春植え球根の魅力、再発見!
初夏から秋の庭を華やかに彩る春植え球根は、これからが植えどきです。
一見シンプルで飾り気のない花ながら、個性派ぞろいの春植え球根にはいつまで眺めていても飽きない不思議な魅力があります。
一度植え込むと掘り上げずに数年花が楽しめるので、庭だけでなく、玄関前や門扉まわりに植え込んで定番の植栽として楽しむのもおすすめです。今回は春植え球根の中でも栽培しやすく人気の高い4種をご紹介します。
エージャックス やわらかな淡黄色花。花期8〜10月。 |
ロゼア 明ピンク花が群開する。 花期8〜9月。 |
キャンディダ 和名「タマスダレ」という有名品種。 花期9〜11月。 |
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シトリナ 美しい黄花の原種。 花期8〜10月。 |
カリナタ 和名「サフランモドキ」。 大輪花。 花期6、9月。 |
ゼフィランサス セット |
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ヒガンバナ科の球根で、原産地は南〜北アメリカ。降雨後の晴天時に一斉に花を咲かせることから別名「レインリリー」とも呼ばれます。季節によって気温や降水量の変化が激しい地域に自生するためか、極端な乾燥や高温でもよく育ち、低温にも強い性質をもっています。プランターのほか、庭植えでは水はけさえよければ場所を選ばず栽培できます。
実生交配による育種が比較的容易なことから多くの品種があり、花色のバリエーションも豊富です。淡いピンクのVカリナタVや淡いサーモンピンクのVアプリコットクイーンV、レモンイエローのVエージャックスVは繊細でやさしい雰囲気が魅力。花壇やアプローチなどに植えると見る人の目をほっとなごませてくれます。「タマスダレ」の和名をもつ白花種のVキャンディダVは、育てやすくて丈夫なため、玄関先や花壇の縁取りなどに、広く植えられています。黄花種のVシトリナVは葉が細長く、ほかの常緑植物との混植にぴったり。厳しい乾燥にも耐えるので、屋上緑化にもふさわしい品種です。
水はけのよい場所を好みます。花は1輪だと見映えがしないので、球根1〜2個分の間隔をとってまとめ植えするのがおすすめです。花のない時期は植えてあることを忘れるほど地味ですが、春から初夏にかけて、雨の降った後に一斉に開花するさまはとても壮観です。
地植えではよほど土が乾燥しない限り水やりは不要です。鉢植えの場合は、回数を少なめにして、乾いたらたっぷりと与えるようにしましょう。
土づくりの際に元肥として油かすなどの肥料を施してよく耕します。追肥は生育初期の5月下旬〜6月、または開花後の10月ごろ、少量の化成肥料か液肥を施します。
株分けは、生育を始める3〜4月に行いますが、その際、根が生長していたら掘り上げ後すぐに植え付けてください。
ゼフィランサスと同様「レインリリー」とも呼ばれ、降雨後によく咲きます。ゼフィランサスに比べ葉と花が大きめなのが特徴。横向きに咲く品種が多く、鉢植えにしても見映えがします。
特大サイズの花が咲くハブランサスVジャンボVなどは、葉も花もボリュームがあり、鉢植えにしても迫力十分です。一方、オレンジ色の花が咲くVアンダーソニーVのように、葉も花もコンパクトで芝生の中に植え込めるような品種もあります。VチェリーピンクVやVロブスタスVはやや低温多湿に弱いので、日当たりのよい南側に植え込むとよく育ちます。
冬は休眠するので、鉢植えなら冬に水やりをストップして乾燥ぎみにすれば、簡単に冬越しができます。開花は不定期で、育ちながら花芽を作っていくので、温度と水条件が整えば開花し始めます。そのため温室では本来休眠期の冬に開花することもあります。植え替えは通常暖かくなってきた3〜4月ごろに行います。よく乾燥し、休眠していれば6月ごろまで植えないまま保管することも可能です。開花後の10月ごろに、追肥として少量の化成肥料や液肥を与えると球根がよく太ります。
カーマインブリリアント 朱橙色花。草丈40〜50pとコンパクトでプランターなどにもよい。 |
ノーウィッチキャナリ 黄花。花立ちがよい。 草丈30〜50p。 |
コロンブス 鮮黄色花。 草丈約70p。 |
ルシファー 大輪種で、赤い鳥が羽ばたくような花を咲かせる。 |
クロコスミア セット |
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もともとは南アフリカの比較的湿った地域に自生するアヤメ科の球根で、生まれ育った環境が日本に近いため育てやすいといえます。クロコスミアはかつて小輪で草丈が低いものが「モントブレチア」、大輪で草丈が高いものが「クロコスミア」と分類されていましたが、現在では「クロコスミア」に統一されています。
関東以西では庭植えが基本です。水はけと日当たりよい場所で生育と休眠を繰り返しながらよく育ち、毎年花を咲かせるようになります。品種により草丈が30〜100pと異なるので、品種を選んで花壇のボーダーや広い場所での修景、鉢植えなど、さまざまな用途に利用できます。
肥料は4〜5月、10月ごろの2回行うと生育がよくなり、たくさん株立ちします。数年は植えっぱなしで育てられますが、株が込みあってきたら早春に掘り上げて株分け、植え替えをします。球根は乾燥に弱いので、掘り上げたらすぐに植え付けるようにします。霜柱が立つ程度の寒さには耐えますが、地面が凍結する寒冷地では防寒対策が必要です。
球根植物ではありませんが、春植え球根と同じようなサイクルで栽培できます。その名の通り中国雲南省原産のバナナの仲間の植物で、「チャイニーズイエローバナナ」とも呼ばれます。ただしバナナのような実はつけず、花苞が長期間開き続ける性質があります。春から夏にかけてトロピカルムードたっぷりの葉を大きく展開させ、霜が降りるまで常緑を保ちます。
株が十分生育すると、形の違う小さな葉が出始め、中心から大きな黄金色の花苞が出現します。花は苞の中に小さく咲き、特に目立ちませんが、黄金色の花苞は中心から次々と更新され、長期間存在感たっぷりに輝きます。
草丈、株張りともに1mを超えるので、地植えでは広めのスペースを確保します。発根を促すために、株元がぐらつかないように植え付けるのがポイント。植え付け時は株元がしっかりしていないと発根しにくくなるので、よく耕した土に植え付け、たっぷりと水を与えて株がぐらつかないようにします。
多肥を好むので、春から夏に化成肥料や液肥を数回与えます。温度が高いほうがより早く生長し、開花も早くなります。気温が低くなると葉が黄色くなり休眠しますが、株を球根のように掘り上げて保存することも可能です。寒さにも強く、関東以西では戸外で冬越しできます
千葉県長生郡の球根栽培の老舗「正和園芸」に勤務し、球根栽培を学んだ後、正和園芸を引き継ぐ形で「白子園芸」を立ち上げ、代表に就任。球根の中でも個性的な花が多い春植え球根のスペシャリスト。 |