暑さに負けない夏の庭づくり
昨今の異常な暑さで、夏の庭づくりに苦労されている方も多いと思います。
でも、1年中、花あふれる美しい庭を維持したい!
そこで、暑さに強い宿根草や注目の品種をピックアップ。
今までにない花あわせやデザインで、新しい夏庭スタイルを楽しんでみてはいかが?
暑さに強い植物を選び、ローメンテナンスで美しい庭に
夏は暑いものとはいえ、昨今の異常な暑さで、今まで庭に咲かせていた花を枯らしてしまったという声をよく聞きます。気温の上昇や、強い雨など気候の変化に対応して、夏の庭づくりも新たな計画を立てる必要性があります。まずは、夏の花の中でも特に暑さに強い種類を選ぶことが一番大切です。強い日差しや高温にも負けず、美しい花を咲かせる植物はけっこうあるものです。その中でも、新しい品種が続々と誕生しているものを選べば、新鮮な印象の花壇がつくれ、しかも暑さで枯れる心配もなく、管理も楽にすみます。
おすすめの花をいくつか挙げてみましょう。まずは夏の庭花としてすっかり定着したエキナセアは、定番のピンクだけではなく、白やグリーン、オレンジなど色彩のバリエーションが増え、花色あわせの幅がぐんと広がりました。また古くから親しまれているヘメロカリスも暑さにとても強いことから、新たな夏庭の主役品目として注目されています。暑さに強いといえば、モナルダもおすすめです。特に新しい品種の「ベルガモ」は、コンパクトで花壇に利用しやすい花です。
アガスターシェやガレガなどは、知名度はまだそれほど高くありませんが、ヨーロッパでは一般的な宿根草で、これから日本でも人気が高まることでしょう。新しい花で夏の花壇の印象を刷新してみるのも楽しいものです。
暑さ対策をしっかり行い、植物を健やかに育てよう
夏の庭を美しく管理するためには、暑さから植物を守るための工夫をしてやることも大切です。植物を植え込む際には、風通しがよくなるよう株間を十分にとるのは基本です。また植え込み部分に盛り土をしたり、立ち上がりのある花壇(レイズドベッド)も風通しをよくするうえで効果的な方法といえるでしょう。
土中の温度を上昇させない工夫として、敷きわらやバークチップでのマルチングもおすすめです。昨今の夏はスコールのような強い雨もよく降りますが、マルチングしておけば、跳ね返りが葉につくことも防げ、病害虫の発生の予防にもなります。
また、水やりの時間帯にも注意が必要です。日中の気温が高い時間帯に水やりすると、株元が蒸れやすくなるので、朝早めか日没後に行うとよいでしょう。
色彩も花サイズも豊富!新しい夏庭の主役として注目
ヘメロカリスは初夏から夏にかけて次々と花を咲かせる宿根草で、日本や中国原産のカンゾウ類が欧米に導入・品種改良された園芸品種です。花が1日で終わることから「デイリリー」の英名がつきました。原種の多くは午後になると花がしぼみかけていましたが、現在では夕方まで楽しめるよう改良されています。第二次大戦後に進駐軍によって日本に自生する原種がアメリカに持ち帰られましたが、亜熱帯から寒冷地までアメリカ全土で適応できることから一気に広まり、爆発的に改良が進歩しました。日本から持ち帰られた原種は黄色とオレンジ色しかありませんでしたが、今ではあらゆる色彩が揃い、長期咲き、芳香種、巨大輪、小輪など、何を植えようか迷うほど品種も豊富になっています。
ヘメロカリスは耐寒性はもちろん、夏の暑さにもめっぽう強く、夏庭を彩る主役花として大いに期待できます。草丈は品種によって異なりますが、約40〜120cm ほどです。草丈が高い品種はボーダーガーデンの中〜後段辺りに植え付けると、開花期には色彩豊かで壮観な景色が楽しめます。また、草丈の低い品種は鉢植えでていねいに作り込み、手元で花の美しさを堪能するとよいでしょう。
ヘメロカリスは、日当たりのよい場所でも、また半日ほどの日当たりでも十分楽しめます。植える間隔は30cm程度がめどです。花壇植え、鉢植えにも好適で、乾燥にも非常に強く枯れる心配もありません。施肥は花後のお礼肥と2月に寒肥を与えます。アブラムシやスリップス(アザミウマ)が発生することがあるので、見つけたら市販の殺虫剤で処置します。風通しが悪いと葉にシミがつくことがありますが、これによって枯れる心配はありません。広範囲の葉にシミが出た時には市販の農薬で対応するとよいでしょう。アブラムシに関しては2月ごろから月に1回程度、市販の駆除剤をまいておくと予防できます。
