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ピーマンとトウガラシ栽培Q&A

ピーマンとトウガラシ栽培Q&A
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ピーマンが揃って発芽しません。なぜですか?

A1

ピーマンは、育苗床や育苗箱にタネまきして苗を育て、ある程度の大きさになってから畑に植えるのが一般的です。タネまきから定植までの作業である育苗は極めて重要な作業で、「苗半作」という言葉があるように、苗の良否によって作柄が大きく左右されます。ピーマンの育苗期間は60〜75日程度が目安で、育苗中に花芽がつくられます。花芽分化期は発芽後30〜40日です。
タネまきは発芽後に葉が重ならないよう、育苗箱などに条まきしたり、セルトレイへ直接タネをまいたりします。いずれにしても、タネをまいた後は覆土をして軽く押さえ、十分に潅水します。
販売されているタネの標準発芽率は明記されていますが、発芽不良や不揃いになることもあります。原因は主に温度管理のよしあしで、夏秋まきでは高温に、冬春まきでは低温に影響されることがよくあるため、タネの発芽適温で温度管理をすることが大切です。なお、1日を通して適温を維持するのではなく、発芽適温の範囲で、夜間は低く日中は高くというように変化させる方が、発芽揃いはよくなります(第1図)。

弟1図 ピーマンの変温管理
(右)セルトレイに直接タネまきしたピーマンの発芽。(左)育苗箱にピーマンのタネを条まき。

ピーマンやトウガラシは連作可能ですか?

A2

同じ野菜を同じ場所で続けて栽培すると、生産性が次第に低下する連作障害が発生することがあります。主な原因は土壌病害虫ですが、土壌の理化学性の悪化や根からの生育阻害物質の分泌によっても発生します。ピーマンやトウガラシは連作を嫌いますが、輪作や土壌改良、耐病性品種の利用、接ぎ木のほか、土壌病害虫に対しては薬剤や太陽熱利用などによる土壌消毒を行うと、連作できる場合があります。
このうち接ぎ木は、土壌伝染性病害の回避、低温伸長性や吸肥力を高める、草勢の強化や収量および果実品質の向上などを目的に多くの野菜で行われており、現在ではさまざまな抵抗性が付与された台木品種が育成されています。すべての土壌伝染性病害に抵抗性のある台木はないため、完全に回避することは難しいですが、接ぎ木栽培を行うと連作障害をある程度は回避できます。
接ぎ木栽培では、一般に栽培されている品種(穂木)を台木に接いで栽培します。高品質・多収を目指すには接ぎ木親和性(台木と穂木との相性)が重要になります。タキイ種苗からは、青枯病と疫病に複合耐病性をもつPMMoV(トウガラシマイルドモットルウイルス)-L3型専用ピーマン台木「バギー」が販売されています。

(右)タキイ種苗の台木「バギー」と、穂木を接いだ苗。(左)生長した接ぎ木苗(長野市)。

ピーマンやトウガラシの草勢判断のポイントは?

A3

ピーマンのポット苗の、定植時によい苗の条件を第2図に示しました。よい苗を育てるには、毎日、生長や草姿、葉色などの生育診断を行い、それを元に管理することが大切です。
ピーマンやトウガラシは最初に樹を作り、その後はこまめな収穫と追肥、潅水を定期的に行うことが大切です。ピーマンの一般的な仕立て方では、第1次分枝までのわき芽をすべて取り除き、第2次分枝の4本を主枝にします(第3図)。
ピーマンやトウガラシの草勢判断の一つとして、花柱(雌しべ)の長さを見ます。雄しべより雌しべが短い短花柱花が多いと草勢低下(肥料不足)のサインなので、速効性の高い肥料で追肥しましょう(第4図)。短花柱花は自然には受粉しにくいため、落花して収量が減少してしまいます。生育が良好であれば、開花位置は1〜2節目が蕾、3節目が開花、4〜5節目が着果・肥大していて、開花前後の節間長が約4〜6cmになります。このような状態が長く維持できるよう、肥培管理や整枝、誘引、収穫を行います。

第2図 ピーマンの定植適期苗 第3図 ピーマンの整枝と誘引 第4図 ピーマンの草勢判断の目安

ピーマンの生長点の葉が委縮して縮れてきましたが、病気でしょうか?

