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日陰に強い庭木

日陰に強い庭木

「ここは日差しが当たらないから、植物を育てるには向かない」と諦めていませんか?
植物の中には草花だけでなく、少ない日照でも元気に育つ樹木もたくさんあります。
日陰に強く、しかも魅力的な庭木で、家の北側や建物の陰になる場所など、庭づくりにおけるデッドスペースを、緑あふれる空間にかえてみましょう。

住宅事情や気候の変化から日陰に強い木の需要はアップ!

  植物は太陽光を葉で受け、光合成によって必要な栄養分を作り、それを枝や葉、根に送って生長を続けています。この時、葉の受ける光量がわずかでも生育する樹木が、いわゆる「日陰に強い木」で、「陰樹」とも呼ばれます。逆に多くの太陽光を必要とする植物を「陽樹」と呼びますが、この陰樹と陽樹の分類に明確な一線を引くのはなかなか困難なことです。例えば北側の庭でも屋根の庇が短いか、高木の枝葉が茂っていないか、土壌が腐植質に富み保水性と排水性が良好かなど、いろいろな環境条件によるところが大きいためです。
  また、近年のように夏の気温が熱帯地域並みになると、いくら陽光を好む植物でも特に葉質の薄い(クチクラ層の薄い)植物などは、白色か時には黒色の寒冷紗で日よけをした方がよいケースもあるでしょう。

  近年のガーデニングでは、「シェードガーデン」が注目を浴び、人気のスタイルとなっています。中には意図的に高木によって直射日光を遮り、やわらかな日差しが注ぐようにデザインされている庭も見かけますが、このような庭ではほとんどの植物が問題なく生育します。しかし、昔からいわれてきた陰樹とは、1日の中でまったく、もしくは1〜2時間の日照しか得られない所でも十分生育する植物のことを指し、アオキやヤツデなどがその代表的なものとして親しまれてきました。
  家(構造物)を取り巻くスペースを考えると、日当たりのよい所ばかりではなく、午前中だけ日光の当たる所、午前中は日陰であるが午後はたっぷり強い日差しの所など、日照条件はさまざまです。その中で多様な植物を育て楽しみ、発見してきたことから生まれた言葉が陰樹や陽樹であり、今でも造園学では陰樹、陽樹に加え、中間的なものを「中庸樹」などと呼び使い分けています。

小スペースでも工夫次第でしゃれた日陰の庭ができる!

  現在でも、京都の町屋造り住宅の中間部分に設けられた中庭や坪庭は、埋め込み灯篭や小さな置き灯篭、また、小鉢や筧などをしつらえ、アオキやヤツデ、アセビ、シダ類といった、日陰に強いわずかな種類の植物を上手に使い、石造物、水景によってまとめられています。そんな小さな庭はまさに「和のシェードガーデン」の原型と呼べるでしょう。
  現在の住宅事情は狭小化しており、隣家との間隔はわずかしかなく、住宅の角度によってはこの部分にまったく陽光が差し込まない場合もあります。今回は、日陰に強い庭木の中でも大きくなる木は極力避け、あまり大きくならず、また、年間の管理に手間のかからない木を選んでご紹介します。ぜひ、小さなスペースにも樹木の緑を取り入れて、やすらぎを感じさせる庭づくりをしてみてください。


日陰におすすめの庭木

アメリカイワナンテン・レインボー
アメリカイワナンテン・レインボー

北米原産で、枝条が地際から出て湾曲に伸びる強健種。4〜5月に7〜8cmの総状花序を葉腋(ようえき)から出し、白い壺状の小花を房状に咲かせます。「レインボー」は斑入り葉がとても美しいおすすめ品種。ツツジ科の常緑低木。

斑入りツルマサキ・ガエティー
斑入りツルマサキ・ガエティー

地面では匍匐(ほふく)して広がり、壁などには細かい根で吸着して育ちます。小さな葉をもつ矮性種の「ガエティー」は白斑が美しく、その斑が冬にはピンクがかる変化も楽しめます。ニシキギ科の常緑つる性植物。

アオキ・相模弁天
アオキ・相模弁天

シナアオキ、ヒマラヤアオキ、日本産のアオキがありますが、日本はもちろん欧米でも広く親しまれているのはアオキの園芸品種で、特に日陰に強いのが特長。「相模弁天」は斑入り葉の美しい品種です。ミズキ科の常緑低木。

