タキイブリーダーおすすめ

優れた特性を生かしつつ、耐病性もさらにアップさせたい!
2001年に発表された「桃太郎ファイト」は、糖含有量が高く、甘くておいしいトマトとして高い支持を得ている品種です。栽培面でも、9つの耐病性をもち、安心して栽培できる品種です。ところが葉かび病耐病性(Cf4)を侵すレースが一般的になり、葉かび病にかかるようになってしまいました。そこで、栽培者の不安を何とか解消させたいという思いから改良に取り組み、このレースに対応できるCf9の耐病性因子を付与して開発したのが「CF桃太郎ファイト」です。
「桃太郎ファイト」は品質と栽培性を併せもった優れた品種なだけに、その品種力を低下させずに耐病性を付与することができるかどうかが、品種育成で非常に苦慮した点です。品質と栽培性に厳しくこだわって選抜することにより、「CF桃太郎ファイト」は「桃太郎ファイト」の数々の特性を損ねずに、葉かび病にも対応できるCf9の耐病性因子をもつ品種として誕生させることができました。
高い耐病性、高糖度でおいしい!
CF桃太郎ファイト」は葉かび病に安定した耐病性を示すだけでなく、トマトモザイクウイルスTm-a2型、萎凋病レース1とレース2、根腐萎凋病(J3)、半身萎凋病、斑点病、サツマイモネコブセンチュウなどの複合耐病性をもち、また青枯病に対しても中程度の耐病性をもつため、安心して栽培していただけるのが何よりの魅力です。もちろん、おいしさも抜群で桃太郎系の中でも1、2位を争う高糖度トマトです。「CF桃太郎ファイト」に限らず、「*CFハウス桃太郎」「*CF桃太郎はるか」など、CF系品種をいくつも世に送り出す中で、多くの栽培者の方々から「葉かび病に対する不安がなくなった」という言葉をいただき、開発者としてこのうえない充実感を味わうとともに、耐病性品種の重要性を改めて感じております。
しかし、耐病性品種を侵す新たなレースの脅威は存在しており、今後のCf9の耐病性品種を末永く使用していただくために、薬剤による定期的な予防散布をしていただき、新レースの発生を未然に防いでください。
「CF桃太郎ファイト」は、数々の耐病性を併せもつため減農薬栽培にも向き、かつ高糖度のおいしさが味わえるので、家庭菜園の方にもぜひ試していただきたい品種です。
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CF桃太郎ファイト | 桃太郎ゴールド | CF千果 | ||
基本的に夏型の品種だが、節間長がやや長く、葉は小さめなので、ハウス半促成栽培やハウス抑制栽培に最適。 | 機能性に富んだ橙黄色の桃太郎で、体内に吸収されやすいとされているシス型リコピンを多く含む。 | 葉かび病に安定した耐病性があるほか、斑点病にも中程度の耐病性。濃赤色でツヤのある果色。 | ||
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ナスのトゲをなくせるか
「トゲのないナスを作りたい」。それがこの品種改良プロジェクトの原点でした。ナスにはトゲがあるため、収穫や選別、袋詰めなどの作業の際に手を傷つけることも多く、輸送時には傷果の原因にもなります。その難点をどうにか改良できないかと思いました。
改良にあたっては、従来品種の「千両二号」を使うことに。これは低温伸長性と耐暑性の両方を兼ね備え、環境適応力が高いため、国内すべての地域で育てられる優秀な品種です。そこに「トゲなし」という新たな特長が加わると、作業時の負担軽減と効率化、また傷の少ない商品価値の高いナスが出荷できるはず。
高い目標を掲げたものの、育成には苦労が多くありました。トゲなしの特性を選抜するにあたっては、従来の品種改良に使う4倍の株を栽培する必要があったのです。それに、トゲは環境や株の栄養状態によって、減ったり低くなったりするので、トゲの有無の見極めが難しかったことも、道のりを困難にする原因でした。どうにかトゲなし素材を発見し、「千両二号」の長所をそのまま受け継ぎながら、ヘタや茎葉など植物体すべてからトゲをなくした革新的な品種を生み出しました。
ナス界に革新をもたらした「とげなし千両二号」は大反響
育了して世に送り出したところ、生産者はもちろんのこと、さまざまな分野から注目を集め、問い合わせが相次ぎました。それは予想以上で、驚くとともに嬉しくもありました。初心者でも安心して栽培できるので、ぜひ家庭菜園で試して欲しいですね。
この「とげなし千両二号」は、生産者や流通、消費者のために一歩前進した改良となりました。幸いにもナスはこれまでの品種改良により、能力が安定していて改良点が少ないのですが、今後もナスに携わるすべての人のニーズに応えるため、さらに斬新なアイデアで第2、第3の品種改良に挑戦し、活性化に貢献したいと思います。

