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夏の夜の花 ミステリアスでロマンチックな夏の夜に香る魅惑の植物たち

夏の夜の花 ミステリアスでロマンチックな夏の夜に香る魅惑の植物たち

夜にひっそりと咲く花の香りはどこか神秘的で、人を惹きつける魅力があります。高温多湿の夏にも元気に生育する、おすすめの植物をご紹介します。夜に香る花たちを、ぜひ今年の夏から栽培してみてはいかがでしょうか。

月光に映え、香りで魅了する
今回ご紹介するのは、主に熱帯〜亜熱帯など日本より暖かい地域が原産で、暑さ厳しい日本の夏にも花が咲く植物です。昼間に開花するものを含め、花の芳香が夜になると特に強くなる種類を中心に選びました。白い花が多いのは、月の光に映えるからでしょうか。また、蜜を多くもち芳香を発するのは、夜間に活動する昆虫を誘うためでしょう。暗くて静かな夜に、姿は見えずとも甘い香りが風に乗って漂ってくるところが、何ともミステリアスでロマンチックです。
花の香りを表現することは難しいのですが、心地よい香りと花姿を間近で楽しめるのは、ご家庭で栽培する大きな魅力です。今回ご紹介するのは鉢植えでも栽培できて、比較的育てやすい植物なので、暖かい時期は屋外で管理し、花が咲き始めたら、鉢を室内に入れ、観賞してもよいでしょう。
栽培の基本は一般の熱帯花木に準じ、特別な作業は必要ありません。市販の培養土と肥料を用いて管理します。ただ、ヨルガオなどつる性の植物は葉数が多くなるので、肥料が切れないよう適宜与えます。鉢植えでは1〜2年に1回程度、一回り大きな鉢に植え替えるとよいでしょう。
冬越しの環境に気をつけよう
管理で気をつけたいのは冬越しです。もともと暖かい地域で育つ植物なので、冬の寒さは苦手です。寒さの厳しい地域にお住まいの場合や、植物が弱っている場合は室内に取り込み、日光の当たる窓辺などで冬を過ごさせてください。ただし室内で管理しても弱る原因として、日照以外にも次のような点が挙げられます。
❶窓辺の昼夜の温度差…昼と夜、人がいる時といない時(暖房をつける、つけない)で温度差が生じると、植物の体力が消耗します。夜間は植物を部屋の中央に移動させて、温度変動ができるだけ少なくなるように心掛けましょう。
❷水やり…せっかく暖かい部屋に鉢を置いているのに、水やりの時に冷たい水道水をそのまま与える人が多く、そうすると根を弱らせてしまいます。予防策としては、ジョウロなどに水をくんで水温を室温に近づけてから水をやります。午前中に水を与え、夕方にはある程度乾く水量にするとよいでしょう。
❸害虫(ハダニなど)…冬季は暖房で室内が乾燥し、ハダニが発生する場合があります。これを防ぐには、水やりのついでに時々葉や草体全体に霧吹きなどで水をかけると効果的です。もし多数発生した時は、規定量の薬剤散布で駆除します。
どんな植物も、異国の地で機嫌よく育ってもらうには細やかな観察と心づかいが必要です。暖かい環境を好むことを意識しながら管理するのがポイントです。

ヨルガオ

「ムーンフラワー」というすてきな英名をもち、10〜12cm程度の大輪花が次々に咲く。

優雅な大輪の花と濃密な甘い香り

ヨルガオ(ムーンフラワー)

ヒルガオ科日なた向き花期8〜9月つる性

南アメリカ原産のつる性植物です。寒さに弱く日本では気温の関係上、一年草として扱われます。真夏の夜に咲く大輪の花は非常に映え、香りも楽しめます。日中には花はしぼみます。フェンスやトレリスに絡めて日当たりのよい場所で育てましょう。緑のカーテンにも向きます。商品はあんどん仕立てにした蕾付きの開花株をお届けします。

