ダイアナ元英皇太子妃に捧げられた花だけあって気品が感じられます。中輪の房咲きで、横に広がるように育つ、ハークネスが一番得意とする樹形です。アイボリーホワイトの花の中心は淡くアプリコットに色づき、優しい印象。
【栽培ポイント】
鉢植えにして、ベランダや玄関などで草花と一緒に飾ってもバランスよく楽しめます。半日陰でもよく咲き、病気にも強いのが特長です。冬の剪定で短めに仕立てると、かわいい樹形に。
イギリスで100年以上のバラ生産・育種の歴史を誇るハークネス社。その育種のポリシーは「丈夫でコンパクトな樹形で、特別な管理を必要としないバラを作ること」です。そうして作られたハークネスローズには、日本の高温多湿で厳しい気候条件でもよく育つ品種が多くあります。多くのバラがコンパクトな樹形であることが、私たち多くの日本人の生活環境にぴったりなのです。
「庭に植える場所がない」「ベランダでバラを楽しみたい」という方の期待にも、きっと応えてくれそうなのが、ハークネスローズです。
「丈夫」で「コンパクト」で「作りやすい」という、三拍子揃ったハークネスローズ。日本に導入され始めたころからこのバラを作り続けてきましたが、確かにその通りです。その多くはメンテナンスにあまり手が掛からず、花がらを摘み、肥料を与えておくだけで、秋までよく咲くという印象が強いバラです。初めてバラを育ててみたいという方にも安心しておすすめできます。
そして、ハークネスローズの魅力はその三拍子だけにとどまりません。実は、さまざまな樹形のバラがあるため、庭やベランダをハークネスローズだけを使ってローズガーデンにすることも可能です。グランドカバーに使えるようなかわいいバラから、花壇前面に使えるバラ、アーチやオベリスクに似合うバラ、そして大きな壁面まですべてをカバーできるバラなど、品種が豊富にあります。
育つ大きさを考えて植え付け、花後や冬の剪定で大きさをコントロールしながら、お好みの場所にバラの花を咲かせましょう。
日本で販売されているハークネスローズのうち、ガーデンシュラブ(小型〜中型のシュラブ樹形の繰り返し咲き品種)という分類に属する品種は、コントロール次第で、鉢で小さく仕立てることもでき、また伸ばしてアーチやオベリスク、小さな壁面などでも楽しむこともできます。
スペースには限りがあります。与えられた場所で少しでも多くのバラを楽しみたい!ハークネスローズならそれが可能です。コンパクトなハイブリッドティーやフロリバンダを中心に、小型のガーデンシュラブやつるバラをうまく利用して、コンパクトガーデンをつくってみましょう。
少しのスペースでもバラは育てることが可能です。でも、何もせずに放っておくと、強く大きいバラはどんどん大きくなり、小さなバラは日光が受けられなくなって弱ってしまいます。それぞれのバラを上手に住み分けさせることが成功の鍵です。
ベランダやテラスで、鉢植えだけでも手軽にローズガーデンを楽しむことができるのも、ハークネスローズの魅力です。小型のガーデンシュラブでオベリスク仕立てなどにして高さを演出し、小型の四季咲き性品種をお気に入りの鉢に植えて楽しむ……その時の気分や花の咲く時期などで手軽に配置換えができることが鉢植えのメリットです。
間もなく2年生の大苗が販売される時期を迎えます。寒冷地以外(寒冷地の方は3月以降くらい)の地域の方は年内に植え込んでおくと、来年の春には立派なローズガーデンができあがります。できるだけ早く植え込んで、冬の間に根をしっかり作っておくことが、早く大きく育てるポイントです。
特別な管理は必要ありません。乾いたら水をたっぷり与えましょう。限られたスペースに少し多めに植えることになりますから、春の芽が出始めるころからは土の乾き具合をよく注意して見るようにしてください。中でも、大きく伸びるシュラブ樹形の株は深くに根を張るので比較的乾きにくいですが、樹形の低い株は根が浅くて乾きやすいので、要注意です。
また、最初の1年は乾きがちで、低い株は大きな株に比べてさらに乾きやすいので、夏場は特に注意してください。
ハークネスローズは四季咲き性が強いことが特長です。特に、小型の四季咲き性品種は絶え間なく咲き続ける傾向が強いので、肥料切れに注意してください。
よく咲く小さな品種のみ、追肥を1カ月に一度くらい与えます。
大きく育つガーデンシュラブなどは花後にお礼肥を与える程度でよいでしょう。
株と株の間が近いので、風通しが悪くなりがちです。黒星病やうどんこ病などに注意してください。それでも、ハークネスローズは耐病性の強い品種が多いので、春早くから開花までの間に、2週間に一度くらいの予防殺菌剤散布を心掛けるようにすると、ほぼ防ぐことができます。
