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テーマある植物選びですてきな庭づくり

お気に入りの花ばかり集めてしまってどうもすてきな庭にならない、という方に向けて植物選びのポイントをアドバイス。まだまだ暑さは続きますが、庭づくりでは季節の先取りが肝心。今回は来年の早春の庭を魅力的に彩る植物をご紹介します。

早春の庭につかの間降り立つ妖精たち我が家の「スプリングエフェメラル」を選ぼう!

春の到来を告げに来て、あっという間に姿を消すその儚さも魅力の花たち

「スプリングエフェメラル」(Spring ephemeral)という言葉を、耳にしたことはありますか?「春の妖精」と訳されることが多いこの言葉、なんだか愛らしく、どんな花のことか知りたくなってきませんか?植物分類上の明確な定義はありませんが、早春に落葉樹下などの林床に姿を現し、一斉に花を咲かせると、さっさと光合成を済ませて養分を蓄え、本格的な夏が来る前に地上から花も葉もなくなり姿を消してしまうようなライフサイクルをもつ多年生植物を、昔からスプリングエフェメラルと呼んでいます。そのサイクルの典型例がカタクリです。早春にいち早く芽生えて急激に生長し、3〜4月に花を咲かせると、ほかの植物がぐっと生長する初夏にはすでに休眠状態に入ってしまいます。地上に姿を現す期間はわずか3カ月ほど。つかの間の春を謳歌して、あっという間に姿を消してしまうその様子は、まさに妖精のようで、その儚さも多くの人を魅了する理由になっています。 カタクリのほか、一般的に下記のような植物がスプリングエフェメラルに分類されます。

キンポウゲ科 フクジュソウ セツブンソウ イチリンソウ ニリンソウ サンリンソウ
ユキワリイチゲ アズマイチゲ サバノオなど
ユリ科 カタクリ バイモ属の仲間 アマナ属の仲間 ショウジョウバカマ など
ケシ科 エンゴサク ムラサキケマン など

春を告げに来る花が増えれば、早春から庭に出て楽しむ時間が長くなる

厳密な意味でのスプリングエフェメラルは山野草のような植物ですが、一般的な園芸品種にも早春に一斉に花を咲かせ、春の到来をいち早く伝えてくれる妖精のような花がたくさんあります。例えば春咲きの球根の中で、最も早く開花するクロッカス。1900年代中ごろのロンドンでは、キューガーデンにクロッカスが咲き出すと、交通局が地下鉄の駅に「クロッカスが咲いたよ」という美しいポスターを貼り、それを合図に春のガーデン巡りが始まったそうです。また、雪解けが始まった地面から立ち上がり、真っ白な雫(しずく)のような花を咲かせるスノードロップも「春の妖精」にぴったり。「春を告げに庭に舞い降りた妖精たち」と広い意味で解釈し、我が家だけのスプリングエフェメラルのリストを作ったら、春を迎えるうきうきした気分もさらに盛り上がること間違いなし!それに、早春から葉が展開したり花が咲き出せば、庭を見て楽しむ時間もそれだけ長くなります。スプリングエフェメラル・我が家バージョンにおすすめの植物を紹介しますので、ぜひ秋のうちに球根や苗を植え付けて来春を楽しみに待ちませんか?

カタクリ●	ユリ科 ●	花期:3〜4月

日本や朝鮮半島の林野に自生する球根植物で、濃ピンク〜淡ピンクの花びらが外側に反り返る姿に風情があり、ロックガーデンなどによく似あいます。園芸品種には黄花が多く、「パゴダ」は特に育てやすくおすすめ。また淡いクリーム色の「ホワイトビューティー」もとても美しく、やさしい印象が春の空気感にぴったりあいます。8〜10月が球根の植え付け適期なので、早めに入手しておくとよいでしょう。植え付けの深さは約10cm。少し深めに植え付けた方がよく育ちます。いずれも植えっ放しで数年楽しめます。

  • カタクリの基本種。花びらが細めで楚々とした雰囲気が魅力。草丈は10〜15cm。
  • 「パゴダ」強健な性質で毎年よく咲くので、初心者にもおすすめの品種。草丈は10〜25cm。
  • 「ホワイトビューティー」優しい花色が魅力で、よく枝分かれした茎に1〜4輪の花をつけます。草丈は10〜15cm。

フクジュソウ●	キンポウゲ科 ●	花期:1〜3月

まだ枯れ葉が積もる早春の地面をフクジュソウの黄色の花がパッと明るくしてくれます。別名「元日草」とも呼ばれるくらい早くから花が楽しめ、「福寿草」というおめでたい名前であることから縁起のよい花として古くから親しまれています。北海道、本州の山野に自生し、園芸品種も多くあります。東北地方原産の「みちのく福寿草」は、輝くような黄花が美しく、株が充実すると枝咲きになります。「秩父紅」は鮮やかな朱橙色が個性的で、一重から三重咲きになります。10月中旬〜12月中旬に植え付けておきます。花後はそのまま放っておいても翌年もまた咲いてくれます。

