九条ネギやミズナ等、京野菜の育て方・栽培方法・品種を紹介!
延暦13年(794年)、京都盆地に平安京が創設されるとともに、京野菜の歴史も始まりました。平安京が政治や文化の中心になると人や物が多く集まり、その中にはさまざまな野菜も含まれていました。それら都にもたらされたさまざまな野菜が、京都の地でも栽培されるようになり、その過程の中からこの地独特の特徴を持つ野菜が誕生するようになったのです。
京野菜の発展には、実は京都の気候が大きく影響しています。京都の地は山に囲まれた内陸性の盆地気候で、比較的穏やかな気候です。夏の昼間は暑いですが、夕方には周りの山から風が吹き込み、暑さを和らげてくれます。京の冬は、「底冷え」がして寒いといわれていますが、それでも零下10℃を下回ることは少なく、冬野菜は寒さにほどよく当たり、おいしさを増すといわれています。また、京都盆地の土は、全般的に腐植質に富み、肥持ちのよい土質で、野菜栽培にはとても適していたのです。
さらに、政治、宗教、文化の中心となった京都では、その中から食文化も発展しました。宮廷での「有識料理」禅宗の「精進料理」、茶道の「懐石料理」に加え、庶民の日常の料理「おばんざい」のそれぞれが大きく発展します。京野菜の生産はこれらの食文化にも支えられ、めざましい発展を見せたのです。
京野菜の発展には、実は京都の気候が大きく影響しています。京都の地は山に囲まれた内陸性の盆地気候で、比較的穏やかな気候です。夏の昼間は暑いですが、夕方には周りの山から風が吹き込み、暑さを和らげてくれます。京の冬は、「底冷え」がして寒いといわれていますが、それでも零下10℃を下回ることは少なく、冬野菜は寒さにほどよく当たり、おいしさを増すといわれています。また、京都盆地の土は、全般的に腐植質に富み、肥持ちのよい土質で、野菜栽培にはとても適していたのです。
さらに、政治、宗教、文化の中心となった京都では、その中から食文化も発展しました。宮廷での「有識料理」禅宗の「精進料理」、茶道の「懐石料理」に加え、庶民の日常の料理「おばんざい」のそれぞれが大きく発展します。京野菜の生産はこれらの食文化にも支えられ、めざましい発展を見せたのです。
京都のネギは、平安京ができる以前の711年に伏見稲荷神社が建立された際、お供えとして植えたのが始まりとされています。九条ネギの「九条」はネギの栽培が盛んであった地域の名で、ちょうど京都駅のすぐ南に位置します。新幹線のホームから見渡せますが、残念ながら現在では生産地がさらに南に移ったため、ネギ畑を見ることはできません。この地域は、昔は非常に肥えた土壌であり、品質のよいネギがとれることから、栽培が盛んになりました。 ネギは白い部分を食べる根深ネギと緑葉部分も食べる葉ネギに大きく分けられ、九条ネギは葉ネギに分類されます。さらに、九条ネギは大きく分けて2つの系統に分類されます。1つは、本来の九条伝来の系統で、黒種または太ネギといわれ、葉色は濃緑色で茎は太く、葉数は少なく、寒さに強いため主に秋から早春に収穫する栽培に用います。もう1つは、浅黄種または細ネギといわれ、葉色は淡緑色で、葉は細長く葉数は多く、比較的暑さに強いため主に夏〜秋季に収穫する栽培に用います。太ネギは鍋物、煮物に使われ、細ネギは薬味に使われます。ネギの食文化で「関東は白、関西は緑」とよくいわれますが、関西の「緑」の主流が九条ネギです。 |
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春・夏・秋まきで最も定評のある葉ネギ!
