猛暑が続くここ数年「夏の庭づくりは諦めた」という声も多く聞かれますが、夏にしか見られない美しい花を諦めてしまうのはもったいないこと。暑い中でも元気に開花が続く草花を上手に選んで、夏らしさ満開の庭づくりを楽しんでみてはいかがでしょう。
夏の花といえば、黄色、ピンク、赤と、いずれも春から初夏の花に比べてビビッドで派手な色のものが多いのが特徴です。例えばカンナやジニア、マリーゴールドなど、夏を代表する花の色には日差しに負けない強さがあります。その強い色を考えなしに組み合わせてしまうと、ごてごてした印象になりがちです。
そこで提案したいのが、ダークなカラーリーフと組み合わせた新感覚のトロピカルガーデン。これなら派手な色を生かしつつ、モダンな印象の庭をつくることができます。
ジニアやマリーゴールドなど、夏の一年草は発芽適温が20℃くらいと高めなので、中間地なら5月になれば手軽に育苗できます。また、カンナもタネから栽培できるタイプなら、発芽適温は20℃以上なので、5月中旬以降のタネまきがおすすめで、温度が十分であれば、花壇に直接タネまきすることも可能です。夏の草花は生長が早いので、5月にタネまきしても7月中旬には開花が始まります。ちょうど初夏の草花が開花を終えるころにあたるので、花壇のリニューアルには最適なタイミング! タネからなら好きな花色を確実に入手できるし、何より価格も手軽なので必要な量だけ気兼ねなく入手できるのが利点です。
タネから手軽に栽培できる夏の花壇におすすめの花をご紹介しますので、ぜひチャレンジしてみてください。しゃれたカラーリーフと一緒に植えれば、見違えるような夏花壇に仕上がります。
松任谷由実さんが1981年にリリースした「カンナ8号線」は現在でもライブの定番曲としてよく知られています。「カンナの花が燃えてゆれていた中央分離帯」これはその一節で、東京の環状8号線の実際の風景を歌ったものと言われています。以前はカンナといえば夏の花の代表として公園や学校、またこの歌のように道路沿いなどでよく見かけられました。ところが草丈が1mを優に越し、高いものでは2mにもなってしまうため、自宅の庭では取り入れにくく、それが人気の衰退の一因にもなっていたようです。
最近では草丈を低く抑えた矮性種が登場し、再びカンナが注目されるようになってきました。「トロピカル」シリーズも矮性のタキイオリジナル品種で、約80cmと花壇の後方に取り入れるのにぴったりの草丈。一般的なカンナは球根から栽培しますが「トロピカル」シリーズはタネから手軽に栽培でき、しかもタネまきから最短75日で開花するという特性を持っています。暑い夏の間、花が咲くだけでなく、10月まで花が続く花期の長さも魅力です。花色は全6色。華やかな色を組み合わせると夏らしいトロピカルガーデンが手軽に楽しめます。特におすすめなのがシックな銅葉の「ブロンズスカーレット」。鮮烈な赤い花とダークな葉色のコントラストが花壇をしゃれた雰囲気にしてくれます。
- カンナは典型的な高温性品目で、発芽には約20℃以上の高温が必要です。一般的な中間地であれば、5月中旬以降のタネまきがおすすめで、温度が十分なら花壇に直接タネまきすることも可能です。気温が低い地域や、その時期に花壇がいっぱいでスペースがない場合は、ポット育苗した後に定植するといいでしょう。
- タネはダイズほどの大きさで、1cmほど覆土し、水をたっぷり与えます。発芽までの日数は7〜10日ほど。発芽の際に根が地上部に出ていたら、さらに覆土し、根が乾かないように管理します。
- ポット育苗した場合は、本葉が3〜4枚になったタイミングで花壇に定植します。カンナは強い光を好むので、日当たりのよい場所を選ぶようにしてください。植え付けの間隔は25〜30cmほど。地際部分が地上に出ないよう、やや深めに植え付けます。
- 花を長く咲かせるためには土壌の水分と肥料分を切らさないようにすることが大切。夏の間は1日1回水やりし、生育に応じて追肥をするように気をつけましょう。
「百日草」の和名で古くから親しまれているジニアは、夏の花壇材料の定番。花びらが厚手のため、花色が透けずにくっきり鮮やかに出るので、数株植えてもよく目立ちインパクトが大きいのも魅力です。あでやかな暖色系の花色が豊富に揃い、葉色とのコーディネート次第でかわいらしくも、またモダンなトロピカル風にもなります。夏の間咲き続けてくれる花の中では花色のバリエーションが一番豊富なので、ぜひお気に入りの組み合わせを花壇で楽しんでみてください。また、花の咲き方もシンプルな一重とボリューム感のある八重咲きがあります。