「苦み」「青臭み」をカット
野菜の日(8月31日)に企業などで実施される野菜に関するアンケートを始め、子どもの嫌いな野菜の上位にランキングされるのが「ピーマン」。緑黄色野菜として栄養価が高い反面、独特の苦みや青臭さがあるため、大人でも苦手な方が多いのが現状です。
そこで、敬遠される原因の苦みや青臭みをなくし、そのうえジューシーで歯触りがよく、より高い栄養価を付加して子どもたちにおいしく食べて欲しいと開発したのがこどもピーマン「ピー太郎」です。
育成にあたって目をつけたのが、味のよさに定評がある「ハラペノ」というメキシコのトウガラシ。生でも加熱してもおいしく、肉厚でジューシーなので、この特性を何とか生かせないかと考えました。しかし、そこには大きな壁がありました。あまりに激辛で、日本人には到底受け入れられるものではなかったのです。そんな状況で数多く個体を選抜する中、まったく辛くない個体が奇跡的に見つかり、この個体を使い育成をようやくスタートさせることができたのです。
味も栄養もさらにアップ子どもたちにも大好評
こどもピーマン「ピー太郎」の特長は、何といってもその食べやすさ。肉厚でシャキシャキしていて、甘みもあるので食味のよさに定評があります。小学生を対象に行った実食調査では、81.5%が生で食べてもおいしいと回答するなど、子どもたちの反応も上々です。ビタミンCやカロテンが多く、栄養の高さも人気の秘密。果実は細い果形で輪切りや半分に切るとお弁当の具材としても使いやすく、炒め物やオーブン料理など、アイディア次第で幅広く料理に利用できます。
栽培面では、開花から収穫までの日数が通常のピーマンよりも長いため、肥培管理のよしあしで秀品率に影響します。しかし、強勢で耐暑性があるので、家庭菜園やベランダでも十分に栽培できます。この夏、お子さまのピーマン嫌いを克服してみませんか。

消費者が求める品種とは?安心して作れるキュウリを目指す
近年、家庭菜園のブームが長く続いている背景には、まずは「収穫の喜びを味わいたい」というのが、大きな理由だと考えています。そこで、数あるキュウリの品種のうち、ユーザーから好んで選んでもらえる品種を作るには、「収穫量の多さ」を打ち出していくことが重要だと考えました。
では、そのために付加すべき特徴は何か?そこで導き出した答えが、夏場の問題となる、ウイルス病に強いという特徴でした。家庭菜園を楽しむ方には、農薬を減らして安心できる野菜を育てたい、という消費者心理もあることから、「耐病性がより高く、収穫量が多い」そんな品種を目指して、開発を進めました。
病気に強く、夏場もスクスク美しい形の実が収穫できる
既存の「夏すずみ」は、病気に強い品種ですが、そこにさらに耐病性を高め、長期間収穫ができる「VR夏すずみ」へとバージョンアップに成功。キュウリ栽培での発生頻度が高い、うどんこ病、べと病だけでなく、ウイルス病にも強い、画期的なキュウリです。また、栽培後半まで枝伸びが安定するので、果形の美しいキュウリを、長く収穫できる特性も併せもっています。そして、露地早熟栽培から露地抑制栽培まで、幅広い作型に適するので、特にウイルス病が発生しやすい遅まきでも、安心して栽培できます。
販売開始後、「VR夏すずみ」は「夏すずみ」よりさらに長く収穫を楽しめた、と喜びの声をいただきました。プロの生産者から家庭菜園まで、キュウリ栽培の裾野が広がることは開発者の目標の1つです。食の「安全」「安心」を目指すタキイはこれからも病気に強く多くの方に喜んでいただける品種の開発を目指します。もぎたてをその場で食べられるキュウリは、食育の教材にもぴったりですから、ぜひ親子でキュウリ作りを楽しんでください。

ほくほくした食感の粉質系カボチャを作りたい
カボチャの品種は、これまで「えびす」が主流でした。しっとりとした食感で甘みがあり、おいしいカボチャという支持を得てのことです。その一方で、ほくほくとした食感の粉質系タイプのカボチャが好まれる傾向が、徐々に増えているのを、我々は見逃しませんでした。そこで、しっとり系ばかりではなく、もう1つほくほく系の品種を作り出すことを目指したのです。
改良の過程で、ほくほくとした食感、いわゆる粉質度を上げるために、極めて粉質度の高い素材の入手に成功。目標とする食味、食感を安定して引き出せるようになりました。ただ、収量性との両立が難しく、試行錯誤の日々が続くことに。しかし、最終的には着果性の向上に成功し、ほくほく系の「ほっこり133」の誕生に至ったのです。
