ラナンキュラスの品種をご紹介
ラナンキュラスは花色、花形共に品種のバラエティーに富んでおり、ガーデニングにもフラワーアレンジにも、大変人気の高い花です。その品種改良は日進月歩で進んでおり、毎年の品種発表が楽しみという愛好家も多いもの。今回は、ガーデナーの所有欲を満たす、ラナンキュラスの最新トレンド品種をご紹介します。
やわらかな花弁が厚く重なり、丸みのあるフォルムが優しい風情をもたらすラナンキュラスは、ガーデナーにもフローリストにも人気の高い花です。地中海沿岸地方原産で、ギリシャの原種は花弁が5枚、花色は赤、黄のみでした。現在のラナンキュラスは品種改良が進み、定番の白やピンク、オレンジのほか、ブラウン、グリーン、ダークパープルなども出回り、青以外に揃わない色はないといわれるほど、花色は多様です。それに2色咲き(バイカラー)、リバーシブル咲きのように複色花も揃います。花形もさまざまで、一重咲き、八重咲き、カール咲き、カーネーション咲き、ボール咲き、スプレー咲きなどがあります。
現在のラナンキュラスの育種は、定番の人気種を品質向上させていく方向と、トレンドを発信する目新しい品種を生み出す方向の二つの道を歩む傾向にあります。定番品種は、花色が揃う、花弁の巻きが厚い、茎がまっすぐに伸びてスタイルがいい、たくさん咲く、といった高品質性を追求しています。特にふっくらとした姿のピンクや白花が一番人気です。
一方で、定番品種ばかりでは飽きられてしまうので、意外性のある花色、花形のラナンキュラスを生み出し、ガーデンやフラワーアレンジでの新しい使い方を提案しています。毎年新品種を発表し、花色や花形のトレンドを追っていくため、目新しさからすぐに評判になります。トレンドを重視するため品種としての寿命は短い傾向にあるようですが、中でも花色、花形、育てやすさ共に優秀な品種は、人気が長く続いて、定番品種になることもあります。最近の流行としては、これまではパステル系のラナンキュラスに人気が集中していましたが、グリーンやブラウンなどの渋めの花色、花弁の重ねが薄い品種、スプレー咲きなどが注目を浴びているようです。今回は近年のトレンド品種の中から、個性的でインパクトのある品種、定番品種へと育ちつつある人気品種をピックアップし、おすすめとしてご紹介しています。ガーデンに新しい風を吹き込む、最新のラナンキュラスを、ぜひコレクションに加えてください。
DATA
ラナンキュラス Ranunculus asiaticus
キンポウゲ科
原産地/地中海沿岸地方 草丈/20〜40p
生育温度/0〜20℃ 生育適温/約15℃
花期/2月中旬〜4月上旬
定番人気のラナンキュラス。ふっくらとして巻きが厚く、ころんとした花姿と、ニュアンスを秘めたピンクの花色が、ロマンティックな雰囲気をもたらす。特にピンクと白の花色の人気が高い。
トレンド品種の‘ウピス’。清楚なホワイトの花弁の中央に淡いグリーンが現れ、さわやかな色のコントラストが楽しめる。花姿の個性が強く、目を引くので寄せ植えや花壇のアクセントに向く。
ラナンキュラスは、もともと水はけのよい河原に自生する植物です。夏は乾燥ぎみで、冬は寒くて雪が少ない、晴天が続く気候を好みます。Mサイズの球根を植え付けた場合、1球につき約10輪の花が咲けば成功です。
●植え付け
10月以降が植え付けの適期。気温が高いと球根が腐るので、最高気温が20℃以下になるまで待ちましょう。
〈地植え〉
日当たりのよい場所(半日、日が当たればOK)を選びます。風当たりが強い場所は、乾燥しすぎるので避けてください。水はけ、水もち共によく、有機質に富んだ土壌(市販の園芸用培養土を混ぜても可)に、球根が隠れる程度の深さ、間隔15〜20pを目安に、芽が4〜5芽ついている方を上にして植え付けます。
〈プランター栽培〉
日当たりのよい場所に、プランターを置いて管理します。鉢底にゴロ土を敷いて水はけをよくし、市販の園芸用培養土を入れて球根が隠れる程度の深さ、間隔約10pを目安に、芽が4〜5芽ついている方を上にして植え付けます。
コリンシア
オレンジ色地の花弁縁にパープルがのるバイカラーで、華やかな雰囲気が目を引く。縁のパープルの入り方によってフリンジが入っているようにも見えおもしろい最新品種。花径約10pで花弁は200〜300枚になる。花期2月下旬〜4月上旬。
イオ
