9〜10月は葉菜類のタネまき適期。生育の早い葉菜なら年内の収穫も可能です。気温が低めで安定しているため、秋の栽培は比較的容易で初心者にもおすすめです。しかも春のようにトウ立ちの心配もないため、品種選びで収穫時期を長く伸ばすこともできます。生でサラダに、ゆでて和え物に、という周年の定番料理のほか、秋から冬にかけては鍋料理の素材としても葉菜は必需品。毎日の料理に新鮮な葉菜を利用するために、家庭菜園ではできるだけ多くの種類を作りたいものです。そのためには料理に利用する量を考えて、畑の面積のどれくらいを使うかを計画して栽培することが大切です。例えば、鍋料理に使うミズナやミブナは量が多く必要なので、大株どりができるような栽培計画に。またサラダの彩りに利用したいカラフルな品種は、密植ぎみに栽培してベビーリーフを利用するのもおすすめです。
目的別に葉菜をとりあげ、それぞれのおすすめ品種をご紹介しますので、ぜひ多くの品種を育ててみてください。
-
シャキシャキした食感が魅力のミズナは、さまざまな鍋料理に欠かせない野菜です。たっぷり収穫したいなら分けつが旺盛なこの品種がおすすめ。中間地、暖地でのタネまきは9月中旬〜10月中旬が適期。9月中旬のタネまきで12月上旬には収穫できます。葉軸が白く、葉縁に多数の切れ込みが入る中生種。大株どりして浅漬けにしたり、また途中で間引いた葉はサラダに利用して。
-
大株どりまで待てない、もっと早く収穫したいという方には、早生種のこれがおすすめ。小株どりの専用種で、中間地、暖地でのタネまき適期は9月中旬〜10末。9月中旬のタネまきで10月末には収穫できます。小株どりは必要な量だけ収穫できるのが便利。少し広めの面積で株数を多く栽培しておけば、鍋料理に使う量も十分まかなえます。
-
京野菜として知られるミブナは、関東地方ではスーパーなどでの流通が少ないので、ぜひ家庭菜園で育ててみたい葉菜です。ミズナのシャキシャキ感と違い、やわらかな食感とくせのないまろやかな味わいが魅力です。これは生育旺盛な早生種。中間地や暖地では10月のタネまきで翌年1月に収穫できます。
-
中国野菜を代表する葉菜ですが、中華料理だけでなく、最近では鍋料理の素材としても人気があります。特に豚骨スープの鍋料理には相性抜群! 一人で2株くらいぺろりと食べてしまうので、株数を多めに栽培しておくのがおすすめです。中間地や暖地でのタネまきは、9月いっぱいが適期。11月上旬〜下旬にかけて収穫できます。やや小さめで収穫すると葉を切らずにそのまま鍋に加えることもできます。
-
ゆでてポン酢をかけるだけでもおいしく、またバター炒めにしても美味。また、お弁当の青みとしても大活躍。栄養たっぷりのホウレンソウは、栽培面積は小さめでも、常時収穫して利用したい葉菜です。この品種はべと病に強く、初心者でも作りやすい秋冬取り種。葉柄が太く、株張りがよいので収穫性にも優れています。中間地での秋作は9月中旬〜10月中旬にタネまきすればトンネルの必要なく栽培できます。10月中旬のタネまきで、12月中旬には収穫可能。タネまきを少しずつずらし、年明けまでリレーどりできるような栽培計画もおすすめです。
-
厚手で大きな葉はやわらかく、茎もみずみずしいコマツナは、幅広い料理に利用できるので、デイリー葉菜として長い期間収穫したい葉菜です。この品種は耐病性があり初心者でも作りやすい中早生種で、在圃性があるので収穫期間が長いのが特長。中間地や暖地では10月下旬〜翌年3月までタネまきが可能なので、こちらもタネまきをずらしてリレー栽培すると、秋冬の間、使いたい時にいつでも収穫できて便利です。
-
葉柄、葉脈が鮮やかな赤紫のホウレンソウで、葉がやわらかく、くせのない味なので、生のままサラダで食べるととても美味。オリーブオイルで炒めたニンニクをオイルごと散らし、しょうゆを少し垂らすだけで、おいしいサラダになります。また、ベビーリーフで収穫して、ほかの葉菜とミックスすれば、サラダの彩りとしても効果抜群。生育旺盛で葉の枚数が多いので、少ない株数でも育てておくととても便利です。中間地、暖地では9月から10月上旬のタネまきならトンネルの必要なく手軽に栽培できます。9月下旬のタネまきで、11月中旬には収穫できます。