果実的野菜としての新しい評価を開拓
「ほっこり133」は、ほくほくとした食感の決め手となるデンプン含有量が高く、舌触りが滑らかでキメの細かい肉質が特徴です。また、貯蔵することでデンプンの糖化が進んで、栗のように甘くなります。果皮は濃緑で、重さ1.8s内外の大玉。交配から45〜50日で収穫できます。ほくほくとした食感や甘さを生かすなら、天ぷらやカボチャサラダがおすすめで、また蒸し野菜にすれば、素材そのものの味わいを楽しめます。
「ほっこり133」へのよい評価を方々からいただいたことで、カボチャに果実的野菜としてのニーズが高まっていることを知り、さらに「ロロン」のような食味にいっそう特化した品種の育成にもつながりました。品種は豊富になり、それぞれの品種を食べ比べる楽しみも生まれています。
カボチャは貯蔵がきく野菜で、追熟させるとカロテン含量や甘さは増すので、収穫後すぐに調理するのではなく、1週間は待ってから調理してください。

遠郊産地のニーズに応え莢の形質のよさを追求
鮮やかな濃緑色の大莢が目を引くエダマメ「江戸緑」は、大粒の子実がたわわに実る品種です。
昨今、消費者の食に対する志向の細分化に合わせて、多様なタイプのエダマメ品種が栽培されています。特に、大消費地である都市近郊では、見た目よりも風味がより重視されることから、味に特化した品種が多く作られています。一方で、流通に時間を要する遠郊産地では、莢のボリューム感や形質のよさで都市近郊の産地に対抗できる品種を求める声が高まっています。そこで、(1)莢つきのよさ、(2)形のよさ、(3)色の濃さに特化した品種の開発を目標として、「江戸緑」の育成をスタートしました。
育種のベースとなる品種は、膨大な数の素材を収集する中で、莢が大きく、色が濃い青大豆由来の品種を使用しました。さらに、近年の栽培時期の前倒しにも対応できるように、早出し栽培にも適する早生品種となるような品種を目指しました。
他品種に差をつける見栄えのよさも魅力
「江戸緑」は、他品種と並べて店頭で販売しても、ひときわ目を引く莢色の濃さと莢の大きさが魅力です。それに加え、子実もよく肥大し、ボリューム感があります。分枝数が多くて莢つきがよく、黄化しにくいため、ある程度の日数が経過しても見栄えはほとんど劣りません。子実は食べ応えがあるので、ぜひ塩ゆでにして他品種にはないほくほくした食感を楽しんでください。
栽培は、特に中間地における2〜4月播種のハウス栽培やトンネル露地栽培で特性を発揮します。短期収穫が可能な早生種で、低段からの着莢に優れています。また、徒長しにくいことから、元肥を通常より2〜3割多くして、初期から旺盛な生育を促し、増収につなげることをおすすめします。また、太めのしっかりした枝が株全体を支え、倒伏しにくいので、家庭菜園でも安心して栽培ができる品種です。今後は「江戸緑」と同様の莢形状をもつ品種のシリーズ化を進め、早生から晩生まで幅広いラインアップを揃えていきたいと考えています。

トウ立ちしにくく低温下で育てやすい
春ダイコンは、低温時期の栽培ということもあり、トウ立ちや肥大性といういろいろな問題を抱えています。そこで当社では、10年ほど前から低温下でもトウ立ちしにくく、肥大性、耐病性に優れた「つや風」を始めとする春ダイコン「風」シリーズを発表し、消費者や生産者の方々に高い評価をいただきました。このような状況の中、市場では、さらに安定した品質と見た目が要求されるとともに、青首の濃い品種ではなく、肉質が白く業務加工にも適した品種が求められていました。そこで、肉が青肉になりにくく、低温での伸長性、肥大性に優れた中間地・暖地の年内まき春ダイコンの作出を目標として「春神楽」の育成をスタートさせました。
育成の過程で一番苦労した点は、春の上昇気温下でしっかりしたかための肉質にすることでした。これをクリアすることは一般的にとても難しく、数年にわたって数多くの組み合わせを試作した結果、ようやく目指すレベルの品種を作出することに成功しました。
形状が安定しているので業務加工向けにも最適
栽培面では、播種適期である中間・暖地の年内〜1月まきの作型において、トウ立ちの危険性が少なく、しかも低温下での伸長性、肥大性に優れているのが大きな特長です。胴太りになりにくく、尻づまりも良好で根形が安定し、根姿が美しいのもこの品種の魅力といえます。また、仕上がりの揃いが良好で、1月まきのトンネル栽培では、根の長さ38p、根の直径が8p程度と形状安定性も優れているので、安心して栽培できます。