ヤツデ
ヤツデ

冬でも落葉せずに光沢のある大きな葉を茂らせるので、日陰の庭を年中、緑で彩ることができます。大きな手のような葉が人を招いているようにも見えることから、千客万来の縁起木としてよく利用されます。ウコギ科の常緑低木。

ゲッケイジュ
ゲッケイジュ

別名の「ローリエ」でも知られ、香りづけとして料理に利用できるので1本植えておくと便利です。枝が勢いよく伸びるので、刈り込んできれいな形に仕立てて楽しむのもおすすめです。クスノキ科の常緑中高木。


イリシウム・ランケオラータム
イリシウム・ランケオラータム

中国原産の強健種で、3〜4月にロウでつくったような肉厚の濃紅色の花を咲かせます。刈り込みも可能なので思う高さに仕立てて楽しめます。光沢のある葉にはアニスのような香り。シキミ科の常緑低木。

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イリシウム・フロリダナム セムズ
イリシウム・フロリダナム セムズ

アメリカ原産の強健種で、光沢のある革質の葉が特徴。9月ごろに花径4cmくらいの美しい白花を咲かせます。樹高は0.6〜1m程度なので、シェードガーデンのグラウンドカバーに最適です。シキミ科の常緑低木。

サルココッカ
サルココッカ

耐陰性が強いだけでなく、丈夫で病害虫にも強く手間なく育つので、日陰のグラウンドカバーにとても使い勝手がよくおすすめ。2〜3月に芳香のある緑白色の小花を咲かせ、その後に黒紫色の実をつけます。ツゲ科の常緑低木。


ボタンクサギ
ボタンクサギ

若い茎を1 本伸ばし大きな葉を対生させ、6〜7月には香りのよい紅色の小花を、大きなボール状に咲かせる美しい姿が楽しめます。寒さが厳しいと地上部は完全に枯れますが、春には新梢を伸ばします。クマツヅラ科の落葉低木。

カシワバアジサイ・ピーウィー
カシワバアジサイ・ピーウィー

アジサイの仲間の中で、北米原産のカシワバアジサイは日陰の庭におすすめ。「ピーウィー」は矮性品種で、地植えでもコンパクトにまとまります。5〜7月に咲く白い花が美しく紅葉も楽しめます。アジサイ科の落葉低木。

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オオヤマレンゲ
オオヤマレンゲ

モクレンの仲間の中でも、特に日陰に強いのがオオヤマレンゲです。4〜5月に咲く、うつむきがちの白い大きな花は存在感があり、芳香も楽しめます。日陰の庭の主役として利用できる木です。モクレン科の落葉低木。

ツバキの仲間・エリナ
ツバキの仲間・エリナ

ツバキの仲間で中国の自生種を改良した園芸品種。3月には枝いっぱいに淡ピンクの花が咲く姿はとてもエレガント。繊細で優しい樹姿は洋風の建物にもよく似あいます。ツバキ科の常緑中低木。

ノリウツギ・ダルマ
ノリウツギ・ダルマ

樹高40〜80cmと、ノリウツギの園芸品種の中で最もコンパクトな品種です。枝はあまり長く伸びず、6〜7月に枝先に白く涼しげな装飾花をつけます。花後に装飾花が桃色に色づくこともあります。アジサイ科の落葉低木。

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アメリカコゴメアセビ
アメリカコゴメアセビ

北米原産で広披針形の葉は光沢があり、とてもきれい。春から初夏に、枝先に愛らしい釣鐘状の小花を一斉に咲かせます。淡桃色から濃桃色のグラデーションが日陰の庭を華やかに彩ります。別名「リオニア・マリアナ」。ツツジ科の常緑低木。

アセビ・紅花種
アセビ・紅花種

スズランに似た愛らしい花が下垂するように咲く姿はとても優美で、樹形をコンパクトに仕立てやすいのも魅力。白からピンクに染められたような、濃淡のある花が美しい紅花種は特に人気があります。ツツジ科の常緑低木。

ジンチョウゲ
ジンチョウゲ

日本には室町時代中期以前に導入されたといわれ、3〜4月には花の芳香で存在感を示します。樹高0.6〜1mほどであまり高くならず、小さなスペースでも使いやすい花木です。ジンチョウゲ科の常緑低木。