  • 「みちのく福寿草」フクジュソウらしい黄花を咲かせたいならまずはこの品種を。草丈は10〜20cm。
  • 「秩父紅」紅色系の名品として知られる優れた品種。草丈は10〜20cm。

セツブンソウ●	キンポウゲ科 ● 花期:2月上旬

日本では関東地方以西の温暖地で自生し、2月上旬のちょうど節分のころに花が咲き始めることからこの名前がつき、古くから親しまれてきました。白い5弁の花びらに黄色の蜜腺、青い葯と、よく見るととてもおしゃれな配色をしています。苗で入手し、9〜11月までに植え付けるのがおすすめです。鮮やかな黄色の花を咲かせる「黄花セツブンソウ」は、アジア〜ヨーロッパ原産で、国内に自生するセツブンソウよりやや大型です。こちらも節分のころに開花が始まります。黄花セツブンソウは球根で入手し、10〜11月に植え付けます。

  • セツブンソウ花径2cmほどの小さな花がとても愛らしく、山野草としても人気があります。草丈は5〜15cm。
  • 黄花セツブンソウふっくらした花が愛らしく、光沢のある黄色がよく映えます。草丈は5〜10cm。

クロッカス●	アヤメ科 ● 花期:2〜3月

「ルビージャイアント」鮮やかな濃紫がよく目立つ原種系品種。まだ寒さの厳しい2月から花が咲き出すクロッカスは、秋植え球根の中でも最も開花の早い花です。蕾の時からふっくらした形が愛らしく、開花するとふんわりとしたカップ状の花がよく目立ちます。花壇に植え込んでもよいのですが、もし芝生の庭があるようなら、芝を少し切って球根を植え込んでおくと、芝生を背景に鮮やかな花色がさらに引き立ちます。球根の植え付け適期は10〜11月。開花が早く、急激に生長するので植え付け適期を逃さないように気をつけましょう。植え付けの深さは球根2個分が目安です。5球、10球と同じ品種をひとかたまりにして密植ぎみに植えると見栄えがさらによくなります。草丈は5〜10cm。草丈が低いので、鉢植えにしてテーブルの上で愛でるのもおすすめです。

  • 「ブルーパール」花弁の外側は淡青紫色で、内側は白に近い色。クールなグラデーションがとてもきれい。
  • 「シーベリー ボウルズホワイト」花弁の先がすっと尖りシャープな印象で、特に早咲き。
  • 「ゴールデンバンチ」黄花のクロッカスの代表的な品種で、輝くような黄金色には春の日差しのような暖かさがあります。
  • 「ライラックビューティ」淡紫から白へのグラデーションが美しく、花弁がスマート。

スノードロップ●	ヒガンバナ科 ● 花期:3〜4月

雪を連想させる純白の花は清楚で美しく、小さいながらも存在感があります。「雪の雫」という名前どおり、白い雫形の花びらを下向きに咲かせる趣ある姿が人気の秋植え球根です。耐寒性がとても強く、温暖地では2月から開花することもあります。寒冷地でも容易に栽培でき、雪解けの地面から顔を出して咲く可憐な姿が楽しめます。球根の植え付け適期は9〜10月。植え付けの深さは球根2個分が目安です。植えっ放しでも毎年よく咲きます。毎年少しずつ球根を増やして群植させると見事な景色に! 草丈は10〜15p。

チオノドクサ●	ユリ科 ● 花期:3月中旬〜4月上旬

青紫から白への変化がさわやかなチオノドクサを代表する青花。白やピンクとミックスして群植させると春らしい華やかさが楽しめます。ギリシア語で「チオン(雪)」と「ドクサ(輝き)」の2語からなる花名で、英名の「グローリー オブ ザ スノー」も同様の意味です。雪解けの時期から星形の愛らしい花を咲かせる球根植物で、白、青、ピンクなどの花色があります。日本でも温暖地では2月中旬くらいから咲き出すこともあります。球根の植え付け適期は10〜11月。植え付けの深さは球根2個分が目安です。1球だけだと寂しい印象になるので、10球程度をひとかたまりで植えるのがおすすめ。草丈は10〜20cm。

ユキワリソウ●	キンポウゲ科 ● 花期:3〜4月

可憐に咲く姿は日本人好みで古くから愛されてきた山野草。日本の雪国で春を告げる花といえばこの花。葉は一年中あるので地面から消えてしまうわけではありませんが、生長は春で完結するので、ぜひスプリングエフェメラルに加えたい花です。花弁に見えるのはじつはがく片。山野草には珍しく花色が豊富で、白、ピンク、赤紫、紫などがあります。また一重のほかに八重咲きもあり、コレクターがいるほど多彩なバリエーションがあります。苗または開花株での植え付けがおすすめで、9月中旬〜12月中旬が植え付け適期です。葉が残るので、夏に木陰になるような風通しのよい場所を選んで植え付けてください。