-
葉柄が鮮やかな赤紫色のミズナで、加熱してもこのきれいな色が抜けにくいのが特長。生でサラダにするのはもちろん、さっとゆでてしんなりさせてサラダに加えても食べやすく、また煮物の彩りに添えたりと少しあるととても重宝します。サラダに利用するなら、草丈10〜20cm程度で収穫するのがおすすめ。そのサイズなら葉柄がまだやわらかく、みずみずしい食感も同時に味わえます。冬の間も栽培可能ですが、秋のタネまきは中間地、暖地では9月〜11月末が適期。10月中旬のタネまきで11月下旬には収穫できます。
-
ぴりっとした辛みを持ち、サラダのアクセントになるカラシナ。しかもこの品種はつやのある美しい赤紫色の葉が彩りのアクセントとしても効果的。秋冬の栽培で低温に当たるとさらにうまみが増すので、ぜひ作ってみて欲しい品種です。サラダには草丈10〜20cmでの収穫がおすすめ。中間地、暖地でのタネまきは9〜10月までが適期。10月上旬のタネまきで11月中旬には収穫できます。
-
サラダのベースにしたいリーフレタスの赤色、緑色のミックスタネ。1年を通してあると便利な葉菜ですが、冷涼な気候の秋なら栽培も容易にできます。畑の一角の小さなスペースで密植ぎみに育てても、また大きめのコンテナで栽培するのもおすすめ。ベビーリーフで収穫するなら、真夏を除くいつでもタネまき可能です。タネまきから1カ月後くらいにはもう収穫スタート。
-
西日本では「おたふく春菊」とも呼ばれる葉に切れ込みの少ない丸葉系のシュンギク。シュンギク特有の苦みが少なく、厚葉でやわらかいので生でサラダにして食べられます。生長させて株どりにするほか、ベビーリーフで収穫してサラダに加えると、食べやすく、しかも味のアクセントにもなります。9月にタネまきすれば露地栽培も可能。10月以降のタネまきではハウス栽培がおすすめです。ベビーリーフならタネまきから1カ月後くらいで収穫できます。
-
赤、黄色、白と、葉柄と葉脈がカラフルなフダンナで、別名の「スイスチャード」でも知られています。大株で収穫するより、ベビーリーフのほうがサラダに利用しやすく、葉もやわらかくて美味。彩りのアクセントとしても美しく、コンテナなどで少量でも栽培しておくと便利です。中間地、暖地の秋まきは9〜10月末までが適期。ベビーリーフならタネまきから1カ月後くらいには収穫できます。
-
別名の「ルッコラ」でも知られるハーブですが、ゴマに似た香りが個性的で、サラダ葉菜として定番の人気です。ベビーリーフで収穫したほうが葉がやわらかく、くせも強すぎずとても美味。真夏を除いて周年栽培できますが、秋まきなら9〜10月下旬がタネまき適期。ベビーリーフなら1カ月後くらいから収穫できます。
ホウレンソウはアカザ科の野菜です。コマツナなどアブラナ科の野菜は、発芽時の双葉が大きく、すくすく育つ様子も目に見えやすいのですが、アカザ科のホウレンソウは、双葉がとてもスマートで頼りなく見えます。そのため「ホウレンソウは育てにくい」と思う人もいるようですが、「牛若丸」や「弁天丸」のように、家庭菜園でも作りやすい品種を選べば、容易に栽培できます。
畑づくり | タネまき | |
---|---|---|
タネまきの1カ月前から堆肥などを加えて畑の準備を始めます。 | 条間15cm、深さ2cmの溝をつくり、1〜2cm間隔でタネをまき、溝の両側から土を寄せて手でしっかり押さえ、最後にたっぷり水やりします。 | |
間引き | 追肥 | |
本葉3〜4枚が展開したところで、間引きを行います。年内に収穫する場合は、株間は5cm程度、年明け以降に収穫する場合は3cm程度を目安に。 | 草丈が15cm程度まで生長したら、速効性肥料を10u当たり約200g条間に施します。 | |
収穫 | ||
草丈25cm以上が収穫の目安。根元から引き抜き、根をハサミでカットします。30cm以上のボリュームある株はホウレンソウ本来の香りが高く、甘みも強くなるので、じっくり育てて味わってみるのもおすすめです。 |
