「これから春の盛りというのに、もう初夏から秋の庭づくり?」はい、季節を先読みして次の準備を怠らないのもガーデナーの重要な仕事です。初夏に咲く花には花期が長いものも多く、なかには晩秋まで花が楽しめる品種もあります。夏の暑さを乗り切るためには、気温が上がりきらない5月中に植え付けし、しっかり根付かせて丈夫な株に育てることが大切。そうなると、花選びも今やっておかなければ、欲しい品種を入手し損ねてしまいます。
そこで今回は夏の暑さにも負けず、秋まで花が楽しめるタキイオリジナルの花を3種ピックアップ。まだ目新しさがある品種なので、ほかの植物と上手にコーディネートするなど、使い方を工夫すると新鮮ですてきな印象の庭づくりができます。
また、初夏から秋まで花が楽しめるということは、夏の花壇の植え替えが必要ないという利点もあります。暑さの中での植え替えは作業も大変だし、植物にとっても負担がかかります。ローメンテナンスという意味でもおすすめの品種です。しかもどれも植え付け直後から花が咲き始めるので、できるだけ早めに植え付けて花期が長いという特長を存分に生かしましょう。
鮮やかでポップな花色のガーベラは、切り花ではずっと人気の衰えない定番花。矮性種が鉢植えで出回りますが、庭で地植えにして楽しむタイプではありません。そこで登場したのが、耐暑性、耐寒性に優れ、花壇に植えて長期間花が楽しめる宿根ガーベラの「ガルビネア」です。魅力的でよく目立つ花色を花壇のコーディネートで使えるのは大きな利点です。
利点はそれだけではありません。3月下旬〜11月という花期の長さにも注目です。関東以西の平暖地であれば12月に入ってもまだ開花が続くのですから、これはもう花壇づくりのベースに最適! もともとガーベラは宿根草として分類されていますが、耐寒性はあまり強くなく、冬越しは難しかったのですが、「ガルビネア」は氷点下5℃程度まで耐える品種なので、地植えのままでも冬を越し、翌年の春からまた花が咲き始めます。連続の開花性に加え、同時に10本以上の花茎が立ち上がるので、ボリューム感もたっぷり。鮮やかな花色のバリエーションだけでなく、花サイズの大きな「大輪ガルビネア スイート」シリーズも登場し、コーディネートの幅もさらに広がりました。
さて、この魅力的な花を花壇でどんな風に生かしましょうか?
「ガルビネア」はかわいらしい花だけでなく、明るめの色の大きな葉も魅力的です。花壇の縁取りや芝生の境目にぐるりと植えると、葉が土面をきれいに隠してくれます。玄関までのアプローチなど人目によく触れる場所は常に花を咲かせておきたいので、その両側を「ガルビネア」で彩るのもおすすめです。
「ガルビネア」は1苗でも形よくまとまるのが特長。大きな葉がこんもりと形よく茂り、それを背景に鮮やかな花色がより映えて見えます。リーフプランツが多い場所に色みのアクセントとして加えるのもおすすめです。株姿の美しさをアピールするなら、ほかの植物と少し間隔を置いて植え付けるとよいでしよう。
ピンク、オレンジ、黄色、赤、紫、そして白。もともとガーベラは花びらが厚手で透けにくいので花色がくっきり出るのですが、「ガルビネア」は本当に花色が鮮やかできれい! 花形が揃っているので、赤と黄色、ピンクとオレンジなど、派手な色合わせをしても意外にまとまりやすいのが特長です。ほかの花ではできない色合わせで花壇を新鮮な印象にしてみるのもおすすめです。
●日当たりよい場所を好みますが、葉が大きくなると蒸散が激しくなるので、真夏は木陰など直射日光を遮ることができる所が適しています。多湿を嫌うので、水はけのよい場所を選び、緩効性肥料を元肥に加えて植え付けます。
●生育が早いので肥料を切らさないようにするのが花を長く咲かせるポイントです。特に4〜10月は10日に1回程度の間隔で液肥を与えるとよいでしょう。
●病害虫に強い性質ですが、ハダニやスリップスなどを見つけた場合は市販の薬剤を散布して早めに除去するように気をつけてください。
●終わった花は花茎ごと株元から抜き取ります。生育旺盛で葉がよく茂るので、古くなった葉は抜き取り、株の中まで光が差し込むようにするとよいでしょう。なお、冬越しには日当たりのいい場所が適しています。寒さが厳しい場合は、軒下などに避難させたり寒冷紗で防寒すると安心です。
夏の花の定番といえばベゴニア センパフローレンス。多くの品種がありますが、いずれもどこかエキゾチックな雰囲気があり、‘かわいらしい’‘ナチュラル’という庭づくりのテーマには使いづらいところがありました。そんなベゴニアのイメージを一新させたのが「ボンボリーナ」です。まるで‘ぼんぼり’のような小さな八重咲きの花は思わず顔を近づけてアップで愛でたくなるかわいらしさ! ベゴニアは1つの株に雄花と雌花が別々に咲くのが一般的で、八重咲き品種の多くは雄花の雄しべが花弁に変化しています。ところが「ボンボリーナ」の場合は雄花だけでなく雌花も八重咲きなため、花のボリューム感が抜群でより華やかに見えるという特長があります。
「ボンボリーナ」も花期の長さは大きな魅力。5月から11月まで、熱い真夏も休むことなく花が咲き続けてくれます。花が株に埋もれることなく咲くので、花色もよく目立ち、庭のかわいらしい彩りとして大活躍してくれます。
こんもりと形よい株姿にまとまり、きれいな姿が持続してくれるので管理の手間もかかりません。花が自然に落ちるセルフクリーニングの性質があるので、花がら摘みの必要がないのもうれしい!
