畑の切り替えと秋冬野菜の準備
病害虫などによる連作障害を回避するには、次のシーズンを見越して資材の準備や土づくりなどを早めにスタートすることが肝心。夏野菜を片づけて畑を切り替えるタイミングと、秋冬野菜の準備のポイントをご紹介します。
夏野菜の終了時期を見極める!
一斉に収穫期となるジャガイモ、スイートコーンなど「終わり時」がはっきりしている野菜に比べ、トマト、ナスなどは夏を過ぎても収穫が続きます。しかしいつまでも収穫を続けていると秋冬野菜の準備ができません。ひと通り収穫を終えたら早めに株を片づけ、次のシーズンに向けた準備を進めるのが賢明です(一般的な「終わり時」は表1を参照)。
夏野菜の収穫後は根の状態をチェック!
野菜の収穫後、根に瘤がついていたという経験はありませんか。このような症状を見かけたら、早めの対策を心掛けます。
ネコブセンチュウ
根に瘤をつくって養水分の吸収を妨げ、生育が阻害されて根が枝分かれするなどの症状を起こす害虫。防除対策として、@被害の出た野菜の連作をしない、A畑に堆肥を施して土の生物相を豊かにする、Bマリーゴールドやクロタラリアなどの対抗植物を利用する、などがある。
ニンジンのネコブセンチュウ被害。
根こぶ病
ダイコン以外のアブラナ科野菜に広く被害を及ぼす土壌病害。被害がひどくなると収穫できないこともある。防除対策としては、@畑の水はけをよくして土の過湿を防ぐ、A石灰質資材を散布して土壌の酸性を改善する、Bハクサイ、キャベツなどの連作を避ける、などがある。
根こぶ病に侵されたハクサイ。
最適な品種を選ぼう!
秋冬はキャベツ、ブロッコリー、ハクサイなど、アブラナ科野菜が多いのが特徴です。アブラナ科野菜には根こぶ病のような共通の病害が出やすくなるので、アブラナ科野菜の連作を回避した作付計画が大切です。
品種の早晩性をチェック
品種選びでは、早晩性、耐寒性、耐病性といった特性を確認します。例えばハクサイの場合、収穫の時期ごとに、早どりは高温に強い「晴黄65」年内どりは耐寒性と肥大性のある「黄ごころ80」、年明けどりは耐寒性と晩抽性がある「晴黄90」、などと品種の使い分けをします。品種を上手に使い分けることで、11月〜翌年2月まで旬のハクサイを楽しむことができます。
また、根こぶ病が気になる畑では「きらぼし」シリーズやミニハクサイの「CRお黄にいり」を選ぶとよいでしょう。
まき時を守ることが肝心
「秋の1日、春の7日」ということわざは、立秋を過ぎた秋の農作業での1日遅れは春の7日遅れに相当することを意味しています。タネまきが遅れるとその後の寒さで生育が遅れて収穫に至らないこともあるので、地域ごとの栽培適期をタネ袋の表示などで確認します(一般的な「始め時」は表2を参照)。
ただし、夏は害虫の活動も盛んなので、早まきしすぎるのも考えもの。気温が低くなるにつれ害虫は少なくなるので、タネまき適期の期間内で、なるべく遅い時期を選ぶことも考えましょう。
表1 夏野菜の終わり時(収穫期)
表2 秋冬野菜の始め時(タネまき、植え付け)
さっそく土づくりスタート!
夏野菜を片づけたら、速やかに秋冬野菜の土づくりを始めましょう。雨が多い日本は、カルシウム(石灰)やマグネシウム(苦土)が流れやすく、酸性土になりがちなので、石灰資材を投入して酸度を調整します。
まずは畑の酸度をチェック
土の酸度を調べる場合は、専用の試験紙(農大式簡易土壌診断キット「みどりくん」)や土に直接差し込んで測定する土壌酸度測定器などを使います。石灰資材の与えすぎは微量要素の吸収を妨げる恐れがあるため、診断値に応じた石灰資材を施すことが大切。例えば、粒状の苦土石灰の施用量は、pH5.5で1m2当たり約250g、pH5.0で約300gです。酸性土が改良されると、土壌微生物の働きが活発となって有機物の分解を速める効果もあります。
野菜にとって適した酸度は?
