親と同様に咲くメリクロン苗
現在出回っているクリスマスローズ苗のほとんどは実生苗で、同じ両親から生まれた苗でも1株ごとに個体差があり花色が違います。以前より格段に美しい色合いが多くなったとはいえ、花色はピンからキリまであり、本当に美しいといえる花はごくわずかなのが現実です。それぞれが個性的でオンリーワンとしての魅力はあるものの、安定した花色で美しい花を咲かせる苗があれば、やはり誰もが欲しくなるでしょう。
そこで登場したのが、花色が安定したメリクロン苗です。多くの株から美しい花を選抜し、組織培養で増殖したものなので個体差がなく、すべてが同じ花を咲かせます。
花色がより進化した最新品種
特に新しい品種は濁りの少ない明るい花色にこだわって選抜されたものが多く、誰が見ても「美しい」と感じる花になっています。豪華な八重咲きが多く、花首が丈夫でしっかりと横を向いて咲くものも増えています。従来、うなだれて咲いてしまい花色が目立たず、地味な印象となりがちだったものが、最新の品種は美しい花色がよく見えるため、大変華やかな印象です。鉢で観賞するだけでなく、庭植えの宿根草として楽しむのもおすすめです。
栽培管理
適する環境
寒さに強く、夏の高温多湿が苦手です。
鉢植えの場合、10月〜翌年4月は半日以上は日光の当たる屋外、5〜9月は蒸れないよう、木漏れ日程度の半日陰か明るい日陰で風通しのよい所が適します。梅雨時は雨を避け、軒下に置くとよいでしょう。
庭植えの場合は、水はけがよく乾きぎみの所で、夏の強い直射日光が避けられる落葉樹の下などが理想的ですが、常緑樹の下でも朝日が入り込む東側であればよく育ちます。
植え付け
11月ごろに5号鉢に鉢上げします。用土は水はけがよくアルカリぎみのものが適します。自分で配合する場合は、例えば硬質鹿沼土小粒:赤玉土中粒:腐葉土=4:4:2に、苦土石灰または有機石灰少々を目安にしましょう。
鉢に植え付ける時は元の根鉢を高くすえ、周りの土を少なめにしてウォータースペースをつくると株元の蒸れが予防され、立ち枯れのリスクが少なくなります。庭植えの場合は一旦、前述のように鉢に植え付け、株をしっかり生長させてから翌年の10〜11月に植え付けます。
水やり
鉢植えでは、用土が乾いたら鉢底から水が流れ出るまでたっぷり与えます。乾燥にはかなり強い反面、用土が年中湿っていると株元が蒸れて病気や根腐れの原因にもなるので、やりすぎに注意します。特に夏は乾燥ぎみにします。
庭植えでは、植え付け時にたっぷり水やりした後、1カ月程度は土の表面が乾いたら与えますが、その後はほとんど水やりの必要はありません。ただし、何日も雨が降らずに庭全体が乾燥し、葉に元気がなく倒れているような場合は、水を与えましょう。
肥料
生長期は10月〜翌年5月中旬ごろで、この時期に肥料を与えます。
鉢植えでは、鉢物用の固形肥料であればほぼ月に一度、液体肥料なら規定の希釈倍率に薄めて1〜2週間に一度与えます。5〜9月は、肥料は与えません。
庭植えでは9月中旬と翌年2月中旬、固形肥料を株元から離して軽く埋めます。チッソ、リン酸、カリが等量含まれる肥料、またはリン酸分を多く含む有機質肥料が適しますが、緩効性の化成肥料でもかまいません。
古葉と花がらとり
11月ごろに植え付けた後、翌年の秋には成株となり花芽がつくので、12月に古葉切りを行います。株によっては10〜11月に新芽を展開することがあるのでその新芽は残し、夏に茂った古葉だけを切ります。これは株元の風通しをよくし、花芽の生長を促すためで、株がまだ貧弱な場合は必要ありません。
花が咲き終わり色あせてきたら、タネができないよう子房ごと花がらを摘み取ります。一つの花茎で開花がすべて終わったら、花茎ごと根元から切り取ります。
気をつけたいポイント
日陰の植物のイメージで乾燥に弱いと思われがちですが、実際には逆で乾燥に強く多湿を嫌うので、水のやりすぎには十分注意します。株が大きくなり花が咲くと株元が蒸れやすく、立ち枯れ症状が出やすくなります。風通しをよくし、水やりも葉を濡らさず株元へ注ぐように与えましょう。
鉢植えの場合、早く開花させようとして秋のうちに室内へ入れるのはよくありません。早く咲かせたい場合は12月いっぱいはなるべく寒い所に置き、年が明けてから日光の当たる軒下などに移動します。暖房が効いていない室内の窓辺でも大丈夫です。
庭植えでは、雑草に埋もれないように注意します。特に梅雨時は病気が出やすくなるので、風通しのよい状態を保ちましょう。