コンパクトガーデンのバラが、それぞれ仲よく育ってくれるために必要な作業が剪定です。剪定で大切なのは、それぞれのテリトリーを守ることです。
別の品種の所に枝が大きく伸びるようなら、支柱などをして自身の場所にとどまらせるか、剪定をするように心掛けてください。四季咲き品種の場合は、必ず花後に剪定をして高さをコントロールし、後ろのバラより高くならないようにしましょう。
ガーデンシュラブのように自由に伸びる品種は、常に支柱や構造物に留めるようにして、ほかの株にかぶさることがないようにしましょう。冬の剪定時には、花が咲く高さや位置を想像して切り戻すようにしてください。
ダイアナ元英皇太子妃に捧げられた花だけあって気品が感じられます。中輪の房咲きで、横に広がるように育つ、ハークネスが一番得意とする樹形です。アイボリーホワイトの花の中心は淡くアプリコットに色づき、優しい印象。
鉢植えにして、ベランダや玄関などで草花と一緒に飾ってもバランスよく楽しめます。半日陰でもよく咲き、病気にも強いのが特長です。冬の剪定で短めに仕立てると、かわいい樹形に。
どんな場所でも比較的簡単に育てることのできる房咲きの中輪花。目の覚めるような鮮やかなオレンジ色で、先端に切れ込みのある花弁が個性的です。香りも抜群!さらに病気にも強い、元気いっぱいのバラ。
鉢植え、庭植えいずれも向きます。いつも花が咲いている品種なので肥料は定期的に与えること。花弁の切れ込みと鮮やかなオレンジ色は、季節と気温、そして日照条件で多彩に変わります。変化も楽しみ。
ピンク、レッド、クリーム、サニーと4品種あるアバンダンスシリーズ。「レッドアバンダンス」は黒っぽい蕾から、ダークレッドのウエーブのかかった花が開いていく、大人っぽいバラ。このシリーズは4品種とも花つきがよく、株一面に花が咲きます。香りがよく、病気にも強いので、赤の四季咲きでコンパクトな品種をお探しなら、ぜひこのバラを。
枝はやや伸び気味。花後は少し短めに剪定するとまとまった樹形を保てます。
大輪でしっかりした枝をもっています。丸弁花はすっきりしたティー香があり豪華な印象。淡いオレンジ色が基本色ですが、気温が高い時の花はアイボリー、晩秋には濃いオレンジに変わります。花弁の上品なウエーブも魅力。
やや大きく育つので、花壇の後方で咲かせるときれいですが、少し伸ばしてアーチなどに添わせても楽しめます。鉢植えの場合は、枝の半分くらいで剪定して、高さをコントロールしましょう。
咲き始めはクラシカルな印象ですが、次第に中心が分かれて多弁の豪華な花に変身します。ミルラの香りも魅力的。あまり大きくならないので、まとまりがよく使いやすい品種。
大きな鉢に植え、周りにあまり大きくならない草花を寄せ植えしても楽しめます。清潔感のあるライトピンクの花は、花壇の前面やつるバラの足元などのシーンにもよく似合います。
中輪の、かわいくて軽やかなカップロゼット。淡いピンクの花弁からは柑橘系のさわやかな香りが漂います。房咲きなので鉢植えでも豪華。晩秋まで楽しむことができます。病気に強く初心者にもおすすめです。
花が小さめで細い枝にもよく咲くので、花後に剪定をして枝を増やすと、花が多くなってゴージャスに仕上がります。肥料は定期的に与える方がよいでしょう。
古くから愛されている香りのバラ。ハークネスローズの香りの基準で最高評価を得ています。春は黄色が強く出て秋にはオレンジが濃く、花弁にはウエーブがかかりピンクが乗ります。トゲも少なくて育てやすいのも特長です。
庭でも鉢植えでも楽しめます。強く剪定してコンパクトに仕立てることもできますが、枝を伸ばして大きく仕立てオベリスクなどに咲かせると、顔に近いところで咲いて香りが楽しめます。
花弁の中心に濃いブロッチの入る、ロサ・ペルシカ系のバラを改良した、ペルシカハイブリッドシリーズの1品種。開ききると中心に赤目が現れ、カップ&ソーサータイプの咲き始めからは想像もできないほど豪華な花に変化します。枝が横に広がるように伸びて、まとまりよく咲きます。
黄色のバラの中では、とても丈夫で育てやすい品種です。背の高い鉢植えで咲かせると美しい樹形が楽しめます。
その名の通りミステリアスな花は香りがよく、花つきも抜群です。ピンク色の花が開くとのぞく濃赤の目は神秘的な印象。「サン アンド ハート」と同じく、とてもコンパクトな樹形で鉢植え向きの品種です。
