「イングリッシュガーデンのような庭にしたい!」 春から初夏の庭づくりを考えるこの時期、頭の中に憧れのイングリッシュガーデンを思い浮かべながら植物選びに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 イングリッシュガーデンといってもお屋敷の広大な庭ではなく、日本で人気が高いのはコテージガーデンと呼ばれる小規模な庭です。 コテージ(田舎家)を背景に、小さいながらもさまざまな植物が織りなすナチュラルな風景は、どこか郷愁を誘うものがあり、心が惹きつけられるような魅力があります。 では、どうしたら魅力的なコテージガーデンを自宅の庭に実現できるか。 その大きなポイントになる花選びについてご紹介します。
イングリッシュガーデンを構成する植物の中で、一番大切なのが宿根草です。 本場イギリスでは、庭を構成するほとんどの植物が宿根草といってもいいほど宿根草の存在が大きいのですが、これは夏が涼しく植物にとって過ごしやすい環境だから、という理由もあります。 日本の夏の高温多湿には耐えられない宿根草も多く、実際、ガーデニングブームの初期のころには、ヨーロッパから輸入された宿根草を入手して植えてみたものの、上手に育てられなかったという人も多いようです。
でも、だからといって、イギリスの庭や日本の各地にできているイングリッシュガーデンで見つけたお気に入りの宿根草をあきらめてしまうのはもったいないこと! 最近では日本の気候風土に合う品種も登場しているので、品種の特長を知って選定すれば意外に手軽に育てられます。 お気に入りの宿根草を選ぶと同時に品種も厳選すること、それが植物選びのポイントです。
イングリッシュガーデンでは、一番の見ごろは多くの宿根草が花咲く初夏です。 気候の涼しいイギリスでは初夏から夏まで花が続くので、じつはこの時期をメインに庭づくりを考え、あとの季節についてはそれほど力を注がないという人も多いそうです。 日本では夏も秋も魅力的な花が多くあるので、初夏限定の庭ではもったいない限りですが、それほど初夏の宿根草のもつ魅力は大きいのだと理解していただければよいと思います。
では、どんな宿根草のどんな品種を選びましょうか。 今回はイングリッシュガーデンに欠かせない5種の宿根草をピックアップしてみました。 丈夫な品種ではありますが、植え付け場所をちゃんと選ぶことも大切です。 夏でも風通しのよい場所、西日が当たらない場所を探して植え付けてみてください。 1種類加えただけで、ぐっとイングリッシュガーデンの雰囲気が高まりますが、できれば組みあわせて、植物のミキシング(混じりあって咲くナチュラルな様子)をぜひ楽しんでみてください。
イングリッシュガーデンの定番といえば、まず思い浮かぶのがゲラニュームです。 フウロソウとして日本でも馴染みが深いので、この花を庭で咲かせたいと思う方も多いと思います。 ゲラニュームは風通しがよく涼しい場所を好むので、日本では栽培が難しく思われがちですが、基本種ともいえるマグニフィカム、またウォリキアナムの改良種「ロザンネイ」や「アズールラッシュ」などは強健な性質なので日本の気候でも手軽に栽培できます。 年々株が大きくなり、花つきもよくボリューム感が出てくるので、株間を十分とって(30cm以上)植え付けるようにしましょう。 やや乾きぎみの環境を好むので、風通しがよく水はけもよい場所を選んでください。 小径の一番手前や、レイズドベッド(立ち上げ花壇)に植え付けるのがおすすめです。
後ろが透けて見えるような繊細な容姿とグラデーションがかった優しい花色。 風にそよぐ姿がナチュラルで野草のような趣があり、長く人気の衰えない花です。 マヨール種の交配品種がよく出回りますが、品種によって強弱があるので、うまく育てられなかった人も品種をかえて栽培してみるとよいでしょう。 白花の「スノースター」、落ち着いたローズピンクの「ローマ」は丈夫な性質なので初心者にもおすすめです。 水分は好みますが、夏の高温多湿は苦手なので、夏には木漏れ日が差し込むような明るい木陰などに植えるとよいでしょう。 特に地温が高すぎると根が傷むので、浅植えにしてマルチングしておくのがおすすめです。
オダマキといえば日本でも古くから親しまれている花ですが、日本でセイヨウオダマキと呼ばれているのは、ヨーロッパ産のアクイレギア ブルガリスを種とした交配品種です。 華やかにしてどこか野趣もある花で、ナチュラルガーデンにもよく似合い、センスのよさを感じさせてくれます。 オダマキの仲間は雑種を作りやすいため、品種名の記載がないまま出回ることも多くあります。 距の飛び出した個性的な花形のものもあれば繊細な八重咲きの品種もあります。 ナチュラルガーデンでは八重咲き品種が加えやすく人気があります。 数株をまとめて植え付けるとボリューム感が出て見応えがあります。 高温多湿にやや弱いので、夏には木陰になるような場所に植え付けるとよいでしょう。
初夏にはバラをはじめ丸い花がたくさん咲きますが、その引き立て役として欠かせないのが直線的なラインをもつ花です。 デルフィニウムやジギタリスなどがその代表ですが、それらではやや印象が強すぎる場合に選びたいのがペンステモンです。 直線的なラインにふっくらとしたベル型の花をつける姿は愛らしく、華やかな赤や黄色、紫、白と花色が豊富に揃っています。 品種によって草丈が異なるので、バランスを見て適した草丈のものを選ぶことが大切です。 高温多湿に弱いので、風通しがよく、夏には木陰になるような涼しい場所に植え付けます。 育てやすさでいうとおすすめは「ハスカーレッド」。 シックな銅葉の茎と淡いピンクの花のコントラストが美しい品種で、暖地でも丈夫に育ちます。
花壇の表情に変化をつけたい時や、フォーカルポイント(焦点)を加えたい時によく使われるのがジャーマンアイリスです。 アイリスには球根のダッチアイリスもありますが、ジャーマンアイリスはポット苗で出回るので、これから植え付けても初夏の庭づくりに間に合います。 アイリスは日本でも馴染みが深いのですが、どちらかというと和風の印象があります。 が、ジャーマンアイリスの大きく波打つようなフリルの花はとても華やかで存在感があり、イングリッシュガーデンでも使いやすい花です。 レインボーフラワー(虹の花)と呼ばれるほど花色が豊富に揃うのも魅力です。 過湿を嫌うので、できるだけ水はけのよい場所に植え付ければ、それほど手間なく豪華な花が楽しめます。 大株に育つと花茎もたくさん伸び、開花時には見応えのある景色になります。