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ボタンを庭で咲かせよう

伝統の美花 ボタンを庭で咲かせよう

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栽培してこそ出会える最高に美しい瞬間

「花の王」と呼ばれるボタンは、伝統的な園芸植物としてのみならず、古来、屏風や襖絵などの絵画、あるいは着物や漆器の柄など、さまざまな美術品のモチーフとしても愛好されてきました。
満開の時期はわずか数日。その中でも絶頂の瞬間に出会えることが、ボタン栽培の醍醐味です。自然光に透けて揺らめく花の美しさ。絶世の美女にたとえられるボタンの花との一期一会の世界を、ご家庭の庭に作ってみてはいかがでしょう。

中国から日本へ江戸時代に園芸が発展

中国の中央に位置する陝西省。秦の都・長安を中心に栄えたこのエリアの山岳地および北西部が、ボタン発祥の地といわれています。唐代に園芸化が進み、時の皇帝・玄宗がボタン園をつくり、楊貴妃の美しさがボタンにたとえられたのは有名な話です。
日本に渡来したのは奈良時代。当初は薬用植物として入ってきましたが、やはり花の美しさから観賞されるようになり、日本の風土にあった独自の改良がなされました。江戸時代には、観賞用花木としてさらに進化。多くの日本種が誕生することになります。元禄のころ、出雲(現島根県)の大根島の住職が遠州(現静岡県)からボタンを持ち帰ります。それが大根島ボタン栽培の始まり。多肥を好むボタンと肥沃な土の出会いは、やがて大根島を日本最大のボタン生産地へと変えていきました。

島根県にあるボタンの島 大根島

おすすめの注目ボタン品種

黄花系ボタンの系譜と新品種

黄色のボタンは従来、ブータンの黄花原種と日本発祥の二季咲きボタンを交配したフランス品種が主流でした。そのうちの5品種は日本に入って、「金帝」や「金閣」など気品に満ちた和名がつけられ、普及していったのです。ただ、残念なことにフランス品種は樹勢が弱く下向きに咲くという特性から、育てにくく、今や幻の花となっています。
こうした弱点を見事に克服したのがアメリカ品種です。小輪ながらも花つきがよく、八重で横向きの花が1枝から数輪咲き揃います。アメリカ品種が次の主流を担う中、大根島の育種家・渡辺三郎が、アメリカ品種「ハイヌーン」と「新扶桑司」を交配させて、日本初の黄花品種「黄冠」を生み出しました。ロマンティックイエローで樹勢も強く、“ボタンの王様”といわれる存在です。

  • 黄冠

    遅咲き/大輪/八重/抱え咲き/直立 ロマンティックなレモンイエロー、肉厚な花弁の黄色八重抱え咲きで、花弁の基部に炎のような黒茶色の斑紋があります。

  • ハイヌーン

    遅咲き/中輪/八重/抱え咲き/半直立 純黄色の花つきのよい中輪八重咲き花で、花弁の基部にある炎の形の茶褐色の斑紋が特徴。花首が強く、花が垂れず美しい人気の品種。

  • 新扶桑司

ぜひ地植えしたい巨大輪系

「百花の王」の称号にふさわしく、優美にしてゴージャス、生命力を感じさせる巨大輪(22p以上)で、花びらの重ねの多い品種。

  • 大松山

    中咲き/大輪/千重/抱え咲き/直立やわらかな印象の丸弁で、花弁の重ねが多く、丸みを帯びたボリュームある花形の、淡赤色大輪千重咲き花。花つきがよい品種です。

  • 島美人

    遅咲き/巨大輪/千重/盛り上げ咲き/半直立雄しべの中からも花弁が出てくる盛り上げ咲きの巨大輪花。大きな鞠のようにふっくらと丸く咲きます。遅咲きの中でも最晩生の品種です。

  • 烏ヶ仙

    早咲き/大〜巨大輪/千重/抱え咲き/半直立黒花系の中で唯一無二の花弁数と大きさが魅力。年数を重ねるごとに花弁も増えます。鳥取県大山の霊峰「烏ケ仙」からその名がつけられました。

  • 貴婦人

    中咲き/巨大輪/万重/盛り上げ咲き/半直立幾重にもチュールを重ねたウェディングドレスのような華やかさ。クリームがかった白色の蕾は、開花が進むにつれ淡ピンク色が差し始めます。「2011年切り花品評会県知事賞」受賞。

定番の名花“ボタン御三家”

 ボタンらしいボタン、ボタンと聞いて思い浮かべる花のイメージにぴったりの、名花の中の名花です。

  • 芳紀(赤)

    早咲き/中輪/八重/抱え咲き/半直立 早咲きでシーズンの始まりを告げる品種です。赤色の中輪八重抱え咲き。花弁は丸く、咲き始めから赤いのが特徴。鉢栽培で広く好まれています。

