アルストロメリア特集
アルストロメリアの栽培は、特に難しい管理は必要としませんが、毎年丈夫に咲かせるためのポイントをいくつかご紹介します。
耐寒性品種なら、雪が降っても最低気温がマイナス10℃くらいの地域ならば栽培できます。しかし、丈夫に育てるためには早めの植え付けがポイントになります。秋早めに植え付け、霜が降りる前にしっかりと芽や根を出させることで、春の芽出しがよくなります。そうすると、抜群の耐寒性を発揮し、強い霜にあたって茎葉が枯れても元気にランナーを伸ばします。新しい芽がたくさん出るのは3月下旬ごろから。1つの球根から何本も花茎が立ち、たくさんの花をつけます。また、1~2年据え置くことで、ますます見事な花立ちとなり群開するさまは見事です。
ただし、あまり気温が高いうちに植え付けてしまうと、暑さや降雨による過湿で腐敗してしまう場合があります。また、寒さが早く来る地域にお住まいの方は、春先に苗の流通がありますので、苗をお求めいただく方がよいでしょう。
丈夫なアルストロメリアでも、たまに球根がなくなってしまった(腐ってしまった)ということが起きます。その多くは過湿による腐敗が原因です。そうならず毎年お楽しみいただくために、植え付け場所や植え付け方法を工夫してみましょう。
アルストロメリアの植え方
アルストロメリアの球根は、多くのものが写真Aのような形状をしていますが、なかには写真Bのような形状をしているものもあります。貯蔵根の基部にクラウン(芽)があります。ここから芽が伸び生育するので、必ずクラウンを上に向けて植えます。なお、貯蔵根は折れやすいので、扱いに気をつけて植え付けてください。
6寸(18㎝)以上の深鉢に用土(赤玉土7:腐葉土2:ピートモス:1)を入れ、1リットルあたり約5gの緩効性化成肥料を混ぜ、球根を置くようにして植えます。用土を5~8㎝かけ、水をたっぷりと与えます。
クラウンを上にして、5~8cm覆土して植え付ける。貯蔵根が長い場合には、クラウンを上に貯蔵根が下になるように斜めにして鉢内に収めるように植え付ける。
植え付け場所は、日当たりがよく風の通りがあり、水はけのよい所。特に晩春から初夏にかけて水が停滞しない所がよいでしょう。水はけがあまりよくない場合は、盛り土をして改善しておきます。
植え付ける前に1㎡につき約1kgの完熟堆肥と約300gの緩効性化成肥料、腐葉土(もしくはピートモス)を混ぜます。20~30㎝間隔で球根を植え付けて覆土し、水をたっぷりと与えます。
クラウンを上にして、10cmほど覆土して植え付ける。
今回ご紹介する品種の原産地は南米の乾燥地帯ですので、水の与えすぎは厳禁です。地植えにした場合は特に必要ありません。鉢植えでは、表土が乾いたら与えます。比較的肥料分はあった方がよいですが、初期生育中の肥料は根張りを阻害するので控え、ある程度育ってきてから与えます。
終わった花は灰色かび病の原因になるので、こまめに摘み取りましょう。また、地植えで据え置いた場合、秋になるとまた葉が出てきますので、その葉を大事に育て株の充実を助けます。なるべく寒さに当て、花芽の分化を促します。
●鉢の置き場所
風通しと日当たりのよい場所に置きます。休眠する夏季は日陰に取り込み、鉢ごと乾かします。通常、冬でも戸外で管理しますが、半耐寒性の原種は凍らせないように注意が必要です。
●地植えの冬越し
秋の間にしっかり育てると株が充実し、栄養が蓄えられるので寒さに耐えますが、たびたび強い霜が降りて土が盛り上がるような地域では、根の保護のため敷きわらや落ち葉などを敷きます。
●追肥
地植えは新芽が出始める3月ごろから、元肥と同量くらいの緩効性肥料を月に1回施します。花が咲き始めるころには施肥は止めます。
●支柱立て
日当たりがあまりよくない場所へ植え付けた時や、地上部がひょろひょろと伸びて高く育ってしまいそうな場合は、早めに支柱を立てた方がよいでしょう。
●茎葉の整理
冬に地上部が枯れない暖地では、生育期になると下の土が見えないくらい茎葉が繁茂することがあります。その場合は、細い茎や地際から密生している茎(花がつかない)を根元から抜き取り、風通しと日当たりをよくしましょう。
冬場のリグツ系(スポットレス系を含む)花壇の2年目の様子。軒下など、強い霜が降りないような場所では、このように地上部が枯れることなく生育する。この場合には、株元に日が入る程度に抜き取りを行い、徒長したり蒸れたりするのを防ぐ。
秋早めに植え、冬が来る前に十分生育した株や、据え置いた株の場合、写真のように冬場でも太いランナーを延ばし生育している。このように生育していれば、春になると丈夫な花茎を伸ばしてたくさんの花をつける。
球根は折れやすいので、作業はていねいに行います。適期は涼しくなってくる秋の彼岸ごろ。地植えの場合は2~3年に1回、鉢植えでは毎年株分けして植え替えます。
根が傷つかないように周りの土ごと掘り上げ、生長点を確認しながら1株ずつ分けます。根が絡み合っていることもあるのでていねいに扱いましょう。
開花中に雨が多いと灰色かび病が発生しますので、殺菌剤を散布します。また、休眠中に白絹病が出ることがあるので9月ごろ株間に殺菌剤を施用します。
一時的に強い寒さに当たったり、水やりが遅れたりすると葉が黄化することがあります。しかし、根に下の写真のようにしっかり白い毛根が生えている場合は、多少地上部が黄化していてもまったく問題ありません。
健全なスポットレスの苗
健全なリグツ系の苗
葉が黄化した苗 | |
白い毛根がしっかり生えていれば問題ない。 |
例えば交配種のリグツ系に比べ、原種系のエクセレンシーやモデスタは、クラウンから貯蔵根までが細くつながり、ビオラセアは丸く小さい球根が特徴的です。また、ゾエルネリは大きめの球根で、鉢に植える時など大きすぎてそのまま植えられない場合は、根を渦巻きのように巻いて植え付けます。
エクセレンシー
ゾエルネリ
ゾエルネリペレグリナ アルバ
ビオラセア シルキーホワイト
モデスタ
リグツ スポットレス系(交配種)
一言でアルストロメリアとはいっても、さまざまな原種で苗(葉)の見た目も違います。
- ペレグリナ
丸い照り葉。アルストロメリアの仲間レオントキール・オバレイも似る。
ビオラセア
ハーブのような細い葉が特徴。
ガラバンタエ
やや銀色を帯びた葉が特徴。
エクセレンシー
リグツ ハイブリッドと似るが、若干淡色で、葉の巻きが弱いのが特徴。
ディルタ
細く野趣のある葉が特徴。
リグツ ハイブリッド(交配種)
三宅泰行
34歳。大学卒業後は出版印刷会社でDTP( デスクトップパブリッシング)オペレーターとして勤務。25歳の時に家業を継ぐため退社。その後、オランダ研修を経て三宅花卉園へ入社。現在に至る。