ジニアの品種選びで気をつけたいのが草丈です。低いものは30〜40cmですが、高性の品種では100cmほどになるものもあります。花壇のどこに植えたいかを考えて、まず草丈を基準に品種を選ぶとよいでしょう。
花色が豊富なエレガンス種と一重ながら花数をたくさんつけるリネアリス種の交雑から作出されたシリーズで、リネアリスの病気に強い特性も持ち合わせた品種です。花形はすっきりした一重と華やかな八重咲きがあり、どちらもビビッドな花色が豊富に揃っています。30〜40cmと、背の高い植物の足元に植えるのにぴったりの草丈で、夏の花壇のグランドカバーにも最適です。なお、株張りがよくボリュームのある「ザハラXL」は草丈が40〜60cmと少し高くなります。
リネアリス種の矮性品種で、草丈が25〜30cmと「ザハラ」よりさらに低く、小さな一重の花があふれんばかりに咲きます。花色は3色ですが、どれも夏の日差しによく映えます。葉が細めで花がよく目立つので、地面を花色できれいに覆うことができます。
草丈が70〜100cmになるエレガンス種を選ぶのがおすすめです。エレガンス種には個性的な花色が豊富にあり、また花形も大輪八重咲き、小輪ポンポン咲きなどがあります。思い描いたイメージに合う花色を自由に組み合わせてみてください。また草丈が低い「ザハラ」や「プチランド」を手前に植えれば、さらに華やかな花壇になります。
- タネまきは気温が15℃以上に上がる4月中旬以降が適期なので、5月はタネのまき時。128〜200穴のトレイを使用し、タネが隠れるくらいに覆土し、たっぷりと水やりします。5〜7日くらいで発芽するので、発芽後は日光に十分当て、風通しのよい場所で管理します。
- タネまき後、25〜30日で本葉が3〜4枚になったら花壇に定植します。植え付けの間隔は25〜30cmで。過湿を嫌うので、日当たりがよく、水はけのよい場所を選んで植え付けてください。定植が遅れると株張りも悪くなるので、時期を逃さないように気をつけましょう。
- 乾燥した日が続くと株は衰弱するので、真夏の日中に葉がしおれるようなら、たっぷりと水やりします。また、花色や葉色が薄くなってきたら追肥を行います。
夏の花壇でひときわ輝きを放つのがマリーゴールドです。暑さの中でも花が咲き続けてくれるため、公園や街路などの公共花壇でよく使われていますが、地面を覆うように植えられているだけではおしゃれ感はいまひとつ。ところが数株ずつほかの花と組み合わせ、花壇で混じって咲くようにデザインすると、パッと目立つ花色がアクセントになり、ぐっとしゃれた印象になります。花は小さめで草丈が低く花壇の縁取りに使うのに最適なフレンチマリーゴールドと、ボリューム感のある大きな花が魅力のアフリカンマリーゴールド、それぞれ目的に合わせて上手に使いわけましょう。
マリーゴールドも発芽温度が20℃くらいなので、5月はちょうどタネまき時。お気に入りの品種をタネから栽培して、夏の花壇に輝きの色を加えてみてください。
フレンチマリーゴールドの代表品種。早咲きタイプの大輪で、草丈は約20cm。強い日差しの中でもよく花が咲いてくれます。
従来のフレンチマリーゴールドより花が小さくかわいらしい印象で、ミックス花壇でも使いやすい品種です。草姿が乱れず、コンパクトに生育します。草丈は15〜20cm。
クリームホワイトの涼やかな花色が魅力のアフリカンマリーゴールド。花径は6〜7cmでボリューム感のある八重咲き。草丈は少し高めで約40cm。
アフリカンマリーゴールドの黄色からオレンジ色のミックス。花径は約7cmの大輪で、草丈は50〜60cm。
- 発芽には10℃以上が必要ですが、温度が高い方が発芽がよく揃うので、5月上旬にタネまきするのがおすすめです。128〜200穴のトレイを使用し、タネが隠れる程度に薄く覆土し、たっぷりと水やりします。5〜7日くらいで発芽するので、発芽後は日光に十分当て、風通しのよい場所で管理します。
- タネまき後、25〜30日で本葉が2〜3枚になったら花壇に定植します。日当たりがよく、湿度が多すぎない場所を選び、30〜40cmの間隔で植え付けます。
- 過湿や肥料が多すぎると葉ばかりが茂り花が少なくなります。夏の乾燥期には毎日水やりしますが、過湿にならないように気をつけましょう。