京都特産で西日本を中心に広く栽培されている葉ネギ用種。肉厚で葉先までやわらかく芳香に富み、品質上々。浅黄系より茎が太く、中〜大ネギの利用に適する。
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細身で鮮緑色の
上質葉ネギ! 葉色は鮮緑色で特に分けつ性にすぐれた品種。葉が細く、やわらかで品質がよい。耐暑性が強く夏ネギに最適。周年栽培も可能。 |
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九条太ネギ
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浅黄系九条葱
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太ネギを作るには1年以上かかりますので、ここでは露地で秋〜春季に栽培する手軽な方法について説明します。この場合は黒種の系統を用いますが、栽培期間が短いのでそれほど太いネギはできません。
発芽適温は15〜25℃ですので、暑い時期にまくと発芽が悪いため、少し暑さが和らいでから種をまきます。タネまき後、大きくなった苗を定植してさらに大きく育てます。
発芽適温は15〜25℃ですので、暑い時期にまくと発芽が悪いため、少し暑さが和らいでから種をまきます。タネまき後、大きくなった苗を定植してさらに大きく育てます。
●収穫
冬季は一時生育が緩慢になりますが、早春の気温上昇とともに旺盛になるので、草丈60cm程度になったら収穫します。この栽培方法では、冬の寒さに当たり甘味が増した、九条ネギ本来の味わいを楽しめます。年内では株は小さいですが、小ネギとして利用することもできます。アブラナ属の茎葉を食べるものをツケナと呼んでおり、ミズナ、ミブナともにツケナの一種です。ツケナは、わが国の野菜の中で最も古いものの1つですが、その起源は明らかではありません。『古事記』(712年)にツケナについての記載があることから、当時、すでに利用されていたと考えられています。また、ミズナ、ミブナを合わせて京菜とも呼ばれます。ミズナ栽培の中からミブナが分かれてできたため、両者の性質はよく似ています。見分け方は、葉に切れ込みがあるのがミズナ、切れ込みがないものがミブナです。 ミズナという名前は、1684年に刊行された京都学の古典『雍州府志(ようしゅうふし)』に、流水を畝間に引き入れて栽培するところから、「水入菜」と称したとあり、ここから「水菜」になったと考えられています。 ミズナは、日本のツケナ類の中でも独特な形態をしており、当初はアブラナ属の中で他のツケナ類とは区別され、ブラシカ・ジャポニカに分類されていました。しかし、その後の研究で、現在ではコマツナなど他のツケナ類と同じグループに分類されています。その独特な形態とは、重さ4s程度の大株に仕上げると、1株から600〜700本もの多くの細い葉を出すことで、千筋京水菜とも呼ばれることからもその姿がうかがえます。シャキシャキした食感で、くせのない味わいが好まれ、鍋物のほか、生のままサラダにも使われています。 |
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ミブナは、京都盆地の西南部に位置する壬生(みぶ)という地域の名に由来します。壬生は今では新撰組ゆかりの地として有名になっています。この地域はミズナの栽培に適した低湿な土地で、以前からミズナが盛んに栽培されていましたが、その中からミズナとは葉の形が異なり、葉に切れ込みがないヘラ状のミブナが、1800年代に現れたと考えられています。ミズナから分かれてできたため性質はよく似ていますが、葉柄の繊維が少なく肉質がやわらかで、特有のピリッとした辛味と、カラシのような香りがあるところがミブナの特徴です。
肉質がやわらかいことから漬物用として需要が多く、聖護院カブの千枚漬けの白に色を添える青物としてもよく使われます。漬物だけでなく普通のツケナ類と同じように煮炊きしてもおいしく、もっといろいろな料理に使われてもよいのではと考えています。
肉質がやわらかいことから漬物用として需要が多く、聖護院カブの千枚漬けの白に色を添える青物としてもよく使われます。漬物だけでなく普通のツケナ類と同じように煮炊きしてもおいしく、もっといろいろな料理に使われてもよいのではと考えています。
生育適温は10〜25℃で冷涼な気候を好むため、夏の暑さが過ぎたころが種まき時です。最近は青果がスーパーなどで袋入りで販売されており、京都産のものは1株20〜30gの小株が1袋に200g入れられています。昔ながらの栽培では1株が4kgほどの大株となり、栽培方法も違ってきます。
●品種の選び方
ミズナ、ミブナともに一般には早生、中生、晩生品種があり、中生、晩生ほど寒さに強い性質です。小株作りで年内に収穫するなら早生種を、大株作りで年内から年明けに収穫するなら中生種や晩生種を選びます。小株作りの場合(図6)
9月中旬以降の残暑が去った時期に種をまく栽培が比較的容易です。残暑が厳しい場合は、土壌水分の保持と害虫回避を目的に、タネまき後に不織布のベタがけを行うとよいでしょう。十分に肥料を施した畑にタネを条まきし、発芽後は本葉2〜3枚時までに2回ほど間引きを行い、最終的には株間5〜10cm程度になるように管理します。
大株作りの場合(図7)
大株作りの場合は、苗作りをしてから定植する方法をとります。種まきは9月上旬に行います。条間10cm程度で条まきし、発芽後に2回ほどの間引きを行い、株間を8〜10cmにします。本葉7〜8枚になったら定植畑に定植します。定植畑の元肥は小株作りと同様の量を施しておきます。
