デリシャス★コンテナ菜園 イチゴ
園芸家の深町貴子さんが、自宅のベランダで野菜作りに挑戦する話題のコーナー。今回は、春の味覚、甘〜いイチゴの作り方をご紹介。大小二つのプランターを重ねた立体仕立てで、収穫アップを目指します。
「冬の寒さに当てることで春の開花をスムーズに」
甘い香りが広がるイチゴの栽培は、晩秋に植え付けて翌春に収穫するのが一般的。寒い冬を越すことで花芽が形成され、たくさんのイチゴを収穫することができます。
今回使用するプランターは、大小の2サイズ。2段重ねにして立体的に仕立てることで、狭いスペースでも無理なく育てられ、それぞれの株によく日光が当たるので、収量アップが期待できます。
春先、暖かくなるにつれて株が旺盛に成長し始めます。よい実を収穫するには、マルチングや追肥、人工授粉などをタイミングよく行うことがポイント。プランターの縁から真っ赤なイチゴが垂れるように実る様は圧巻です。ぜひ育ててみてください。
写真は、丈夫な性質で育てやすく、甘くてジューシーな'カレンベリー'。
イチゴの育ち方を知ろう
深町さんのおすすめ品種はコレ!
カレンベリー
甘みたっぷりでジューシー!育てやすさ抜群のイチゴ
果実はやや縦長のスマートな形で、甘みが強く、とてもジューシー。丈夫な性質なので、イチゴ栽培が初めての方にもおすすめです。
紅ほっぺ
糖度が高くて甘みたっぷり!見た目も食べ応えもあり!
糖度が高く、口に含むと濃厚な甘みが広がります。鮮やかな紅色の果実は、果肉の中まで赤く色づくのが特徴。見た目、味ともに大満足の品種です。
とちひとみ
夏から秋にも開花して次々に収穫できる!
甘み、酸味のバランスに優れ、夏から秋に開花するので長く楽しめます。果皮や果肉がかためで傷みにくく、きれいな形のイチゴが収穫できます。
桃薫(とうくん)
淡いピンク色の果実はいちごミルクのような香り
ほんのりとしたピンク色の果実は、見た目のかわいらしさもピカイチ!甘く濃厚な香りがあり、従来のいちごとは違う風味が堪能できます。
イチゴ栽培の手順
冬は寒さにしっかり当てて春先にたくさんの花芽をつけさせる!
■準備するもの
- □イチゴの苗(3株)
- □素焼き鉢(大小各1鉢、計2鉢)
- □鉢底網
- □鉢底石
- □野菜用培養土
- □土入れ
- □ジョウロ
- □マルチング資材(麻布、ヤシの繊維など)
- □液体肥料
- □人工授粉用の筆(またはラベンダー開花鉢など)
- □ハサミ
植え付け
大小異なるサイズのプランター(今回は素焼き鉢)に、苗を植え付けます。苗はプランターの縁に寄せて植え付けると実が外側に垂れるようにつき、土で汚れません。植え付け後は、プランターを2段に重ねて管理します。
大小のプランターとイチゴ苗3株を用意する。それぞれのプランターの底に鉢底網と鉢底石を敷いて、野菜用培養土(タキイ「花と野菜の土」など)を半分ほど入れておく。
大きい素焼き鉢には2株のイチゴ苗を、縁に寄せて植え付ける。株間は10p程度あける。
イチゴ苗(1株)を、素焼き鉢の縁に寄せて植え付ける。この時、ランナーの向きを内側にし、クラウンを埋めないように浅植えにする。
ランナーの向きは内側に、
クラウンは土に埋めない!
1ランナーのあとを内側に向ける。
イチゴの実は、ランナーのあとの反対側につく性質があるので、ランナーのあとを内側に向けて植え付けると、実がプランターの外に垂れるようにつきます。
2クラウンを埋めないようにする。
クラウンとは、株元の膨らんだ部分。生長点があり、土に埋まると生育が悪くなります。深植えにならないように気をつけましょう。
植え付け後、大サイズ鉢の上に小サイズ鉢を重ねる。この時に苗が同じ方向にくるように重ねる。上からたっぷり水やりし、苗がある方を日当たりのよい南側に向けて管理する。
冬越し中も
水やりを忘れずに
低温に当たることで花芽が作られるので、日当たりのよい屋外で冬越しさせます。水切れを起こすと花数が減るので、土が乾燥しない程度に水やりをします。
冬の間は、葉が地面に這うようなロゼット形になる。葉色が赤茶色になることも。
マルチング、追肥
冬越し後、マルチングや枯れ葉取りをして春先の開花に備えます。近所でウメの花が咲いたら1回目の追肥を行います。
2月中旬ごろ、土の乾燥と泥はねを防ぐため、株元を覆うように麻布を敷いてマルチングをする。ヤシガラやアルミ箔などでもOK。
病気を防ぐため、茶色く枯れた葉があれば、付け根から取り除いておく。また、よい実をつけさせるため、収穫が終わるまでに伸びてくるランナーも同様に取り除く。
Point
ウメの花の開花を
目安に追肥を!
