ガーデンに花が少なくなり、庭仕事も一段落するこの時期にやっておきたいのが、来年の植栽計画を立て、欲しい花や花木の苗を手配することです。宿根草の植え付けは、冬の早いうちにした方がしっかり根付き、元気な株に育って花がよく咲くようになります。そして、同様に冬の休眠期が植え付け適期なのが花木です。どんな花を植えようかと迷っている方に提案したいのが、花壇の中にブッシュを加えること。ブッシュとは根元から多くの枝が出ている低木のことを指します。生長すると茂みになるので、花壇の中に加えるとボリューム感をもたらすことができます。「いろいろな花を植えたけれど、全体にちまちました印象でまとまりにかける」というお悩みもブッシュのボリューム感を利用すればメリハリがついて解決します。ブッシュには美しい花、愛らしい花が咲く種類が豊富に揃っているので、花壇の花色あわせの幅も広がります。開花時期以外も、ブッシュの葉色がほかの花々の背景となって、花色をより美しく引き立ててくれます。
庭づくりで最近注目されているキーワードの一つが「ローメンテナス」。できるだけ手間を掛けずに美しさをキープできること。これは庭を管理する人にとってとても重要なポイントです。ローメンテナンスを目指すうえでも花壇にブッシュを取り入れるのはとても有効です。低木なので、一年草はもちろん宿根草よりも寿命が長く、健やかに育っていれば数年は植え替えの必要もありません。また、低木なので樹高もそれほど高くならず、剪定の手間も掛かりません。欲しいボリュームになるまでの数年は、伸びすぎた枝を切り落とす、密集している枝を間引くという最小の剪定でかまいません。初めてブッシュを植える方でも容易に管理できます。手間が掛からずボリューム感をもたらしてくれるのですから、これはぜひ花壇に取り入れたいものです。
ブッシュには選ぶのに迷うくらい魅力的な種類が豊富にあります。品種選びのポイントは、まず樹姿です。横に広がるように生長するタイプか、低木でもそこそこの高さに育つタイプか、また枝が枝垂れるタイプか。植え込みのスペースに適した樹姿の品種を選ぶことが大切です。次に注目したいのが開花時期です。スイセンやチューリップが咲き出す前に開花時期を迎えるタイプなら、早春の庭の主役として活躍してくれるし、開花時期が長いタイプなら、継続的に花壇に彩りを与えてくれます。花壇に植え込むほかの花の旬を考慮し、花の少ない時期をブッシュの花で補うようにするのもおすすめです。さらに、ブッシュの葉色にも注目してください。美しい黄金葉の品種などは、花壇を常に明るく印象づけてくれるし、シックな葉色なら花壇の引き締め役として効果を発揮してくれます。落葉タイプか、常緑タイプかも確認してから選ぶとよいでしょう。探し始めると、きっと魅力的な品種の多さに驚くことと思います。花壇の中に大型の宿根草を加えるような感覚で、花壇全体のイメージにあう樹姿、花色、葉色を選んでみてください。
開花時期には株全体が花で埋まり、圧倒的なボリューム感をもたらすブッシュをピックアップしました。花壇全体の花色あわせを考えて品種を選んでみてください。
長く枝垂れた枝を覆い隠すようにごく小さな白花が埋め尽くす姿は、まるで枝に雪が積もったよう。その清楚な美しさが人気のユキヤナギですが、この品種は蕾の時は濃ピンクで、開花するにつれ淡ピンクになり、濃淡ピンクが咲き混じる様の愛らしさが魅力。まだ春の球根類が咲き出す前に花壇を彩り、スイセンやチューリップの盛りには、その背景として花色をより美しく引き立ててくれます。従来種に比べるとそれほど枝垂れず、やや立ち性になります。 | タニウツギの仲間で、ベル状の花が集まって咲く姿が美しいブッシュです。ピンク花が定番ですが、この品種は鮮やかな赤花が魅力。しかも花期が長く、春から秋まで花壇に彩りを添えてくれます。樹高は70cm前後。コンパクトな樹姿なので花壇に加えやすく、鉢植えで楽しむこともできます。 |
