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バラのよくある育て方Q&A

バラのよくある育て方Q&A

バラの苗といえば、秋に販売される「2年生大苗」と春に販売される「新苗」があります。2年生大苗は、春から畑で管理し大きく育てて秋に掘り上げた苗です。春には花が咲きますが冬の水やりや、地域によっては防寒の必要があるなど少しだけ気を使う必要があります。新苗は、生育していく様子を楽しめますが、夏に花を咲かせないようにするなど管理にやや手が掛かります。
このほか、近年は春と秋の開花時に、鉢植えで花が咲いた状態の「2年生開花株」が販売され、ニーズも増えています。冬の管理をプロが行い、ある程度生育した大苗で、初心者でも枯らすことなく安心して育てられます。特徴としては、以下のことが挙げられます。

  • 開花見込株なので蕾がついていて、入手後まもなく開花が楽しめる。
  • 新しい自根がたくさん出ているので、水やりや管理などが楽で、夏に枯れる心配も少ない。
  • 病害虫の防除などが施されているので、安心して育てることができる。

今回は、この育てやすくおすすめな開花株とともに、質問の多い管理のコツをQ&A方式でご紹介します。

近年は開花時期に出回る、2年生開花株が人気。

鉢で栽培しても、上手に管理すればたっぷりと咲く。

Q1バラの大苗を5月に購入しましたが、すぐに露地に植え付けても大丈夫でしょうか?その時に根鉢は崩してもよいですか?

鉢植え、庭植えともに花が咲き終わったタイミングで、花後の剪定を済ませてから植え付けることができます。2年生開花株は枝や葉、花はしっかりと育っていますが、鉢の中の根はまだ新しく切れやすい状態です。植え付けの際に根を雑に扱うと、切ってしまうことがあります。根を傷めると水が吸えなくなり、しおれてしまう可能性があるので注意します。以下を参考に植え付けてください。

  • ❶枝を株全体の約4分の1の高さ、5枚葉の上で剪定します。
  • ❷用土は排水性と保水性のよいバラ専用培養土を使い、植え付け後、すぐに根の生長が始まるようにします。
  • ❸根鉢を崩さないように注意してそっと植えます。根鉢が少し乾き始めている時の方が、根が崩れる心配がありません。
  • ❹植え付け後、水はたっぷりと与えます。庭植えならバケツ(10L)2杯以上、鉢植えでもバケツ1杯以上与えてください。
  • ❺肥料は植え付け時に土に混ぜずに、表土に追肥する要領で与えます。
  • ❻大きく育っている株は、支柱をして風などでグラグラしないようにします。株が動くと根が切れてしまいます。

開花後、上から約4分の1の高さで剪定した状態。

鉢から株を出した状態。この根鉢を崩さずに植え付ける。

Q2バラを鉢植えでコンパクトに仕立てたいのですが、剪定方法を教えてください。また鉢栽培に適した系統(品種)はありますか?

バラの新芽(枝)は切り口に近い所(上の方)から出ます。「短く切るのが怖い」「かわいそう」という気持ちから、枝を長く残した剪定をしがちですが、枝の出るスタートラインを低く保つことがポイントです。
主な剪定は、冬の剪定、花後の剪定、四季咲き性なら夏剪定が挙げられますが、思い切って小さく切る場合は冬の剪定時が適しています。春に1番花が咲いた枝、すなわちその年に一番長生きしている枝の部分で切ります。葉のついていた部分には必ず芽がありますので3〜5芽くらい残して、できるだけ短く剪定します。ただし、昨年以前からある古い枝の部分で切ってしまうと花が咲きにくくなるので注意しましょう。
ここで疑問をもつのではないでしょうか。「毎年1番花の部分で剪定していくと少しずつ大きくなっていくのでは?」その通りです。枝は数年経つと、どうしても大きくなってしまいます。でも、毎年小さめに剪定していると、剪定した枝の分だけ消費する力が少なくて済みます。その余った力で新しい枝(シュート)がよく出るようになります。新しい枝が出てきたら古い枝と取り換えます。取り換えた枝を短くすればもとの大きさに戻すことができます。
もともと小さく育つ品種もあります。ミニバラ、ポリアンサ、フロリバンダなどの系統は、開花までにかかる日数が短いので比較的小さく楽しめます。小形のシュラブローズは小さく仕立てることもでき、大きく育つつるバラも、鉢植えなら根がどんどん伸びないのでそれほど大きくならずに楽しめます。

コンパクトに仕立てる剪定たくさん芽があってもすべてが伸びて咲くわけではない。枝先の1〜2芽くらいしか花は咲かないので、3〜5芽くらいを残して、思い切って切る。

Q3夏の暑さや病気のためか、バラの葉が全部落ちて枝だけになってしまいました。その後に回復は見込めますか?

