Point
品種の混植を避けよう
スイートコーンは交雑しやすいので、複数の品種を育てる場合は注意が必要。例えばデントコーンやポップコーンと交雑すると粒がかたくなって食味が落ちます。また同じスイートコーンでも、白色種が黄色種の花粉で受粉すると黄色の粒になります。交雑を避けるには、十分な距離(約200m以上)をあけるか、開花の時期をずらして栽培しましょう。
甘さがギュッと詰まったスイートコーンを味わえるのは、家庭菜園ならではの醍醐味。今回は甘いスイートコーンを作る、プロのコツを伝授。肥培管理や収穫、調理法もまとめてご紹介します。
イネ科のスイートコーンは、草丈2mほどに伸びる大型の果菜類。お掃除作物(クリーニングクロップ)と呼ばれるほど土壌中の養分を吸収する力が強いので、土をリセットする作物としても重宝されています。連作障害もほとんどなく、畑のクリーニングもしてくれるスイートコーンは、家庭菜園の輪作体系にぜひ取り入れたい野菜といえます。
昼夜の気温差が大きいほど、糖度の高い実ができるといわれますが、栽培場所を選べない家庭菜園では、茎葉を大きく育てて光合成を促すことが糖度をアップさせる近道。糖度の高い実を作るには、甘さにこだわったスーパースイート種を選び(「品種選びのコツは?」の項参照)、適切な肥培管理を行うことが重要です。
スイートコーンのおいしい時期は2〜3日と短いので、とり時を逃さないことが肝心。夜に糖分が実に運ばれるので、朝の早い時間帯に収穫するのがおすすめ。収穫後は時間と共に風味や甘みが減少するので、早めに調理するのもポイントです。
糖度によってスイート種、スーパースイート種がありますが、昨今は糖度の高さを追求した、スーパースイート種が人気です。また粒の色によって、黄色種(’おひさまコーン7‘など)、白色種(’ソフトクリン‘)、黄色と白が混ざったバイカラー種(’カクテル84EX‘など)があるので、好みの品種を選びましょう。
‘おひさまコーン7’
‘ソフトクリン’
‘カクテル84EX’
栽培スペースに苦土石灰を1u当たり100〜150g まき、酸度調整をします。1週間後、元肥として1u当たり完熟堆肥約2s、チッソ、リン酸、カリの割合が各14%の化成肥料を100〜150g、油かす80〜100g を施してよく耕します。その後、畝を立てて、地温上昇や水分保持効果があるポリマルチを張ります。
気温が十分に上がる4月中〜下旬、1穴に3〜4粒のタネをまきます【写真1】。タネまき後、鳥よけのために防虫ネットや寒冷紗をトンネル状にかけます。本葉3〜4枚になったらネットを外し、生育のよい1本を残してほかをハサミで切り取ります【写真2】。
【写真1】1穴に3〜4粒のタネをまく。
【写真2】本葉3〜4枚のころ、元気のよい株を1穴につき1本残し、ほかは切り取る。
株数が多ければセルトレイ、少なければポリポットにタネをまきます。発芽には比較的高温が必要なので、温床マット(農電園芸マットなど)で地温25〜30℃になるように加温すると発芽が促進されます。
3月中〜下旬、セルトレイ(128穴)に1粒ずつタネをまき、本葉2〜3枚まで育苗します。
直径6pのポリポットに3粒ずつタネをまきます。本葉1〜2枚で1本に間引き、本葉3〜4枚で定植します。
定植直後の苗は弱く、強風で倒伏しやすいので、風のない日を選んで定植します。定植後は、軽い風よけと防虫を兼ね、防虫ネットをトンネルがけします。背丈がネットの高さまで伸びたら取り外します。
スイートコーンは交雑しやすいので、複数の品種を育てる場合は注意が必要。例えばデントコーンやポップコーンと交雑すると粒がかたくなって食味が落ちます。また同じスイートコーンでも、白色種が黄色種の花粉で受粉すると黄色の粒になります。交雑を避けるには、十分な距離(約200m以上)をあけるか、開花の時期をずらして栽培しましょう。