カラタネオガタマ・パープルクイーン
カラタネオガタマ・
パープルクイーン

中国原産。普通種は肉厚の黄みを帯びる白花で、完熟したバナナのような香りがすることから「バナナシュラフ(バナナノキ)」とも呼ばれています。「パープルクイーン」は紫紅色花が美しい品種です。モクレン科の常緑小高木。

八重ヤマブキ
八重ヤマブキ

万葉集に詠われるほど古くから親しまれている花ですが、八重咲き品種も古くからあり、4〜5月に咲く花は、鮮やかな色でとても華やかです。育てやすく、手間をかけずに毎年花が楽しめます。バラ科の落葉低木。

ゴードニア・ラシアンサス
ゴードニア・ラシアンサス

アメリカ原産で、7〜9月に咲くツバキに似た白い花がとても美しく、日陰の庭に涼やかさをもたらします。枝条がすっきり伸び、病害虫の被害も少なく育てやすいので、今後人気が高まるでしょう。ツバキ科の常緑高木。


クレマチス・アーマンディー
クレマチス・
アーマンディー

中国原産で、非常に樹勢が強く育てやすい植物です。花びらが細く繊細な印象で、一般的なクレマチスより早く、3〜4月に花を楽しめます。フェンスやトレリスに絡めて育てるとよいでしょう。キンポウゲ科の常緑つる性植物。

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イワガラミ・白花種
イワガラミ・白花種

つるから気根をたくさん出して、岩や樹木に這い上がって伸びます。5〜7月に花序の周囲のがく片が、一つだけ大きな花弁状となります。この純白の装飾花が美しく、とてもさわやかな印象です。アジサイ科の落葉つる性植物。

テイカカズラ ピンクジャスミン
テイカカズラ
ピンクジャスミン

細く強靭なつるを長く伸ばし、自らのつるを互いに絡めて育ちます。ジャスミン系の芳香も魅力。プロペラのような花形で、美しいピンク色の花を咲かせます。垣根の彩りにもおすすめです。花期は5〜6月。キョウチクトウ科の常緑つる性植物。

テイカカズラ スタージャスミン
テイカカズラ
スタージャスミン

細く強靭なつるを長く伸ばし、自らのつるを互いに絡めて育ちます。ジャスミン系の芳香も魅力。プロペラのような花形で、純白の花を咲かせます。垣根の彩りにもおすすめです。花期は5〜6月。キョウチクトウ科の常緑つる性植物。

紅花ヒイラギナンテン
紅花ヒイラギナンテン

昔から鬼門除けとして利用されてきたヒイラギナンテンの仲間。一般的な品種は10〜12月に黄色の花を咲かせますが、これは珍しい紅花種です。モダンな印象で、和洋どちらの庭にもよくあいます。メギ科の常緑低木。

ナンテン・紅白セット
ナンテン・紅白セット

「難を転ずる」という語呂あわせから、昔から家を建てる際に縁起木として植えられています。庭に色が少なくなる冬に真っ赤、または白い実をつけて華やぎをもたらします。紅白セットならさらに縁起よし!メギ科の常緑低木。

屋久島リンゴツバキ
屋久島リンゴツバキ

ヤブツバキの変種として扱われ、赤く色づく大きな実がまるでリンゴのように見えることからこの名前に。2〜5月に咲く一重筒咲きの鮮やかな紅赤色の花は遠目でもよく目立ち存在感抜群です。ツバキ科の常緑高木。

オオミノナギイカダ
オオミノナギイカダ

地中海原産で、細い枝条を叢生(そうせい)して大きな株になります。葉先が鋭く尖っているため、動物の侵入防止目的でよく利用されます。雌木は冬から春に花が咲き、ダイズよりもやや大きめの赤い実をたくさんつけます。ユリ科の常緑低木。

シャシャンボ
シャシャンボ

ブルーベリーの仲間で、樹勢が強く、5月ごろに白い花が咲きます。秋にはアズキ大の黒紫色の実がなりますが、この実はブルーベリーのようにアントシアニンを多く含み、食用できます。ツツジ科の常緑低〜高木。


園芸研究科 船越 亮二1934年埼玉県生まれ。1957年東京農業大学農学部造園学科卒業。埼玉県農業大学校、埼玉県住宅都市部公園緑地課長、大宮公園事務所長等を歴任。現在は(財)さいたま市公園緑地協会理事、専門学校中央工学校(土木測量系・造園デザイン科)講師等を務める。