近所でウメの花が咲いたら、1回目の追肥をスタート。水で薄めた液体肥料を与えます。開花後は2週間おきに追肥をして、養分を補いましょう。
人工授粉
受粉が不完全だと実の形がいびつになるので、開花したら人工授粉をすると安心です。
イチゴの花が咲いたら、晴天で花粉の働きが活発な朝8時ごろまでに人工授粉をする。やわらかい筆などで花の中心を優しくなで、雄しべの花粉を中央の雌しべにこすりつける。
コンパニオンプランツで虫を誘引
受粉を手助けしてくれるミツバチなどの昆虫を呼び寄せるため、早春咲きのラベンダーなどのコンパニオンプランツ(生育を助ける植物)を近くに置いておく方法も。イチゴの開花期と同じで香りのよい花を選んで。
収穫
イチゴの実が完熟したら、ハサミで切って収穫します。
収穫適期のイチゴ。実が垂れ下がって地面につくようであれば、写真のように、空のプランターを逆さにして台にする方法も。
ガクの際まで赤くなれば完熟のサイン。
次年度用の苗作りをする場合は?
収穫後、次年度用の苗作りをする場合は、培養土を入れた直径7.5pのポリポットに、ランナーの先につく小さな苗(親株から2番目以降につく苗がよい)を置き、U字のクリップなどで固定します。水やり後、親株から切り離さずに2〜3週間ほどおき、根づいたことを確認したら切り離します。
■準備するもの
- □直径7.5pのポリポット
□U字クリップ
□野菜用培養土
とびきりおいしいイチゴを作る!デリシャス★ポイント
- Qおいしいイチゴを作るには?
- イチゴの根は浅く張る性質があり、土の表面が乾燥すると根から水分が吸収できません。特に冬に水切れを起こすと花数が減るので、土が乾燥しない程度に水やりを。上手に水分コントロールをすることで、おいしいイチゴが実ります。
- Q形のよいイチゴを作るには?
- しっかりと受粉させることが大切です。イチゴの近くに開花したラベンダーなどの花を置いて受粉を手助けしてくれるミツバチなどの昆虫を呼び寄せるか、昆虫がこないベランダなどでは人工授粉を行いましょう。ただし、花粉が活動し受精しやすい温度は25〜27℃です。気温が低すぎる晩秋や早春に花が咲いても、よい実にならないので、摘み取るのがおすすめです。
- Q色や香りをよくするには?
- イチゴの着色をよくするには、実に強い日光を当てることが大事。直射日光が当たるように、プランターの向きを調整しましょう。日光が当たることで、香りもよくなります。
タイミングはウメの開花
イチゴは、休眠から目覚め、中心部分の新芽が立ち上がったころが追肥のベストなタイミングなのですが、初めてだと分かりにくいかもしれません。
季節の移り変わりは、植物や虫たちが教えてくれることもあります。中でもウメは、イチゴと同じバラ科の植物で、休眠時間も似ているので、私はよく指標に使います。初春にフワッといい香りがすると、「ああ、近くでウメが咲いているな。わが家のイチゴもそろそろお目覚めね!」と思うのです。
イチゴは低温と短日によって花芽を作り、さらに気温が下がることで深い眠りにつきます。目が覚めるのは暖かさではなく、一定期間の寒さに当たることで、自動的に目が覚める仕組みです。目が覚めた時はお腹がすいている時です。この時にタイミングよく追肥ができると、花芽、新芽が共によく育ち、順調に株を成長させることができます。その後しばらく肥料はやらず、イチゴの花が咲き始めてから追肥をします。この数週間は肥料を与えないことも大事。花が咲くと虫たちがやってきます。追肥をして大きな花を咲かせ、受粉してもらいましょう。
このように、育てる野菜の周辺環境にも常に目を配っておくことが上手に育てるポイントの一つ。自然の中で生き物たちはたくさんおしゃべりをしています。ぜひ野菜以外の植物や虫たちの声にも耳を傾けてみましょう。
近所のウメの花がイチゴのお目覚めを知らせてくれるので、お散歩の時にでもぜひチェックしてみて。
深町 貴子(ふかまち たかこ)
園芸家。有限会社タカ・グリーンフィールズ専務取締役。テレビ出演やセミナー、講演会などで、野菜作りの楽しさを分かりやすく伝えている。