根深ネギもタマネギも、料理の主役にはなかなかなりませんが、おいしさを引き出す役目として欠かせない存在です。根深ネギはめん類の薬味だけでなく、中華料理の炒め物などでは必ずみじん切りを加え、独特の風味を味付けとして利用しています。炒飯にネギが入っていなかったら…と想像すれば、ネギが料理の味付けにどれほど貢献しているかわかると思います。
一方、タマネギは洋風の煮込みなどに不可欠な存在。タマネギのもつうまみ成分は和風料理の出汁にも匹敵し「西洋のかつおぶし」とも呼ばれています。常備したい野菜は数あれど、根深ネギとタマネギほど「必須」な野菜はほかにないでしょう。
とはいえ、スペースの小さな家庭菜園では、1年中供給できる量を栽培することはできません。では、何を目的に根深ネギとタマネギの栽培をおすすめするのか? それはとれたての新鮮なおいしさを味わうためです。とれたての根深ネギは中がとろりとしてみずみずしく、甘みもたっぷり。タマネギは野菜の中でも甘み成分を豊富に含んでいますが、とれたての新鮮なものは、あの独特の辛みがないためより甘く感じられます。しゃきしゃきしたみずみずしい食感もフレッシュなタマネギでしか味わえません。家庭菜園で収穫した新鮮な根深ネギ、タマネギは、脇役にするにはもったいないくらいのおいしさ! ぜひ主役に据えてそのおいしさを堪能してみてください。根深ネギなら、炭火で焼いて食べるのが一番のおすすめです。オリーブオイルと塩をかけてオーブンで焼いてもOK。タマネギはおなじみのフレッシュサラダにするほか、輪切りにしてさっと焼いたオニオンステーキもとても美味! お店で買ったものでは味わえないおいしさを体験できるのは、家庭菜園ならではの楽しみです。
根深ネギは、土寄せして軟白した葉鞘(ようしょう)部を利用し、栽培が多い関東では「長ネギ」と呼ばれるのが一般的です。「長い」とは関西で多く利用される葉ネギに対し、白い部分が長いという意味です。一般的な根深ネギは軟白部分の長さが30cmくらいを目安とし、何回も土寄せ作業をします。少しずつ繰り返し土寄せするのがおいしい根深ネギを作るポイント。それを面倒と思う人もいるでしょうが、土寄せする度に白い部分が長くなっているのを見るのはなかなか楽しいものです。
根深ネギは、春作と秋作ができますが、これからの時期に作るなら(秋作の場合)、発芽時期の気温がまだ高めなので、残暑性のある品種を選ぶとよいでしょう。
10月がタネまき適期の初夏どり品種で、首部の締まりがよく、ばらけにくく、揃ってよく太ります。葉が濃緑で、軟白とのコントラストがより際立ち、美しい品種です。 | 残暑性に優れ、高温期の栽培でも伸びすぎない性質です。草姿は90cm前後で、風による倒伏の心配も少なくてすみます。軟白部はつやがあり、繊維が細かく肉質が緻密。9月上旬から10月上旬にタネまきすると、翌年の8〜12月に収穫できます。 |
残暑性に富み、早どりに適する品種。9月上旬〜10月上旬にタネまきすると、翌年の7〜10月中旬に収穫できます。分けつは極めて少なく、首が絞まってよく揃います。 | 生育旺盛で、よく伸びて太る人気品種。肉質がやわらかく、苦みや辛みが少ないので生でおいしさが堪能できます。10月のタネまきで、翌年の初夏に収穫できます。 |
ネギ類はまず育苗をし、育てた苗を畑に植え付けて生長させます。たくさんの苗を育てる場合には、日当たりがよく排水のよい場所に苗床をつくりますが、家庭菜園の場合は少量でよいので、セルトレイを利用して育苗するのがおすすめです。
- セルトレイ(200穴)にタネまき用土をまんべんなく入れ、1穴当たり3〜4粒ずつタネをまきます。土が乾かない程度にみずやりし、本葉2〜3枚になるまで育苗します。
- 畑の準備をします。植え付けの2週間前までに1u当たり苦土石灰100〜150gをまき、深さ30cm程度までよく耕しておきます。植え付けの1週間前までに、1u当たり完熟堆肥(たいひ)2〜3kg、チッソ・リン酸・カリを成分量でそれぞれ10〜15g施してよく耕します。その後、幅15cm、深さ10〜15cmの溝を掘り、片側の壁は垂直にしておきます。
- 苗を植え付けます。1〜2本ずつ、垂直の壁側に立てかけ、5〜10cm間隔で並べ、根元に5cmほど土をかけ、ぐらつかないように根元をぐっと押さえておきます。
