1本でも豪華多花性で次々と咲く
キキョウは、茎がまっすぐに伸びて上部で分枝し、その頂部に数個の花をつけます。風船のように膨んだ蕾を次々につけて、花が開いていきます。
古くからある一重咲きの園芸種でも、次々に咲く花を楽しむことはできますが、例えば多重咲きの花だと、それが一段と豪華に見えます。切り花にしても、1本でもゴージャスです。
古くは野に咲き、秋の七草の一つとして知られた花ですが、今では山野ではめったに見られなくなり、庭の園芸草花として広く親しまれています。育てやすく数年はそのままで楽しめるキキョウ。育てやすさはそのままに今、珍しいキキョウが出現しています。
キキョウの花の魅力は?と問われると、紫色で一重咲きの楚々とした風情、と答える方が多いのではないでしょうか?
しかし、キキョウも進化しています。二重だけでなく幾重にも花弁を重ね、色も紫や白のほか、青色、藤色、桃色と微妙なニュアンスのカラーも出現しているのです。さらに、絞りの模様も多様。キキョウのイメージは、もはや楚々としているだけではありません。
1990年代にジャーマンアイリスのブームが起こり、その花に魅了されて品種改良を始め、現在はヘメロカリス、ダリア、そしてキキョウの育種を手掛けています。
20年余り前、友人の植物愛好家から白色と紫色のキキョウ数株を譲り受けて3、4年たったころ、ガーデンに植えた実生のキキョウ約1000株の中に、五重咲きの花を見つけたのです。ほかにも白と紫の絞り、ピンクの花も見つかりました。本格的なキキョウの育種を始めたのはそれからです。
私の育種方法は、まず大量のタネをまいて交配させていきます。中には自然交配もあります。それらの中から選抜を繰り返し、種を安定させていきます。
まだ、色、重ねともに安定していない花もあり、みなさんのお手元にお届けできないものも多いのですが、キキョウはまだ知られていない美しさをもっている、こんな花が今生まれている、そして、もう少ししたらお求めいただける可能性があるキキョウの数々を、一足お先にご紹介します。
まだまだ進化の過程にあるキキョウですが、
これまでに出現した花から、新しいキキョウの魅力をお伝えしましょう。
キキョウは、茎がまっすぐに伸びて上部で分枝し、その頂部に数個の花をつけます。風船のように膨んだ蕾を次々につけて、花が開いていきます。
古くからある一重咲きの園芸種でも、次々に咲く花を楽しむことはできますが、例えば多重咲きの花だと、それが一段と豪華に見えます。切り花にしても、1本でもゴージャスです。
茎頂でいくつもの花を咲かせた多重咲き青系のキキョウ。
キキョウといえば、星形に開く一重咲きがまず思い浮かぶことでしょう。しかし、数は少ないのですが、古くから二重咲きのキキョウの園芸品種はありました。今は、そのころの二重咲きキキョウと比べて大型のものが生まれています。写真右上は二重咲きの紫系、左上は二重咲きの絞りです。
そして二重よりももっと重なって豪華に咲く多重咲きが左下のキキョウで、五重に花びらを重ねています。
多重咲きのキキョウは、すべてが同じ数だけ重なるのではなく、一つひとつの花で重なり方に変化が出ます。三重咲きから四重、五重、時には文字通りの八重となる花が見つかることがあります。
さらに袋咲きもキキョウの魅力ある咲き方の一つです。蕾のころんとした姿のままで膨らんで色づくのが袋咲き。紫の花は知られていますが、珍しい桃色の花が見つかりました。
二重絞り花
二重紫色花
多重青色花
袋桃色花
キキョウといえば、白と紫の2色がこれまでの2大メインカラーですが、桃系のキキョウも安定してきました。
桃色と一口にいっても、現れてくる花色は微妙な色幅があります。かわいいベビーピンクから淡いペールピンク、少し青みがかったクールなピンクなどが見られます。
また、紫系の花にも微妙なニュアンスの色幅があり、濃い紫や藤色、青色などがあります。
そして多重咲きの白色も。まだ安定していませんが、白に緑が入った多重咲きもあります。
日本人が好きな模様に「絞り」があります。キキョウの花にもさまざまな絞り模様が見られます。
ごま斑
刷毛斑
散り斑
今回ご紹介できなかったキキョウには、白色に紫色のピコティ(覆輪)タイプ、白とピンクの絞り、そして斑入り葉のタイプがあります。これらはもう少し改良が必要で、近い将来ご覧いただけるかと思います。ほかには袋咲きの絞りや千重咲きのキキョウの育種を目指しています。お楽しみに。
キキョウは育てやすい植物です。
水はけのよい所を選んで植え、日光に当てて、肥料はほどほどに。
伸びてきたら支柱を立てましょう。
日なたか半日陰で、水はけのよい場所を選びます。
10月か3月が植え付け適期です。
市販の培養土か、庭土に3割ほどの腐葉土を加えた土を用います。
日5号鉢以上の鉢に、鉢底ネット、ゴロ土を敷いて水はけをよくし、培養土を入れた上にポット苗の根を少しほぐして置き、ウォータースペースを確保して土を足し入れます。
庭にたくさん植えて群生するような風景をつくるのがおすすめです。株間は10〜20pが育てやすいですが、密集させても4〜5年はよく育ちます。植え穴は深さ2〜3pが適当ですが、少しくらい深植えになってもかまいません。
花の咲く時期などに弱っているようなら、薄い液肥を1〜2回、または緩効性の化成肥料を少量与えます。丈夫に育っている場合は、特に必要ありません。植えっ放しでも大丈夫です。
鉢植えの場合は、表土が乾いてきたら水を与えます。地植えの場合は、真夏にしおれているようなら水やりをしてください。地植えは基本的に植えっ放しで大丈夫です。
鉢植えの場合、2〜3年に1度、鉢底から根が出てくるようになったら、用土を新しくして大きな鉢に植え替えます。
4〜5年に1度行います。キキョウは株が大きくなると突然枯れてしまうことがあります。株分けはその予防にも役立ちます。適期は10月中下旬。掘り上げた太い根にはたくさん芽がついているので、切り分けた際、それぞれに芽がつくようにしてナイフやハサミなどで切ります。
花が終わり近くになったら、株元から10pくらいの高さで切り戻しをすると、再び花が楽しめます。
開花時にウリハムシがつくことがあります。ウリハムシは花を食べてしまうので、見つけたら殺虫剤を散布して駆除します。
群馬県生まれ、園芸育種家。独学で育種の世界に入り40年。ジャーマンアイリス園「アイリスの丘」オーナー。現在八重咲きキキョウ、ダリア、ヘメロカリスの育種に力を注いでいる。