まとまりのよい樹形で花壇前面や、鉢植えなどで二つ並べて咲かせたいバラです。ロサ・ペルシカ系のバラは育てるのが難しいといわれてきましたが、ペルシカハイブリッドシリーズの登場で育てやすくなりました。
古くから世界中で愛されてきている中型シュラブ樹形の代表品種です。枝は細くてしなやか、トゲも小さくて扱いやすいのが特長です。純白の花弁に輝くような真っ赤なしべ、そしてスパイシーな香りもこの花にはよく似合います。
中型シュラブは鉢植えでコンパクトにもできますが、やはり少し大きく育ててアーチやオベリスクなどに仕立てると、本領を発揮します。3年目くらいから株一面に咲く姿は、庭のフォーカルポイントに。
香りもよくて春は白に限りなく近いアイボリー、涼しい秋はアプリコットカラーに変身。咲き進むといずれも純白に変わります。多彩な変化を見せてくれる花色が魅力です。
鉢植えでコンパクトに育てることもできますが、しっかりした枝はとてもよく伸び、大きな花が房になって咲くので、出窓の周りや、玄関横の壁面などに咲かせると見応えがあります。
細くしなやかな枝がよく伸び、小型のつるバラに最適。細めの枝に大きな房になって深紅の花がうつむき加減に咲きます。ハークネスの香りの基準で最高点評価ですから、ぜひ肩より高い位置で咲かせて香りを楽しんでください。
濃い花色ですが、小さめの花が房になって咲くので、重い印象にならず、1株あるとアクセントになり庭が引きしまります。誘引しやすいので、鉢植えでオベリスク仕立てにしてもよいでしょう。
大輪の丸弁高芯咲きという、トラッドスタイル。樹勢がかなり強く、太い枝が豪快によく伸びます。サーモンピンク色の大輪の花は、ティーの香りが強くさわやか。秋まで何度でも花を咲かせます。
個性的な色の大きな花はどこから見ても存在感があるので、大きな壁面やフェンスなど、高さのある場所に豪華に咲かせるのにぴったり。オールマイティーな花色で、どんな色の壁にも似合います。
蕾は黄色、咲くとレモンイエロー、そして咲き進むと早い段階で白に変わっていく中輪ロゼットの房咲きです。甘い香りもすてき。光沢のある濃い緑の葉は病気に強く、花色とのコントラストも美しい品種です。
3m以上になる大型のつるバラ。主張しすぎない花なので、ホワイトガーデンに使ったり、背の高い宿根草と組みあわせたりしてもよいでしょう。たいていの草花と相性のよい組みあわせが可能です。
小輪房咲きでオレンジ色。どのバラよりも早く先駆けて咲き、しかもとても強い柑橘系の香りをもっています。いち早く庭に香りを届けてくれ、長く観賞を楽しむことができます。よく咲くので初心者にもおすすめ。
枝は細めですが、よく伸び、細い枝にもたくさん花を咲かせます。鉢植えで短く剪定しても四季咲きのコンパクトなバラと変わらないくらいよく咲くので、ベランダ栽培にも最適です。
同じ小型横張り樹形のバラでも、育つ大きさはそれぞれ違います。ハークネスローズを代表する名花「プリンセス オブウェールズ」の樹高は80pくらいで、ハークネスローズでは標準的な四季咲き性バラの樹高です。また、「レッドアバンダンス」や「ピンクアバンダンス」は、樹高80〜90pくらいの中輪房咲き性で、花壇の前面や鉢植えでかわいく楽しめます。「イージータイム」は、80〜90p、1mになることもあります。
ガーデンシュラブの「パーキー」はよく伸びますが、剪定によって大きさをコントロールでき、鉢植えにも。樹高は1〜 1.5 mくらい。
オレンジ色のつるバラ「ブリッジ オブサイ」は、大きく育つ品種で2.5 mくらいに伸びます。
樹形 | 品種名 |
---|---|
A.小型横張り | イージータイム、ピンクアバンダンス、プリンセス オブ ウェールズ、レッドアバンダンス、レメンブランス |
B.小型直立 | ガーデン グローリー、コンスタンス フィン、ナターシャ リチャードソン、ピュアゴールド、ローザ ベルモント |
C.小型シュラブ | ウェルビーイン、サン アンド ハート、セントピアーズ、ツイギーローズペルシアン ミステリー |
D.中型シュラブ | カーディナルヒューム、ジャクリーヌ デュプレ、パーキー、フェッツァーサイラ ロゼ |
E.つる | コンパッション、ブリッジ オブ サイ、パーペチュアリーユアーズ、ハイフィールド、ジンジャーシラバブ |
京都市生まれ。家業の植物生産を継ぎ、植物のあらゆる栽培経験を生かして、生産・育成と販売を一貫して行う。バラのほか、クレマチス、宿根草、一年草などを育成販売。バラをはじめとした園芸の指導、普及、後継者育成に努めている。