夏の高温&風雨対策のポイント
昨今の異常気象、とりわけ極端な高温や大雨が増加する背景には、地球温暖化がかかわっているといわれています。温暖化により地球の平均気温が上がり、地域ごとの夏の気温も、極端に暑くなる頻度が増え、作物に対するダメージも大きくなっています。
また、気温の上昇にともなって大気中の水蒸気が増えることにより、ゲリラ豪雨のような大雨や台風も多くなっています。こうした予期せぬ高温や風雨は、私たちの生活のみならず、畑の作物にも大きな被害をもたらします。
【写真1】高温でダメージを受けたサトイモ。近年の猛暑は作物に多大な被害を与えることも。
多くの植物は50℃程度の高温にあうと茎葉に日焼けを生じ、さらに進むと枯死してしまいます。高温下では蒸散作用が高まり、葉のしおれを起こします。(写真1)
風害は強い力による破壊作用によるもので、茎葉の折損、倒伏、果実の損傷、落下などを起こします。潮風害は海水の飛沫が強風によって内陸に侵入した時に塩分による被害を起こし、台風の時に被害が大きくなります。
水害は台風や集中豪雨などによる局地的な大雨によって起こります。畑では土壌の流出、菜園の冠水、長期の降雨による野菜の生育障害などが起こります。
これらの夏の高温や風雨に対し、しっかりとした対策をとることが重要です。
強い日差しで温度が上がり、発芽障害や幼苗に葉焼けを起こすことがあります。まき床の上によしずをかけたり、寒冷紗のトンネルで遮光するとよいでしょう(図1)。遮光する際は、光が当たらず苗が徒長しないようにすることも大切。目安としては、遮光率50%程度の遮光資材を選び、夜間や曇雨天時は取り除くのがベター。終日遮光をする場合は、遮光率20%程度のものを使うとよいでしょう。
夏の潅水は早朝や夕方に行うのが原則です。日中の潅水は、植物にお湯をかけるような状態になり、茎葉を傷める原因になります。水をたくさん確保できる場合は、畝間に潅水するのも有効です。
土の乾燥防止のため、地面に敷きワラやポリマルチをして蒸散を防ぎます。白やシルバーなど光を反射するポリマルチは、地温を下げる効果もあるので夏の栽培におすすめです。
幼苗が風で振り回されると葉がちぎれたりするので、不織布や防風ネットのベタかけで保護するとよいでしょう。台風のときには防風ネットを草丈の低い野菜に直接かけて、飛ばされないように押さえます。
強風による被害を防ぐには、防風ネットで菜園を囲うとよいでしょう。風上側に防風ネットを設置すれば、ネットの高さの約10倍の距離まで減風効果があるといわれます。防風ネットは編み目4mm程度、高さ1m程度が使いやすくておすすめです。大きな風圧がかかるため、ネットを支える支柱は丈夫な単管パイプなどを使います。
作物の支柱はしっかり固定することが重要。斜めに支柱を渡して補強すると、風によるぐらつきを防ぐことができます。大きな台風の到来が予想される時は、支柱を外して茎葉を倒す(トマト)、ゴーヤなどのグリーンカーテンは、ネットごと株を地面に下ろすなどの対策も有効です。
強風による落果を防ぐため、台風などの到来が予想される場合は、早めに収穫してしまうのも一案です。トマトは赤く色づき始めたら、ナス、キュウリはやや小さめでも収穫しましょう。また、トマトは収穫の終わった下の葉を取り除いて、少しでも風圧を避けましょう。
- 株が倒伏してしまったら?
- トマトなど果菜類は起こして支柱に誘引し直します。スイートコーンは草丈が低い時は自力で立ち上がりますが、茎葉が繁茂していれば1株ずつ起こし、土寄せして直立させましょう。
- 茎葉に泥や汚れがついたら?
- 台風によって茎葉についた泥や汚れを洗い流します。潮風を受けた菜園では、よく水をかけて塩を洗い流します。
- 被害がひどいときは?
- まき直し、植え直しを考えましょう。早生品種を選び、マルチ栽培を取り入れるのも有効です。まき時が大きく過ぎている場合は、代替野菜を探しましょう。
- 茎葉に傷がついたら?
- 茎葉の傷から病気が発生することもあるので、適用のある殺菌剤を散布して予防します。
速やかに水が引くように、菜園の周囲と畝間に排水のための溝をつくっておきます。
ビニールトンネルで雨よけができますが、夏は高温にならないようすそをあけて換気します。トマト栽培では、単管パイプなどで軒高のある雨よけをつくれば、果実の裂果対策にもなります。
水はけが悪い場所では、高畝にします。タネまき後は、タネの流出を防ぐため、不織布のベタかけで保護するとよいでしょう。
- 焦って作業をせず畑の乾きを待とう
- 雨後にぬかるんでいる時に畑に入ると土を固め、根を傷める原因になるので、畑が適度に乾くまで待ちましょう。畝間の土がかたく締まっていたら、中耕してやわらかくします。
- 神奈川県農業技術センターなどで野菜の研究と技術指導に従事後、一般社団法人日本施設園芸協会で野菜の流通振興に携わる。現在、園芸研究家、野菜ソムリエ。