銀色の条入りポリマルチ[ムシコン]
土壌の乾燥を防ぐマルチ。銀色の条が虫よけになり、媒介するウイルス病を予防する。
不織布[パオパオ90]
タネまき後の保湿などに便利な不織布。畝の上に直接かけて使え、鳥よけにもなる。
寒冷紗[タキイの園芸用寒冷紗(黒)]
メッシュ状の黒い布。強い日差しを遮り、作物を守る効果がある。
防虫ネット[AJメッシュシート]
夏の害虫対策に重宝する防虫ネット。目合い0.25oの細かいネットが小さな害虫もシャットアウト。
春に植えた野菜が収穫最盛期を迎える夏。今からでも、トマトやナス、エダマメなどの果菜類を夏から栽培する「遅植え」が可能!今回は、暑い時期に行う「遅植え」ならではの植え付け、タネまき作業のポイントをご紹介。夏の太陽を浴びて元気に育つ、秋どりのおいしい野菜をぜひ味わってください。
果菜類の植え付けやタネまきは、7〜8月の「遅植え」も可能です。春植えよりも収穫量はやや落ちるものの、気温が下がり始める初秋のころからは、野菜のうまみが凝縮し、春植えとは違うおいしさが堪能できるのが魅力。手間暇掛けて作る価値は大です。
トマトやナス、エダマメなどの果菜類の植え付けやタネまきは、春先の大型連休前後にスタートする作型が一般的ですが、7〜8月にスタートする遅植えでは、秋どりならではのおいしい野菜を味わえるのが魅力。また、夏どりが終わりを迎えるころから、遅植えの野菜が続けて収穫できるのもメリットです。
猛暑期に植え付けやタネまきを行うので、夏の高温や強光で葉や茎が傷まないよう、遮光や乾燥対策などをしっかり行うことが肝心。気温が下がり始める時期の栽培は、初期生育の成否が収穫量を左右するので、植え付けやタネまき時にひと手間掛けることで、根張りをよくさせることがポイントです。最近では、野菜の生育を助ける便利な資材が豊富に揃っているので、上手に活用しましょう。
土壌の乾燥を防ぐマルチ。銀色の条が虫よけになり、媒介するウイルス病を予防する。
タネまき後の保湿などに便利な不織布。畝の上に直接かけて使え、鳥よけにもなる。
メッシュ状の黒い布。強い日差しを遮り、作物を守る効果がある。
夏の害虫対策に重宝する防虫ネット。目合い0.25oの細かいネットが小さな害虫もシャットアウト。
こんなところに気をつけよう!
植え付け前の苗は、夏の高温や強い日差しで傷みやすいので暑さ対策が肝心。天候や時間帯にも配慮して作業をしましょう。
植え付け作業は、翌日に雨が予想される曇りの日を選ぶのがベスト。天気予報をチェックして、適した日を選んで作業します。炎天下で植え付け作業をすると葉や茎が暑さでぐったりしてその後の生長が悪くなります。植え付けやタネまきは、日差しが強い時間帯を避け、15時以降に行いましょう。
夏の高温で根を傷めたり、乾燥したりしないよう、ポリマルチを張って栽培するのがおすすめ。ポリマルチには複数の種類がありますが、この時期は、虫よけ効果のある条入りマルチ(「ムシコン」など)、雑草の繁茂を抑える黒マルチ、地温が上がりにくいシルバーマルチがおすすめ。用途に合わせて選びましょう。
ポリマルチのすそは土にしっかり埋めて、風などでめくれないようにする。
真夏の高温や日差しで苗がダメージを受けないよう、植え付け時に寒冷紗(「タキイの園芸用寒冷紗(黒)」など)をトンネルがけし、直射日光が当たらないようにします。内側には防虫ネットをかけて防虫対策を。防虫ネット+遮光ネットをダブルでかけることで、害虫や日差しから苗を守ります。
まずは畝をまたぐようにトンネル支柱を立てる。この時、日中の強い日差しが苗に直接当たらないよう、ネットをかけた時に日差しを確実に遮ることができる位置に支柱を立てる。
支柱の上から防虫ネットをかけ、サイドを結んで止め具で止める。その上に黒寒冷紗をかけ、同様に止める。ここまでの作業を植え付け前に行い、苗を植え付けたらすぐにネットをかけられるようにしておく。
根がスムーズに伸びるよう、植え付け前に、マルチの植え穴に水をたっぷり注ぎ、土を湿らせておきます。植え付け後も再度水やりし、根鉢と畑の土のすき間をなくして根の活着を促します。
ハス口を外したジョウロで、植え穴に水をたっぷり注ぐ。植え付け後は、ハス口をつけて下に向け、株元にたっぷり水をまく。
ポットから苗を取り出して植え付け、仮支柱を立てて固定します。水やり後、もみ殻を株元の土が見えなくなる程度にまきます。こうすることで、地表の乾燥や高温による根傷みが抑えられ、雨による泥はねで病気になるのを防ぐことができます。
苗のぐらつきを防ぐため、仮支柱を立てて誘引する。
もみ殻を植え穴の地表部分にまく。