花咲くブッシュの代表ともいえるツツジですが、黒船ツツジは淡桃色の大輪花が株を覆うよいにたくさん咲く姿が非常に美しく、「ツツジの女王」とも称えられる品種です。江戸時代の初期に朝鮮半島から渡来し、栽培が始まったという歴史ある品種ですが、今なおその魅力は色褪せることがありません。ツツジの中には鮮やかな花色も多いのですが、この品種の優しい花色はほかの花ともあわせやすく、花壇の中に加えるのにおすすめです。ツツジの中では比較的早くから咲き出します。 | ツツジの仲間のレンゲツツジは鮮やかなオレンジ色の花を咲かせますが、これはその黄花品種で、澄んだ黄色が魅力です。花径5cmと大輪タイプで、株全体が黄色に染め上げられる姿は非常に見応えがあります。花期には庭がパーッと明るくなり、存在感を発揮します。チューリップが終わり、少し寂しくなった花壇に彩りを加えるのに最適。 | 花咲くブッシュの中でもボリューム感といえばアジサイです。魅力的な品種が豊富に揃うアジサイの中から注目品種を1つピックアップしてみました。この品種はオランダの育成品種で、花弁がフリル状になる珍しいタイプです。花弁の縁取りがあでやかな濃ピンクでとても華やかな印象。洋風の花壇の主役として抜群の存在感を発揮してくれます。ボリューム感があるので、花壇の奥に配置し、その前に宿根草などを植えるのがおすすめです。 ※花色は土壌のpHなどにより変化する性質があります。赤花系の場合は土をアルカリ性に保つようにしてください。 |
イングリッシュガーデンなどナチュラルなイメージの花壇にあわせやすいブッシュをセレクトしてみました。花色が優しく愛らしいブッシュは、飽きることなく長く楽しめます。
葉が展開する前の枝に、ネコのしっぽのような産毛に覆われた花穂が並びつくネコヤナギは、本格的な春の到来を知らせてくれる花木です。シルバーが一般的ですが、これはピンクの花穂がつく珍しい品種。思わずアップで眺めたくなる愛らしさです。春の球根が咲き出す前の、まだ彩りの少ない庭にぜひ加えたいブッシュ。春の光を受けて産毛がきらきらと輝く様子はとても魅力的です。 | ツツジの仲間で、やや樹高が高くなりますが、吊り下がるように咲くベル状の花の愛らしさがナチュラルガーデンによく似合うのでおすすめ品種に加えてみました。性質もとても丈夫で、病害虫も発生しにくく、初心者でも管理しやすいのも魅力。白花が一般的ですが、この品種は弁先が濃紅色に色づく可憐な花が楽しめます。ドヴタンツツジは刈り込みにも強いため、垣根仕立てでよく見かけますが、花壇の中に加えるならブッシュ仕立てがおすすめ。枝分かれしやすく繊細な樹姿が楽しめます。 |
大きな円錐花序が存在感を与えるノリウツギは、花壇にボリューム感をもたらしてくれる花木です。この品種の魅力はその花色にあります。初めはライムグリーンで、徐々に淡桃色へと変化する様がとても優しくナチュラルな印象。花色が褪せたあとも、その造形的な花序は花壇の中におもしろさをもたらしてくれるので、秋深くまで枯れゆく姿を堪能することができます。ノリウツギの中でもコンパクトな樹形なので、小さなスペースでも栽培可能です。 ※花色は土壌のpHなどにより変化する性質があります。赤花系の場合は土をアルカリ性に保つようにしてください。 |
シモツケは学名「Spiraea japonica」からもわかるよう日本にも自生し、古くから親しまれている低木です。初夏から夏に枝先に小さな花を集めて咲かせる姿に風情があり、また、丈夫で栽培しやすいことから現在でも人気があります。シモツケには濃ピンク花と白花がありますが、この品種は一株から濃いピンクと白の花を咲き分け、愛らしい姿が楽しめるのが魅力。花が繊細で涼しげな印象なので、夏の花壇にぜひ加えたいブッシュです。土壌も選ばず、初心者でも容易に栽培できます。 | 原産地は北アメリカで、カリフォルニア州に多く分布するブッシュです。花のつき方がライラックに似ていることから「カリフォルニアライラック」とも呼ばれます。イングリッシュガーデンの本場、イギリスでもよく利用されているポピュラーなブッシュです。この品種は鮮やかなブルーが美しく、自然な樹形も魅力的でナチュラルガーデンにぜひ加えたいブッシュです。約10cmと大きな花序は遠目にもよく目立ち、存在感抜群です。夏に涼しいブルーの花色で、花壇に咲かせた黄色やピンク、白などの花の引き立て役としても効果を発揮します。 |
中木や高木を自宅の庭でも使いやすく樹高を低く改良した矮性品種が最近多く流通するようになっています。コンパクトな樹姿で花壇の中にも取り入れやすく、また、樹高のある姿とは異なる新鮮な印象が楽しめるのも大きな魅力です。管理しやすく改良されているので、初心者でも手軽に栽培できます。
