春を印象づける色と香りシュンランの世界へ


平肩咲きの純黄色花で、黄花の中でも歴史ある銘花。冬季、ある程度寒さに当てるときれいに発色する。平肩咲きとは、横に広がる2枚の副弁が水平より少し下がっている咲き方。「富士の夕映え」も平肩咲きの花。
シュンランには主に、日本シュンラン、中国シュンラン、韓国シュンランの3種類があります。
日本シュンランは、北は青森県から南は鹿児島県まで、ほとんどの地域で自生しており、ジジババなどと呼ばれ、門松の材料や庭の下草などに用いられてきた親しみ深いランです。そして、その中から園芸的に特に優れたものが、愛好家の手によって収集・栽培され、現在数多くの銘品が世に送り出されています。昨今では、東京ドームでの「世界らん展」に代表されるように、各地でラン展が数多く開催されていますが、東洋ランの中ではシュンランがその人気の中心となっています。
シュンランは2月から4月にかけて可憐な花を咲かせ、花色や香りで癒しの空間を演出してくれます。また、年中楽しむことができる葉芸品種もあり、そのバラエティーは豊富です。そして、最大の特長は、日本シュンラン、中国シュンラン、韓国シュンランのいずれも、日本の気候で容易に栽培することができることです。特に寒さには強く、東北や北陸地方でも自生していますので、加温設備の必要がありません。ベランダなどの小スペースでも十分楽しむことができます。
手元で育てる楽しみは、なんといっても、年月をかけて作り込んだ自分のシュンランが、見事な花を咲かせたり、花や葉に芸術的な色や斑などが現れる上芸柄に仕上がったりした時の感動は例えようがありません。
ぜひ、あなたもシュンラン作りにチャレンジしてみてください。
日本シュンランの最大の魅力は、花色がとても豊富なことです。赤・黄・紫・朱金(橙)・白などの色の美しさだけでなく、覆輪花・縞花と模様は多岐にわたり、咲き方も、抱え咲き・三角咲き・平肩咲き・変わり咲きなど、さまざま。また、一年中楽しむことができる葉の柄物も縞・覆輪・虎斑・蛇皮斑など多彩です。
この特集でご紹介する品種は、いずれも日本シュンランです。

二千五百年前に孔子が「この世には尊い香りが三つある。香木、麝香鹿、そして最後の一つは蘭の香り」と言ったそうです。ここでいうランとはもちろん中国シュンランのことです。中国シュンランの花色は翡翠色(緑色)が多く、花色は少ないですが、その芳香は東洋ランの中でも随一で、人を引きつけてやみません。大手化粧品メーカーも商品化に取り組むほどです。

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1日の最高気温と最低気温の差を日較差といいますが、この日較差は自然の状態では、1年を通じてだいたい10〜15℃くらいの範囲です。ですから、置き場所での温度管理もその範囲になるように心掛けましょう。特にビニールハウスなどの施設での栽培は、昼間の温度が高くなりがちなので注意してください。
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消毒による失敗をよく聞きますが、薬害が起きやすいのは気温が25℃以上で、光量が強く、風通しが悪い時です。ですから、晩秋から5月上旬までは午前中の涼しい時間に散布し、5月下旬から梅雨明けまでは日没前後の涼しい時間帯に散布するようにしましょう。薬の濃度については表示よりも1〜2割薄めにしてたっぷりとかけることが大切です。濃い液の散布は失敗の元です。
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ついつい肥料を多く与えてしまいがちですが、上作のポイントはあくまでも採光・潅水・温度管理・風通しなどです。あまり肥料に頼りすぎない方がよいでしょう。過度の施肥は根傷めの原因にもなります。
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植え替えは2年に1度くらいでよいでしょう。用土は、市販の東洋ラン用の土を用いるのが便利です。筆者は、日向土と硬質鹿沼土を1対1の割合で混ぜています。自分で混合する場合は、混ぜる前によく水通しをして用土の表面に付いている細かい粉を取り除いておきます。
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植え替えの時に必要な道具類。左から、ナイフ、ピンセット、ハサミ。ナイフ、ピンセット、ハサミを株分けなどで使います。これらを使う際は、1株ごとにバーナーやライターを利用して用具の先端部分を消毒します。手洗いもしっかりして清潔にしておきましょう。はす口や鉢などの用具は、30分ほど沸騰したお湯の中で煮沸消毒します。以上はすべて、ウイルスによる病気を防ぐために必要なことです。