A4

主な原因として、病虫害が考えられます。病害の、PMMoV(トウガラシマイルドモットルウイルス)やCMV(キュウリモザイクウイルス)では、生長点付近の葉にモザイク症状が現れます。また、虫害のチャノホコリダニの被害では、生長点付近の新葉が著しく萎縮し、展開葉がウイルス症状のように萎縮し波打ち、被害が進むと生長点が止まります。なお、アブラムシ類はCMVのウイルスを媒介するので、害虫にも注意が必要です。
いずれも登録のある薬剤を散布するなど、早めの防除対策が大切です。

(右)CMVのモザイク症状。(左)PMMoVのモザイク症状。PMMoVを葉に接種した状態。左は耐病性品種、右は耐病性のない品種。

ピーマンの苦みをなくす方法はありますか?

A5

子どもに大人気!苦くない!こどもピーマン「ピー太郎」。野菜に関するアンケートにおいて、ピーマンは常に子どもが嫌いな野菜の代表です。独特の香りや苦みは、大人でも苦手な方が多く、敬遠されがちです。しかし、ピーマンは緑黄色野菜として栄養価が高く、細かく刻むなど調理に工夫をして、家族に食べさせるご家庭も少なくないでしょう。
ピーマンの苦み成分は、お茶の水女子大学とタキイ種苗との共同研究により、2012年に「クエルシトリン」であることが解明されました。ピーマンの苦みには品種間差があるので、こどもピーマン「ピー太郎」のように苦みの少ない品種を選んで栽培するとよいでしょう。また、ピーマンの苦みは栽培条件によっても異なります。苦みを抑制するには、適切な施肥と潅水を行い、収穫適期の十分に大きくなった果実を収穫することが大切です。同じ栽培条件でも、果皮色の薄い果実は苦みが弱いことが分かっています。

カロテン含量の比較/ビタミンC含量の比較/苦みに関与するポリフェノール類の含量の比較

ピーマンの果実がすぐに赤くなってしまうのですが、防げますか?

A6

未成熟の果実を収穫するピーマンの果皮色は緑色ですが、成熟すると赤色のほか、黄色や橙色に変わります。
ピーマンの果実が成熟する前にすぐ赤くなってしまうのは、生理障害の可能性が高く、生理障害は養分の過不足、高温や低温、日照不足、土壌の乾湿によって発生します。養分の過不足によって発生する生理障害を防ぐには、土壌診断や生育診断によるバランスのとれた肥培管理が大切です。
生育診断は、葉が黄色い、縮れている、茎が太くならない、新葉が展開しないなど外観のほかに、葉柄や茎の汁液の無機栄養素濃度を分析して判断します。発生した場合、不足した養分を含む濃度の薄い液肥を葉面散布することで軽減できることがあります。

カラーピーマンとパプリカの違いは?

A7

カラーピーマンという名称は、完熟型ピーマンや緑色以外のピーマンの総称です。日本では1993年にオランダの生鮮品輸入が解禁され、当時、流通業者や消費者が輸入物のベル形果品種を「パプリカ」と呼んでいたため、パプリカも一般的な名称として定着しました。現在では、カラーピーマンの中でもベル形果品種をパプリカという名称で呼ぶことにしています。パプリカには、完熟果の赤色や黄色、オレンジ色、茶色の品種のほかに、未熟果の白色や暗紫色、鮮紫色、緑色の品種があります。
パプリカ以外の品種としては、くさび形果完熟型の牛角形ピーマン(アメリカではニューメキシカンタイプと呼ばれる)などのカラーピーマンも、店頭に出回っています。また、国内には普通に店頭で販売されている未熟の緑色のピーマンを完熟させて、カラーピーマンとして出荷している産地もあります。
パプリカは、未熟の緑色のピーマンに比べて、花が咲いてから収穫するまでの日数が2倍以上かかり、収穫する果実が大きいうえに、完熟果を収穫するため、株への着果負担が大きくなります。緑色のピーマンは、夏には花が咲いてから20〜30日で収穫できますが、パプリカは完熟するまでに50〜70日もかかります。そのため、樹への負担が大きく、着果した枝を折らないよう適期に整枝を行うようにします。

