成松 次郎 (なりまつ じろう)
神奈川県農業技術センター等で野菜の研究と技術指導に従事後、(社)日本施設園芸協会で施設園芸及び加工・業務用野菜の生産・流通振興に携わる。現在、明治大学リバティアカデミー講師、園芸研究家、家庭菜園検定委員(家の光協会主催)、野菜ソムリエとして、幅広く活躍中。
ハクサイやキャベツ、ブロッコリーは、秋から冬に収穫する夏まき栽培が一般的ですが、今回はこれら3品目の春まき栽培をご紹介。まだ寒い時期にタネまきするので、育苗管理や保温がポイントです。
この時期に作る葉菜は、やわらかくておいしさも格別。ぜひ挑戦してみましょう。
家庭菜園ではハクサイなどのアブラナ科野菜は夏まき栽培が一般的です。
低温期にタネまきすると、トウ立ちしやすく、収穫できないことがあるため、春まき栽培は上級向けの作型とされています。しかし、品種を適切に選び、温度管理を上手にすれば、十分に春まき栽培を成功させることができます。
冬から春の気温は低温から高温へ、日長は短日から長日へと変わります。多くのアブラナ科野菜は低温で花芽を作り、その後の高温と長日で花茎の伸長を促します。
ハクサイ、キャベツは結球前にトウ立ちしてしまうと収穫できません。このトウ立ちを防ぐには、低温にあわないよう適切な温度管理をすることが重要です。
発芽適温は、ハクサイは20〜25℃、キャベツは15〜30℃、ブロッコリーは20〜25℃です。しかし、ハクサイは発芽した時から低温の影響を受ける「種子春化型植物」です。まだ気温の低い春まき栽培は、育苗時に加温して、発芽時から最低13℃以上(日中20℃、夜間13℃)を確保することが重要です。キャベツやブロッコリーは耐寒性があり、ある程度大きくなってから低温の影響を受ける「緑植物春化型植物」なので、日中15〜20℃、夜間5〜10℃を確保します。
春まき栽培では、トウ立ちしにくい晩抽性と、収穫期の高温を避けることが可能な早生性を兼ね備えた品種を選ぶことが特に大切です。
定植期はまだ気温(地温)が低いため、活着とその後の生育に温度不足の危険があります。そこで、土の量が多い25連結ポットや7.5〜9cmポリポットを用い、育苗期間を少しでも長くとって大苗に仕上げます。
低温期の育苗ではハウスやビニールトンネルを利用し、必要に応じて温床マットや温風暖房機で加温します。
浅いくぼみをつけて1ポットにつき4〜5粒まき、5o程度の覆土をする。
発芽後、密生部を間引き、本葉2枚のころ1本立ちにする。
キャベツ、ブロッコリーは本葉5〜6枚、ハクサイは7〜8枚の大苗に仕上げて定植する。
家庭菜園ではハクサイなどのアブラナ科野菜は夏まき栽培が一般的です。
低温期にタネまきすると、トウ立ちしやすく、収穫できないことがあるため、春まき栽培は上級向けの作型とされています。しかし、品種を適切に選び、温度管理を上手にすれば、十分に春まき栽培を成功させることができます。
品種にもよりますが、中間地では、2月中旬〜3月上旬にタネまきし、本葉7〜8枚の大苗をつくります。床土には市販園芸培土を用い、1ポットにつき4〜5粒まきます。
初期生育を促進させるため、マルチをして、全量元肥にします。成分量は1u当たりチッソ、リン酸、カリ各20g(チッソ、リン酸、カリが10:10:10の肥料であれば、元肥全量で200g/u)です。
畝間150cm(ベッド幅90cm、通路60cm)、条間40cm、株間40cmの2条植えとなりますが、ミニハクサイでは条間25cm、株間25cmの3条植えの密植が可能です。
高さ10p程度のベッドをつくり、平らにならす。
