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河本バラ園オリジナルローズの世界

河本バラ園オリジナルローズの世界

バラが好きだから、これまで続けられた

毎日バラに携わる仕事で、たくさんのバラに触れながら、ある日ふと思いました。

「バラには必ず香りがあると思っていたのに、香りのないバラもある。とてもいい花形だから、これに香りがあればいいのに」。
そこから育種への興味が生まれました。
「自分の気に入ったバラに香りをつけてみたい。独自のバラを作りたい」。ふと思った小さなことが、私の育種の原点となりました。

育種はとても時間のかかる気長な仕事です。何十年もの間、主婦と母親、そして育種家といくつもの仕事を持ちながら、ひとつとして手を抜くことなく続けてきました。

特別な知識や経験がなかったからこそ、固定のルールにとらわれることなく、独自の思いで育種に力を注げたと思います。失敗もたくさんしましたが、新しい品種を生み出し、名前をつけて世に出すまでは趣味の域を出ないのだと、強く思いました。

クチュールローズ チリア

作出品種が自信を与えてくれる

長く育種を続けている中で「育種家」としてやっていく自信を与えてくれたのは、初めて作出品種として世に発表した’パープルレイン‘と’ジュンブライド‘でした。それまでもたくさんのバラを作りましたが、発表するには至らなかったのです。

しかし、’パープルレイン‘は初めて自ら世に出したいという気持ちになりました。紫の半剣弁咲きで、何よりも香りがよかったのです。

’ジュンブライド‘は白をベースにした剣弁高芯咲きで、花弁の先が淡い紫ピンクになります。温度による色の変化があり、真夏にはクリーム色で、温度が低くなると花弁の先が紫っぽいピンクに変わっていきます。これは花嫁さんのブーケとして使われて、とても喜んでもらえたことが自信になりました。

(写真左上)バラ園にて育種や交配に精を出す河本純子さん。 (写真右上)根気が必要な交配作業。 (写真左下)‘ラ マリエ’と‘シュシュ’のミックス (写真右下)‘パープルレイン’

奇跡の青バラへの挑戦

毎日、いろんな色のバラの中で仕事をしていて、「青いバラはないんですよね」と、普段感じていた素朴な疑問を口にしたことがあります。その時、ある人が言いました、「青いバラなんて、そんなバラができたらノーベル賞ものだよ」と。

私はその言葉を聞いて「国内にも海外にも立派な育種家がたくさんいらっしゃる。それでも青いバラはできない」と頭では納得したものの、「99%ダメかもしれない。…でもやってみたい」と強く思ったのです。

初めは「紫に白を混ぜたら…」と絵の具を混ぜ合わせるように、単純に交配をしたり、紫から赤色を抜くようになど試行錯誤の連続です。もちろん容易に結果が出るものではありません。

2002年に河本さんが作出した青バラブルーヘブン。別名「セントレアスカイローズ」。

そうして毎年毎年交配を重ねて、早や20年ほどが過ぎたころ、ブルーではないけれど、グレーのようなシルバーがかったような、なんともおもしろい色ができました。青といっていいのかわからないまま、新品種を入れる温室に並べておきました。

すると園を訪れたお客さまたちが「ここに青いバラがある!」と口々におっしゃいます。日本切り花協会の見学コースになった時は、そのバラの前に人だかりができたほどです。

それで、私だけではなく、皆さんにもブルーに見えるんだと確信できました。そして同時に、こんなにもたくさんの人たちが青いバラに興味を持っているのだと、今さらながら驚いたのです。

その青いバラは、テレビや新聞などメディアで取り上げられ、大反響を呼びました。2002年に世に出した、’ブルーヘブン‘の誕生です。’ブルーヘブン‘は別名「セントレアスカイローズ」ともいい、中部国際空港・愛称セントレアにちなんで命名を依頼されたものです。発表から8年経った今も、その人気は変わりません。皆様が取り上げて、盛り立ててくださったおかげです。

その後、2003年には淡い紫色の’ミスティパープル‘を、2010年には淡い青紫色の’ブルーヴァーグ‘を作出しました。

  • ブルーヘブン

    ブルーヘブン Blue Heaven 2002年作出

    FL/シルバーブルー/半剣弁咲き/微香/
    樹高0.4〜0.6m/四季咲き

    春と秋は神秘的なシルバーブルー色ですが、夏など高温期には白に近い色になります。夏の間はなるべく花を咲かせないようにしてください。花だけ切るくらいの浅いピンチをすると、株がしっかりと充実してきます。

