及川 洋磨 (おいかわ ようま)
大学で造園学を学んだ後、岩手県にある実家の「及川フラグリーン」にてクレマチスの生産、育種に携わる。庭での実践を通して「クレマチスのある庭いじり」の楽しさを伝えることにも力を入れている。
クレマチスといえば、つる性植物のイメージが強いですが、宿根草のように楽しめる木立性の品種があります。
ここでは、木立性クレマチスにスポットライトを当てて、庭での楽しみ方や育て方をご紹介します。
「つる性植物の女王」と呼ばれるクレマチスの中に、宿根草のように楽しめるタイプがあることをご存知でしょうか。さまざまなタイプがあるクレマチスですが、その中でもインテグリフォリア系というタイプの中に木立性品種があります。枝の長さが30〜50pくらいでつるにならず、支柱などへの誘引が必要ないので、花のきれいな宿根草としての利用が可能です。ただし、インテグリフォリア系の中には枝の伸びがよい半つる性の品種もあるので、特性をしっかり確認して木立性のものを選ぶようにしましょう。
庭での使い方はいたって簡単で、ほかの宿根草や草花と同様に花壇などの植栽に使います。単独で使うよりは、ほかの宿根草と組みあわせて使うと、お互いに引き立てあいます。植え込みの手前に向く、草丈が比較的低めの植物とあわせるとよいでしょう。木立性のクレマチスは伸びた枝が完全には自立せず、少し這ったり枝垂れたりもしますが、支柱などで枝を押さえず、そのまま自然な草姿を楽しむのがおすすめです。伸びた枝が隣の植物の間に入り込み、葉や花が重なって咲くなど意外性のあるシーンができるなど、植栽に動きをもたらしてくれるからです。そういう周りの植物とのコラボレーションを意図して、伸びた枝を配置するのも楽しい作業です。また、通常のつる性のクレマチスの株元に植えるのもいいですし、バラの株元近くに植えてもすてきです。
「パステルブルー」の周りにフェスツカ、ゲラニューム、ユーフォルビア、這性のコニファーなどがあり、一体となって景色をつくっている。枝が伸び、葉や花が交じりあうので、色彩や質感のコラボレーションが楽しめる。
斑入りのドクダミ、小型のホスタなどほかの宿根草に「ロゼア」を寄り添わせるように植栽。開花時には葉や枝が交じりあうようになる。開花期間が比較的長いので、庭のポイントになる。クレマチスだからといって特別視せず、刈り込み、施肥などはほかの宿根草とあわせて行える。
木立性は鉢植えでも楽しめる。枝の誘引の必要がなく、管理は楽。「ヘンダーソニー」は少し枝垂れるが、支柱などにとめようとせず、自然でやわらかな表情を楽しむのがおすすめ。つる性のクレマチスの鉢植えの横に配しても相性がいい。
花後に剪定せず、花がらをそのままにしておくとタネができる。初めはキラキラとした輝きがあり、徐々にふわふわの綿毛のように変化していく。通常は花後の剪定で2番花を楽しめるが、剪定せずにタネをつけた姿を楽しむのもいい。特に寒冷地など2番花が咲きにくい環境の場合におすすめ。
筆者が勤める会社のオリジナル品種。白色を基調とし、内側に淡く青筋が入る、涼しげなベル形。ほかの植物との混植などに使いやすい。
シンプルでさわやかな青色のベル形で細長いシャープな花形。木立性クレマチスの定番品種で、昔から世界中で利用されている。
優しげな淡い青色の花。ほかの品種に比べ花弁が短く、色あいと相まってかわいい花姿。先に向かうにしたがってねじれがあり、動きが感じられる。
内側に淡く桃藤色が入る可憐な白色花。フリルが入り、動きのある大きめのベル形で、観賞性が高い。これからどんどん取り入れてほしい新しい品種。
発色のよい濃いピンク色で、縁の方は淡い色みとなる。枝がしっかりしていて、株のまとまりもよいので、見応えのある咲き姿になる。
東部ヨーロッパなどに自生する原種で、木立性クレマチスの品種改良の元。軽やかな青色で、さわやかな雰囲気。シンプルな咲き姿にどことなく野生味が感じられる。
ねじれがあり動きのある花は、繊細で上品な白色。やや香りがある。組みあわせを選ばないので、木立性クレマチス同士はもちろん、ほかの宿根草ともあわせやすい。
濃いめのピンク色の名花で、昔から人気がある。ヨーロッパでも草花との混植に定番的に使われ、さまざまなガーデンで見かけるほど信頼性のある品種。
完熟馬ふん堆肥などを入れ有機質に富む土にすると生育がよくなります。苗は株元1節くらいを埋めるように深植えします。そうすると株立ちが促され、枝数が増えやすくなります。また、庭への植え付け後には、株元を中心に直径30pくらいの範囲にチップなどでマルチングすることをおすすめします。地温上昇と乾燥抑制になり、生育が向上します。植え付けから2〜3年はあまり枝数が増えない場合もありますが、しっかり根づき、環境に慣れると枝数が増え花数も多くなります。
鉢植えでは土の表面が白っぽく乾いたらたっぷりと与えてください。鉢植えは水のやりすぎで枯らすことが多いので、土の乾き具合をしっかり確認しましょう。 また、庭植えでは2週間くらいまともな雨が降らない場合は水を与えてください。春〜秋までに極度に乾燥させると株が弱ることがあります。特に、根づくまでの植え付けから2カ月くらいは注意が必要です。庭植えは乾燥に注意が必要です。
環境によりうどんこ病、アブラムシなどが発生します。発生前の予防が効果的なので、適宜薬剤散布などをしてください。病害虫の被害がかなり進行してしまった場合は、思い切って被害にあった枝を剪定してもかまいません。遅い時期でなければ、再度伸びる枝に花を咲かせる可能性もあります。
伸びる枝を支柱などにとめずに、そのままの草姿を生かすことをおすすめします。完全に自立せず、這ったり、枝垂れたりしますが、花首は上に持ち上がりしっかりと咲きます。周りに植えてある植物に交じりながらやわらかな表情で咲くので、伸びた枝を咲かせたい位置に寄せてもいいでしょう。
木塀の前の植え込みに、さまざまな宿根草と一緒に「花島」を植栽。ナチュラルなイメージのグリーンを中心とした植栽の中にあって、濃い花色がアクセントに。木塀にはつる性のクレマチスが植えられてあり、そのコンビネーションも楽しめる。
平らな花壇だけでなく、少し傾斜のある場所に植えることもおすすめ。「天心」は立ちぎみになったり、枝垂れたりと枝が動きをもたらし、うつむき加減の花形を下の方からのぞくこともできる。ロックガーデンのように石とあわせたり傾斜地での利用もおすすめ。
花の咲いていた部分を取り除くように、株の半分くらいの位置で剪定してください。ただし、剪定後に残った枝が周りの植物に埋もれ、日光が当たらないのはよくないので、その場合はもう少し浅めに剪定してください。また、同時に追肥をすると、2番花も期待できます。木立性タイプはクレマチスの中でも返り咲きしやすいので、ぜひ挑戦してください。
冬(寒冷地では春先)に地上部が枯れるので、地際付近で枯れ枝を剪定してください。春には新しい芽が動いてきます。
大学で造園学を学んだ後、岩手県にある実家の「及川フラグリーン」にてクレマチスの生産、育種に携わる。庭での実践を通して「クレマチスのある庭いじり」の楽しさを伝えることにも力を入れている。