温暖化の影響により、近年の気候はバラにとって厳しさを増しています。バラは冬季に休眠する植物ですが、暖冬で落葉が遅れると休眠する期間が短くなり軟弱な株になりがちです。そして夏も涼しい温暖な気候を好むので、酷暑はバラにとっては厳しく、葉が焼けたり、落葉したりすることもあります。激しい長雨は、水や肥料を吸いすぎて徒長や開花の遅れを招き、病気の原因にもなります。しかし、よほど弱らない限り回復させることは十分可能です。
葉がほとんど落ちてしまった株などは、枝先の蕾だけを切りとり深く剪定しないようにします。株は健康なのに葉が暑さなどで変色したり、焼けたりしている場合は9月ごろに上から約4分の1の所で剪定します。しばらくして新しい芽が伸びてくるのが確認できたら、液体肥料や固形肥料を規定の3分の2くらいの量で与えます。
バラは少しくらいのストレスで枯れてしまうことはありません。暑さや、病気で弱った株は、自分を守るために一時的に休眠していると考えて、再度生育させるようにしましょう。

葉を落として株元の方がスカスカになった株。9月ごろに上から約4分の1の所で剪定し、新しい枝が出るのを促すとよい。

Q4ブラインドとは何ですか?またブラインドが起きた場合の対策はありますか。

「ブラインド」とは枝が伸びてきたものの、その先に蕾がつかなかった症状のことです。理由はいくつか考えられます。

  • ❶枝の生育時に著しい暑さや低温などにあって、蕾の形成が妨げられた場合。
  • ❷肥料の与えすぎでいつまでも栄養生長を続け、蕾がつかずどんどん伸びた場合。
  • ❸買ったばかりの株で、力がなくて枝が充実していない場合。
  • ❹大輪などによく起こる現象で、細い枝から出た枝は、やはり細くて力がないので花が咲かない。

などです。一季咲き性のバラは残念ながらその年は開花の可能性はなくなりますが、四季咲き性や返り咲き性は2番花以降の秋花などは咲く可能性があります。対策としては、ほかの花が終わったころに花がら切りの要領で剪定し、追肥します。その後に伸びた枝は、花が咲かなかった分、養分を消費していないのでよい枝が出て咲く可能性が十分あります。

枝の先端に蕾がつかないブラインド状態の枝。

ほかの花が終わったころ、花がら切りの要領で枝の先端を切り戻す。

Q5バラのシュートが出てこないのですが、出すコツはありますか?また、出なかった場合はどのように管理すればよいですか。

シュートとは株元や枝の低い所から勢いよく出る枝のことです。シュートが出なかった理由はいくつか考えられます。

  • ❶鉢植えで根詰まりしている場合生育途中なら根をあまり崩さずに、大きな鉢に植え替えます。休眠中の冬なら根鉢をほぐして約3分の1にし、大きな鉢に植え替えます。
  • ❷庭植えで土の水はけが悪くて根の生育が悪い場合株の周りを(木立ち性なら枝先くらい、つるバラなら株元から50〜60cm離した所)ドーナツ状に掘り、そこへバラ用の培養土と少量の肥料をすき込みます。
  • ❸古い枝を大切に残してその枝が大きく伸びている場合よく見かける、1〜2本だけ古い枝がよく伸びていてほかの枝はあまり生長していない、偏った株です。よく伸びた枝が養分を独占していて、シュートの生長に必要な養分が回らない場合があります。冬の剪定時に古い枝をほかの枝と同じ高さまで切り戻しましょう。
  • ❹枝をたくさん残しすぎて株元に日光が当たりにくくなっている場合株の内側に向かっている枝や生長の遅い軟弱な枝を切りとり、株元に日光が当たるようにします。
  • ❺肥料が不足している場合鉢植えなら追肥を、庭植えなら株の周りに追肥をすき込みます。
  • ❻株が古くて弱っている場合冬の剪定時に古くて伸びた枝を思い切って短く切り戻し、株の周りに新しい土と肥料を深くすき込みます。

いずれにしても、新しい根が元気に出ないとシュートは出にくくなります。根の生長を促すように努めましょう。

Q63年目のつるバラの枝が伸び放題です。剪定方法を教えてください。

バラは切らずにおくと、今年伸びた高い場所の枝の枝先から新しい枝が出てきます。
3年もすればつるバラは3m以上になってしまいます。
春の花後と冬の剪定時に大きさをコントロールしましょう。

●冬の剪定誘引

どのつるに花を咲かせるかを決める剪定です。伸びた枝をすべてそのままの姿で誘引すると、どんどん株は大きくなってしまいます。今年誘引した所から来年はさらに大きくなることを理解しましょう。咲かせたい場所より少し小さめに剪定し、元気によく伸びる枝はわき枝を少し減らします。3年前の古い枝も新しい枝があまり出ていないようなら切りとり、新しい枝の発生を促します。

春に爛漫と咲いたつるバラ。

真冬の休眠期に剪定する。塀の高さよりも少し低い位置で剪定し、広がりすぎないようにコントロールする。残したつるは、扇状にバランスよく誘引する。

●春の花後の剪定

つるバラは花後に少し枝を切り詰めると、広がりすぎるのを防ぐことができます。株元から元気なシュートも出ますが、誘引した枝の先の方からも新しい枝が出ます。そのままにすると来年咲く枝はどんどん遠くへ行ってしまうので、花後につるの途中で切りましょう。株元に近い所から新しい枝を促すことができます。

春に開花した後のつるバラの状態。全体にうっそうと繁茂して、勢いよく伸びすぎている枝も多い。

花後に枝を切り詰めて広がりすぎないようにし、株元に近い場所からの新芽の発生を促す。

Q7数年育てているバラですが今年は花の数が少ないです。なぜでしょう?

