適した環境と植え付け
日陰地など日光の当たらない所では、花つきが極めて悪くなります。なるべく日当たりと水はけのよい所で育てるようにします。地植えの場合は少なくとも半日以上は日光の当たる所を選び、根や葉も大きく茂るので、育成スペースを十分確保することも大切です。よい場所を選んで土づくりをし、きちんと施肥をすれば、地植えなら10年近く植え替えなくても大丈夫です。
ゴージャスな花姿が魅力のシャクヤクは、ガーデンの主役として存在感を放つ宿根草です。芳香をもち、切り花にしてインテリアに飾ってもすてき。日進月歩で品種改良が進む中、最新のトレンド品種をご紹介します。
シャクヤクはボタンやユリと並んで美しい女性を表す花として知られ、花言葉には「恥じらい」「はにかみ」「謙遜」などがあり、イギリスの民話がもとになっているといわれています。
今回ご紹介するシャクヤクは、冬になると地上部が枯れ、根だけ土中に残って冬を越す宿根草です。雪が消え、吹く風も日に日に心地よさを増す早春、深紅の芽が土の中から顔を出し始めます。耐寒性が強いので、その後の少々の寒さや遅霜にもしっかり耐え、やがて緑色の葉が茂って花茎の先に、かわいらしい丸い蕾がつきます。
花が咲くのは5月ごろ〜初夏です。茎先に大型のボタンによく似た10〜20cmの花を一つつけます。品種や樹勢によっては、複数つけるものも見られます。花は紅色や桃色、紫紅色、白色、黄色などと極めて多彩です。また、花の形もさまざまで、一重咲き、翁咲きなどがあり、特に花弁がぎっしりと寄り集まった八重咲きは、まるで毛糸のポンポンのようです。その豪華で優しげなシャクヤクの姿には心引かれます。
シャクヤクは品種が多彩に揃うのも魅力の一つで、好きな花色や花形など、選びがいがある。
花もちがよいので、切り花にして色合わせの妙を楽しむのもすてき。数輪生けるだけでインテリアが華やぐ。
シャクヤクとボタンは花姿が似ており、「見分けがつかない」という声をよく耳にします。そこで両者の違いと、いいとこどりのハイブリッドについてご紹介しましょう。
※シャクヤクには、ボタンと交配された「ハイブリッドシャクヤク」もあります。黄色花を中心とした品種改良種です。繁殖方法に実生のシャクヤクの台木を使用しているので、芽かきを必要とする場合があります。
シャクヤクの葉はつやがあり、全体的に丸みがある。ボタンは縁にギザギザが入るので、葉に注目すると見分けやすい。
輝くような黄色い花を咲かせるハイブリッドシャクヤク。
日陰地など日光の当たらない所では、花つきが極めて悪くなります。なるべく日当たりと水はけのよい所で育てるようにします。地植えの場合は少なくとも半日以上は日光の当たる所を選び、根や葉も大きく茂るので、育成スペースを十分確保することも大切です。よい場所を選んで土づくりをし、きちんと施肥をすれば、地植えなら10年近く植え替えなくても大丈夫です。
鉢植えの場合は肥料不足になりやすいので、株が太らず花つきが悪くなることがあります。鉢植えで楽しむなら、肥えた配合土(赤玉土の中粒4、鹿沼土4、培養土2)を用意し、8号以上の大鉢で根をしっかり張らせることが大切です。また、根詰まりや根が込みすぎると花つきが悪くなるので、2〜3年ごとに植え替えるのが理想です。
鉢植えで楽しむ場合は、8号以上の大鉢に植え、根をしっかり張らせる。根詰まりを防ぐために2〜3年に1回は植え替える。
鉢植えの場合、表面が乾いたらたっぷり水を与え、水切れしないように注意しましょう。春先の芽が生長する時期から特に乾燥しやすくなります。
シャクヤクはかなり肥料食いで、不足すると花が咲きにくくなるので、ほかの草花より多めに与えましょう。植え付け時の元肥のほか、早春の芽出し肥、花後のお礼肥、翌年の花芽ができる秋に、それぞれ追肥を施します。
蕾は1本の茎にいくつもつき、そのままにしておくと開花が少なく咲かないものがあるので、頂点の大きな蕾だけを残して、わきの蕾は摘み取りましょう。
充実した大きな花を咲かせるために1本の茎に頂部の大きな蕾だけ残して、ほかの蕾は取る。
開花後は病気の予防と株の消耗を防ぐため、早めに花を首元から切り取っておきます。花後から秋までの間は茂っている葉で光合成をして株が太るので、花がらを摘む時は葉を切らないようにしましょう。
株分けは、地下部の活動が始まる11月ごろより前、9〜10月が適期です。それぞれの株に三つ以上の芽がつくように切り分けます。根についた土を落として、長い根は少し切り取りましょう。植え付け時に株を殺菌剤で消毒します。
大株に育ったら、9〜10月に三つ以上の芽をつけて株分けし、殺菌剤で消毒して植え直す。
病害虫予防の一番は水はけのよい土に植え付け、風通しのよい環境を保つことです。特に蕾に灰色かび病が発生すると花が咲かなくなるので、芽が出る3〜4月に殺菌剤を散布して予防しましょう。また開花後、温度が上がる梅雨時期になると、うどんこ病や灰色かび病が発生しやすくなるので、殺菌剤を使って予防します。
蕾がつく時期には、アブラムシやヨトウムシが発生しやすくなります。特に茎の下部から侵入するシンクイムシには注意し、いずれの場合も早めの防除を心掛けましょう。
(ボタン科)
植え付けから開花の目安は1〜2年。