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クンシランを上手に育てよう!

クンシランを上手に育てよう!
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花色は多彩になり、育てやすい小型品種も登場!

名前にランとつきますが、クンシランはランの仲間ではなく、ヒガンバナ科に属する植物です。原産地は南アフリカ東部の海岸地帯の森林で、かなり湿度がある状態に自生しています。ヨーロッパを経由し、日本には明治時代に伝わりました。当時日本で紹介されたのは、葉が細長い原種のノビリス種で、その後、葉幅の広いハンブルグ系が導入され、より葉を短く幅広に品種改良されました。日本では花が咲いていなくても葉の美しさに価値を見い出す美意識があったため、クンシランは個性的な葉を愛でるものという風潮が長くあり、斑入り品種も作り出され人気を呼びました。しかし、最近では花の美しさも大きな魅力となっています。クンシランの花といえば、濃オレンジ色がすぐに思い浮かびますが、花色も多彩になり、クリーム色や桃色、淡グリーンなど優しい印象のパステルカラーも出回るようになっています。  
また、小型のクンシランも登場し、狭い場所でも栽培しやすくなっています。病気に強く、多少の水不足でも枯れることのないクンシランは、初心者でも栽培しやすいという点も魅力です。花が咲く時期は室内で観賞できるので、インテリアにあった鉢や鉢カバーをコーディネートして楽しむのもおすすめです。

花が上向きに咲くミニアータ系は品種も豊富!

   
「赤花斑入り」    「黄金閣」   「赤花八重(8弁)」
突然変異から生まれた美しい斑入り葉品種。花期は3月。   黄花の原種に近い品種で、濃葉に美しい花色がよく映える。花期は4月中旬。   クンシランは花弁は通常6枚だが、これは8弁以上になり、ボリューム感と華やかさが楽しめる。花期は3〜4月。

クンシランの原種は6種。2000年に発見された新品種も!

クンシランの原種は6種類ありますが、一般に出回るのはミニアータ系がほとんどです。ミニアータは上を向いて咲く受け咲きの花が3〜4月に開花します。桃色や淡グリーンの品種もミニアータで、珍しい黒花もあります。原種は葉の長い系統でしたが、近年はダルマ系の葉の詰まった品種が主流になっています。花は一重で6弁が普通ですが、八重咲きも改発されています。
また、キリタンシフローラというミニアータと原種の5種類との交配種もあります。3月咲きのミニアータと10〜12月咲きの原種の交配品種だと1〜3月に開花が楽しめます。花は横向き、花色はミニアータにはない個性的な色もあります。
2000年に新しく発見されたのがミラビリスで、今までの自生地東部から400qも離れた西部の峡谷に自生していました。そこは冬は0℃近くまで気温が下がり、夏は40℃にもなる過酷さで、従来のクンシランとはかなり環境が違うために栽培方法も異なると思われますが、いずれ解明されることでしょう。

コンパクトな品種も人気!

 
華照   雀蘭
北海道で作出され、2000年まで門外不出だった超小型品種。温度があれば12月と4月に開花する。   4号鉢で親株になる超小型品種。温度があれば12月と4月に開花する。

ミニアータ系以外は花が下垂して咲きます!

 
日本ノビリス
原種ノビリスよりは花が大きく、6月と12月の二季咲き。温度を確保すれば5〜7月と11月〜翌年1月と長く花を楽しめる。
 
カウレスセンス   ロバスタ
不定期咲きが多く、年に3回も咲くことがある。木立となるのが特徴で2mほどに伸びる。   最大の原種で、高さ150cmにもなる。花は下垂性で花期は12月。池の縁などでも自生し、根は水中で株だけ地上にあったりする。
 
ガーデニー   ノビリス
11月開花。花は下垂性。オレンジが基本だが、ブラッシュや黄花もある。   二季咲きで6月と12月に開花する。

季節ごとの管理ポイント

夏の管理

暑さが厳しい夏の間はほとんどのクンシランは生長が止まります。その間は株の充実期で、花芽分化して2年後の開花を目指します。夏に水切りする方法もありますが、小型の品種や中国系のクンシランの中には高温下でも生長する系統が現れています。基本的には毎日葉水を与え、元気がない時には夕方にたっぷりと水やりするとよいでしょう。

