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緑肥のすゝめ

緑肥のすゝめ

春から始めたい!

野菜がよく育つための効果的な土壌改善!
春から作付けする緑肥の主な種類と使い方を詳しく解説します。畑の土壌改善や収穫量アップが期待できるので、ぜひ作付計画の中に取り入れてみませんか。

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木嶋 利男

木嶋きじま 利男としお
農学博士(東京大学)、(公財)農業・環境・健康研究所理事長、(一社)MOA自然農法文化事業団理事、伝統農法文化研究所代表。著書に『「育つ土」を作る家庭菜園の科学』(講談社ブルーバックス)、『伝承農法を活かす 野菜の植えつけと種まきのワザ』(家の光協会)など。

どんなとき、どうやって使う?
「緑肥」のいろは

緑肥作物のもつ力で土の理化学性と生物性を改善
土壌を肥沃にする目的で栽培され、生育中に青刈りして土壌にすき込む、「緑肥」。土壌中で分解させて養分を供給し、有機物を補給して土壌環境を整える目的で用いられます。緑肥の活用で、土壌が原因となるさまざまな問題を解決し、野菜がよく育つ土づくりが可能です。
緑肥には夏期に生育する種類と冬期に生育する種類がありますが、前者の緑肥は、主に秋〜冬野菜に用いられ、キク科ではヒマワリやマリーゴールド、イネ科ではソルガムやトウモロコシ、マメ科ではクロタラリアやヘアリーベッチ、アブラナ科では黄カラシや黒カラシが多く用いられます。
家庭菜園でも取り入れたい主な緑肥の利用方法とは?
緑肥の利用方法は、栽培が終了した菜園にタネをまき、生育させます。その後は土壌中にすき込みますが、開花、結実すると栄養分が茎葉から実に転流し、繊維が増えていて分解に時間がかかるため、開花前にすき込みます。
前作でセンチュウ類や土壌病害が発生した菜園でも緑肥は有効です。最近では、土壌くん蒸剤の代替や土壌環境を改善する堆肥の代替としても注目を集めています。

緑肥の主な効果

  • 有機物の投入により、土壌中の微生物が増える。
  • 水はけや保水力が向上する。
  • 土壌中の微生物のバランスがよくなり、病害虫を防ぐ。
  • 施設栽培土壌の塩類濃度を下げる。

春からの作付けに向くイチオシの緑肥は?

ソルガム緑肥用ソルゴー

DATA
イネ科
タネまき適期:5〜8月

がっちりと張った根がかたい土をフカフカに!

吸肥力が強く生育旺盛な緑肥で、根量が多いのが特徴。根が張ることによって、土壌をやわらかくし、水はけが改善されます。粘土質や耕盤層のある土壌に効果的です。アブラナ科野菜の根こぶ病やネグサレセンチュウの予防にも用いられます。

木嶋先生のおすすめ利用法

ハクサイ、キャベツ、ブロッコリーの栽培時の根こぶ病予防に

アブラナ科野菜の栽培前に作付けすると、根こぶ病を予防する効果が期待できます。5月下旬にソルゴーのタネまきをして、そのまま生育させます。8月中旬、生育した茎葉を耕うん機などで土にすき込みます。その後、2〜3回耕うんして土の中でよく分解させます。9月中下旬、すき込んだ場所にハクサイ、キャベツ、ブロッコリーを植え付けます。緑肥の効果で、元肥を2〜3割減らすことができます。

ニンジンやダイコンのネグサレセンチュウ予防に

ニンジンやダイコンの肌荒れの原因となるネグサレセンチュウ対策にも効果的。5月上旬にタネまきをして、7月中旬、ソルゴーの茎葉が若々しいうちに耕うん機などですき込みます。その後、2〜3回耕うんしてよく分解させます。8月中下旬、ニンジン、ダイコンのタネをまき、通常通り栽培します。緑肥の栄養分が土中に残っているので、元肥は施用しなくてもOKです。

POINT!
ソルゴーは土中の養分を吸収する力が強いため、あらかじめ元肥を施用します。土中にすき込まれた緑肥は微生物によって分解されますが、その過程で一時的に野菜の生育を阻害する菌(ピシウム菌)が増殖します。そのため、すき込み後、夏季で3〜4週間程度おいてから後作の栽培に入ります。

クロタラリアネコブラキー

DATA
マメ科
タネまき適期:5〜8月

土壌にチッソを供給野菜の生育促進に!