イランイラン

5cm程度の花は咲き始めはグリーンで、次第にオレンジ色に変化し強い香りを発する。

精油にも使われる甘い香り

イランイラン

バンレイシ科日なた向き花期6〜9月(温度があれば通年)常緑高木

東南アジアで広く栽培され、香水の原料としても有名です。咲き始めはグリーン色で、香りは感じられず不安になりますが、花が終盤となりオレンジ色になると、濃厚な香りを発します。この植物は夜に特に強く香るというわけではありませんが、日本では主に夏に開花し、香る花の代表ということでご紹介しました。
冬季は15℃以上ある環境に置けば生育します。寒さに当たると枝が次々に黒くなって枯れてしまうので、ご注意ください。

イエライシャン

「夜来香」と漢字で表記するように、夜に香りが強くなる。星形の花は2cmほどでかわいらしい。

花がオレンジ色に色づくと香りだす

イエライシャン

ガガイモ科日なた向き花期6〜9月つる性

「夜来香」と呼ばれる、中国やベトナムなどが原産の植物です。星形の花が黄緑色からオレンジに変わると香る合図です。つる性なのでアーチなどに這わせると、香りがシャワーのように降ってきます。花は決して目立ちませんが、玄関付近に這わせると、夏の夜の帰宅時に思わぬ香りのプレゼントが待っていることも……。10月初旬ごろまで咲くので、肥料を切らさないように管理してください。
寒さにはやや弱く、庭植えの場合は10月には掘り上げ、冬季は10℃以上で管理してください。落葉しますが、無事に冬を越すと5月の大型連休ごろに根元から新芽が顔を出します。

アフリカン ガーデニア

花弁が厚くボリュームがあり、花径は7〜8cm程度。夜間に白花が浮き立つように咲き、よく映える。

見た目も香りも華やか

アフリカン ガーデニア(ガーデニア・ツンベルギア)

アカネ科日なた〜半日陰向き花期8〜9月常緑高木

南アフリカに分布するクチナシの仲間です。日本のクチナシと同様に、クリームホワイト色の大きな花を咲かせます。卵形の実もデコラティブで個性的です。
蕾があるのに咲かないなと思っていると、ある日、蕾がビヨンと伸び出し、トランペットのような形に咲き出します。濃厚な香りを夜間に発し、花の美しさとともに存在を強烈にアピールします。常緑樹ですが低温下では落葉します。霜に当てないよう5℃以上の環境で管理すると翌春に展葉します。

マグノリア ココ

5cm程度の白い花が咲く。緑色の蕾が次第に膨らんで咲く姿を観察するのもおもしろい。

ふっくら咲く花にメロンのような芳香

マグノリア ココ

モクレン科日なた向き花期5〜11月常緑中木

中国南部が原産で現地名を「夜香木蘭」とも呼ぶように、特に夜間に強い香りを放ちます。例えていえばメロンに似た甘い香りがします。控えめにうつむいてコロンと咲く花姿も大変愛らしいのですが、時間をかけて膨らんだ蕾がやっと咲いたかと思えば、たった1日で散ってしまう儚さも、この種の持ち味でしょうか。
ただし開花期間が意外と長く初夏から晩秋までポツポツと咲き続けるので、根気よく美しい花と香りを楽しみましょう。生長が遅く、鉢植えで育てると数年経っても背丈は1m少々にしかなりません。関東以西の太平洋側など比較的温暖な気候の下では、霜に注意すれば周年屋外で育てることができます。

ヤコウボク

地味な見た目からは想像がつかないほど、夜になると強い芳香を放つ。

強い香りで存在感が際立つ

ヤコウボク

ナス科日なた向き花期7〜9月常緑中木

今回ご紹介する中で、最も強い香りを発する植物だと思います。地味ながらも小さな花を鈴なりにつけます。昼間は花が閉じていて特に何の香りもしませんが、夜になり辺りが暗くなると、強烈といってよいほどの香りを放ちます。
以前、その香りを満喫しようと室内に鉢を持ち込み、そのまま寝てしまったところ、室内に充満したものすごい香りで目を覚ましたことがありました。7月から9月ごろまで花と香りが2回は楽しめます。冬は室内に取り込み、5℃以上で管理しましょう。

