キュウリのリレー栽培
キュウリは、新鮮でみずみずしいおいしさを楽しみに、毎年植え付けされる方も多いと思います。もちろん収穫できる果実が多いほど、うれしさも増すというものでしょう。今回はタキイの栽培容易な耐病性品種を用い、植え付け回数を増やすことでより長くキュウリを収穫する方法と、その栽培ポイントをご紹介します。
さっと炒めてみずみずしさを味わう、イカとキュウリのしそ炒め。
せん切りにしてシャキシャキとした歯ざわりを楽しむ生春巻。彩りもきれい。
T タネまき時期と畑の準備
1回目のタネまき
一般地での苗の植え付けは、早くても5月上旬からです。播種は植え付け予定日から逆算して行います。
1ポットに2〜3粒まき、農電マットなどの保温マットで地温を25〜30℃に保ちます。発芽後、本葉2枚目までに1株に間引きます。
播種と同時に畑を準備します。標準の元肥は、1u当たりチッソ:リン酸:カリ=30g:35g:30g、堆肥が約2sです。畝立て後は、黒のポリマルチで被覆します。苗を購入する場合でも、植え付ける1週間前にはマルチングを終了し、地温確保に努めてください。
12pポットでは本葉3.5枚に生長するころが目安。
2回目のタネまき
夜間の地温が20℃を下回らなければ、温床は必要ありません。1回目の植え付けの1〜1・5カ月後を目安に、遅くても6月中には9pポットに播種してください。この作型は、極端な低温にあうこともなく比較的トラブルは少ないのですが、ほかの夏野菜の栽培をする場合、6月に収穫を迎えるタマネギやソラマメ、エンドウの後作を候補地にすると、畑を有効活用できるでしょう。
気温が上昇し、肥料の効きもよくなる時期なので元肥が多くならないよう注意してください。特にマメ類の後作では、元肥を入れず、マルチをシルバーに変えるだけでも栽培できます。
キュウリのリレー栽培 中間地作型例
U 品種の選定
第1作目
収量が多く、小葉で管理しやすい「Vシャイン」、定番の「夏すずみ」がおすすめです。
第2作目
夏本番を迎えますので、耐暑性に優れる「Vアーチ」「シャキット」がおすすめです。長年愛用している「夏すずみ」をお考えなら、ウイルス病に強い「VR夏すずみ」をお選びください。
Vシャイン
過繁茂になりにくく管理作業が楽。減農薬栽培も可能。
夏すずみ®
非常に作りやすい人気の品種。減農薬栽培が可能。
Vアーチ
初期から安定して多収。果肉は歯切れよく甘みがある。
シャキット
シャキッとした食感の四葉系。漬け物や炒め物に向く。
VR夏すずみ
長期間収穫できる。歯ざわりのよい果肉で食味良好。
V 栽培要点
1 作型別栽培ポイント
第1作目
子づる発生のよしあしが、収穫量の差につながります。親づるを強く健全に育てることで子づるを出し、多収を目指しましょう。
- (1) 親づるを太く育てる
- 下位5節の雌花と子づるは早めに除去することが必要です。7節まで除去すれば、より力強い親づるに仕上がります。
- (2) 親づるは早めに摘芯する
- 親づるは本葉25枚までで必ず摘芯してください。
- (3) 第2作目への切り替えをスムーズに
- 第2作目の生育状況を確認しながら、1作目の株が衰えを見せ始めたら早めに作を終了します。病虫害蔓延の防止につながります。
第2作目
暑い夏を乗り切るちょっとした工夫が必要になります。
- (1) 深く根を伸ばしてから、収穫を始める
- 夜温がキュウリの生育適温に近いため、親づるの伸びが早く、第1作目よりも植え付けから収穫までの期間が短くなりますが、これはあまり好ましい状態ではありません。養分を少しでも多く根や葉に分配させるために、雌花は8節目まで除去することが大切です。
- (2) 若もぎキュウリで草勢を維持する
- 高夜温が続くとキュウリも体力を消耗します。また果実の伸びも早いため、大きなキュウリにしてしまうことがさらに夏バテを助長させます。盛夏期は負担軽減のためにも、標準サイズより小さめの状態で収穫するよう心掛けましょう。若もぎの果実は皮がやわらかく歯切れがよいので、新しい料理や食べ方の幅が広がるかもしれません。
2 整枝方法
第1作目
下方3〜4本の子づるは一葉摘芯、それより上方は二葉摘芯にします。孫づるも下方は一葉摘芯し、中段より茂り具合に応じて適宜生長点を摘みとります。上中段は特に気にせず、後述の「摘葉」を行えば、簡単にスッキリした姿にできます。
第2作目
子づるが長く、孫づるの発生も旺盛になりやすいので、子づるはすべて一葉摘芯し、過繁茂を防ぎます。
3 上作に導く栽培管理
(1) 摘葉
収穫を長期間続けるのに不可欠で、場合によっては整枝よりも必要度の高い管理作業です。「葉が黄色くなったからとる」ではなく、「積極的にとる」必要があります。
摘葉は、収穫が始まる3〜4日前から始めましょう。1週間に1度、親づるの下葉から3〜4枚ずつ、継続して行います。収穫が始まって1カ月後には、親づるの葉をすべて除去している状態にしてください。
(2) 追肥と水やり
最初のキュウリを1本収穫したら、追肥を始めます。その後は1週間に1回のペースで、1株当たりに速効性の肥料を軽く一握り施すのを基本にします。ただし、1株当たり2〜4本の収穫が続くような時期には、4〜5日おきに追肥してください。また、薄めの液肥を潅水代わりに与えるのも効果的です。晴天が続けば毎日水やりが必要になるので、2〜3日に1回は液肥潅水するとよいでしょう。
1本目のキュウリがとれ始めたころが追肥の目安。
4 病害虫対策
(1) うどんこ病、べと病
前述のおすすめ品種は、すべてうどんこ病、べと病の耐病性品種です。古い葉から発生しやすいうどんこ病は、親づるの下葉から順次摘葉することで、また、チッソ分が不足すると発生しやすいべと病は、定期的な追肥を行うことで、かなり発病を抑えることができます。
(2) 褐斑病、炭そ病
多湿条件とキュウリの体力低下で、急激に広がる可能性があります。追肥と併せ、病斑があれば若い葉でも除去し、畑の外で処分するようにします。
(3) アブラムシ、アザミウマ類
鳥よけのキラキラテープと捕虫用の粘着テープで圃場を囲うことで、初期の侵入を減らすことができます。併せて、キュウリの近くに粘着テープシートをつり下げると、捕虫率を高めることができます。
褐斑病の例。病斑が見られたら、若い葉も含めてすべて摘みとる。