日本古来の花「ツバキ」を慈しむ



侘び寂びを感じさせる清楚な一重咲きの花から、ツバキとは思えないほど華やかな八重咲きまで、ツバキには魅力的な品種が豊富にあります。残暑厳しい早秋から咲き始め、陽春の候に満開となり終焉を迎えるツバキ。9〜10月にかけて咲き始める早秋咲き品種から、4〜5月まで咲いている遅咲き品種を組みあわせれば、ほぼ四季を通じて花が楽しめるというのもツバキの大きな魅力でしょう。 |
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苗木の植え付けは10月〜翌年5月が適期です。ツバキは基本的に耐寒性が強く、マイナス5℃前後までは耐えることができます。ただし、中国やベトナム原産のツバキは5℃以下になると枯れる可能性があります。
鉢植えの場合は6〜8号鉢で管理するとよいでしょう。用土は赤玉土5割・鹿沼土2割・腐葉土または市販の培養土を3割程度の比率を目安にした混合用土を用います。鉢底には市販の鉢底石や鹿沼土の大粒などを用いて、水はけをよくします。ポットから苗を取り出したら、根鉢を崩さぬように気をつけて鉢の中央に置き、苗の傾きを確認しながら土を足します。最後に鉢底から水が流れ出るくらいまでたっぷりと水やりし、置き肥をします(緩効性肥料)。
庭植えの場合は、まず根鉢の2倍程度の大きさの穴を掘ります。深さは根鉢と同程度にします。掘り起こした土に、完熟堆肥、腐葉土または元肥入り培養土を2割ほどすき込んで土壌改良しておきます。ポットから苗を取り出し、根鉢を崩さないように穴の中央へ置きます。苗の傾きを確認しながら土をかぶせますが、この時に深植えにならないよう注意します。その後、植え付けた苗がぐらつかないように根鉢を囲む土をしっかり押さえます。根が活着するまでの間は、風などで転倒する恐れがあるので支柱を添え、ビニールバンドで数カ所固定します。最後に根鉢部分に水をたっぷりと注ぎ、緩効性肥料を施します。


鉢植えの場合は、用土の表面が乾いたら、鉢底から水があふれるまでたっぷりと、が基本です。庭植えの場合、植え付け後から一夏を越すまでは、雨が降らないようなら1週間に1回、たっぷりと水やりします。その後も雨の少ない夏場は、1週間に1回程度水やりするようにします。
施肥は庭植え、鉢植えともに年2回が基本です。花が終わる3〜4月にかけて施す「お礼肥」と冬に向けて体力を蓄える9〜10月の「秋肥」です。どちらの時期も、効力の長い緩効性肥料を選ぶとよいでしょう。特に次のシーズンに向けた準備が始まる春のお礼肥は重要で、その後の新芽伸長や花つきにも大きく影響します。

4月下旬〜5月中旬と7月下旬〜8月上旬の年2回、チャドクガが発生しやすくなります。葉の裏に群生し、整列して行動するので「兵隊虫」と呼ばれることもあります。体を覆う毒毛に触れるとかぶれるので注意が必要です。虫が食べた葉は透けていたり、一部が茶色になっていたりします。もし見つけたら虫には絶対触れずに捕殺するか、殺虫剤を散布します。散布しやすいスプレー式の殺虫剤を準備しておくとよいでしょう。
ツバキは比較的、病気に強い植物です。もし発生しても被害葉を切りとり焼却もしくは廃棄すれば、それほど大きな被害は出にくいといえます。ただし、新芽時の5月以降と高温多湿になる6〜7月は病気が発生しやすいので、発生時期前に殺菌剤を予防散布するのがおすすめです。
害虫と病気を同時防除という意味で、チャドクガ発生期に殺菌・殺虫を同時に行うのも一つの手段です。同時に展着剤を用いることで、雨天や水やりによる散布薬剤の流出防止もできます。薬剤散布時は葉の裏や幹にもしっかり散布するよう気をつけてください。

剪定は花が終わる3〜5月に行います。不要枝を切り戻し、樹冠を乱す小枝も刈り込み、木の幹が透けて見えるくらいに剪定を行って自然樹形を維持するように心掛けてください。接ぎ木の成木(1.8m 以上)で、肥料が適切に施されていれば太い枝で切り戻す強剪定も可能です。 |
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佐藤椿園二代目園主。名古屋圏を中心に、ツバキ展の開催・園芸講師を行っている。中部地方各地に点在するツバキ公園のデザインや植栽も手掛け、「日本文化とツバキ」をテーマに、花会・茶席・舞台で用いられるツバキの切り花や、雑誌などの撮影に使用するツバキを全国へ提供している。