大きな実を作るには、雄穂が出るころまでに株を大きく、茎を太く育てることが重要です。そのためには追肥を2回行い、日照りが続いて乾燥していたらたっぷり水やりをします。
【1回目】
適期:本葉6〜8枚のころ。
追肥方法:1u当たり30〜50gの化成肥料を畝の肩か通路まき、中耕する。
【2回目】
適期:株の中心から雄穂が出てきたころ。
追肥方法:1回目と同じ。
株の中央部から出てくるのが雄穂(雄花)【写真4】。茎の中間に2〜3本の雌穂がつき、実と同じ数だけひげ(絹糸)が出ます【写真5】。雄穂から落ちた花粉が風に乗ってひげにつき、受粉すると1粒の実になります。
ちなみに雌穂のひげは、1本1本が1つの実(粒)につながっているため、ひげ(雌しべ)の数=実の粒数になります。
【写真4】
スイートコーンの雄穂。
【写真5】
雌穂からは実と同じ数のひげが出る。
スイートコーンの大敵であるアワノメイガの防除には、雄穂が見えてきたころに殺虫剤(「三明デナポン粒剤5」など)を株の上から散布します。その後もアブラムシ対策を兼ねて、適用のある殺虫剤を1〜2回散布して防除します。
株元から出てくる分けつ【写真6】は、葉の量が増えて収穫量がアップするほか、風による倒伏を防ぐなどの効果があるのでそのまま取らずに放置します。分けつに雄穂がつくことで受粉率を高め、実入りをよくする効果も期待できます。
【写真6】株元の分けつは取らずに残そう。
2番目以降の実はヤングコーンとして食べられます。穂が小さいうちに、茎葉を傷つけないように収穫しましょう【写真7】。
以前は一番上の実を充実させるため、2番目以降の実を取り除く「除房」を行っていましたが、取り除いても収穫量はほとんど変わらず、取り除くことによって茎葉を傷める原因になるため、最近では省力化も兼ねて残すのが主流です。
【写真7】ヤングコーンの収穫。中華料理の具材などに利用できる。
台風や大雨による株の倒伏は、収穫量に大きなダメージを与えます。畝の周囲に支柱を立て、ひもで囲って支えるか、近くにある株を3株ずつ、ひもでぐるりと束ねて倒伏を防ぐとよいでしょう。
収穫間近になると、実をねらうカラスなどの鳥や小動物が現れるので、テグスや防鳥ネットなどで予防します【図5】。
倒伏を防止するため周囲をひもで囲う。株数が少ない場合は3株ずつ上部をひもで束ねる方法も。収穫が近くなったら、テグスなどを張って鳥よけをする。
ひげが出てから20〜25日後、ひげが茶色く変色し、肩の辺りまでふっくらとしてきたら収穫の適期です。手で実を外側に倒すようにして収穫します。とり時が分からなければ、実を茎につけたまま、先端の皮をめくって、粒が色づいているか確認してから収穫してもよいでしょう【写真8】。
気温の低い夜に糖分が実に集まるので、収穫は気温の低い朝のうちに済ませましょう。
【写真8】
スイートコーンの収穫。収穫後は、気温の上昇と共に急速に糖度が低下するので、すぐに調理して食べるのがおすすめ。
一般的なのは塩ゆでですが、電子レンジや蒸し器で加熱する方法も。いずれも実の皮をむいてひげを取った状態で調理します。
収穫後は時間がたつにつれて甘みがどんどん落ちるので、すぐに調理するのがコツ。すぐに食べない場合は加熱後、ラップでくるみ、立てた状態で冷蔵庫で保存し、2〜3日で食べ切ります。
●塩ゆでする
鍋に水と適量の塩を入れ、実を入れる。沸騰後、3分たってからざるにとって冷ます。
●電子レンジ
さっと水洗いして適量の塩をふり、ラップでくるんで、5〜6分加熱する。
●蒸す
蒸し器に入れて3〜4分加熱する。塩をふり、さらに3〜4分加熱する。
農業法人「三鷹ファーム」(東京都三鷹市)取締役。三鷹市で代々続くプロ農家として野菜を生産・販売。地元農業の発展を見据え、市民参加型のイベントや地域交流事業にも力を入れている。