  • 連鶴(白)

    中咲き/大輪/八重/抱え咲き/半直立 鶴が連なっているように咲く様子からその名が付けられた、白花の名花。花弁が波打ち、弁底にわずかにピンク色が入ります。連なるように5輪以上咲かせたいもの。

  • 島大臣(赤紫)

    中咲き/大輪/千重/抱え咲き/半直立これぞボタン色!という赤紫色の千重咲き。ボタンと聞けば誰もが思い浮かべる、ともいえる優雅な大輪の花。名花中の名花です。

大根島発の希少&最新品種

 日本トップクラスの育種家が多い大根島。島のボタン園では毎年、ボタンの季節に希少品種展と最新品種のグランプリ投票が開催されています。

  • 紫苑

    中咲き/中輪/万重/抱え咲き/半直立ボタンの一大産地、島根県で作出された希少な品種。外側に白色の絞りが入った花弁が波打つように咲きます。美しく強健で、初心者でも育てやすいでしょう。

  • 雪白山

    中咲き/大輪/千重/抱え咲き/半直立純白の丸い花弁が重なって咲く大輪。透明感のある雪のような白さが魅力です。

  • 島錦

    早咲き/中輪/八重/抱え咲き/半直立絞り咲きの代表品種です。「太陽」という赤花系品種の枝代わりのため、絞りの出方が固定されにくく赤白の絞りに色幅があって表情が豊か。樹勢が強く栽培しやすい品種です。

  • 明日香

    中咲き/大輪/千重/抱え咲き/半直立花の中心が色濃く弁端に向かって淡くなる、ピンク色のグラデーションが美しい品種です。樹勢が強く、鉢植え栽培にも適しています。

  • 花王

    遅咲き/大輪/万重/
    盛り上げ咲き/直立
    赤花系代表品種。外側と中心部の花弁に大小の差が少なく、形よく盛り上がり、花の終わりには紫みを増します。

  • 写楽

    中咲き/大輪/万重/抱え咲き/横張り藤色系の品種を親にもち、やや青みがかかる珍しい紫花の品種。万重咲きで大輪、中咲きです。波打つ花弁のゴージャスな青紫色花は、これぞボタン!

  • 晃花殿

    中咲き/中輪/千重/盛り上げ咲き/半直立目の覚めるような鮮やかな赤色で、花弁の重ねが多くボリュームたっぷりの千重咲き。樹高が低く、鉢植えに向く人気の品種です。

  • 平成紅

    遅咲き/中輪/千重/抱え咲き/直立遅咲き品種の中では非常に少ない濃赤色の抱え咲きです。直立性が強いため、群落の中でも目立ち、主役を担える美しさも魅力。

※各花のデータは、開花/花の大きさ/重ね/花容/樹形を示しています。

花時、樹高、色を組みあわせストーリー性のある庭に

開花時期、樹高、花色の異なる品種を組みあわせて配置することで、オンリーワンの庭が生まれます。自分だけの開花ストーリーを楽しんでみてはいかがでしょう。

早咲きから遅咲きまで

ボタンの一般品種は、4月下旬から5月中旬にかけて開花します。しかし、多くの品種が一斉に開花するのではなく、品種によって花時が違います。例えば早咲きの「芳紀」が花開くと、いよいよシーズンが始まったという知らせ。そして、早咲きの品種が咲き終わったころ「花王」が開花し始めます。早咲き・中咲き・遅咲きと、開花期の異なる品種を選べば、しばらくの間、庭でボタンが楽しめます。

直立性か横張りか

ボタンは落葉低木ですが、直立性の強いものと横張りするものがあるので、樹高の違いも考えましょう。高低差を生かした花壇をつくるときは、樹高の違う品種を選ぶことと、開花時期を揃えることがコツです。

配色を楽しむ

色は赤・紫・白・黒・黄色に加え、紅白絞りの「島錦」も人気があります。日本の伝統的な色で組みあわせるのも粋です。
また、色とりどりでなくても、同系色のグラデーションで揃えるのもよいでしょう。例えば、赤系の「大松山」は、色は淡赤で抱え咲きの大輪、開花は中咲きで、直立性。濃赤の「平成紅」は、抱え咲きの中輪で、遅咲き、直立性。組みあわせても互いを補うように花を咲かせます。

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渡部 卓也 由志園アグリファーム株式会社取締役生産責任者。大根島でボタン生産を行い、育種家とともに優良品種の選抜と普及を担う。また、近年は全国のボタン園プロデュース事業を手掛けている。日本牡丹協会会員。
門脇 竜也 島根大学生物資源科学研究科を卒業後、2009年より日本庭園「由志園」の農業生産法人由志園アグリファーム株式会社設立に携わり、島根県の県花であるボタンの園芸文化を広める企画に携わる。同社取締役企画室長。