- 苗が伸び始めたら、2週間おきに追肥と土寄せを行います。1u当たり50gの化成肥料をまき、少しずつ土をかぶせていきます。この作業を4〜5回繰り返します。
- 収穫する際は、いきなり葉を引き抜くと軟白部分が切れてしまうこともあるので、スコップで溝の脇を掘り下げてから掘り出すようにします。
1年中常備しておきたいタマネギは、品種によって収穫時期が少しずれるので、それを利用してできるだけ長く収穫できるよう栽培計画を立てるのがおすすめです。4月下旬から収穫できる極早生種、5月末から6月初旬にかけて収穫できる中生種、6月中旬に収穫できる中晩生種、6月下旬に収穫できる晩生種を組みあわせれば、リレーで収穫できます。中晩生種に貯蔵に向く品種を選べば、1年中自分で栽培したタマネギを味わうことも可能です。
また、畑のスペースがない場合は、どの時期に収穫して、畑を次の野菜に切り替えたいかを考えて品種選びをするとよいでしょう。
いずれの品種も9月がタネまきの適期ですが、品種によって上旬、中旬、下旬と少しタネまきをずらして行うとよいでしょう。
また、サラダの彩りに効果的なレッドオニオンや、葉タマネギにしてもおいしい品種などを加えれば、バラエティー豊富なタマネギを堪能できます。
4月下旬から5月上旬が収穫期。家庭菜園で作りやすく、大玉が収穫できます。辛みが少ないので新鮮なうちにサラダで食べるのもおすすめ。タネまき適期は9月下旬。 | 5月上旬が収穫期。早生種ながら8月末まで貯蔵が可能。甲高でつやのよい大玉が収穫できます。タネまき適期は9月下旬。 | 9月上旬から中旬にタネまきすると、3月に収穫できる極早生品種。細葉で首が絞まり、葉タマネギにしてもおいしい! トウ立ちや分球の発生が少なく、家庭菜園でも作りやすい品種です。 |
5月下旬から6月上旬が収穫期。肥大性抜群の品種で、豊円球の大玉が収穫できます。歯切れがよくジューシーで辛みが少なくおいしい! タネまき適期は9月下旬。 | 6月上旬が収穫期で、12月末まで貯蔵が可能。トウ立ちや分球の発生が少なく、家庭菜園でも作りやすい品種です。甲高で色つやに優れた球が収穫できます。タネまき適期は9月下旬。 |
6月上中旬が収穫期。豊円球で皮色が濃く、色つやのよいタマネギが収穫できます。病気にも強く作りやすく、貯蔵時の病害にも強い品種です。タネまき適期は9月下旬。 |
6月上旬が収穫期。外皮が鮮やかな赤紫になるレッドオニオン。玉は厚みのある扁円で、大玉でよく揃います。サラダにすると新鮮な味わいと同時に美しい彩りが楽しめます。タネまき適期は9月下旬。 |
6月下旬が収穫期。抗酸化力が強く、活性酸素の働きを抑える機能性成分「ケルセチン」を豊富に含む品種です。その量は従来のタマネギの約2倍。貯蔵性も高く、翌年3月まで可能です。タネまき適期は9月中旬から下旬。 |
タマネギも根深ネギ同様、育苗してから畑に植え付けます。条(すじ)まきすると生育がよく揃い、管理もしやすいので、小さくても苗床を準備して育苗するのがおすすめです。
- 育苗用の畑の準備をします。1カ月前までに堆肥を1u当たり2kg施し、その後、元肥1u当たりチッソ、リン酸、カリそれぞれ10〜12gをまぜて畝を立てます。条間8cmで深さ8mmのまき溝をつくり、1cm間隔でタネをまき、溝を埋め戻すように覆土します。タネまき後はもみ殻や堆肥などで被覆して乾燥を防ぎ、発芽までは水を切らさないように気をつけます。育苗日数の目安は55日程度で、若苗定植を心掛けてください。
- 植え付け用の畑の準備をします。植え付けの1カ月前までに堆肥を1u当たり2kg 施してなじませ、1週間前までに元肥として1u当たりチッソとカリをそれぞれ12〜14g、リン酸を14〜16g混ぜ込みます。
- 露地でマルチなしで栽培する場合は、条間20cm、株間10cmで苗を植え付けます。水を通す不織布の穴あきマルチ「透水マルチ たまねぎ名人」を利用するのもおすすめで、防草、泥はね防止、蒸散防止、保温効果などがあり、良質のタマネギが栽培できます。
- このまま冬越しをしますが、極早生〜早生種は1月上旬と2月上旬に、中生種、中晩生種はさらに3月上旬にも追肥をします。
- 葉が倒れて枯れてきたら収穫のサインです。収穫したタマネギは、貯蔵分は風通しのよい場所につり下げておきます。8〜10株を1束にしてまとめてつり下げるとよいでしょう。