芽が伸びて再びこんもりと花を咲かせます。 |
明るい斑入り葉に青紫色の花が群れ咲き、夏花壇のさわやかな材料として利用しやすく、日なたでもほとんど葉焼けしません。緑葉種に比べにおいが弱く、あまり気にならない品種です。花つきもよく、小苗でも十分観賞できるので寄せ植えにも便利。庭植えで大株に育てると見事な姿が楽しめます。性質が強く、植え放しでよく手が掛かりません。 |
ダイアンサス(美女ナデシコ)の枝変わり品種で、マリモのような丸いボール状の姿がユニークです。落ち着いたやわらかなグリーンで、非常に長もちし、一つの花房が2カ月ほど観賞できます。切り花にしてフラワーアレンジに利用してもよく、コンテナの寄せ植えでもどんな花と組みあわせてもよくあいます。 |
ワイルドストロベリーやヘビイチゴなどはよく庭でも利用されますが、色鮮やかでかわいらしい花が咲き、観賞用にも利用できる四季なり性のイチゴも花壇に取り入れると新鮮な景色が楽しめます。赤花には、「彩紅姫」や「トスカーナ」など、桃花には「プリシラ」や「メルラン」などの品種があります。白花種とミックスして寄せ植えにすると、華やかでよりカラフルになります。日当たりと水はけのよい場所を好みます。 |
クローバーの仲間ですが、花穂が大きくボリュームがあります。草姿は立性、茎もかたくしっかりしています。性質の強い宿根草で、やせ地でもよく育ち、花の終わったものは早めに切りとると、わき芽が伸びて次々と長く咲き続けます。フラワーアレンジにも利用しやすく、桃花種と白花種があります。 |
春の黄金色の葉は、開花期になると青みを帯びて明るい黄緑色に。その葉色を背景に青紫色の花がよく映えます。力強い草姿とメタリックな質感で、花壇やコンテナの中でも一際目立つ存在です。乾燥に強い反面、多湿には弱いのでレイズベッド(レンガなどで地面から立ち上げた花壇)など、できるだけ水はけのよい場所で育てるとよいでしょう。 |
- 種苗会社に勤務し、主に宿根草の導入、試作に携わる。一般公開している宿根草ガーデン(山梨県北杜市)の管理を担当。日本における宿根草研究の第一人者で、宿根草全般の栽培特性に造詣が深い。テレビや園芸雑誌で宿根草の魅力を紹介。日々の細やかな観察からのアドバイスが好評。