おそらく鉢植えのバラなどで古い枝をたくさん残しているのではないでしょうか?古い枝からも芽は出ますが、細い軟弱なものばかり出て力がないので、花を咲かせることができません。庭植えのつるバラでもよく見かけるのが、よく伸びた古い枝の先の方に花が咲いていて株の下の方には花が咲かない光景です。
いずれにしてもやはり新しい枝が出ていないことが考えられます。枝先から芽も出るし、少しだけでも花が咲くからと、いつまでも残しておくのではなくて、冬の剪定適期に鉢植えなら上から約3分の1〜半分くらいの所で切りとりましょう。つるバラの場合は株元に一番近い元気な枝だけ残して先を切りとります。新しい枝を出させるためと考えて、思い切って深めに剪定しましょう。翌年の春は花が咲かなかったり、少なくなったりしますが、その次の年には新しい枝が出てたくさんの花が咲くようになります。

古い株を若返らせる剪定

Q8せっかくついた蕾が、咲かずに落ちてしまうのはどうしてですか?

蕾が落ちるのには、次のようにいくつか原因があります。

  • ❶日照条件が変わったため園芸店などで多数の蕾がついたバラを購入した場合によく起こります。原因は店頭と自宅で置いた環境との日照条件が違うため。購入した開花株はできるだけ日当たりのよい場所で管理しましょう。
  • ❷たくさん蕾がつく品種だから蕾がたくさんつきすぎたために、株自身が調節のために自ら蕾を落とすことがあります。すべての蕾を咲かせると株の体力が弱ってしまうので、そうならないためにバラ自身が行う自衛作業なので、多少は仕方ないとあきらめましょう。
  • ❸水切れさせた場合バラは蕾が見えてきたころから、がくが開いて花の色が見えるころまでが一番水を必要とします。鉢植えなら必ず1日に1回、夕方に乾いていたら2回水やりしてもかまいません。一番大切な蕾の膨らむ時期の水やりには十分注意します。
  • ❹植え替えをしなかったバラ鉢植えのバラは植え替えをしないと、蕾はできても咲かずにポロポロ落ちてしまうほか、「開花しても花が小さい」「形がおかしい」など正常な状態で咲きません。鉢植えの場合は、根づまりを起こして生育が悪い、新しい枝が出ない、花がうまく咲かないという現象が出がちです。それを防ぐために1〜2年に一度の植え替えは必要です。

ほかにも肥料の与えすぎやコガネムシの幼虫の被害が原因で、蕾が落ちることがあります。

Q9できるだけ薬剤散布をしたくないのですが、よい方法はありますか?

やはり薬剤散布はできる限りしたくないものです。以下のようにご自身にあった方法を選んでください。

  • ❶完全無農薬で栽培する場合病気に強い品種を選ぶことが一番ですが、栽培環境を整えて健康な株作りに徹することです。まずは水はけがよく、有機質があまりたくさん含まれていない用土を使いましょう。バラは完熟していない有機堆肥を多く与えすぎると逆によくありません。植物性堆肥を主体に使い、足りない分は追肥で補いましょう。また、水はけが悪いと土が乾かず、いつも湿った空気が株元にあることになります。病気は高湿度でよく発生するので、そのような環境をつくらないことです。ゼオライトなどを使うと根腐れ防止になってよいでしょう。そして適度な剪定で風通しをよくし、6時間以上は日光が当たる場所で管理することが理想です。活力剤の定期的な使用も効果があります。
  • ❷開花までは最低限の薬剤散布をしてもよいと思う場合一季咲き性と四季咲き性(返り咲き性を含む)では散布回数は変わります。春の芽出し(3月中旬ごろ)から開花までに少なくとも月に2度くらい予防散布が必要です。
    基本は病害虫の発生前の予防散布が大原則です。発生してからでは散布の回数も増え、薬剤も高価なものが必要になります。
  • ❸薬剤散布はするが、できる限り回数を減らしたい場合①のようにすること、特に活力剤の定期的な活用はある程度効果があります。水分バランスの取れた適切な土壌潅水も有効です。大切なことは継続です。薬剤は決まった用法を守り、春の芽出し時から落葉時期まで使います。そして②のように予防散布が肝要です。

松尾 正晃

松尾まつお 正晃まさあき
バラ約800品種とクレマチス約300品種を専門に扱う総合園芸店「京都・洛西まつおえんげい」園主。各地のバラ園などで講演を行い、店舗でもバラ栽培教室を年間約60回行うなど、バラ栽培の普及に努める。