マメ科野菜の根に共生する根粒菌が空気中のチッソを固定し、養分を供給するので、野菜の生育をよくする効果が期待できます。また、センチュウ類を抑える働きもあります。黄色い花が咲き、鮮やかな彩りも楽しめます。

木嶋先生のおすすめ利用法

ラッキョウ、ニンニク、タマネギの後作に!

夏にタネをまき、生育するクロタラリアは、ラッキョウ、ニンニク、タマネギなどの収穫後、次の植え付けまでの期間を利用して栽培するのがおすすめ。ラッキョウなどの収穫後、7月中下旬に、クロタラリアをタネまきします。花が咲く前にすき込み、2〜3回耕うんして十分に分解させます。その後の作付けでは、野菜に与える元肥のチッソ成分量が1a当たり1kg程度減らすことができます。


クロタラリアのすき込み風景。

緑肥用とうもろこし

DATA
イネ科
タネまき適期:4〜8月

葉や茎に栄養がたっぷり作物が育ちやすい土に!

光飽和点(光の強度が上がると光合成速度は速くなるが、ある一定の強度になると変わらなくなる点のこと)をもたない植物のため、光が十分あれば旺盛に生育します。栽培は日長が長く、好天が続く時期に向きます。
吸肥力が強いため、葉や茎には栄養分がたくさん含まれ、分解後は肥料としての効果が高いのが特長です。

木嶋先生のおすすめ利用法

ホウレンソウやブロッコリーの栽培前に!

タネまきの適期は、5月上旬。養分を吸収する力が強いため、あらかじめ元肥を施用します。実ができる前に細かく粉砕して土にすき込み、耕うん機などで2〜3回耕うんし、十分に分解させます。茎葉に含まれる栄養分が分解とともにじわじわと効いてくるので、吸肥力が旺盛なホウレンソウ栽培に。また、ブロッコリーのように、頂花蕾を収穫した後、側花蕾を春先まで次々と長期間収穫する栽培にも向いています。

緑肥用ひまわり

DATA
キク科
タネまき適期:5〜8月

ヒマワリの根の力でリン酸吸収を促進させる

ヒマワリの根から排泄される根酸には、土壌に吸着された不溶性(酸でも溶け出さない成分)のリン酸を可溶性(酸で溶ける成分)にする働きがあります。火山灰土でリン酸吸収係数が高い地域や、気温が低くリン酸が吸収しにくい北海道などでよく用いられます。

木嶋先生のおすすめ利用法

タマネギ、ソラマメ、エンドウの栽培前に!

タマネギやソラマメ、エンドウを栽培する場所に5〜8月にタネまきします。開花前にすき込み、耕うん機などで2〜3回耕うんしてよく分解させます。11月中下旬〜12月上旬にタマネギ、ソラマメ、エンドウなどを植え付けます。

POINT!
火山灰黒ぼく土壌はリン酸吸収係数が高く、施用されたリン酸は活性アルミナや鉄と結合して植物が吸収しづらい性質(不溶性)になり、作物がうまく育ちません。ヒマワリの根酸はアルミナや鉄からリン酸を引き離す働きがあるため、土壌に吸着されたリン酸が再び植物に速やかに吸収されやすい性質(可溶性)となり、作物の生育がよくなります。

ヘアリーベッチ

DATA
マメ科
タネまき適期:3〜4月

茎葉を土にすき込めば雑草予防に効果的

ヘアリーベッチの茎葉には、シアナミドと呼ばれる雑草を抑える成分が含まれています。シアナミドは石灰チッソが分解される時に生成される物質と同じで、多くの植物の発芽を抑制するため、雑草防止効果があります。果樹園の草生栽培にも用いられます。

木嶋先生のおすすめ利用法

夏の果菜類の植え付け前に!

3月にタネをまき、4月下旬にすき込めば、5月中下旬に定植するトマト、ナス、ピーマンなどの夏野菜に利用できます。発芽を抑える働きがあるので、後作にはニンジンやダイコンなど、直まきする野菜の栽培は不向きです。

黄カラシ(カラシナの仲間)

カラシナで野菜の病害を予防!
施設栽培などで栽培を続けると土壌バランスが崩れて病気が発生しやすくなります。これまではくん蒸剤による「土壌くん蒸」が行われていましたが、環境保護などの観点から代替技術としての「カラシナの利用」に注目が集まっています。アブラナ科の野菜類には辛み成分(グルコシノレート)があり、粉砕して土壌にすき込み、ビニールなどで被覆しておくと、加水分解されて揮発性のイソチオシアネートに変化します。センチュウ類や多くの土壌病原菌を抑える働きがあります。

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