おすすめ!ヘメロカリス
シックな花色も登場し、色あわせの楽しみが広がる
モナルダは、初夏から真夏を過ぎて秋まで長く花が楽しめるのが魅力で、管状の花弁が円を描くようにたくさん咲く姿が松明(たいまつ)に見えることから、「タイマツバナ」の別名もあります。品種改良が盛んに行われ、最近では赤、桃、白などの花色が揃っています。草丈は70〜80cmほどで、ボーダーガーデンの中〜後段辺りに利用しやすい花です。心地よいハッカの香りを漂わせる品種もあり、ハーブとして出回ることもあります。原産地の北米西部ではハチやハチドリが吸蜜に群がる花としても知られています。
原種の「プンクタータ」はピンクに色づくがくが段々に咲く姿が個性的です。最近人気が高いのが「ベルガモ」という品種で、今までにないシックなローズバイオレット色が新鮮な印象です。コンパクトで花壇にも使いやすく、暑さにもとても強い性質です。
寒冷地から温暖地まで広い地域で栽培可能です。日当たりがよい場所を好みますが、半日陰の環境でもよく育ちます。腐葉土をよく混ぜた保水性の高い土壌が適していますが、かなりのやせ地でも十分対応します。株間は30cmくらいで植え付けます。開花期間が長いので、途中で肥料切れを起こさないように長期持続型の肥料を施すとよいでしょう。咲き終えた花をこまめに摘みとれば、なお一層長期間楽しめます。3〜4年して込みすぎてきたら、10月初めごろに植え替えます。
おすすめ!モナルダ
- モナルダ・ベルガモ
- 赤紫のがくにピンクの小花が段状に咲きあがるユニークな品種。炎が燃えあがるようなインパクトある花色が魅力。花期5月上旬〜 6月。草丈40〜60cm。〈F.S.金賞受賞〉
- モナルダ・プンクタータ
- 原種系のモナルダで、ピンクに色づくがくが段咲き状に咲き上がる花姿がユニークな品種。花に見える部分はがくなので、長く楽しめる。切り花にもおすすめ。花期6月下旬〜7月。草丈60〜80cm。
- モナルダ花苗 セット
- ディディマ系のピンク、レッド、ブライトパープルの3色セットのモナルダは、花壇に植えると統一感のある印象になり、夏の花壇を華やかに彩る。花期6〜8月、草丈約1m。
適応範囲が広く、耐暑性も期待できる
アガスターシェとはギリシャ語で「穂状に多数の花をつける」という意味ですが、われわれ日本人にはその響きが何ともロマンチックに聞こえます。北米からメキシコの原産で、耐寒性が強く、亜熱帯地域以外は北海道から本州までほとんどの地域で栽培可能です。夏の暑さに対してはまだ実証はないのですが、実際に栽培している多くの方から、昨今の異常な暑さの中でも元気に花を咲かせていたと聞いています。
アガスターシェは日本ではまだ知名度は低く、園芸書でもほとんど触れられていないのが不思議なのですが、イギリスなどではアロマチックで魅力的な宿根草として人気の高い花なので、これから人気が高まることが大いに期待できます。最近の新品種「タンゴ」と「ボレロ」はドイツで改良されたもので、適応範囲が広く乾燥に強いため、コンテナガーデンやドライガーデンにもおすすめです。この2種は葉にすばらしい香りがあるのも特長で、開花時にはチョウやミツバチがよく吸蜜にやってきます。乾燥に強いため、性質の似た背の低い多肉植物、例えば色彩豊かなデロスペルマやトリトマなどとの彩色の組み合わせに相性がよく、夏庭のデザインに新境地が広がります。
水はけのよい土壌を好むので、排水の悪い場所では硬質鹿沼土などを利用し、水分が停滞しないよう盛り土をして植え付けるのがおすすめです。庭植えでは株間を30cm程度とるようにしてください。乾燥に強い性質なので、鉢植えにしても水やりの手間がそれほどかからず、手軽に楽しむことができます。口径12cmほどの鉢に植え付け、生育に従い大きな鉢に植え替えます。過湿にならないよう、注意して管理しましょう。
おすすめ!アガスターシェ
- タンゴ
- アガスターシェの中では貴重なオレンジ品種で、小さなトランペット形の花が穂状にたくさん咲く。灰色がかった葉は落ち着いた印象を与える。
- ボレロ
- 鮮やかな赤紫色の花を穂状につけ、赤みがかる銅葉との色彩調和が美しい。カラーリーフとしても夏の花壇で大活躍。
ふっくらした愛らしい花が魅力!とても強健な性質で育てやすい