白い花弁にほんのり淡いピンクがのる。リボンのように細長い花弁と糸状花弁の2種が交じり、内側に緩くカーブする江戸菊咲き。突然変異の珍しい品種で、1輪ごとに花姿が変わるため開花への期待感も高まる。花径10〜15p。花期2月中旬〜4月上旬。
キュレネ
鮮やかなグリーンの花が特徴。花もちがよく、花径は約10pで咲き始めてから花弁を増やし続け、200〜300枚に達し手のひらくらいの大きさになる。暖かくなってくると花弁枚数が減り、花芯がのぞいてくる。花期2月下旬〜4月上旬。
クレタの輝き
花弁内側が黄色、外側がオレンジ色のリバーシブル咲き。蕾はオレンジ色で、開花が進むにつれ内側の黄色がのぞき始め、表情の変化が楽しめる。真上から見るとほぼ黄色、縁がオレンジに見えるが、見る角度によっても雰囲気が変わる。花径約10p。花期2月中旬〜4月上旬。
●水やり
植え付け後は、たっぷりと水を与え、カラカラに乾いた球根に十分吸水させます。球根が目を覚ましどんどん水を吸い、次の日にはもう乾いている場合もあります。土が乾いていれば翌日も水やりしましょう。その後は過湿にならないように、かつ乾燥しすぎないように、適湿を保ちます。冬でも水やりは忘れず行い、地植えなら1週間に1度、プランター植えなら2〜3日に1度が目安です。春以降は乾いたら適宜与えます。
●施肥
園芸用培養土を使用した場合は、元肥は不要です。春先に花芽が見えてきたら、規定濃度に希釈した液肥を10日に1度を目安に与えるか、化成肥料を置き肥します。
●病害虫対策
植え付けから11月ごろまでと、翌年2月以降に、アブラムシやスリップス予防のために適用の浸透性殺虫剤(粒剤)を株元にばらまきします。発生したら適用殺虫剤を散布します。月に1〜2回を目安に、適用の殺菌殺虫剤をスプレーしておくと予防に効果的です。枯れ葉はまめに取り除いて、株周りを清潔に保つのも予防になります。
●掘り上げと保管
5月ごろに株の半分以上が黄化してきたら水を与えるのをやめて、株全体が黄色くなったら、球根を掘り上げます。球根が大きくなって自然に分かれるようなら、分球してもかまいません。球根は雨が当たらない場所に置き、直射日光を当ててカリカリになるまで乾燥させます。温度が40℃くらいまで上がってもOKです。乾燥後、夏の間は密閉容器に乾燥剤を入れて冷暗所で保管します。
ラナンキュラスを室内に飾る際のポイント
ラナンキュラスは、水が落ちると首が垂れやすくなります。水揚げ時は新聞紙などでくるみ、形を整えておきましょう。切り口が傷んでいなければ水に浸け、傷んでいれば切り戻して水に浸けます。水揚げは大変よい方で、深水にしなくても水が揚がるので、葉や茎をなるべくぬらさない程度の水量にします。1時間程度で水が揚がります。
なるべく気温が低く直射日光の当たらない明るい場所に置くと、花もちがよく、開花もきれいに進みます。もともと大変水を好む植物で花瓶の水をよく吸うので、まめに水を替えて切り戻しましょう。開花が進んで首が重くなり、茎が折れてしまった場合は、水を張ったボウルや深鉢に花首を浮かべても、意外に長く楽しめます。
水が落ちると首が垂れやすくなるので、新聞紙などでくるんで形を整え、約1時間水揚げする。
咲き進んで花が重くなり、茎が折れたら花首で切ってボウルに浮かべても花もちがよく、長く楽しめる。
サロニカの虹
透き通るようなピュアホワイトの花弁をうっすらと淡いピンクが縁取るバイカラー咲き。単色とは違うニュアンスがあり、存在感をアピールする。やわらかな花弁の雰囲気が優しげで、特に人気が高い。花径約10p。花期2月下旬〜4月上旬。
トリトン
グリーン系統の品種の中から出てきた赤花で、グリーン花らしい花姿ながら、ワインレッドの花が咲く進化系品種。ボール咲きで、柱頭が現れない分、丸くてかわいらしい雰囲気を保つ。花径約2p。花期2月下旬〜4月上旬。
ウピス
フリルがかる花弁は淡いピンクがのり、中央はグリーンに染まる。コンパクトな株姿で葉がシンプルにまとまるので、花の美しさが一層際立つ。茎が太くて丈夫なため、大きな花をしっかり支える。花径約10p。花期2月中旬〜4月上旬。
草野 宏明(くさの ひろあき)
(有)綾園芸代表。1987年神奈川県生まれ。ラナンキュラス栽培の適地を求め、幼少期に家族で宮崎県綾町に移住。首都大学東京都市教養学部経営学系卒。ラナンキュラスの育種家3代目として新品種の開発及び種苗の生産と販売を行っている。釣りが趣味。