牛角形カラーピーマン「イエローホルン」(左)と「レッドホルン」(右)。

最初はピーマンの実がとれましたが、急に実がつかなくなりました。どうしてですか?

A8

健全な花芽を分化・発達させるには、きめ細かい環境調節を行い、地上部(茎葉)と地下部(根)のバランスのとれた苗を育てることが大切です。そうでないと、着果不良や障害果が発生するだけでなく、栄養生長(茎葉の生長)と生殖生長(果実の生長)のバランスが崩れてしまいます。
果菜類で草姿を整える作業を「整枝」といい、摘芯や剪定、芽かき、誘引などの作業を組みあわせて行います。整枝による主枝や側枝の適切な管理と、摘葉や摘果を的確に行うことにより、適度な草勢と通風や採光を維持し、品質の確保や安定生産が実現できます。ピーマンは実が次々につくため、2〜3日おきに定期的に収穫します。
ピーマンは第1花着生節位から2本あるいは3本に分枝し、それぞれの枝の先端に花芽が形成されると、また2本に分枝しながら生長を続けます。そのため、第1花開花以降、開花数は急激に増加しますが、ある時期から開花数は減少します(第5図)。このような開花数の周期は、ピーマンの生育がほかの果菜類と同様、花芽分化以後から栄養生長と生殖生長が常に平行して行われているためです。
ピーマンでは、生育過程で着果数が増加し、生殖生長に使われる栄養分が多くなると、開花数や着果数が急激に減少します。また、収穫により株の負担が少なくなり始めると、開花数が急激に増加し、着果率が高まります。特に、カラーピーマンではほかの果菜類と比べて、開花と着果の周期が著しく現れます。この周期の大きさは、品種や収穫果の大小、栽培管理で異なりますが、整枝や摘果、肥培管理により、ある程度ゆるやかにできます。
ところで、追肥と潅水は、ピーマンの収量安定に大きく関係します。収穫や追肥、潅水が遅れると、草勢が低下して収穫量が激減するので、注意します。

第5図 ピーマンの開花数の推移

トウガラシの果実が曲がるのを防ぐには?

A9

秀品率が高く多収!食味最高級の甘長!「甘とう美人」。トウガラシの曲がり果の発生には、土壌養水分や養分の過不足、光の強さ、品種、温度などのさまざまな要因が関係しています。特に着果負担が増加する時期は、曲がり果が増える傾向にあります。
曲がり果対策として、曲がり果の少ない品種を選ぶとともに、草勢を維持し、適正な着果数の管理を行うなど、栽培環境を改善することが大切です。

甘長トウガラシなのにとても辛いです。なぜ?

A10

甘長トウガラシは普段はあまり辛くありませんが、育つ環境によって、時々とても辛くなることがあります。高温乾燥などの強いストレスの中で育ったり、受精不良によるタネの少ない小ぶりな果実、肥大不良による収穫遅れ、草勢低下なども辛くなる原因です。
甘長トウガラシの辛みの発生を防ぐには、乾燥防止と十分な潅水、追肥によって草勢を維持するとともに、適期収穫を行うことが重要です。

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元木 悟さん

元木 悟

長野県生まれ。筑波大学卒業後、長野県下伊那農業改良普及所、長野県中信農業試験場、長野県野菜花き試験場勤務を経て、2012年より明治大学農学部農学科准教授。