ユリの原種は、現在およそ110種余りが確認されており、日本には14種のユリが自生しています。その中でも日本にだけ自生しているという固有種が、ヤマユリ、ササユリ、ヒメサユリ(オトメユリ)、タモトユリ、ウケユリ、スカシユリの計6種です。
ユリのオリエンタルハイブリッドとは、主に日本原産であるこれら6種のユリの交配から生まれた品種群のことをいいます。まさに「オリエンタル(Oriental)」の名が表すとおり、東洋=日本起源のユリから生み出されたものなのです。
ユリの園芸品種にはオリエンタルハイブリッドのほかに、スカシユリやオニユリなどから作出されたアジアティックハイブリッドや、テッポウユリとタカサゴユリの交雑から生まれたロンギフロラムハイブリッドといった品種群があります。それらと原種、そして原種の変種群も1つの品種群とすると、園芸学的には全部で9グループの品種群に分類されます。その中でもオリエンタルハイブリッドは、花の豪華さ、芳香性の高さを併せ持つ優れた品種群として、これまで数多くの品種が世に送り出されてきました。
ユリの園芸品種といえば、誰もが知っている‘カサブランカ’も、このオリエンタルハイブリッドに含まれます。‘カサブランカ’に代表される純白のほか、白地に黄色、また濃淡の赤もしくはピンクなどで花色が構成され、さらに花の中心に斑点が入る品種もあります。
花形も多種多様で、花弁が幅広なもの、細いもの、または波打っているもの、そして最近ではなんと八重咲きの品種も出てきています。
純白で大輪の花を持ち、華やかな魅力を振りまく‘カサブランカ’もオリエンタルハイブリッドの1つ。
現在、世界一のユリ球根生産国であるオランダでは、球根生産に加えて品種の改良も盛んに行われています。毎年5月に、キューケンホフ公園の室内展示場でユリの展示会「リリーパレード」が開催され、多くの新しい品種がお披露目されます。チューリップの展示で世界的に有名な公園ですが、同時期にユリの展示会も催されているのです。
展示場内に所狭しと飾られた豪華なユリはまさに衝撃的で、会場内に立ち込めた強い芳香もなかなかに刺激的ですが、それよりも「こんなにも華やかな花があるのか」と、ただただ驚くばかりです。その中でもやはり、オリエンタルハイブリッドの大輪で色鮮やかな花の存在感は際立っていて、それこそ圧倒されます。
オリエンタルハイブリッドの栽培は、球根選びさえ上手くできれば、開花までそれほど難しくはありません。ユリの球根は、養分を蓄えた鱗片が鱗のように重なり合って形作られており、チューリップのような皮に包まれていないため乾燥を嫌います。
また、一般的に球根の大きさと比例して花数は多くなります。ユリの球根流通では球周を2p刻みで区分しており、品種によって花数の多少は異なってきます。
タキイが取り扱っている球根は、営利栽培向けとして、切り花生産者の方々にも用いられています。つまり切り花生産のプロたちに使われているのです。そのような良質の球根を育てれば、すばらしい花を咲かせてくれることでしょう。
- 1984年、新潟県生まれ。岡山大学環境理工学部卒業後、英国王立キュー植物園にて研修。その後、オランダの球根流通および育種会社にて研修。帰国後、高知県のユリ切り花生産者のもとで研修し、現在は、園芸関係の会社に勤務。