ガレガの原産地は南ヨーロッパから小アジア、アルジェリアまで広範囲にわたります。草丈は100〜120cmほどで葉は小葉が15枚前後つき、白から淡い紫、青の花が夏から秋にかけて開花します。園芸品種の「オフィシナリス」は、日本ではまだ広く知られていませんが、ヨーロッパではとても一般的で、よくボーダーガーデンの後方などに植えられています。園芸品種には白と青の二色咲きやサーモン色から藤色、また八重咲き品種もあります。マメ科特有のふっくらした小花が愛らしく、葉のやわらかな緑色も夏の庭を涼しく見せるのに効果的です。花壇の後方に植え込んでも存在感を発揮してくれます。
ガレガは薬草としても有名で、かつてドイツでは疫病草としてあらゆる感染症に使用されていたそうです。また、飼料用としても広く栽培され、花が咲き始めるころ地上部を刈りとり乾燥させて与えると乳の出がよくなると、酪農での乳量増加に貢献しているそうです。ちなみにガレガとはギリシャ語で「乳」を意味しますが、園芸品種の「オフィシナリス」の場合は、薬草としてではなく、観賞用として楽しみましょう。
園芸品種の「オフィシナリス」は強健な性質で、初めてでも手軽に栽培できる宿根草です。日当たりがよく水はけもよい土壌なら、生長も早く、あっという間に大きく茂るため、花壇では広めにスペースをとって植え込むのがおすすめで、群生させると見事な景観が楽しめます。可憐な花は切り戻すと次々と咲き、より長く楽しむことができます。耐暑性も強い花ですが、植え付け時に盛り土にするなど、株元の風通しをよくする工夫をするとよいでしょう。日本では新しく登場した花なので、昨今の猛暑下でどれだけ花が咲き続けてくれるか、大いに期待したいところです。
おすすめ!ガレガ
- オフィシナリス
- やさしくエレガントなパステルパープルの品種。
- オフィシナリス アルバ
- さわやかな純白花は、庭に清涼感をもたらす。
花色も豊富になり今では夏の花壇の主役花に
多くの宿根草の中でもこれほどまでに暑さ・寒さに適応できる植物は珍しいでしょう。この植物に初めて出会ったのは切り花栽培を手掛けていたころで、まだ近縁種のルドベキアときちんと区別されておらず、ルドベキアと呼ばれていました。八重咲きなどまったくなく、満開を過ぎたころの花弁を引き抜いてタネのできる坊主の部分を束ねて出荷していた時代です。当時は現在のように夏の主役になる植物にまで発展するとは頭の隅にもありませんでした。
ある時、オランダの業者から八重の盛り上がり咲きの濃ピンクの品種「ラズマタズ」を紹介されました。当時はタネからの栽培品種も含めて5aの畑で栽培していましたが、こぼれタネから畑中に広がるほど丈夫な性質に驚かされました。また、10年ほど前のことですが、原産地の北米の改良家の畑を案内されました。ここではかなりの面積を使って改良選抜を繰り返し、エキナセアを非常に重要視していました。今では花色も豊富に揃い、よくぞここまでに進歩させてきたものだと、育種家の執念に頭が下がります。昨今の猛暑下でも枯れることなく咲いてくれるエキナセアは、これから先も無限に進化する可能性が期待でき、楽しみは尽きません。
エキナセアは庭植えはもちろん、切り花や鉢植えにも適応する優れた宿根草です。日当たりのよい場所を好みますが、半日くらいの日照でも問題なく育ちます。排水性のよい土壌に、品種にもよりますが株間を50cm程度と、しっかりとって植え付けるとよいでしょう。
エキナセアは花が咲いている間、青々と葉が茂るので、夏休眠中の秋植え球根と組み合わせて配植すれば暑さから球根を守ってくれます。お互いの生育期間が異なるので好都合の組み合わせです。肥料はチッソ分を控えめにしたものを与えます。特に寒肥が有効です。
おすすめ!エキナセア
- プロフュージョン
- 濃桃色の花は中心部がダークブラウン。茎もダークブラウンで、花色とのコントラストがとても美しい。よく分枝し、花つきがよい。開花は少し遅めで7月から。花径約10cm、草丈60〜80cm。
- ラズマタズ
- ローズピンクの八重咲き花。華やかな花容で咲き揃うとボリューム満点。花径5 〜10cm、草丈70〜90cm。
- パイナップルサンデー
- 花径7〜9cmの美しいゴールドイエローの八重咲き花。草丈60〜80cmとほどよい高さで多様な用途に適応する。
アマリリスやネリネ、スイセンをはじめ多くの球根・宿根草の新品種を生み出し続けている育種家。海外からの植物の導入にも積極的で、多くの植物を日本に定着させている。