細川 代一 (ほそかわ としかず)
1986年福井県立短期大学農学科(現・福井県立大学生物資源学部)卒業後、福井市の種苗会社に勤務。全国エリアで営業担当としてサツマイモをはじめ野菜種苗全般の販売に携わる。
茎から採穂したつるを定植して育てるサツマイモ栽培。そのつるを育てるのに一手間かかるものですが、つる「挿し穂」が販売されるようになり、栽培がずいぶん楽になりました。また、品種も豊富で料理の用途もさまざま。サツマイモ栽培が初めての人もぜひトライしてみてください。
サツマイモの栽培は、ほかのイモ類と異なり、定植(植え付け)までに時間がかかるもの、と思い込んでいませんか?サツマイモはタネイモを定植して育てるわけではありません。タネイモを苗床で育苗し、そのつる(穂)をとり、それを苗として定植するのが本来の方法です。
近年は、メリクロン苗などのポット苗も販売されるようになり、苗を育ててつるを採穂するのも簡単になっていますが、さらに、その手間も省き、入手してそのまま定植できる「挿し穂」の姿でつるが販売されるようになりました。品種にもバラエティがあります。手間が掛かって大変、とサツマイモ栽培に二の足を踏んでいた人も、ぜひこの機会にサツマイモ作りに挑戦してみてください。
挿し穂は葉が5〜6枚ついた20〜30cmほどのつるで、品種によって長さは異なります。
購入すると商品は袋に入って届きますが、葉や茎はしんなりしているのが普通です。中には葉が黄色くなっていることもありますが、茎が腐っていなければ大丈夫です。
挿し穂は、到着後すぐに植え付けが可能です。すぐに植え付けできなくても数日なら袋に入ったまま冷暗所で保存できます(必ず到着後に開封し苗の状態を確認してください)。1週間以上植え付けできない場合は、プランターや畑に仮植えするとよいでしょう。
プロの農家さんによっては、2〜3日(場合によってはさらに2〜3日)、袋のまま冷暗所に置いておき、白い根がチラッと見えてきてから植えるというやり方もあるようです。
今から400年ほど前に中国から琉球(沖縄県)に伝わり、その後、薩摩藩(鹿児島県)や長崎県に伝わったサツマイモ。サツマイモは甘藷とも呼ばれます。そして、江戸中期の儒者であり蘭学者であった青木昆陽が江戸に持ち込んだことは有名です。「蕃薯考」を著し、救荒作物※として甘藷の栽培と普及をすすめ、「享保の大飢饉」を救ったといわれています。青木昆陽は没後、甘藷先生と称されたようです。
場所を選ばず、乾燥にも強く、作りやすいイモとして広く普及したサツマイモ。その作りやすさは歴史が証明しています。
※救荒作物……一般の農作物が不作の時でも生育して、比較的よい収穫をあげられる作物。
5〜6月の梅雨入り前に植え付けます。梅雨の水分を利用して根張りをよくし、生育を促します。
連作障害が起きにくく、乾燥にも強いので、あまり場所を選びませんが、水はけの悪い場所は避けましょう。
植え付けの1〜2週間前に、土を細かく耕してやわらかくし、土の中の通気をよくしておきます。
チッソは多くない方がよく、堆肥とリン酸とカリを多めに与えます。1m²当たり成分量でチッソ3g:リン酸6g:カリ10gが目安です。サツマイモ専用肥料を使用するのもよいでしょう。また、前作の肥料が土中に残っているような場合は、元肥を施さずに植え付けます。
地温は22〜24℃で高すぎないのが理想です。
これらの条件が整わないと、サツマイモが細くなったり、丸くなったりしやすくなります。特に、チッソ分が多いと、茎葉ばかりが生育して土中のイモがしっかり育たず、おいしいサツマイモになりません。
「つるぼけ」「つる返し」って何ですか?
「つるぼけ」はチッソ分が多くて葉や茎ばかりが伸びることをいいます。「つる返し」は、つるぼけしないようにつるをひっくり返して節から出た根を切る作業です。つるぼけしていない場合は、特に行う必要はありません。
高さ20〜30cm×幅60〜90cmの畝を立てて、黒マルチを張ります。寒冷地では植え付けの1週間前に張っておくと地温が高くなります。畝の中心部に30cm間隔で穴をあけ、そこに挿し穂を畝に平行にして埋めていきます。葉は地上に出します。
四つの植え方がありますが、購入した挿し穂からの栽培では、斜め植え、垂直植え、船底植えがおすすめです。
病気や虫はあまり心配ありません。連作障害は起きにくいですが、ネコブセンチュウに気をつけます。対策として2〜3年に1回植え付け場所を変えましょう。
必ず霜が降りる前に収穫しましょう。植え付け後120日くらいで掘りとります。サツマイモの収穫時期は特に決まりはありませんので、ある程度太ってきたら収穫可能です。
※収穫後2〜4週間、風通しのよい日陰に置いておくと甘みが増しやすいです。
つるを地際で切り、マルチをはずして掘り上げる。クワはイモを傷つけないよう深く打ち込む。
1986年福井県立短期大学農学科(現・福井県立大学生物資源学部)卒業後、福井市の種苗会社に勤務。全国エリアで営業担当としてサツマイモをはじめ野菜種苗全般の販売に携わる。