バラとクレマチスの美しき競演
淡いオレンジ色のオールドローズにあわせたクレマチスは、花びらがやや緑みを帯びる白色で花芯が紫色の「ビエネッタ」。オレンジ色×紫の色あわせは、2色の色みが大幅に異なるためお互いを引き立てあい、パッと目を引きます。「ビエネッタ」の開花時期は5〜10月。夏は一時休みますが、切り戻すと秋にまた花が楽しめます。
「バラとクレマチスは相性抜群!」という難波さんは、バラを絡ませたアーチやトレリスには、必ず足元にクレマチスを一緒に植え込みます。つるを絡ませる支柱を共有できること、これがまず相性のよい理由。バラの新芽が上がり始めたころから、薄めにした液肥を3日に1回ほどやりますが、バラもクレマチスも多肥を好むので、この肥料をクレマチスと共有できるのも理由の一つです。バラとクレマチスは、品種を選べば同時期に花を咲かせることができるのもW相性よしWといえる大きなポイントでしょう。
花びらが多く、立体的でボリュームのある花を咲かせるバラが多い中で、クレマチスのフラットな花形はアクセント効果も抜群です。クレマチスは一重咲き、八重咲きともに、花びらの先端がすっと尖ったものが多く、そのすっきりとした表情は、バラとはまた違った凛とした印象を与えてくれます。花形の違いだけでなく、クレマチスにはバラには少ない美しいブルー系の品種が多く、彩りのうえでもアクセントになります。特にバラのすぐ近くで咲かせると、その違いが際立ち、景色もより変化に富んだものになります。
最近ではバリエーションが豊富になったクレマチス、「どのバラにどのクレマチスをあわせようか悩むのも楽しいもの」と難波さん。咲き進むにつれ色が変化する品種はナチュラルなグラデーションが描けて特におすすめだそうです。そんな難波さんの庭で、初夏に見せてくれたバラとクレマチスの競演をご紹介します。
小さな白花が房咲きになるかわいらしいつるバラと、淡い黄緑から白へのグラデーションが美しい「白万重」。右のピンクのバラとの組みあわせとはまた違う、ナチュラルでさわやかな景色が展開します。「白万重」は新旧の枝に次々と花が咲き、とても花もちがよいので長く楽しめるのも魅力。 | 愛らしいピンク色のオールドローズと、淡黄緑から白へと変化する八重咲きのクレマチス「白万重」。反対色の関係にある赤×緑を淡いパステルカラーで組みあわせると、優しいながらも互いを引き立てあう配色になります。 |
バラの中では開花が早い白花のモッコウバラですが、早咲き大輪種のクレマチス「ジョセフィーヌ」はちゃんと一緒に咲いてくれました。「ジョセフィーヌ」は開花するにつれ、花色が淡くなり、とてもゴージャスな雰囲気に。モッコウバラが上のほうに咲くので、淋しくなる足元の空間を華やかに演出してくれます。 | 赤とピンクのバラを絡めたアーチに加えたクレマチスは濃淡ピンクの花弁がパッと目をひく「ピール」。アーチ全体がピンクの濃淡で統一され、しかも花形の違いが際立って印象的です。「ピール」は初めは一重咲きですが、徐々に八重咲きも混じるようになります。 |
鮮やかなオレンジ色のイングリッシュローズと淡いラベンダーの八重咲きクレマチスの組みあわせは、おしゃれでエレガント。「ベル オブ ウォーキング」は花径10pほどの大輪で、バラに劣らぬ存在感が魅力。初めはピンクがかった白で、咲き進むと紫がかった涼しげな花色になります。 | ブルーにペイントしたトレリスを背景に、白いバラと濃淡ピンクのクレマチスがパッと映え、さわやかでおしゃれ。「ドクターラッペル」は、淡ピンクに濃ピンクの筋がくっきり入る花色がとても美しい品種。丈夫で育てやすく、この株も10年以上前に植え込んだものだそう。 |
淡い青紫のスマートな花びらが重なる八重咲きの「天塩」は、バラにはない涼しげな表情が魅力。まだ咲いていませんが、小輪の白い花がたくさん咲くノイバラのアーチに一緒に絡めています。ノイバラが満開になると、花のサイズ感の違いから、静かながらもリズム感のある景色になります。 | 写真には写っていませんが、ピンクの濃淡のバラ数種を絡ませたアーチの足元に咲くクレマチスです。「H.F.ヤング」はブルー系の中でも特に青みがきれいで、難波さんのお気に入り品種。丈夫で花がよく咲き、4月中下旬に開花し始める早咲き品種。初めてクレマチスを育てる方にもおすすめだそう。 |
- 花つき、花もちがよい「白万重」は、アレンジメントで楽しむのもおすすめ。6月中旬、バラが終わるころに咲いたアメリカアジサイ「アナベル」とあわせると、涼しげで洗練された印象に。
●クレマチス「白万重」
●アメリカアジサイ「アナベル」 - クレマチスの中でも最近人気が高いのが、ヴィオルナ系やインテグリフォリア系の品種。難波さんの庭では美しい青紫の「浮舟」が咲いていました。切り戻すとまたよく咲き出し、真夏も咲き続けたそうです。
●クレマチス「浮舟」
- セツ・モードセミナー卒業後、デザインの仕事を経て舞台を庭に移し、園芸家として女性誌や園芸誌などで活躍。東京・二子玉川のたまがわ島屋のガーデニングセミナーは、毎回定員をはるかに超える応募があるほどの人気ぶり。「バラの庭づくり」(世界文化社)、「難波光江のガーデニング12カ月」(主婦の友社)など多数の著書がある。庭は個人邸のため非公開。