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冬の京都を代表する味覚、聖護院ダイコンは、一説には徳川時代の終わりごろの文政年間(1818〜1830年)に、現在の京都市左京区にある聖護院地区にあった金戒光明寺というお寺に、尾張の国から2本のダイコンが奉納され、この地区の篤農家がこのダイコンをもらい受けて栽培したのが始まりと伝えられています。奉納されたダイコンは、宮重ダイコンという細長いものでしたが、数年栽培すると短形のものが現れ、さらに短いものを選んでいくと、丸形の大根になったということで、この地名から聖護院ダイコンと呼ばれるようになりました。聖護院地区は、五山の送り火で有名な大文字山の麓のあたりに位置します。このダイコンは肉質が緻密で、おでんなど煮物にしても煮くずれしにくく、甘味があるのが特徴です。 |
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1〜2kgの根部を収穫するためには、種まきの時期が重要で、9月上旬になります。まだまだ暑い時期ですので、タネまき後に乾燥させないように注意します。土づくりの段階で十分に堆肥や肥料などを施しておきます(図8)。畝作りをしてタネをまき(図9)、その後、間引きは2回行います。1回目は本葉1〜2枚時、2回目は本葉3〜4枚時に行い最終1本立ちとします(図10)。
●追肥(図11)
追肥は3回行います。最初は2回目の間引き後に10u当たり化成肥料(チッソ、カリ主体)300gを畝中央に施して土と混和し、同時に株元に土寄せします。2回目は根部の肥大が旺盛になる10月中旬、3回目は11月上旬にそれぞれ10u当たり化成肥料500gを畝の両側に施します。●収穫
11月ぐらいから収穫できます。 |
京都名産の千枚漬に使われるのが聖護院カブです。享保年間(1716〜1736年)に京都市左京区の聖護院地区の篤農家が、近江国(現大津市)から近江カブの種を持ち帰り栽培したところ、聖護院の地に適しており栽培が盛んになりました。元来、近江カブの根部は扁平ですが、栽培を重ねるうちに円形のものとなったと伝えられています。日本には各地に在来のカブ品種が多くありますが、聖護院カブはその中でも最大級の大きさのカブに位置します。千枚漬として、天保年間(1830〜1844年)から利用されて全国に知られるようになりました。なめらかでつやのある肌が特徴で、やわらかく甘みがあり、浅漬けのほか煮物にも適しています。 |
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1〜2kgの根部収穫を目標にします。前もって十分に堆肥や肥料などを施した土づくりをし(図12)、畝をたて種まきします(図13)。まき時はダイコンと同じ9月上旬です。間引きは2回行います。1回目は本葉1〜2枚時、2回目は本葉3〜4枚の時に行い最終1本立ちとします(図14)。
●追肥(図15)
追肥は3回で、最初は2回目の間引き後に10u当たり化成肥料(チッソ、カリ主体)300gを畝中央に施して土と混和し、同時に株元に土寄せします。2回目は根部の肥大が旺盛になる10月中旬、3回目11月上旬にそれぞれ10u当たり化成肥料500gを畝の両側に施します。根部に直射日光が当たるとその部分が着色したり、肌が荒れたりしますので、株元が少し見える程度に土寄せしてください。●収穫
12月上旬ぐらいから収穫となります。根径15cm、高さ12cmほどになります。 |
鮮やかな紅色の金時ニンジンは東洋系の品種で、スーパーなどでよく見かける橙色の西洋系ニンジンとは種類が違います。東洋系のニンジンは、日本では1600年代の書物に記録が残されており、このころすでに日本に渡来していたと考えられます。一方、西洋系ニンジンは比較的新しく、積極的に品種導入されたのは明治初期からで、その後急速に広まりました。現在では消費の大部分が西洋ニンジンで占められています。 さて、東洋系ニンジンですが、明治、大正時代には数品種が存在しましたが、現在では残っているのは金時ニンジンのみです。金時ニンジンは大阪の木津川付近で成立した品種といわれていますが、現在では京ニンジンとして知られ、肉質はやわらかく強い甘味があり、京料理、とくに正月料理には欠かせない素材となっています。「金時」の名は、昔話で有名な金太郎のことで(後に坂田金時と名のります。)金太郎は赤ら顔で描かれることが多く、ニンジンの根の色と結びつき金時ニンジンになったといわれています。 京都府では初夏から冬季までの期間、「早どり金時ニンジン葉」として、根部が鉛筆より少し太くなったころに収穫し、根も葉も食べる食材として生産を開始しています。これまで食されてこなかった葉に機能性成分が豊富に含まれていることがわかり、さらに食材として広まることが期待されます。 |
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正月のおせちに欠かせない、色ツヤのよい金時!
草勢旺盛で作りやすい金時ニンジン。根形は肩張りで肉付きがよい。イボは低く、肌は滑らかでツヤがあり、肌・芯ともに濃紅赤色。肉質は緻密でやわらかく、甘みに富み、香りよく、独特の味わいがある。
本紅金時 |
根長が30cmにもなるため、畑に前もって堆肥や肥料などを十分に施し(図16)、根が十分に伸長するような膨軟な土づくりをします。土を深くまでやわらかくできない場合は、畝を高くするなど工夫してください。畝作りをし、種まきは7月中旬〜8月上旬に行います(図17)。発芽適温は20〜25℃と暑い時期のタネまきですので、ベタがけ資材をかけ水分保持を図り、発芽を促します。発芽が難しいのでまく前に1昼夜水に漬け、タネの量も多めの厚まきとします。本葉5〜6枚までに3回ほど間引き、最終的に株間15cmで1本立ちとします(図18)。
●追肥(図19)
追肥は本葉2枚目ごろに1回目、1本立ち後に2回目、その1〜2週間後に3回目を施します。その時、中耕と土寄せも同時に行います。肥料はチッソとカリが主体の化成肥料(それぞれ10〜15%含有)を1回に10u当たり200gを施します。●収穫
11月中旬から収穫できます。末留 昇(すえとめのぼる) 京都府農林水産技術センター農林センター園芸部に所属。京野菜のミズナや万願寺トウガラシ、堀川ゴボウに関する栽培研究を担当。また、京都府立農業大学校では「園芸概論」(野菜)の講師を務める。 |