置き場所

屋外で管理しますが、日光は午前中に3時間も当たれば十分です。午後からは明るい日陰になり、なるべく通風のよい場所に置きます。西日が当たる場所は避けます。日照が強すぎる場合は、遮光ネットで遮るようにします(遮光率90%)。特に斑入り葉種は直射日光に対して弱いので、遮光は強めにするとよいでしょう。

水やり

毎日夕方に葉水をやります。原産地では夜霧の立ち込める場所が最良とされているので、そのイメージで水やりしてみてください。

施肥

充実期にはチッソ肥料は不要です。リン、カリ主体の液肥を月に2回程度与えます。交配して種子が大きくなっているため作落ちしないようまめに液肥を与えます。

病害虫の注意

ナメクジとワタムシが発生しやすい時期です。こまめにチェックし、見つけたら駆除します。また、白絹病が発生することもあります。シイタケのように菌で繁殖するので予防が大切です。登録農薬などを使用し予防するとよいでしょう。もし発生してしまった場合は、石灰を土に混ぜ込むと繁殖を防ぐ効果があります。

秋から冬の管理

最近では10月でも気温の高い日が続きます。温暖地では11月下旬〜12月初めに室内に取り込みます。寒冷地では露霜が降りる前に取り込みます。10℃以下の温度が2カ月あれば花茎が上がるので、霜害にあう前までは寒さに慣らします。品種本来の開花特性でなく、花茎が伸びずに葉の間で花が咲いてしまう(出開き)のは低温にあっていないのが主な原因です。

置き場所

室内での置き場は、夜間最低温度5℃以上、昼間の最高温度20℃以下になる環境が理想です。昼夜の温度差が大きいと株が消耗するので、昼間の温度の上がりすぎには特に注意が必要です。暖房の効いた室内の窓辺では、カーテンからも50cmほど離して置きます。レースのカーテン越しだと、葉が光を求めて暴れます。1週間に1回は鉢回しを行い、均等に光が当たるように管理しましょう。
玄関など暖房のない場所に置く場合は、特にガラス面近くは明け方に冷え込むので、防寒と日よけを兼ねて不織布を張っておくとよいでしょう。

水やり

クンシランの冬場の管理で最も頭を悩ませるのが水やりです。基本的に葉が伸び続けている株は根も活動を続けています。鉢土の表面が乾いたら2、3日後の午前中にたっぷり水やりを行います。鉢土の乾燥状態を見極めて、乾きすぎないように注意します。この時期の水切れは春の開花や新葉の生長に影響します。気温が低い場所で管理して葉の生長が止まっている株は、基本的に根も活動を停止しています。このような株は1週間に1回程度、天気がよい日の午前中に鉢土の上半分が湿る程度の水やりを行います。暖房の効いた室内では水分が乾きやすくなるので、毎日株全体に霧吹きをして水分を保ちます。

施肥

若苗は2年間ほど休みなく生長するので、1年中肥料の切れることがないようにします。親株の場合は、秋の生長の続いている株には薄めにした液肥を与えます。毎年、移植を繰り返し、肥料と水を切れ目なく与えた株は、根が白く伸びた良好な状態になっています。

病害虫の注意

寒くなっていく季節には病害虫の心配は特に必要ありませんが、毎月1回は殺菌、消毒をしておくと安心です。

春の管理

3月からミニアータ系の開花が始まります。気温が上昇し、安定する初夏までは室内で管理します。冬の間に花茎が伸長しますが、花が咲き出しても花茎は伸び続けます。なお、開花が終わった花茎は取り除きます。花茎の根元から直角に折り曲げると自然に折り取れます。