暑さにも寒さにも強いコマツナは、生育期間が短く家庭菜園で最もつくりやすい野菜の一つです。連作にも強いので畑のあいているスペースで手軽に栽培できます。収穫までの期間が短いので、一度に収穫する量を決め、何度かに分けてタネまきするとよいでしょう。
畑づくり | タネまき | |
---|---|---|
タネまきの1カ月前から堆肥などを入れて畑の準備をします。 | 条間15〜20cm、深さ2cmの溝をつくり、1〜2cm間隔でタネをまき、溝の両側から土を寄せて手でしっかり押さえ、最後にたっぷり水やりします。 | |
間引き | 収穫 | |
本葉1〜2枚が展開したところで、3〜4cmの株間になるように間引きます。 | 草丈25〜30cmを目安に収穫します。 | |
代表的な京野菜ですが、とても作りやすいので、いまでは家庭菜園の定番葉菜となっています。スーパーなどに出回るミズナは草丈が40cmくらいありますが、若い状態で収穫した方が葉がやわらかく、特に生でサラダにする場合は、早めの収穫がおすすめです。
畑づくり | タネまき | |
---|---|---|
タネまきの7〜10日前を目安に堆肥などを加えて畑の準備を始めます。 | 条間15cm、深さ1〜1.5cmの溝をつくり、1〜2cm間隔でタネをまき、溝の両側から土を寄せて手でしっかり押さえ、最後にたっぷり水やりします。 | |
間引き | 収穫 | |
本葉が3〜4枚展開したところで、株間が5〜6cmになるよう間引きます。生育程度が中くらいのものを残すようにすると、間引き後の揃いがよくなります。やわらかな間引き菜はぜひサラダで! | 草丈25〜30cmが収穫の目安。葉が大きくなりすぎる前に株どりします。それ以前に少しずつ必要な量を間引きながら利用してもOKです。 | |
生育が早く、収穫までの日数が短いので、家庭菜園でも畑の空いたスペースで手軽に栽培できます。育苗してから定植する方法もありますが、家庭菜園では生育の安定しやすい直まきがおすすめ。株間を広くとるほど、チンゲンサイの特徴でもある尻部の肥大が確保しやすくなります。
畑づくり | タネまき | |
---|---|---|
タネまきの約1カ月前に堆肥などを加えて畑の準備を始めます。 | 条間15〜20cm、株間10〜15cmのビニールマルチを利用し、1穴に4〜5粒のタネをまきます。タネが隠れる程度に軽く覆土し、手でそっと押さえた後にたっぷり水やりします。 | |
間引き | 被覆管理 | |
本葉が2〜3枚展開したところで、間引いて3本立ちにします。さらに4〜5枚展開したところで、間引いて1本立ちにします。 | 10月まきでは生育促進を目的に不織布をベタがけするのがおすすめです。 | |
収穫 | ||
草丈が20cm、株元の張りが6cm程度になったら収穫適期。株の地際を包丁で切り取って収穫します。 |
どちらも容易に栽培できるので、家庭菜園の定番として栽培計画に加えてください。条間15〜20cm、深さ1.5〜2cmのまき溝に1〜2cmの間隔でタネまき。ベビーリーフで利用したいなら、畑の一角の小さなスペースやコンテナにタネをばらまきして栽培するのもよいでしょう。やや密植ぎみに栽培してもかまいません。
畑の一角の小さなスペースやコンテナにタネをばらまきして栽培します。草丈が7〜8cmくらいに育ったら、間引きをかねて収穫スタート。やや密植ぎみに栽培しても大丈夫です。
シュンギクもベビーリーフで利用するなら、密植ぎみのバラまき栽培でOK。1株ごとに大きく育てたい場合は、畝立てし、条間20cm、株間15cmのビニールマルチ利用で、1穴に5〜6粒タネまきします。本葉が2〜3枚展開したところで、株間が4〜5cmになるように間引きます。
畝立てして条まきしても、また小さなスペースやコンテナにばらまき栽培してもかまいません。ベビーリーフで収穫するなら密植ぎみに栽培します。やわらかなベビーリーフでもしっかりゴマの香りがします。