フランスでは「リラ」とも呼ばれ。初夏に芳しい香りが楽しめる花木として人気のライラック。本来は中木、または高木に分類されるライラックに、矮性品種が誕生し、注目を集めています。この品種もその一つで、コンパクトで繊細な樹姿は、従来のライラックとは異なる新鮮な印象です。二季咲き性で、涼しげなごく淡い紫色の花が初夏と秋に楽しめます。開花時期には芳しい香りが庭を包み、香りに誘われて庭に出る回数も増えそう。 | 長めの円錐花序がいろいろな方向に咲く姿がリズミカルなブッドレアは落葉低木で、樹高はそれほど高くなりませんが、矮性品種は樹高が40〜60cmとさらに低めです。この品種なら宿根草のような感覚で花壇に加えることもできます。丸い形の花が多い中にブッドレアのすっと尖った円錐形の花序が加わると、アクセント効果大!高さのある花木の足元を埋める役目としてもおすすめです。夏の暑い時期に庭に涼しげな彩りを与えてくれるのも魅力。
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アジサイの仲間の中でも欧米で人気を誇るのがノリウツギです。ノリウツギはとても丈夫な性質で、北海道の寒さに耐えうる耐寒性もあるため、セイヨウアジサイが寒さで枯れてしまうような北アメリカでも栽培できます。通常のノリウツギは3mほどまで育ちますが、最近では花壇の中に加えやすい矮性品種が登場し、注目を集めています。そんな矮性品種の改良の親となったのは、じつは日本に自生していたノリウツギ。突然変異から樹高が低くなったものが見つかり、コンパクトな姿から「ダルマ」と名付けられました。日本で自生しているということは日本の環境に適しているということ。育てやすさで選ぶなら、まずはこの品種を栽培してみるのがおすすめです。樹高は40〜80cmで、枝はあまり長く伸びず、初夏に枝先にさわやかな白花を咲かせます。環境や地域により、花後に装飾花が桃色に色づくこともあります。 。 | 樹高が1m以下でコンパクトな樹姿ながら、装飾花が密集する大きな花序はボリューム感があり、見応えがあります。花序で樹姿全体が覆われる様は圧巻の美しさ。花はややアイボリーがかった白でどんな花色ともよくなじみ、夏の花壇の主役に抜擢するのもおすすめ。花序は秋になるにつれ淡ピンクに染まり、その変化もまた魅力の一つです。管理しやすく小さな庭でも楽しめるので、初心者にもおすすめです。 |
ブッシュの中には花だけではなく、葉色が美しい品種も豊富にあります。カラーリーフの中でも特に人気が高いのが庭を明るく演出してくれる黄金葉。季節の花の引き立て役に、また花壇の背景としてカラーリーフのブッシュを加えると、まとまりのよい美しい景色を生み出すことができます。
一般的なセイヨウニワトコに比べると葉が細く、切れ込みが深く繊細な印象を与えます。新芽の赤から黄色へと変化する春の姿が特に美しく、輝くような葉色で花壇全体を軽快な雰囲気にしてくれます。その後も明るい緑色で、どんな花色も引き立てる名脇役として活躍。花壇がどことなく暗い印象の時にはぜひ加えたいブッシュです。秋にはかわいい赤い実がつきます。 | 長く枝垂れる枝に白い小花が丸く集まって咲くコデマリは、古くから親しまれているブッシュです。この品種はその黄金葉で、春先にはオレンジ色を帯びた鮮やかな黄色の小葉がたくさん芽吹き、葉が展開してくると遠目からでもパッと目立つほど華やかな姿になります。一般的なコデマリより株姿がコンパクトで乱れにくいため、花壇の中に植えてもほかの草花の邪魔になることはありません。春から秋深くまで、彩り華やかな庭が楽しめます。 |
低木より少し樹高は高くなりますが、1年中明るい葉色を楽しめる常緑樹としておすすめです。春から初夏は輝くような明るい黄色で、その後、徐々に明るい緑色に変わります。黄色と緑色が混じりあう姿も美しく、花壇の背景に加えると彩り豊かな景色が楽しめます。土壌を選ばす、耐陰性があるので日陰の庭にも利用できます。1mくらいまでは生長が遅いので、剪定は欲しい高さまで育ってからでかまいません。 | 常緑低木のカラーリーフが欲しい時におすすめなのがこの品種。ナリヒラヒイラギナンテンの細葉選抜種で、やや青みがかった光沢のある葉がクールでモダンな印象です。和風、洋風に関わらず利用できます。秋から冬にかけて、中央から立ち上がった茎に黄色の花を咲かせ、花後は濃青紫色の実がなります。落葉後に寂しくなった庭を彩ってくれる貴重な存在。 |