  • ミスティパープル

    ミスティパープル Misty Purple 2003年作出

    FL/淡いパープル/強香/
    樹高0.8〜1m/四季咲き

    ひらひらと波打つ花びら、甘い芳香の優しく淡いパープルの花。花もちよく、トゲも少なめで育てやすい品種です。2004年日本フラワー&ガーデンショウジャパンセレクション切花部門人気投票第一位。

  • ブルーヴァーグ

    ブルーヴァーグ Blue Vague 2010年作出

    HT/ブルーパープル/中輪/強香/
    樹高1〜1.2m/四季咲き

    気品ある淡いブルーパープル色が魅力的。凛とした花姿で優しい香りを放ちます。

新品種の育種

新品種の育種は、毎年4月下旬から6月上旬まで行います。いつも「誰も見たことのないバラ」を作りたいと思っています。オールドローズともモダンローズとも違う、日本人の美意識を具現化した、優美で気品のある花形や香りで、初めて見た人を釘付けにするようなインパクトのある花を作り出したいと、大きな夢を持ち育種に臨んでいます。

しかしながら、なかなかそんな思い通りにはいきません。育種には親選びがとても重要になりますが、交配をしてもなかなか期待する花とは出会えませんし、雨が多いなどの天候によっても、交配した種をダメにしてしまう年もあります。

海外にはたくさんの立派な品種がありますが、私はそれ以上のものを作りたい、そのためにはどうすればよいか。それには概念をがらりと切り替え、独自性を持たなければと、既存の品種ではなく自分の作出品種を親にして作り出すことを実践しました。

そして数々の品種が生まれました。中でも’サイレントラブ‘は「第三回国営越後丘陵公園・国際香りのばら新品種コンクール」で銅賞を受賞しました。可愛さと甘い香りのある、私の大好きな花です。

’トットちゃん‘は、著作「窓際のトットちゃん」で知られる、女優の黒柳徹子さんに捧げられたバラです。その売り上げ金の一部は、恵まれない子どもたちや、ろう者劇団のために役立てられています。日本のガーデンローズでは初の試みだそうで、とてもうれしく思っています。

新品種の’ローズコロナ‘は、サーモンピンクから高温期は最後にグリーンで終わることがあります。大輪の花は咲き進むにつれてロゼット咲きからクシュクシュになりますが、この花形になるまでに3年ほどかかりました。

育種はとにかく時間のかかる仕事です。ですが、私はバラが好きです。私の作ったバラを見て、落ち着く、安らぎを感じる、河本さんのバラは優しい…などと、たくさんのお手紙をいただいたりします。こんなにも多くの方々に見ていただいていると思うと、もっともっとがんばって、人に喜んでもらえるバラを作りたい、花の好きな人たちの生活の中で、癒やしになれるような品種を生み出していきたい、と願っています。

(写真上)‘サイレントラブ’の春咲き花 (写真中央)秋咲きの‘トットちゃん’ (写真下左)‘シュシュ’と‘ラ マリエ’のアレンジ ドレスの
フリルを思わせる。 (写真下中央)高温期の‘ローズコロナ’(写真下右)ソフトなピンクが可憐な‘フレグランス オブフレグランシス’。

  • サイレントラブ

    サイレントラブ Silent Love 2008年作出

    HT/ソフトピンク/大輪フルフル咲き/強香/
    樹高1〜1.2m/四季咲き

    甘い香りを漂わせ、ふわふわと風になびく姿が可憐でかわいいソフトピンクの花。房咲きで花つきよく、育てやすい品種です。越後丘陵公園第3回国際香りのばら新品種コンクール(HT系)銅賞受賞。

  • トットちゃん

    トットちゃん Totto-chan 2009年作出

    HTシュラブ/ソフトピンク/大輪/強香/
    樹高約1.2m/四季咲き

    著作「窓際のトットちゃん」で知られる女優・黒柳徹子さんに捧げられたバラ。あたたかみのあるソフトピンクの優しい花色で、カップ咲きからロゼット咲きに咲き進みます。甘く強いオールドローズ香があります。このバラの売り上げ金の一部は、社会福祉法人トット基金に寄付されます。