本葉7〜8枚の大苗を植え付け、その後7〜10日間はトンネルを密閉しておく。
定植後7〜10日間は活着を促すためトンネルを閉めてやや高温で管理します。その後、トンネル内気温は日差しが日々強くなって温度が上がるので、日中は換気します。
日中はすそを上げて換気をする。トンネル内が葉で込みあったらトンネルを外す。
4月下旬以降はアブラムシ、コナガの発生が多くなるので、初期防除を心がけます。
5〜6月は気温が高く生育が急速に進むので、過熟球や病気、生理障害の発生に注意し、早めの収穫を心がけましょう。
・晩抽性&早生品種を選ぶ
・温度管理をしっかり行う
やわらかい春系の「春波」「初夏のかほり」、しっかりした歯ごたえの寒玉系では「彩里」、丸玉では「ジャンヌ」、ミニサイズの丸玉「このみ姫」もおすすめです。
7・5〜9cmポリポットにタネを4〜5粒まき、本葉2枚で1本に間引き、本葉5〜6枚で定植します。温床を使い、5〜10℃を目安に加温(保温)しますが、日中は15〜20℃になるよう換気しながら管理します。
施肥の成分量は1u当たりチッソ30g程度で、元肥に3分の2、残り3分の1を追肥します。チッソ、リン酸、カリが10:10:10の肥料であれば、元肥全量で200g/uになります。追肥は定植後2週間目に行います(第7図)。
高さ10p程度のベッドをつくり、平らにならす。
ソメイヨシノが開花するころ(気温10℃以上)、畝幅150cm(ベッド幅90cm、通路60cm)、条間50cm2条、株間30cmで定植します。
高さ10p程度のベッドをつくり、平らにならす。
本葉5〜6枚の苗を2条に植え付ける。
気温が上がるとアオムシ、コナガの発生が多くなるので、BT水和剤(トアロー水和剤CT)などで防除します。なお、定植時から防虫ネットのトンネルがけである程度防ぐことができます。
球がかたくしまる前に早めに収穫します。
手で押して少し弾力があるころが適期。
・ガッチリした苗をつくる
・結球8〜9分で早めに収穫
極早生の「シャスター」、中早生の「ハイツSP」が安定した品種です。「グリーンボイス」は長期間側枝が発生し、茎もおいしい茎ブロッコリーです。
春まきキャベツと同様に育苗し、本葉5〜6枚の大苗に仕上げます。
早期に株づくりを進めるために、全量元肥で与えます。施肥には速効性肥料を使い、1u当たりチッソ成分量で20gを与えます。
ソメイヨシノが開花するころ(気温10℃以上)が、露地栽培の定植適期です。畝幅150cm(ベッド幅90cm、通路60cm)、条間50cm2条、株間35〜40cmに定植します。これより早い時期の定植は温度が不足するためトンネル栽培やベタがけを行います。
高さ10p程度のベッドをつくり、平らにならす。
本葉5〜6枚の苗を2条に植え付ける。
定植後はトンネルを密閉し活着を進め、その後は換気に注意し、日中の気温が25℃以上にならないように換気します。葉先がトンネル天井につくころにトンネルを除去します。
花蕾(からい)が直径12〜14cmになり、小さな蕾(つぼみ)がはっきり見えてきたら、15cm程度の長さで花茎を切り取ります。茎ブロッコリーは、頂花蕾がピンポン玉大の時に切り取って、側枝の発生を促します。側枝は15〜20cmで収穫します。
小さな蕾がはっきり見えてかたくしまった時が適期。
・大きめの苗を定植する
・かたくしまった花蕾を収穫
神奈川県農業技術センター等で野菜の研究と技術指導に従事後、(社)日本施設園芸協会で施設園芸及び加工・業務用野菜の生産・流通振興に携わる。現在、明治大学リバティアカデミー講師、園芸研究家、家庭菜園検定委員(家の光協会主催)、野菜ソムリエとして、幅広く活躍中。