多くの野菜は、弱酸性(pH6.0〜6.5)を好みますが種類によっては酸性を好むものもあり、適した酸度(pH)に調整することが大切です。ダイコン、カブは酸性にやや強い野菜ですが、ホウレンソウ、タマネギは酸性に弱く、発芽してもしばらくすると枯れてしまいます。
土壌酸度などを手軽に調べることができる、農大式簡易土壌診断キット「みどりくん」。
石灰資材をまいて酸度調整
石灰資材は、チッソ肥料やチッソ分の多い堆肥と一緒に施すと、アンモニアガスが発生し、チッソ分が逃げてしまいます。そのため石灰資材とチッソ肥料を同時に与えてはいけません。タネまきや植え付けの2週間前までに石灰資材を、1週間前までに化成肥料と完熟堆肥を施用します。
タネまきや植え付けの2週間前までに、土壌酸度を調べて、石灰資材(苦土石灰など)をまく。まいたあとはよく耕す。
タネまき、植え付けの1週間前までに、元肥(堆肥や化成肥料など)をまいて土づくりをする。石灰資材とチッソ肥料を一緒に施さないようにする。
太陽熱や熱水を使った土壌消毒
秋冬野菜の作付け前に行いたいのが、土壌中の病原菌や害虫を太陽熱や熱水でクリーニングする土のリフレッシュ。いずれも真夏の高温期に行う方法で、苗床など狭い範囲の病害虫防除に有効です。これらの方法で、苗立枯病や雑草の発芽を抑えることができます。
夏の間に土のリフレッシュ
太陽熱消毒マルチ+トンネルで土中温度を上げる
畝に透明マルチとビニールトンネルを1カ月ほど張り土中の温度を上げ、病害虫を死滅させる方法。ただしこれは土の表層しか高温にならないので、消毒後にすぐにタネまき・植え付けができるようあらかじめ元肥を入れ、畝を整えておく。
消毒後すぐにタネまき、植え付けができるようにあらかじめ畝を準備してから、透明のポリマルチを張る。
トンネル用支柱を立て、透明のビニールシートをトンネルがけする。1カ月後、マルチとトンネルを外して作付けをする。
熱水消毒熱湯をたっぷりかけてピンポイントで消毒
畑に元肥として有機質肥料などを施し、準備を済ませておく。タネまき、植え付け箇所に浅い窪みをつけ、熱湯を1カ所当たり2L程度注ぐ。すぐに畝全体に透明マルチを張り熱を逃がさないようにする。約1週間後、マルチを外して地温が下がったら作付けをする。
タネまき、植え付けをする場所に窪みをつける。
一つの窪みに熱湯を約2Lずつ注ぐ。すべてに注いだらすぐに畝全体に透明マルチをかぶせる。
葉根菜のタネまき・育苗のコツ
冷涼な気候を好む秋冬野菜のスタート時期は、まだ気温が高い時期。温度管理や水やりなどのコツを知ることで、失敗を未然に防ぐことができます。
発芽を成功させるポイント
覆土 タネの直径の3倍が目安
覆土は、ニンジンやレタスなどの好光性種子には薄く、ネギなどの嫌光性種子には厚めにしますが、標準的には、タネの直径の3倍くらいが適切です。
タネまき後は手で土を押さえて(鎮圧)、タネと土を密着させることも重要です。火山灰土地帯のプロ農家では、ニンジンのタネまき後に足で土を踏み、毛管現象で地下からの水分補給を図っています。
一般的な覆土はタネの直径の約3倍が目安。ニンジンなどの好光性種子ではタネが隠れる程度に覆土する。
水やり日中の水やりはNG
梅雨明け後の7〜8月は年間で最も土が乾燥する時期。水やりは根が盛んに吸水する午前中に行うのが基本ですが、夏の日中は高温になり、苗がダメージを受けることもあるので、少しでも気温の低い早朝や夕方に行いましょう。ただし畑がカラカラに乾いていたら、すぐにでも行います。
夏の日中の水やりは苗のダメージが大きいので早朝や夕方に。
日よけよしずや 寒冷紗 を活用
真夏のタネまきは、強い日差しで発芽不良を起こしたり、幼苗を傷める原因にもなります。育苗箱は風通しのよい場所に置き、よしずや黒い寒冷紗で日差しを遮ります。白い寒冷紗でトンネルをつくり、虫よけを兼ねて日よけをするのもよいでしょう。乾きを防ぐために、発芽まで新聞紙をかけておくのも効果的です。
真夏の直射日光で土が乾燥するのを防ぐため、よしずなどで適度に日陰を作るのも手。
苗作りのポイント
間引き2〜3回間引いて丈夫な株を残す
気温が高いと徒長しやすいので、タネは薄まきにし、生長にあわせて2〜3回に分けて間引きます。1回目は子葉が出揃った時、2回目以降は葉が重なりあうごとに間引いて、最終的に1株にします。
中耕と土寄せ間引き後は土寄せをする
間引き後、株をしっかり立たせるために子葉の下まで土を寄せます。同時にかたくしまった土の表面を軽く耕します。この時、深く耕して根を切らないように、片手クワやはしのような棒で表面をほぐしましょう。
土寄せをすることで株元がぐらつかず、スムーズに生長する。
土寄せが不十分だと、風などであおられて倒伏の原因に。
順化発芽後は徐々に強い日差しに慣らす
発芽後、徒長を防ぐために日よけはなるべく日中だけにして強い日差しに慣らし、水やりを控えめにしてがっちりした苗に育てます。子葉がしっかりつき、葉色が濃く、茎が太く、節間が詰まった苗が理想です。