ぜひ、このかわいらしさを庭で生かしてみてください。
初夏から夏の花には草丈が高くなるものが多いのですが、「ボンボリーナ」は草丈20〜30cmと低めで、高い花の足下の空間を埋めるのに最適。花壇の一番手前に植え込むと、こんもりした株姿できれいな縁取りの役目をしてくれます。
ベゴニア センパフローレンスの葉色は赤みがさすタイプが多い中、「ボンボリーナ」は明るくビビッドな緑色。このきれいな葉色はナチュラルガーデンによく似合います。周囲に暗めの葉色の植物を配すると、その葉色はより明るく映え、遠目からでもよく目立ちます。夏ならコリウスなどさまざまなカラーリーフと組み合わせるとメリハリのある花壇が楽しめます。
「ボンボリーナ」はこんもりときれいにまとまる株姿も大きな魅力です。鉢植えにして玄関先に、また小径沿いのポイントに飾ると、パッと人目につくアクセントとして効果大です。深さのあるスマートなコンテナに植えると、眺める目線が高くなりより目に付きやすくなります。
●できるだけ日当たりのいい場所が適しています。日当たりが悪いと花色が褪せ、株も徒長しやすくなります。水はけのよい場所を選び、緩効性肥料を元肥に加えて植え付けます。
●春から初夏、秋には生育が旺盛になるので、2週間に1回程度、液肥を与えます。真夏は生育が緩慢になるため追肥の必要はありません。
●風通しが悪いと5〜6月、9〜10月ごろにうどんこ病や灰色かび病が発生しやすくなります。風通しをよくするように気をつけ、もし症状が現れたら早めに薬剤を散布します。
● 徒長して草姿が乱れたり、株が割れて倒れたりしている時は、思い切って切り戻すのがおすすめです。半分くらいの草丈でカットしてかまいません。切り戻しは真夏を迎える前に行い、風通しのよい状態で夏越しさせるとよいでしょう。
ガーベラ同様、アルストロメリアも切り花としての印象の方が強いと思います。切り花ではさまざまな品種がほぼ周年出回るので定番花として人気が衰えることはありません。そのアルストロメリアが庭で元気に咲いていたら、それはかなり新鮮な印象! それを実現できるのがガーデンアルストロメリアです。従来のアルストロメリアに比べると耐暑性、耐寒性が強く、四季咲きの性質のハイブリッド品種なので、庭で長く楽しめるというわけです。真夏は一時花を休めますが、涼しくなると再び咲き始めます。初夏から夏の庭と、秋の庭。どちらの季節にもよく似合い、周囲の花との組み合わせで異なる景色を生み出してくれるのは大きな魅力!
エキゾチックなオレンジ色の「インディアンサマー」、トロピカルな雰囲気の「サマーブリーズ」に加え、待望のホワイトカラー「サマースノー」も登場し、花色コーディネートの幅も広がりました。60〜100cmと花壇の中段に加えるとちょうどよい草丈なので、季節の花といろいろな組み合わせが楽しめます。
- 6月下旬から8月上旬にかけてはユリの季節。草丈の高くなるユリの下にガーデンアルストロメリアを加えると、花壇がぐんとセンスアップ! アルストロメリアは以前はユリ科に属していたこともあり、花をよく見るとユリをそのまま縮小したかのようによく似ています。大きなユリと小さなガーデンアルストロメリア。よく似た花の大小が花壇に美しいメリハリを生み出してくれます。
カンナは真夏の花のイメージがありますが、じつは花期は意外に長く6月から咲き始め、10月中旬まで楽しめます。高いものでは160cmくらいまで草丈が伸びるので、どうしても下の空間が寂しくなりがち。そこに加えたいのがガーデンアルストロメリア。特にエキゾチックな花色の「インディアンサマー」はカンナのイメージとよく似合うのでおすすめです。
ガーデンアルストロメリアの「サマーブリーズ」はブロンズがかる中斑入りの美しい葉も魅力的です。また、「インディアンサマー」も葉色がシックなので、花壇の中に少し加えるだけで全体がぐっと引きしまった印象になります。明るい花色が賑やかだけどしまりがない、パステル系でふわっと軽すぎると感じた時にはぜひ加えてみてください。
●日当たりを好みますが、真夏は木陰になる場所の方がより適しています。また、半日陰でもよく育ちます。乾燥には強い性質ですが、過湿に弱いので、できるだけ水はけのよい場所を選び、緩効性肥料を元肥に加えて植え付けます。
●6月下旬からは開花と同時に株づくりの時期でもあります。下葉をこまめに取り除き、株の中まで日差しがよく差し込むようにして光合成を促すように気をつけてください。追肥は春〜初夏と秋の生育期には月に2回程度与え、真夏は施肥しないようにします。
●春〜夏までスリップスやコナジラミ、灰色かび病などに注意が必要です。症状を見つけたら早めに薬剤を散布します。
●真夏は一時的に花が休みます。もし株が弱っていたり、株姿が乱れている場合には、その間に10cm程度残して切り戻すとよいでしょう。
●耐寒性の強い品種なので、地植えのまま冬越しも可能ですが、寒さが厳しい土地では敷きわらをするなど防寒対策を施すと安心です。