置き場所

冬の間の室内での置き場と同じで、15〜20℃程度の場所が最適です。窓辺に置く場合は、直射日光が当たらないよう50pほど離して置きます。

水やり

暖かい室内は乾燥しやすいので、1日に1回程度、株全体に霧を吹いて乾燥を防ぎます。花蕾の生長期なので、花蕾にも十分霧をかけます。また、土が乾いたら晴れた日に外でたっぷり水やりします。

施肥

ミニアータ系のほとんどの品種が3〜4月に花を咲かせる。これは珍しい黄花の斑入り品種。斑入り品種は特に葉焼けしやすいので遮光の工夫が必要。

生長期なので、肥料切れにならないよう継続的に施肥します。鉢の表面が乾いてから2〜3日後に薄めにした液肥を与えます。花の咲いているものにはリン、カリ中心の肥料を、花のない苗はチッソ分の多い肥料を与えてください。

病害虫の注意

予防のために毎月1回、殺菌と消毒を続けます。また、暖かくなると夜にナメクジが現れ花粉を食べるので、夜にチェックして捕殺するとよいでしょう。

初夏の管理

温暖地では気温の安定してくる5月上旬から屋外での管理を始めます。初夏は思いのほか日差しが強くなるので、日よけには十分注意します。寒冷地では夜間最低気温が10℃を下回らなくなったら、屋外で管理が可能になります。室内から屋外に出す際は十分遮光し葉焼けしないよう注意します。

置き場所

5月上旬の暖かい日を選んで屋外に出すようにします。もし、その後に急に気温が低くなる日があったら、面倒でも一度室内に取り込みます。徐々に屋外の環境に慣らせていくことが大切です。午前中は日光が当たるが午後からは日陰になるような場所が適しています。直射日光が当たる場合は必ず遮光の工夫をしてください。寒冷紗をかける場合は遮光率60%では足りません。90%にしておくのがおすすめです。

水やり

生長の真っ最中なので、水切れしないよう注意が必要です。土が乾いたら株元にたっぷりと水やりします。初夏には急に暑くなり30℃を超す日もあります。そんな日には夕方には葉水をかけ、葉の温度も下げてやるとよいでしょう。

施肥

花が終わり生長期を迎えています。特に7月には2年後の花芽が形成されるので、この時期の失敗は2年後の開花に大きく影響します。ちなみに来年の花はすでにできています。チッソ系の肥料を6月の初めと下旬に与え、さらに月に1回程度、液肥を与えます。

病害虫の注意

気候がよくなると虫も病気の元になる菌も活発化しやすくなります。ナメクジやワタムシに注意が必要です。夏になると白絹病が発生しやすくなるので、対策はこの時期からしておくことが大切。前年に発生があった場所に石灰などをまいておくのがおすすめです。

植え替えをして葉を丈夫に育てよう!

クンシランは葉の枚数によって花芽の数が決まってきます。7月ごろまでに葉が12〜14枚あると花芽が一つ、葉が16〜20枚なら花芽が二つ作られます。クンシランは春から夏の生長期に大きな葉を順に出すので、この時期に1枚でも多く葉を出させることがポイントです。そのためには、根詰まりや根腐れしないよう、2年に1回程度一回り大きな鉢に植え替えることが大切。鉢底から根が出ていたり、水やりしてもなかなか水が染み込まない、また子株が出て鉢がいっぱいになっている場合などは、植え替えが必要です。
なお、植え替えの時期は花後直後が適期で、7〜9月は花芽形成の時期になるので避けます。温暖地では10月の植え替えも可能です。植え替えの1週間ほど前から水やりをやめ、根の水分を減らしておくと根の傷みが少なくて済みます。

植え替え方法
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三橋 博さん

三橋 博

1950年千葉県生まれ。少年時代から孔雀サボテンと月下美人にひかれ、育種経験は30年以上に及ぶ。1977年に三橋孔雀サボテン園を開園。新品種の作出に意欲的に取り組んでいる。著書に「月下美人・クジャクサボテン NHK趣味の園芸〜よくわかる栽培12カ月」などがある。