マツリカ

東南アジア原産で、熱帯・亜熱帯で広く栽培されている。中国名は「茉莉花」、英名は「アラビアンジャスミン」。写真は八重咲き種で約2cmのバラのような花がたくさん咲き、濃厚な香りが漂う。

ジャスミンの濃厚な香り

マツリカ

モクセイ科日なた向き花期6〜9月常緑低木

ジャスミンティーに使う原料として有名です。一重の花と八重の花が流通しており、ハワイでは「ピカケ」と呼んで、レイフラワーとして使用されています。元気に冬を過ごさせるためには、5℃以上の環境を必要とします。低い温度で冬を越すと、半ば枯れた状態になり生長が遅れ、せっかくの花がたくさん楽しめなくなります。鉢植えで管理すると、背丈はしばらく20〜30cm程度を保ちます。

ハワイアンハイビスカス

白と赤とのコントラストが美しく、遠くから見てもよく映える。花径は15cm程度。

大きな花に淡い香りが漂う

ハワイアンハイビスカス

アオイ科日なた向き花期7〜11月常緑中木

園芸品種のハイビスカスは香りが感じられませんが、ハワイ諸島原産の白いハイビスカスは淡く香ります。花が咲いたら部屋に持ち込んでみると、その香りでハワイにいるような気分が高まることでしょう。開花時は終日香ります。
ご紹介するのは、オアフ島原産のハイビスカス・アーノッティアヌスの亜種「プナルウエンシス」です。見慣れたハイビスカスより葉も花も巨大でエキゾチックです。葉が大きいので乾燥時のハダニに注意します。予防ついでに水やり時にホースで葉裏にじゃぶじゃぶ水をかけましょう。冬は園芸品種と同様に、10℃以上で管理すると安心です。

ニオイバンマツリ

紫から白色のさまざまな色あいの花が咲き、見応えがある。花径は3〜4cm。

ナス科日なた〜半日陰向き花期 初夏〜秋常緑低木

咲き始めは紫色で、徐々に白色へ退色していくまでのグラデーションが非常に美しく、最近はあちらこちらで植えられているのを見かけます。開花期間が長い種類ですが、何といっても初夏の咲き始めが花数も多く、香りもハッキリと楽しめます。夜に向けて香りはますます強くなり、夏の到来を知らせてくれます。
寒さに強く、関東以西の太平洋側の地域では霜で多少傷むことはあるものの、周年屋外で育てることができます。寒さの厳しい地域では冬は室内で管理します。

ジャスミン・エンジェルウィング

夜になると花の白さが際立ち、強い芳香を放つ。花径は3〜5cm。

ひらひらと可憐に咲く

ジャスミン・エンジェルウィング

モクセイ科日なた向き花期5〜9月常緑つる性低木

ニューギニア原産ですが比較的寒さに強く、関東以西の太平洋側の地域では、夏の早いうちに庭植えすると周年屋外で栽培が可能です。庭植えで根がたくさん伸びている場合、冬に雪が積もっても葉は傷まず、水を十分に与えていれば夏の直射日光にも耐えます。個性的な花姿で開花期が長いのも特徴です。
元気に四方八方に枝を伸ばし、新しく伸びた枝に花を咲かせるため、枝をピンチして新枝を複数伸ばすと、その分花数が増えます。夜に花開き、甘い香りを放ちます。私も庭に植えていて、季節がくると微風に乗って優しい香りが鼻先に届くのを、毎年楽しみにしています。

塩見 亮一

塩見しおみ 亮一りょういち
大阪府出身。1997年株式会社日比谷花壇入社、花卉商品の販売と商品企画、花の生産地開拓の業務を担当している。生産者の思いを消費者に伝える橋渡し役になれるよう日々精進中。