形質的な特長は、(1)首色が薄く青肉になりにくい、(2)肌が美しくツヤがある、(3)根形が安定している、などが挙げられます。こうした利点を生かして、業務加工向けにも使いやすく、もちろん家庭菜園や直売所向けなど幅広く使っていただける品種だと考えます。
今後は、「風」シリーズにかわる、新しい「神楽」シリーズをさらに進化させ、より作りやすい品種を目指していきます。
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春神楽 | 健白 | つや風 | 三太郎 | |||
中間・暖地の年内まきが最適の播種期で、トンネルで栽培する。 | 中間地で春まき(3月まき)ができる程度の晩抽性があり、秋まきも可能。 | 中間・暖地では1月下旬〜3月まきのトンネル栽培、冷涼地では4月まきの栽培に適した品種。 | 秋、冬、春の三季どりができて、場所を選ばず作りやすい短形のお手ごろサイズのダイコン。 | |||
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甘くておいしい!春・夏まき兼用品種
「Dr・カロテン5」は、食味と色にとことんこだわって育成した品種です。家庭菜園の方々に向けて、誰もがおいしいと感じ、また中の芯まで鮮やかな濃い紅色のニンジンはなかったので、それを作ることを目標に開発をスタートしました。育成の過程では、色のよい素材を交雑して品種開発を進めたのですが、色をよくすると太りが悪くなるなど、色と肥大性との両立が大きな課題でした。けれども地道に交配を重ね、できたニンジンを一つ一つ切って色や食味を調査した結果、数多くの後代の中から求めていた品質のものに出会えました。
育了後、商品名がつき、カタログや店頭に並んだ時には嬉しさと同時に、皆さんに満足していただけるか不安もありましたが、展示会で「おいしい」といってもらえた時には達成感を得ることができました。家庭菜園で育てていただける品種を目指しましたので、収穫期には朝どりしたものをジュースにしたり、鮮やかな色を生かして食卓の彩りとしていただけたら嬉しいです。
直売所で差別化を狙うなら、輪切りにしたサンプルを並べたり、カットやジュースを試食していただく工夫をすれば、おいしさのアピールができると思います。また、本種は初期生育が旺盛なので、やわらかい間引き菜を出荷してみるのもおすすめです。
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Dr.カロテン5(ペレット種子) | いなり五寸 | |
生育旺盛でよく太る早生品種。晩抽性があり夏まき、春まきともに安心して栽培できる。 | 晩抽性に優れた春まき専用種で、低温下での生育と肥大性に優れる。肌は鮮濃橙色で、根の割れも少なく、形の揃いもよい。 | |
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ネギ本来のおいしさとやわらかさを追求
”ネギ本来のおいしさが味わえる”と支持され、多くの産地で栽培されている「ホワイトスター」。しかしこれが発表される以前は、品種のF1化が急速に進められ、見た目のよさと耐病性を重視するあまり、昔ながらのおいしさが失われつつありました。そこでタキイは、ネギ本来の味と食感を極力残し、肥大性や揃い性の優れるF1品種を目標に育成したのです。当時、タキイではネギの品種開発を本格的に行っておらず、他社の後追い品種ではなく、いかに独自性をもたせるかに注力しました。
他社にはない環境を生かすべく、北海道の農場を最大限活用し、ネギの生育適温下でのスムーズな生育に着目して進めました。約10年にわたる選抜育成を繰り返した結果、ついに「ホワイトスター」を完成させるに至りました。特筆すべきはそのやわらかさ。繊維がきめ細やかで、鍋などでの煮込みではとろけるような食感を楽しめます。
生育旺盛で作りやすく、食感はとてもやわらかな良品ですので、直売所や贈答用にもご利用いただける品種です。このように、生産者・消費者など、関わる皆が喜べる品種の育成を今後も目指します。
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ホワイトスター | ホワイトタイガー | |
生育旺盛で、伸びや太り性に優れ、作りやすい。軟白部の白さとテリ、ツヤが美しく、肉質は緻密で繊維質が細い。苦みや辛みが少ないため、生食で薬味にも適する。 | べと病やさび病に強い、秋冬どり品種。生育旺盛で食味に優れる。草姿が立性で首のしまりが優れ、葉折れが少ないので土寄せなどの管理作業も容易。 | |
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