  • ローズコロナ

    ローズコロナ Rose Corona 2010年作出

    HT/サーモンピンク/大輪/微香/
    樹高1〜1.2m/四季咲き

    サーモンがかったピンクの花が咲き進むにつれてクシュクシュになり、外弁から白っぽくなっていき、淡いピンク〜白、そして高温期などには最後がグリーンで終わることもあります。花もちがとてもよく、花色の変化も楽しめる花です。

  • クチュール ローズチリア

    クチュール ローズチリア Couture Rose Tilia 2010年作出

    半横張り木立ち/パープルピンク/中輪/
    中香/樹高0.8〜1m/四季咲き

    豪奢なオートクチュールドレスのシルクシフォンのような、花びらを幾重にも重ねたシックなバラ。爽やかで甘い香りは、その上品な魅力を一層引き立てます。

  • ラ マリエシリーズシュシュ

    ラ マリエシリーズシュシュ Chou Chou 2009年作出

    FL/アプリコットピンク〜クリーム/中輪/
    微香/樹高約1m/四季咲き

    かわいらしい丸弁の花びらは、咲き進むにつれてクシュクシュとなり、髪をまとめるヘアアクセサリーのようです。やわらかなアプリコットピンク〜クリーム色への花色の変化も楽しめます。同シリーズの‘ラ マリエ’と一緒にアレンジすると、お互いを引き立ててすてきなブーケのようになります。

  • ラ マリエシリーズラ マリエ

    ラ マリエシリーズラ マリエ La Mariée 2009年作出

    FL/サクラピンク、ライラックピンク/
    中輪/中香/樹高約1m/四季咲き

    春はサクラピンク、秋はライラックピンク色になります。幾重にも重なったフリルのような花びらは、大人かわいい雰囲気でウエディングドレスをまとった花嫁のようです。爽やかで初々しいフレッシュな香りがあります。「ラ マリエシリーズ」のメインローズとして、とても人気のある花です。

  • フレグランス オブ フレグランシス

    フレグランス オブ フレグランシス Fragrance of Fragrances 2008年作出

    HT/ソフトピンク〜グレイッシュラベンダー/
    強香/樹高約1m

    薄墨桜の花色を思わせるソフトピンク〜グレイッシュなラベンダー色。オープンカップ咲きの大輪で、フローラル・フルーティな芳香があります。‘イブピアッチェ’の枝変わりから選抜され、バラの貴公子・大野耕生さんから「フレグランスさん」こと有島薫さんに捧げられた花です。

  • ピンク オブ プリンセス

    ピンク オブ プリンセス Pink of Princes 2008年作出

    HT/光沢のあるローズピンク色/
    大輪フルフル咲き/微香/樹高1〜1.2m/

    光り輝くような透明感のあるローズピンクの花色は、ハッとする美しさがあります。人目をひく色ながら、ひらひらとした愛らしい花びらが優しい雰囲気を作り出します。

  • イエローエタニティー

    イエローエタニティー Yellow Eternity 2006年作出

    FL/明るい黄色/カップ〜ロゼット咲き/
    微香/樹高1〜1.2m/四季咲き

    明るい黄色の花は庭のグリーンとの調和もよく、爽やかな空間を作り出します。直立性でガーデンにもコンテナにも向きます。

  • グレースクイーン

    グレースクイーン Grace Queen 2008年作出

    HT/ディープローズ/大輪フルフル咲き/
    強香/樹高1〜1.2m/四季咲き

    艶やかな深いローズ色花。淡いピンクや白、ブルー系の植物などとも相性がよく、華やかさのあるガーデンを演出します。また、淡めのナチュラルガーデンなどだと、ガーデン全体の引き締め役となり、互いがより一層引き立ちます。

(有)河本バラ園 河本 純子(かわもとじゅんこ)
バラに携わって50年、ほかにはないバラを求めて育種してきた。代表作に‘ブルーヘブン’‘ミスティパープル’‘ガブリエル’‘トットちゃん’など。「バラ好きな方々に安らぎと喜びを感じていただけるような、女性らしいバラを作っていきたい」とのこと。

河本 純子(かわもとじゅんこ)