ネットのすそを土で埋めたら作業完了。黒寒冷紗は根が活着する約1週間後、防虫ネットは葉や茎がネットに触れるくらい伸びてきたら外す。
苗を真夏の炎天下で放置すると、あっという間にしおれてしまうので、必ず日陰の涼しい場所で管理します。畑へ植え付ける時は、直前まで日陰に置き、弱らせないようにします。あらかじめポットの底から水が流れ出るくらい、たっぷり水をやりましょう。
苗は、植え付け直前まで涼しい日陰で管理を。たっぷり水やりし、根から吸水させて葉をピンとさせておく。
マルチの上に苗を並べてちょっと離れたすきに苗がぐったり…というケースも。炎天下の日中、マルチは高温になるので直接苗を置かないようにしよう。
果菜類の「遅植え」
エダマメやカボチャ、キュウリなどを今から栽培する場合は、タネを直まきするのもおすすめ。保温などの必要がないので初級者でも手軽に栽培できます。
植え付け作業は、翌日に雨が予想される曇りの日を選ぶのがベスト。天気予報をチェ生育後半に寒さで生育が遅れることを想定し、タネまきから収穫までの期間が短い品種(早生など)を選ぶのがおすすめ。夏からの栽培に適した品種かどうか、タネ袋やカタログなどのカレンダーで確認して購入しましょう。
夏の土壌は乾燥しやすいので、ポリマルチを張って保水効果を高めます。タネまき後は、手のひらで押さえて鎮圧します。鎮圧することで、毛細管現象で土中の水分がタネに供給されやすくなり、地表で水分が蒸発するのを防ぐことができます。また、土とタネが密着することで水分を吸収しやすくなり、発芽がスムーズになります。
タネを押し込むようにしてまき、土をかぶせて鎮圧する。土が湿っている場合は軽く、乾いている場合は強めに鎮圧する。エダマメなどのマメ科のタネは、タネがふやけたり、急激な温度変化で発芽率が落ちたりするので基本的に水やりは不要。
タネまき後、まき穴をもみ殻で覆うことで、土壌水分が保たれ、発芽しやすくなります。切りわらなどでも代用できます。
まき穴の土が隠れる程度にもみ殻をかける。あまりたくさんかけすぎると発芽しにくくなるので注意。
乾燥防止のため、タネまき後に不織布(「パオパオ90」など)を畝全体にかぶせます(ベタがけ)。風などで飛ばされないよう、押さえ金具などで止めておきます。発芽したら、葉や茎を傷めないようにそっと取り除きます。
不織布の周囲のすそを、押さえ金具などでしっかり止める。
不織布を畝全体にかぶせる。マメ科のタネを好む鳥の食害を防ぐ効果もある。
不織布の周囲のすそを、押さえ金具などでしっかり止める。
直射日光を遮るため、トンネル支柱を立てて遮光率50〜80%の寒冷紗をかけ、遮光します。全面をふさぐと通気が悪くなるので、北側は3分の1ほどあけておき、タネを強い日差しから遮るのがポイントです。
日中の強い日差しを遮るよう、南側(または東側)に寒冷紗をトンネルがけする。北側は通気のために開放する。
春植えのトマトが収穫最盛期のころに植え付ければ、夏から秋まで途切れずおいしい実が収穫できます。寒くなると実つきが悪くなるので、7月中には植え付けを。台風や豪雨でダメージを受けないよう、支柱を立ててしっかり誘引します。
秋どりのエダマメは、深みのあるコクと濃厚な甘みがあり、豆本来のおいしさが味わえます。元肥に米ぬか(1u当たり1握り程度)を入れるとうまみが増します。タネまき後は、急激な温度変化でタネが傷まないよう、基本的に水やりをしないのがコツ。
春植えで秋ナスを収穫するには更新剪定が必要ですが、遅植えでは剪定が不要。苗を植え付けるだけで、おいしい秋ナスができます。水と肥料を好むので、ポリマルチを利用して土壌の水分保持に努め、定期的な追肥で肥料分を補いましょう。
苗を購入して育てるのが手軽ですが、夏は地温が高いので直まきも可能です。つるが旺盛に伸びるので、2m四方のスペースを確保します。本葉5〜6枚で親づるを摘芯して株元にわらを敷き、つるが伸びたら子づる3本になるよう整枝しましょう。
夏どりのキュウリの収穫が一段落したあと、晩秋まで収穫が楽しめます。初級者は苗から育てるのが無難ですが、タネからの栽培も可能です。苗が小さい時期は、ウリハムシの被害にあいやすいので、防虫ネットをトンネルがけして予防しましょう。
夏からの栽培は、短期間で収穫できるつるなし品種がおすすめ。初期のころにアブラムシなどの被害にあわないよう、防虫ネットを利用して予防しましょう。草丈が高くなると強風や雨で株が倒れやすいので、畝全体をひもなどで囲って保護しましょう。
体験農園園主、東京都指導農業士。野菜栽培に関する幅広い知識を持ち、管理作業のコツなどをわかりやすく指導。日本野菜ソムリエ協会ジュニア野菜ソムリエ。著書に『加藤流 絶品野菜づくり』(万来舎)がある。